第29話 傷つけた

「お兄様はそれでいいの?」


「ああ、問題ないけど?」


「リリーナの気持ちはどうするの?」


「そもそも恋愛感情はなかったからな」


「え?じゃあなんでリリーナをそばに置いておいたの?」


「それはおまえらが勝手に決めて進めたんだろ?俺は拒否したぞ?」


「それはそうだけど」


「それに非情かもしれないけど、仕方ないだろ。それに僕はルナが好きだ」


そう言い切ったとき、廊下の方で音が聞こえた。


「あ、リリーナ!」


アイリは廊下の方に行った。出る時こっちを見て言った。


「お兄様はそれで本当にいいんですか?」


そう言うと廊下に出てる行ってしまった。


「なんなんだよ。いいも何もリリーと付き合う気なんて最初からなかったし。それに……」


僕はルナを見た。


「シン君何?」


「ううん、何でもないよ」


「それより本当にいいの?」


「ん?何が?」


「私なんかで」


「いいもなにもルナがいいんだよ」


「それならいいんだけど。さっきのはさすがに酷いと思うよ」


「いやいや、あれ以外になんて言えばよかったんだよ」


「そんなこと私に聞かないでよ」


「それに僕も悪かったと思っているし。それよりもこの拘束取ってくれないかな?」


「あ、そう言えばそうだったね」


そう言ってようやく拘束から脱することができた。


「そう言えばさあ、シン君?」


「ん?何?」


「リリーナって女の子とすごく仲いみたいだけど、どんな関係なの?」


「単なる主人と使用人だよ」


「本当に何もなかった?」


「な、何もなかったよ」


「じゃあ、なんであそこまであなたのことが好きになってるの?」


「ああ、それは小さいころ、偶然助けた形になったからだよ」


「ん?どういうこと?」


「強いモンスターが出て、みんな気絶したから、僕が倒したんだけど。その時リリーだけ気絶してなかったみたいで、なんか好かれてしまった」


「ふーん、そうなんだ」


「それにそれまでかなり嫌われてたんだからな。人のこと魔族とか言って、集団で袋叩きにされたこともあるんだから」


「それでシン君には恋愛感情はないと」


「そうだよ。そもそも、いつかは言おうと思っていたし。それが早くなっただけの話だ」


「じゃあ、私が居なくても断ってた?」


「ああ、多分な。まあ、実際はどうなってたかはわからないけど。このまま流されて結婚してたかもしれない」


「やっぱり、そこまで嫌ってたわけじゃないんだ」


「ああ、そうかもな。この世界で唯一信頼してた他人だからな」


「なんか悔しいな」


「なんでそんな感情になるんだよ」


「だってシン君の1番は私だから、他の人に取られたのが悔しいの。まあ、これからはずっと一緒だよ」


「ああ、そうだな」


そう言って僕も了承したけど、まさかあんなことになるなんて。






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