第26話 再会 5
僕は戸惑っていた。なんでルナがいるのかとか、なんで僕だとわかったのかとかいろいろ聞きたいことはあったけど、とりあえずここから逃げようと思った。すでに周りの視線を集めまくっているわけですし。
とりあえずルナを抱えたまま、どこかにテレポートをしようと考えた。
「ちょっ、あなた誰——」
とそんなリリーの声が聞こえたけど今は無視だ。
「テレポート!」
そのまま僕たちは校舎裏に避難した。場所はたまたま、1人になりたくて見つけていたところだ。
テレポートした後もルナはテレポートしたことにも気付かず、僕に抱きついていた。
「あのー、そろそろ説明してしてもらえると嬉しいんだけど?」
正直、ルナかどうかはわからないけど女子に抱きつかれているこの状況は嬉しいからこのままで。
でもルナから反応はなかった。それほど僕に会えて嬉しいだろうか?僕はルナだったら本当にまた会えて嬉しいけど。実際はわからないし。
「あのー、本当にルナ、紅瑠奈なのか?」
「うん!そうだよ!」
今度はちゃんと返答があったけど、実際のところはわからないんだよな。
「本当に本当に紅瑠奈なのか?」
「え?もしかして私のこと忘れちゃったの?」
「いや、瑠奈のことを忘れるわけないだろ」
「じゃあ、いいでしょ!」
「良くないわ!なんでルナがこっちの世界にいるかを聞いているんだよ!」
「そんなの死んだからに決まっているじゃん!そんなこともわからないの?」
「いや、そうじゃなくてなんで死んだだよ」
「だってシン君が勝手に死んじゃうから」
「まるで僕が悪いように言うのはやめてくれるかな?」
「事実シン君が悪いんだよ!」
「なんでだよ!」
「だってシン君だけが私の頼りだったんだから!」
そう言いながら、泣き出してしまった。それにそう言われると返し辛いだろ。
「悪かったって。でもそれは僕にもどうすることできなかったし」
「それはなんとなくわかるけど」
「それよりなんで死んだだよ」
「自殺だけど?」
さも当たり前みたいに言いだしたんだけど?
「いや、なんで自殺なんかするんだよ!お前は両親のこと考えなかったのかよ!」
「そんなの考えたよ!でも私にはシン君のいない世界の方がたえられなかった!だから自殺したの!」
「それでもいいことと悪いことがあるだろ!」
「じゃあ、シン君は私に会いたくなかったの?」
「会いたかったよ!でも今は関係ないだろ」
「確かに関係ないけど、私も会いたかったの!どんなことをしてでもシン君に会いたかった。だから自殺をしたんだよ!」
すごく病んでいるですけど。僕ってこんなに頼りにされていたんだ。なんか嬉しいな。
「じゃなくて、ルナの両親に申し訳ないだろ!」
「大丈夫だよ。私の両親には前から言ってあったし」
「え?どういうこと?」
「前に両親がシン君が死んだらどうするのって聞かれたことがあるの」
「そうなんだ。それでなんて答えたの?」
「そのときはわからないとしか言えないって言った。私も実際そんなことないって思っていたから、真剣に考えてなかった。ただもしかしたら死んじゃうかもとは答えていた」
「それでも自殺するのは違うんじゃないの?」
「ううん、違わない。だって実際に起こるともう何も考えられなくなった。それにシン君が死んだって事実を認めたくなくて部屋を出たくもなかった。でもシン君の死を改めて認識するともう何もできなくなったし、生きている価値すらわからなくなっちゃった。だから死ぬ以外選択肢なんてなかった」
すごく重いけど、なんかこっちが申し訳なくなったし、悪いことをしたとも思ってしまった。
「そのなんだ、いきなりいなくなって悪かったな」
「ううん、こうして会えたから別にいいよ」
そういうとさっきよりも強く抱きついてきた。
「あ、痛かった?」
「これくらいどうってことないよ」
実際僕のステータスを超える同い年のやつはいないだろうし。
「そう、それならよかった」
僕は今ルナことがすごく愛しく思い始めた。前は近すぎてわからなかったけど、離れてわかることもあると思った。それにルナが自殺したこともどうでも良くなった。
僕たちはそれからずっとお互いの存在を確かめるように抱き合っていた。
「ここにいることはわか——」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます