第33話「大決戦」


 先に動いたのはクポの方だった。某ダンボールで出来たロボットのように四角い枡がくっついたような動き難そうな形をしているくせに滅茶苦茶速い。


 ダムナティオだって色々な制御のお陰であの巨体でロボット型であるにも関わらずあり得ない高機動が出来るからおかしなことでも珍しいことでもないけどやっぱり驚くものは驚く。


 四角い拠点がそのまま腕の部分になっているような形で四角い拳をダムナティオに突き出す。確かにクポの高機動に驚きはしたけどダムナティオなら余裕で避けられる速さだ。敵がこの程度でしかないのならダムナティオが負ける要素はな………い……?


聖香「きっ、きゃぁ~~!!」


静流「あぁっ!」


クポ「クゥゥポォォォーーーー!!!」


 クポの四角い拳がダムナティオに突き刺さる。装甲表面、内部ともにダメージはない。だけどパイロットの二人は衝撃を受けている。簡単に言えばものすごい勢いで揺さぶられたようなものだ。直接表面的なダメージはなくとも生身の人間である二人にはそれなりに辛いダメージがあった。


静流「しっかりしてください聖香!今のは十分避けられる攻撃でしたよ!」


聖香「あっ…、ああっ………。」


 負ける要素が一つだけあった………。それはパイロットの技量だ。パニック状態に陥った聖香はただイヤイヤと頭を振って抱えている。


静流「聖香!何をしているんですか?!もう次が来ていますよ!避けて!」


聖香「イヤ…。イヤアァァァァーーー!!!」


 駄目だ………。ダムナティオはクポに滅多打ちにされている。今のところ機体自体にはほとんどダメージはないけどこのままじゃいずれ破壊されるだけだ。


 ダムナティオの操作システムはメインパイロットの聖香の体と機体がリンクして機体そのものを動かしサブパイロットである静流がシステムとリンクして兵装をコントロールする。


 特訓では体を動かすことが得意な聖香が直感的にダムナティオの操縦もうまくやっていた。だから聖香をメインパイロットにしたんだ。それなのにパニック状態になってしまってはサブパイロットの静流ではどうすることも出来ない。


 でもそれは仕方ないよな………。機体と感覚がリンクするということは今聖香の目の前に巨大化したクポが迫っているように見えているはずだ。


 何の訓練も受けていない普通の女子学生がいきなりあんなものが目の前に迫ってきて自分を殺そうとしてたらそりゃ足が竦むのも無理はない………。


 全ては俺の判断ミスだ………。ここは………。


スクイッドエスタム「改太君。決断するなら早い方がいい…。」


 スクイッドエスタムも遠慮がちにそう声をかけてくる。そうだ。ここでダムナティオを失って聖香と静流まで怪我を…、いや、最悪死んでしまうかもしれないリスクを冒す必要はないんだ。


ちみ改太「聖香………。無理なことさせてごめんな…。普通の女の子がいきなりそんなところに乗せられて戦場に出されても怖いよな………。本当にごめん。もういいんだ…。撤退しておいで。あとは俺達が何とかするから。」


聖香「わたっ…、私は………。」


 ただ震えて蹲っていただけの聖香は顔を上げて俺が映っているモニターを見つめる。モニター越しに俺と聖香の視線が絡まる。


麗「負け犬はさっさと引き下がりなさい。………ですが貴女の大好きな彼の役にも立てずにただすごすごと引き下がるつもりならば彼のことも諦めなさい。負け犬にはそれがお似合いよ。」


ちみ改太「ちょっと麗さん?!そんな厳しい言い方しなくてもいいんじゃ?」


麗「改太様は黙っていてください。」


ちみ改太「はいっ!」


 麗さんにぴしゃりと切って捨てられる。こえぇ…。


聖香「それは………。」


静流「そうですね。さっさと基地まで下がってください。後は私と烏賊さんで戦います。そして彼は三条さんと奪い合います。聖香は手を引いてください。」


ちみ改太「静流まで………。二人は友達だろう?こういう時は慰めるもんじゃ?」


静流「九条君は黙っていてください。」


ちみ改太「はいっ!」


 今日は怖い笑顔じゃない。本当に怖い顔だ。こえぇ…。


麗・静流「「さぁ!どうするのですか?!新道聖香!!!」」


 二人はなおも聖香に迫る。聖香は俯いてブルブルと震えている。


聖香「………私は、………。諦められるわけないでしょ!私は学院に入って初めて見た時からずっと改太君のことが好きだったのよ!本人に振られたって諦められないのに二人に言われたくらいで諦めるわけないでしょ!いいわよ!やってやるわよ!こんなやつすぐにやっつけて改太君と結ばれるんだから!!!」


ちみ改太「………え?」


 今聖香は何て言った?俺が何だって?


静流「いいでしょう。聖香がきちんとあれを倒したら九条君を取り合うライバルと認めてあげますよ。」


麗「そうですね。あれを倒したら今後についてお話しましょう。」


 何か俺の与り知らぬところで話が進んでいる気がするぞ………。それはいい。だけどまだ頭が働かなくてさっきの言葉の意味が理解出来ない。それなのに聖香はモニター越しに俺を見つめて語りかけてくる。


聖香「私は改太君のことが好きなの。あれを倒して改太君のところへ帰るから。絶対…、絶対倒して帰るから!だからその後で返事を聞かせて欲しいな…。」


 聖香は照れて顔を赤くしながらも真っ直ぐに俺を見つめてそう告白した。


ちみ改太「あっ…、ああ…。………まずは、勝って帰っておいで。全てはそれからだ。」


聖香「うんっ!」


 聖香は赤い顔をしながらも年相応の少女らしい笑顔で俺に応えた。


静流「二人っきりの世界に入っているところ申し訳ないですが私だって九条君の…、いえ、改太君のことが好きです。聖香にも三条さんにも譲る気はありませんよ。改太君は私のことがお嫌いですか?」


ちみ改太「うっ!」


 静流がウルウルと俺を潤んだ瞳で見つめてくる。はっきり言おう。可愛い。聖香も静流もファンクラブが出来るのも納得出来るくらいに可愛い。


ちみ改太「静流のことが嫌いなわけないだろう?………でも急にそんなこと言われても困るよ。」


静流「はい。ですからこのお話はこの敵をやっつけてからゆっくりしましょう。」


 静流はにっこり微笑んだ。可愛いだけじゃない。これは覚悟のある者の顔だ。


ちみ改太「わかった…。それじゃまずはそいつを始末しよう。」


聖香「うん!」


静流「はい!」


 二人は元気良く返事をした。その顔は晴れやかで恐れは見えない。聖香も吹っ切れたみたいだ。


麗「改太様。私は改太様を愛しております。あのような小娘達の浮ついた気持ちとは違います。私を正妻としてお選びくださいますよう。」


 麗さんはモニターから振り向いて俺を見つめながらそう言う。…っていうかそれはそれでちょっと重いよ!


ちみ改太「っていうか正妻って何?!」


麗「改太様ほどのお方ならば愛人の一人や二人を囲うのは当然のことかと…。ですので私のところへ帰ってきてくださるのであれば一人や二人囲ったとしても私は何も申しません。」


ちみ改太「いやいやいや!何言ってんの?!」


麗「ですから私を正妻にしてくださるのであれば聖香と静流を愛人にして囲っても良いと言っているのです!」


ちみ改太「それはわかってるってば!そうじゃなくてそんなこと許されるわけないでしょ!?」


麗「何故許されないのでしょうか?誰に許しを請わなければならないのでしょうか?私達四人がそれで満足するのならば誰憚ることなく過ごせば良いと思います。」


ちみ改太「いやいやいや!嫁にはしないけど愛人にしてやるとか言われても二人だって納得しないでしょ!?」


聖香「………振られたら愛人でもいいからって言うつもりだったけど。」


静流「そうですね。改太君と離れ離れになってしまうくらいならば最悪の場合は愛人でも良いかと思っておりました。」


ちみ改太「………。」


 もう何も言えねぇ………。


スクイッドエスタム「そんなことを言ってる場合?敵が動いたよ。」


 スクイッドエスタムの声で正気に戻ってモニターを見る。クポがダムナティオに向かって突進してきているところだった。



  =======



クポ「クゥポォーーーー!!!」


 クポがまたしても四角い拳で殴りかかってくる。


聖香「さっきまでと一緒と思わないでよね!」


 戦う覚悟を決めた聖香は瞳に闘志を宿してクポを迎え撃つ。クポの右ストレートをかわして左フックを打ち込む。


麗「クロスカウンター!?」


クポ「クポォッ!」


 綺麗にクロスカウンターの入ったクポは吹き飛ばされて地面を転がる。


静流「それでこそ聖香です。私も負けていられません。次は私の番ですよ。………レーザーカノン!」


 突き出していたダムナティオの腕が開き砲身が出てくる。砲身からはレーザーが連射されクポに吸い込まれるように全てが命中する。


クポ「ク…ポ…ッ…。」


 ドドドドッ


 と地響きがこの基地にまで伝わってくるほどの連射でクポを撃ち続ける。


聖香「次は私よ!たつまき~~~………キィ~~~ック!!!」


 レーザーの雨が止んだかと思うと聖香はジャンプして飛び上がり回転しながら飛び蹴りを放つ。


クポ「クポッ!!!」


 レーザーで全身がボロボロになりなんとか立ち上がろうとしていたクポは聖香のキックに反応できずにまともに食らってさらに吹き飛ばされた。


麗「………。見た目ほどダメージはないようです。」


 モニターを見ている麗さんがボソリとそう言った。顔色はあまり優れない。派手な戦いでダムナティオが押しているように見えるけど麗さんの顔色からして見た目ほど楽な戦いではないようだ。


ちみ改太「…クポの方は予想通り自動修復してるな。何か弱点や急所は?」


 先ほどの連続攻撃でボロボロになっていたはずのクポはすでに修復が始まっている。いくら壊しても周囲の物質を取り込んで自動修復してしまうのならば倒すことは出来ない。


麗「………申し訳ありません。現時点では不明です………。」


 麗さんは申し訳なさそうに顔を伏せる。


ちみ改太「気にしないで。麗さんはよくやってくれてるよ。落ち込むより今はどうすればいいか考えよう。」


 そうだ。わからないことを気にしてる場合じゃない。今はどうすればいいかを考える時だ。


麗「現在全力でデータを解析しています。」


ちみ改太「うん。焦らないでね。二人も今は落ち着いてて押してるから慌てず確実にね。」


麗「はい。私には…、私にはこれしかないのです…。ここで改太様のために役に立てなければ私は存在価値がないのです!」


 そこまで思い詰めなくてもいいって言ってあげたい。だけど麗さんはそんな言葉を望んではいない。だから俺はこれ以上慰めも励ましも言わない。ただ麗さんを信じて待つ。


聖香「きゃぁっ!!」


静流「聖香っ!」


 ダムナティオにボロボロにされてあちこちに砕け散っていたはずのクポのパーツだったものが繋がり鞭のようになりダムナティオを打ちつける。


 これまでの直線的な攻撃と違って鞭のようにしなり自在に動く攻撃に聖香は対応出来ずに打たれ放題になっていた。


聖香「こっ…のぉ~!調子に乗ってぇ~!」


静流「落ち着いて聖香。身体能力も増幅されている私達ならば落ち着いて見極めれば避けられるはずです。」


聖香「そっ、そうね…。落ち着いて…。じっくり…。………ここっ!」


ちみ改太「おおっ!?」


 聖香は暴れる鞭をかわして踏みつけ動きを止めた。


静流「ダムナミサイル発射っ!」


 ダムナティオの腕や足の各所が開きミサイルが飛び出す。一つ一つが大爆発を起こしクポはまたしてもボロボロに砕ける。


ちみ改太「って、うぉい!そんな名前じゃないぞ!」


 いつの間にか勝手にダムナミサイルとかいう名前にされてる!


聖香「今だわ!やぁっ!」


 ミサイルに吹き飛ばされているクポの隙を突いて聖香はクポの懐に飛び込むと頭を両腕で掴んだ。


ちみ改太「あれをやる気かっ!?」


聖香「ダムナコレダー!!!」


 クポの頭を掴む両腕から超高圧の大電流が流れる。クポの全身から煙が上がりあちこちが焼け落ちる。


ちみ改太「って、だからそんな名前じゃないってば!」


 俺が考えた装備や必殺技の名前をどんどん勝手に変えられていく!


クポ「クポポポポポッ………。」


 クポはバチバチと放電しながらビクビクと体が震えている。これはそれなりに効いてそうな気がするぞ。麗さんが見ているモニターを覗き込む。


ちみ改太「効いてそうな気がするけどどう?」


麗「内部にまでダメージを与えているので表面的には効いているように見えます。ですが敵の構造は電気で動く地球の科学で出来たものとは違いますので実際のダメージは未知数です。」


ちみ改太「………ふむ。」


 確かに電気で動く地球の技術で出来たものとは違うから大電流で回路が焼き切れて壊れるとは限らないだろう。だけど電線や回路が焼き切れなくとも焼ければ壊れることに違いはないと思う。


クポ「聖香ぁぁぁぁ、静流ぅぅぅぅクポの邪魔をすればどうなるかわかってるクポォォ?」


 クポが語りかけてきた。まだ意識というか知能があったのか。それとも今の大電流のせいで内部で何か起こって目覚めたのか?


聖香「知らないわよ!私達は地球も改太君も守りたいだけなのよ!」


静流「そうです。あなたの脅しにはもう屈しません。」


クポ「クポォ!クポ達がこの星の新しい支配者になるクポォ。その支配者に逆らう者は死あるのみクポォ。今からでもその機体を使ってクポに協力すればクポ達がこの星を支配した後でもお前達の生命と生活を保障してやるクポォ。」


聖香「あんたに保障してもわらなくても私達は自分の手で守ってみせるわよ!」


 聖香はさらに電流を流し続ける。


クポ「お前達はわかってないクポォ!クポはただの先遣部隊クポォ!本隊が来たらお前達なんてすぐに殺されるクポォ!今クポに従っておくのが得策クポォ!」


静流「例えどんな敵がこようとも私達が守ってみせます!………それになぜそれほどの力があるのならばあなたはそんなに必死になって私達に攻撃をやめるように説得しているのでしょうか?」


 静流はにっこりと黒い笑みを浮かべた。静流の言う通りだな。少なくともクポは自力では勝てないと思ったから二人を説得しようとしている。


 ただしダムナティオがクポより強いからと言って敵の本隊に勝てるとは限らない。でもだからってこいつらに尻尾を振って媚びて生きていこうとは思わない。


 聖香も静流も麗さんもここにいる皆は全員がそう思っている。だから抗っている。世の中には戦争になるくらいなら一切の抵抗をせずにすぐに降伏すればいいと言う人もいるだろう。


 だけどそれで自分自身や自分の愛する人達の身の安全が守れるのだろうか?抵抗せずに降伏しても占領されて武装解除されて一切の抵抗する手段がなくなってから原住民を皆殺しにするかもしれない。


 もちろんしないかもしれない。だけど実際にそんなことは過去に何度も起こっている。地球人同士ですらそんなことが起こるのに遥か遠くからわざわざ地球を侵略しにきた宇宙人だか異次元人だかがしないなんて誰にも言い切れない。


 だから例え世の中の一部の人達が争うくらいなら降伏するほうがいいって言ったって俺の知ったことじゃない。俺は俺の意思で大切な人を守るために最後まで抗う!


麗「データ解析完了いたしました。敵の核はあの体の中心です。それを破壊すれば敵の活動は停止します。」


 麗さんに言われてモニターを覗き込む。なるほど。予想はしてあったけど思った通りの結果だ。


 一番外側は周囲の物質を取り込んで固めてあるだけの謂わばただの鎧だ。それをいくら破壊してもまた周囲の物質を集めて固めてしまうのですぐに元に戻ってしまう。


 その内側にあるのがあの拠点群のようだ。この拠点群の働きは周囲の物質を集めて固めることみたいだな。そしてこの拠点群自身も崩れてもまた変形して合体して元に戻ろうとするから壊すのは容易じゃない。


 最後に一番中心にクポがいる。これが本体なのだろう。壊しても砕いても自動修復されてしまう外殻を突破してクポを破壊するのは難しい。


 今のままじゃダムナティオの出力不足だ。未完成のダムナティオじゃ本来の性能がまるで出せてない。今のところ聖香がうまく避けているから大したダメージはないけど生身の人間である聖香と静流はいずれ疲れる。


 決定打に欠けたまま戦い続けていれば先に疲れて負けるのはダムナティオの方だろう。………仕方ないか。


ちみ改太「聖香、静流、今の話聞いてたな?」


聖香「………うん。」


静流「このままでは………。」


 二人もこのままじゃジリ貧でいずれ負けるとわかっていたんだろう。その顔は悔しさに歪んでいる。


ちみ改太「ダムナティオにはクポを倒せる兵装がある。それを使おう。」


スクイッドエスタム「ちょっと待ってよ改太君!それってまさか?!」


 スクイッドエスタムが俺に掴みかからんばかりの勢いで迫ってくる。まぁ今の俺は掴めないけどな。


ちみ改太「ああ。あれを使う。」


スクイッドエスタム「ダムナティオもあの兵装もまだ未完成だよ?!無茶すぎる!」


 たしかに未完成な上に出力も足りない。だけど一つだけ解決策がある。俺が整備班の作業を眺めながら一人で考えていた時に思いついた方法を使えばな………。


ちみ改太「一つだけ方法がある。もちろんそれなりにリスクはあると思う。だけどこのままじゃジリ貧だ。負ければそのリスク以上の危険があるんだからこれに賭けるしかない。それに勝算はちゃんとあるよ。きちんと動作もするし暴発したりもしない。」


スクイッドエスタム「………そんな都合の良い話なんてないはずだよ。改太君一体何をするつもりなの?」


 スクイッドエスタムが俺を覗き込んでくる。中身の悠の顔はきっと心配そうに眉尻を下げて情けない顔をしてるんだろうな。


ちみ改太「大丈夫大丈夫。そう心配すんなって。それじゃ………行ってくる。」


麗「………えっ?あっ!」


スクイッドエスタム「改太君?!」


 俺は作戦指揮所を飛び出して地上を目指す。スクイッドエスタムが言う通り何のリスクもデメリットもないなんてそんな都合の良い話はない。


 だけど最もリスクが少なく一番可能性が高い方法はこれしかない。地上へと出た俺はダムナティオに取り付く。


聖香「改太君?!どうしたの?」


静流「………一体何をするおつもりですか?」


 聖香は単純に俺に驚いただけみたいだけど静流は何か感じ取ったようだな…。真剣な表情で俺に問いかけてくる。


ちみ改太「さっき言ってた通りだ。ダムナティオの必殺技を使う。」


聖香「必殺技?そんなの知らないんだけど…。」


ちみ改太「ああ。これから自動的に二人には技の使い方が脳に流れるから心配はいらないよ。」


静流「それでなぜ改太君がここへやってきたのですか?」


 静流はまだ固い表情だ。やっぱりあまり良い予感がしてないんだろう。だけど心配はいらない。リスクがあるのは俺だけだ。二人もコンクエスタムも秘密基地もこの町も日本も地球も皆は大丈夫だから………。


ちみ改太「心配いらないよ。きっとうまくいくから。」


聖香「………駄目。改太君がそういう顔をしてる時は改太君が無茶する時でしょ?絶対駄目だから!」


静流「そうです!改太君を危険な目に遭わせないために私達が戦っているんですよ!それなのにここにきて改太君だけに危険を背負わせるわけにはいきません!」


 二人の温かい心が染み込んでくる。心配してくれる人がいるのはそれだけでうれしく心強い。


ちみ改太「大丈夫だから。俺に任せて。ね?」


聖香「あっ!待って改太君!」


静流「駄目です改太君!」


 俺は二人の制止を振り切りダムナティオのコアへと突入した………。



  =======



 その中は温かく優しい光に包まれている。外界の心配事などまるで些事であるかのような安心感で心が満たされる。


 だけどただここで揺り篭に揺られて眠っているわけにはいかない。俺はダムナティオのコアの中でも一番最深部へと辿り着いた。


改太「俺に力を貸してくれ。俺の想いの力をエネルギーに変えて…。今こそ目覚めろ!!!」


 コアに取り込まれた俺はコアと一つになっていく。今の俺はエネルギーの塊そのもののような存在だ。俺の想いはダムナティオを目覚めさせるエネルギーとなってコアを駆け巡る。


 クポが言っていたメサイア。因果律と森羅万象から知るはずのないことまで全てを知ることが出来るシステム。当然俺だって同じことを考えていた。それがこのコアに組み込まれている。いや、このコアがそのシステムそのものだ。


 その名はオモイカネ。いきなりこれまでのコンクエスタムの命名パターンと違うじゃないかと思うだろう。俺だってそう思う。だけどオモイカネはコンクエスタムを作るよりも前から作ってたものだから仕方ない。まだ爺ちゃんと一緒に魔法科学を研究してた頃のものだ。


 だけどまだ未完成だしそもそも完成出来る気がしない。ただこの場にいるだけで見たことも聞いたこともない全ての事象まで理解し把握出来るなんてそんなことが簡単に出来るわけないのはわかると思う。


 だからこそクポのメサイアだって俺達コンクエスタムのことを全て把握出来てなかったんだ。もちろん俺だってそういうシステムを作ろうとしてるわけだからそういうシステムで感知されるのを防ぐ方法も用意はしてあった。


 クポの方のシステムだって不完全だったことと俺がそれすら防ぐ装置を作っていた結果だ。もちろん防ぐ装置だってまだ未完成で完全じゃない。だから俺達の基地の場所や内情はバレなかったけど存在は把握されてしまった。


 そして俺はこの未完成のオモイカネをダムナティオのコアに組み込んだ。ダムナティオに様々な機能を付けたり制御するためにはオモイカネが必要だったからだ。だけどオモイカネもダムナティオもまだまだ未完成で全ての性能を発揮できるわけじゃない。


 だから俺がエネルギーになってオモイカネを起動させる。俺の意識は次第に薄れダムナティオと一体になっていく………。



  =======



 突然ダムナティオは眩く光輝き始めた。


聖香「これは………、力が溢れてくる?」


静流「それに…、知らないはずの知識が流れてきます。」


聖香「これなら!」


静流「あれを倒せます!」


 二人は目覚めたダムナティオの力の使い方を自然と知り即座にクポを倒すために動きだした。


聖香「いくわよ!」


 ダムナティオの背中部分から長大な砲身が出てくる。それが肩に担いでいるかのような位置へと移動する。


静流「エネルギー充填完了!」


聖香「荷電粒子砲〝スペーラ〟発射準備!」


静流「発射準備完了!」


聖香「発射っ!!!」


 莫大な電力を消費して加速された粒子がクポに向かって撃ち出される。


クポ「クポォォォォ~!」


 光の帯に飲み込まれたクポは一瞬もかからずに消滅した。その光はこの町全体をも照らし出す。粒子を加速させるための大電力として俺のエネルギーは相当使われてしまった。だけどまだ残ってる。その最後の想いを振り絞って町へと降り注ぐ。


 クポとの戦いのせいで破壊されてしまった町に俺の想いが光となり降り注ぎ包み込む。魔法科学は想いの力。想うことにエネルギーが必要ならば想いにはエネルギーが含まれているということ。


 そのエネルギーを使うということはどういうことか………。想うことにエネルギーが必要なのにそのエネルギーを使ってしまったら想えなくなるということ………。


聖香「………改太君?改太君!」


静流「待ってください!改太君!」


 二人の声が遠くに聞こえる………。俺のエネルギーが弱まり消えつつあることに気付いたのかもしれない。必死の形相で俺の気配を探そうとしている。


 光が弱まりダムナティオがまた眠りにつく。そして俺の意識も次第に暗い闇の底へと沈んでいったのだった。


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