第28話「暗転」
強襲部隊から敵拠点の奪取に成功したと連絡が入った。順調だ。誤差は予想の範囲内であり計画は順調に進んでいる。あとは時空の狭間から地球に出てきたクポ達を始末すれば俺達の勝利だ。
ブルー『さぁ行きましょう。』
ピンク『ええ。せめてクポだけでも私達で決着をつけましょう。』
その時バットエスタム君のダミーと戦っていたコケティッシュシスターズのダミー二人が急にそんなことを言い出した。本体とダミーの方の感覚が混ざってコントロールを失ったのだろう。本体の方で言った言葉と思われることをダミーの方でも言ってしまったのだと思う。
俺達もこのダミーを使おうと練習を始めた頃はよくこんなことがあった。本体とダミーの両方で同じ動きをして同じ言葉を言ってしまうのだ。二つのことを同時にするのが難しいのと同じことで慣れるまでは中々上手く出来ない。
だからあの二人は秘密基地で他のことに気を取られないようにさせてダミーを動かすことに集中させていたはずだ。それなのにポロッと余計な言葉が出てしまったことでクポは二人がおかしいことに気付いてしまった。
クポ「クポ?!何言ってるクポ?………やっぱりおかしいクポ。お前達あの二人じゃないクポッ!」
クポが完全に疑いの眼差しから偽者だと確信を持つまでになっているのに二人はクポの方を見もせずに何か駆け足のような動きをし始めた。どうやら完全に本体の方と感覚が混ざっているようだ。そして先ほどの言葉と駆け足のような動きをしていることから地上を目指して走っているものと思われる。
………ちょっと待て。二人が地上に出て戦っても良いのは俺が付き添っている場合だけだ。二人もそれを承知したはずなのに…。これでは予定が大きく狂ってしまう。
クポ「クポポッ!死ねクポ!」
クポが手を振るうと先がどんどん巨大化してハンマーのようになり二人のダミーを叩き潰してしまった。潰されたことでダミーの中身が露出する。当然生身の人間ではなく魔法科学と機械で出来ているその体の中身を見てクポは完全に理解したようだ。
クポ「偽者だったクポッ!クポポッ!………仲間とも連絡が取れないクポッ!してやられたクポッ!こうなったら最後の手を使うクポッ!!!」
そう言うとクポが見る見る巨大化していく。二十メートル…、まだ大きくなる。二十一メートル…。ようやく止まった。その全長は二十四メートル三十センチにも達している。
内蔵しているエネルギーはおよそ元のクポ百九十二体分だ。………その数字である推測が成り立つ。その推測を裏付けるように世界中の支部から情報が入ってくる。地球上に現れたはずのクポ型達が一斉にいなくなったというのだ。
俺達の陽動作戦で地球上に姿を現していたクポ型の数が百九十一体。空間の狭間にある拠点に残っていたクポ型が八体。そしていつも一体だけ別に行動していた。つまりクポ型は総数で二百体。そして拠点に残っていた八体は強襲部隊が破壊済みだ。
地球上に現れた百九十一体と別行動していた一体の百九十二体分全てのエネルギーがここに集まっている。一体だけいつも別行動していたのはそれこそが本物の本体だったのかもしれない。だが事ここに至って最早後がないと悟ったクポは全力で行動を起こそうと全てのエネルギーを集めたのだろう。
少しだけ謎な点があったので先ほどのデータを解析する。ここにいたクポだけでなく世界中のクポ型は確実に結界内に閉じ込めていた。そして奴らはお互いに仲間同士で連絡も取れなくなっていたのも確実だ。
さっきクポ自身がそう言ったしこちらが観測しているデータ全てでクポが出していた信号は全て結界で遮断していたことが示されている。実際お互いに連絡出来ていなかったからこそ全員が地球上で結界に閉じ込められていながらそれに気付かなかったのだ。
連絡が取れるのなら拠点が強襲されている連絡もきていたはずだ。それがない以上奴らの通信や移動を全て阻害出来ていたのは間違いない。
それならばなぜ今目の前でクポはまるで合体のようなことをして残り全てのクポ型のエネルギーをここに集めることが出来たのか。
その理由が解析によって判明した。こいつらは通信や移動とは別の繋がりのようなものがあったのだ。簡単に言えばこいつらは元々一つの存在だった。それが分裂して二百体になっていたのだ。
だからバラバラになっても一つに戻るための回路のようなものが存在していた。それを利用して通信したりは出来ないようだが一つの存在に戻るということはその回路を使って出来る。そしてその回路は外部的な結界では遮断出来ない。奴らの内部同士が繋がっていたのだ。だから残っている全てのクポがここに集まったのだ。
この質量は一体どこから現れたのかわからないが内蔵するエネルギーで言えば百九十二倍になってしまった。単純な質量攻撃だけでは俺達にはほとんど通用しないが内蔵するエネルギーも伴えば俺達にとっても危険になる。とてもではないがあの二人を戦わせるわけにはいかない。俺はキラーレディに連絡を取る。
デスフラッシュ「まずいことになった。二人を地上に出すのは中止だ。」
キラーレディ『デ……ラッシュ…佐?す……せん。よ…聞こえ………。』
デスフラッシュ「何だって?聞こえない!とにかく二人を地上に出すな!」
キラーレディ『申し訳……ま…ん。二人…勝手に…上に向か……しまい………。』
デスフラッシュ「なんだと!………わかった。俺は地上で二人を待つ。そちらからも二人を追ってくれ。」
巨大化したクポが放出しているエネルギーと干渉しあうためか俺達の通信も調子が悪い。ノイズが多くキラーレディの言葉もよくわからなかった。ついには完全に繋がらなくなってしまった。
ただ二人が勝手に地上に向かったのだろうということはわかる。そもそもダミー達がそんなことを言い走っているような動きを見せていたのでそうだろうとは思っていた。
キラーレディにも二人を追うように頼んだから下から追ってくれているだろう。俺の方でも二人が地上に出てきたら保護出来るように動いておく。
俺は駄目元で地上に出ていた部隊との通信を試みた。
デスフラッシュ『誰か通じるか?』
スクイッドエスタム『はっ!こちら通じております。』
スパイダーエスタム『こちらも同じく。』
バットエスタム『こちらも。』
どうやら俺の近くにいた地上部隊達とは通じるようだ。それも都合良くこの三人に通じたのはありがたい。
デスフラッシュ『このデカブツが暴れたら町が大変なことになる。まずはこいつを捕まえるぞ。四点結界を張る。俺はこのまま北を担当する。次に出力の高いスクイッドが南へ回れ。位置的に近いスパイダーは東でバットは西を頼む。』
三人『『『了解!』』』
三人に指示を出す。まずはこれ以上町に被害を出さないためにこの巨大クポを結界に閉じ込める。三人が配置につくまでは俺が時間を稼いでおこう。
デスフラッシュ「おいデカブツ。」
クポ「クポォォ?!」
クポの声だけで空気が激しく振動してまるで音波攻撃のようだ。俺の声を聞いたクポが俺を見下ろす。
デスフラッシュ「こっちだ。ほら。お前が倒したがっていたコンクエスタムのデスフラッシュ大佐だぞ。ほらほらこっちだ。」
クポ「クポォォォ!!!」
ドスンドスンと歩きながら巨大な手を振り回し俺を追いかけてくる。さすがにこれだけの質量と内蔵エネルギーを持つ攻撃を食らえば今のスーツじゃ無傷というわけにはいかなさそうだ。
戦闘向きのスーツを召喚すればこいつを倒すのもそう難しくはないと思うけど今はこれ以上暴れて町が破壊されないように結界を張ることが最優先だ。
結界を張ったりする能力に特化した支援向けのスーツではこいつと戦うのは少々骨が折れる。ここは回避に徹して結界に閉じ込めてからスーツを着替えて始末するのが一番良い。
クポ「グゥポォォォッ!!!」
デスフラッシュ「―――ッ!」
クポは両手を握り締め打ち付ける。俺は横に飛びギリギリで回避したがクポの腕がめり込んだアスファルトは割れて辺り一帯が滅茶苦茶になる。これ以上暴れさせたらまずい。
ガス管と水道管も今の攻撃で破壊されている。ガスが爆発したら大変なことになる。
デスフラッシュ『誰か都市ガスを止めろ。できれば水と電気も急げ。』
スクイッドエスタム『はっ!』
多少インフラを破壊されてしまうのはやむを得ないが二次被害三次被害を防ぐことが大事だ。各所にもコンクエスタムの手が伸びているからそのうち止まるだろう。
デスフラッシュ「こっちだノロマ!ほらほら!」
俺は出来るだけ被害の出なさそうな場所へとクポを誘導していく。
クポ「グゥゥゥポォォォォ~~~!!!」
またしてもクポは大振りで地面を殴りつけ周囲に大きな揺れが起こる。
デスフラッシュ「ほらほら!こっちだこっち!」
クポ「クポォォォ~ッ!」
そうだ。付いて来い。こっちだ。この先に公園がある。あそこなら避難誘導は終わっているから多少暴れても大丈夫なはずだ。
………いける。クポがこんな状態になったのは想定以上だったけど倒せないほどじゃない。敵だって馬鹿じゃないから何か奥の手くらいあるだろうとは想定していた。
ただ出来る限り敵の手を封じて勝つつもりだったけどまさか内部同士が繋がっていて合体出来るとは想定外過ぎて驚いただけだ。
町の被害も想定以上だけど今のところ人的被害の報告はない。インフラが破壊されるくらいは目を瞑るしかないだろう。
クポ「クポォォ!」
デスフラッシュ「ちっ!うおおぉぉぉぉっ!!!」
もうすぐ公園に誘い込めるというところでクポがなぎ払うように腕を振るう。これを避けたら近くにあるビルに被害が出るだろう。
さすがにビルが崩れたら犠牲者が出てしまう恐れがある。まだ避難していない市民達も大勢いるんだ。俺には避けるという選択肢はない。
足を踏ん張り体に力を溜めて巨大化したクポの腕を受け止める。
クポ「クポォォォッ!!!」
デスフラッシュ「うおおぉぉっ!!!デスフラッシュ大佐を舐めるなよぉっ!!!」
スーツの各所がピシピシと音を立てる。俺の背骨と腕がミシミシと軋む。でも絶対に受けきる!この腕が振りぬかれてしまったらいくつものビルがドミノ倒しになるだろう。
例え背骨が折れても止める!………足が地面にめり込む。
デスフラッシュ「止まれぇぇぇぇっ!!!」
………。
クポ「クポポ。」
デスフラッシュ「へっ…。受け止めたぜ。」
全身がびりびりと痺れている。だけど受け止めた。そう何度も受け止めたくはないけどこのスーツで止められるってことは戦闘用スーツを使えばこいつは敵じゃない。
デスフラッシュ「おらっ!こっちだ!どこを狙ってる?こっちだこっち!」
もう少しで公園だ。
デスフラッシュ『結界係りの三人。配置はどうだ?』
スクイッドエスタム『いつでもいけます。』
スパイダーエスタム『もうすぐつきます。』
バットエスタム『準備完了!』
デスフラッシュ『よし。俺がクポを公園に誘い込んでスパイダーの準備が出来たらすぐに発動させるぞ。』
三人『『『了解!』』』
順調だ。クポの想定以上のパワーアップというアクシデントはあったけど何も問題ない。むしろ全てのクポをここでまとめて始末出来ると思えばよかったかもしれない。
デスフラッシュ『よしっ!公園に誘い込んだ。スパイダーはどうだ?』
スパイダーエスタム『準備完了。いつでもいけます。』
デスフラッシュ『よし。タイミングを合わせろ。行くぞ!三…二…一…今だっ!!!』
東西南北の四方向から同時に光の柱が立つ。それぞれの光がお互いに膜を拡げるように周囲を覆っていく。四重の光の膜がクポを公園ごと包み込んだ。
デスフラッシュ『やったか?』
スクイッドエスタム『デスフラッシュ大佐………。それってフラグじゃ?』
デスフラッシュ『フラグもクソもあるか。さっきのクポの攻撃力からしてこの結界は破れない。閉じ込めてしまえばクポに脱出する手段はない。あとは戦闘部隊を投入すれば倒せる。』
俺は勝利を確信していた。………だからだろうか。まさかこんなことになるとはな………。
ブルー「ちょっと?!どういうこと?これがクポなの?!この光の膜は?」
ピンク「まずいことになってしまったようですね…。」
まさか結界内にコケティッシュシスターズの二人まで閉じ込めてしまうとは………。いつからここにいた?俺のセンサーに感知されない方法を使っているのか?
………違う。今俺のセンサーには誰も引っかからない。エネルギーを感知して人の居場所を判別するセンサーがいかれてる………。
原因はすぐにわかった。クポのパンチを受け止めた時にスーツが損傷したからだ。
クポ「クポォ?………クゥゥゥッポッポッポッ!」
クポが厭らしい笑みを浮かべた気がした………。
デスフラッシュ「嘘だろ………。」
待てよ…。待ってくれよ………。こんなことあるか?偶然俺のセンサー部分だけが故障して二人の存在に気付かずそのまま敵と一緒に結界内に閉じ込めてしまうなんてことが………あってたまるかよ!
この結界は一度張ってしまえば破壊するかエネルギーが切れるまで解けることはない。つまり………。つまり二人は結界のエネルギーが切れるまでクポと一緒にこの結界の中に閉じ込められたままだ!
クポがそれまで何もせずに二人と談笑でもするか?そんなわけはない!このままじゃ二人がっ!
デスフラッシュ「クソッ!これがフラグかよ!!!クソッ!クソッ!どうすれば?どうすればいい?!」
落ち着け!落ち着け!こういう時こそ頭を働かせろ!考えろ…。落ち着いて。早く的確に!
まず二人を救うにはどうすればいい?クポを倒すか二人を結界の外へ出すかだ。どうやって?………無理だ。
クポを倒すにも二人を連れ出すにもどちらも方法は一つ。結界を破壊するしかない。
だったらどうすれば結界を解ける?張った時と同等以上のエネルギーをぶつけたら破れる。だったら結界を張った四人でまた息を合わせて結界を破るか?
駄目だ。間に合わない。もうクポの手が二人に迫っている。駄目だ駄目だ駄目だ!!!
………
……
…
………ある。一つだけこの状況から二人を救う方法がある!
ただしそれをしたらクポを抑えるのが難しくなるだろう。だけどそれは残りの者達を信じるしかない。俺は行動を起こしながら全員に〝つながる君〟で呼びかける。どこまで通じているかわからないけど誰かに通じていると信じて後は任せるしかない。
デスフラッシュ『結界を破って二人を助ける。後は任せたぞ。』
あまりに時間が短すぎて多くのことは言えない。細かく説明は出来ないけどこれを聞いている誰かが察してくれると信じて俺は最後の手段を使った………。
~~~~~コケティッシュシスターズ~~~~~
二十メートル以上ありそうな巨大なクポを相手にデスフラッシュ大佐は戦っていた。クポの巨大な腕が振るわれる。そのままではその腕がビルを破壊してしまいそうな攻撃だった。
今まで軽快に攻撃を避けていたデスフラッシュ大佐が止まる。そこへクポの腕が迫る。
ブルー「危ないっ!」
ピンク「………受け止める気ですね。」
コケティッシュシスターズの二人は確かに見た。あんな巨大な腕で殴りつけられたらひとたまりもない。普通なら避けるところだ。それなのにデスフラッシュ大佐は避けない。避ければビルが倒壊してしまうからだ。自分の身を挺してでも人々を守ろうとしている。
コンクエスタムは…、デスフラッシュ大佐は自分達なんかよりずっと人々のために尽くしてきていたのだと今更ながらに気付いた。これだけの力がありながら理不尽にコンクエスタムに絡んでいた自分達も手加減されて救われていたのだ。
ブルー「私達って………、本当に何もわかってなかったんだね。」
ピンク「魔法少女になって悪と戦うなんて浮かれて………、戦う相手を間違えて…、とても素晴らしい方々に迷惑ばかりかけていたのですね。」
思考誘導をかけられて操られていたとは聞かされている。確かに今考えれば当時はおかしなことをおかしいとも思わずに行動していた部分は確かにある。
だけど、それでも二人はあまりに未熟な自分を恥じてしまう。ずっと助けてくれていたのだ。救ってくれていたのだ。自分達が迷惑をかけてもこっそり影で手を差し伸べてくれていたのだ。
―――そう。それはまるで二人が愛する彼のように………。
ブルー「………頑張って。」
ピンク「勝って!」
二人はただ見守ることしか出来ない。そして………。
ブルー「止めた………。」
ピンク「信じられません………。」
今目の前で見せられても信じられない。クポの巨大な腕を普通の人間と変わらない小さな体で受け止めた。その後も攻撃を避けながらクポをどこかへ誘導しているようだった。
二人はその戦いに魅入られたようにその場から動けなくなっていた。すると公園内にクポが入ったところで東西南北の四方向に光の柱が立った。スルスルと光の膜が張られてクポの周囲を完全に囲う。当然公園内にいたコケティッシュシスターズも光の膜の内側に取り込まれてしまった。
ブルー「ちょっと?!どういうこと?これがクポなの?!この光の膜は?」
ピンク「まずいことになってしまったようですね…。」
二人はクポと一緒に結界内に閉じ込められてしまった。これが何らかの遮断効果のあるものだということは二人にもなんとなくわかった。自分達はここから出られないのだと………。
クポ「クポォ?………クゥゥゥッポッポッポッ!」
巨大なクポが二人を見下ろし厭らしい笑みを浮かべる。
ブルー「あっ…、ああっ…。」
ピンク「ひっ………。」
二人は動けない。クポの手が迫ってくる。逃げなきゃ!そう思うのに体が動かない。蛇に睨まれた蛙というのはこういうことかとどこか遠くから自分を見つめる別の自分がぼんやりそんなことを考えていた。
デスフラッシュ『結界を破って二人を助ける。後は任せたぞ。』
二人にも聞こえた。デスフラッシュ大佐の一言。コンクエスタムが使う独自の通信方法。これまでも何度か経験した通信が自分達にも伝わった。その言葉を聞いただけで二人にはなぜか安心感が広がる。
聞いている全ての人を安心させるような、何とかしてくれるような彼の言葉………。二人はもうぼんやりと気付いていた。その素顔を見るまでもなく………。今まで自分達が戦ってきた人が誰であったのかを………。
デスフラッシュ「オーバードライブ!!!」
デスフラッシュ大佐のスーツが光輝きキィィィーーンと高い音を奏でる。四重の光の膜に囲まれていたはずの自分達のところへと飛び込んできた。
先ほどまでは力強くとても破れそうになかった光の膜はデスフラッシュ大佐が突進するとまるでガラスのようにあっさりと砕け散り光の破片を撒き散らしていた。
デスフラッシュ「うおおぉぉぉっ!聖香も静流も俺が守る!!!」
コケティッシュシスターズの目の前に飛んできたデスフラッシュ大佐は公園の外の時よりもさらに威力の上がっているクポのパンチを受け止める。
まるで揺らぎもしない大木のようにがっしりとそのパンチを受け止める後姿はそれを見ている二人に安心感を与える。
しかしその揺らがないはずの大木が揺らいだ………。
ビキビキと嫌な音をたててそのスーツに亀裂が入っていく。
クポ「クポォォォ!!!」
デスフラッシュ「おおおおぉぉぉっ!!!」
パンチを受け止められそうになっていたクポの腕から光が迸る。それはマジカルコケティッシュダイナマイトなど比べ物にならないほど高出力のエネルギーの塊だった。
ドオォォーーーン!!!
と光が溢れ大きな音と地震のような振動が起こる。
そのエネルギー弾を受けてもデスフラッシュ大佐はそこに立っていた。後ろにいた二人には爆風ですらもやってこない。デスフラッシュ大佐が何かの方法で守ってくれているのは一目瞭然だった。
………しかしそこまでだった。デスフラッシュ大佐のスーツから溢れていた光は消え去り皹は亀裂となりやがてスーツはばらばらに砕け散ってしまった。グラリとデスフラッシュ大佐の体が揺らぎ崩れ落ちる。コケティッシュシスターズの二人は必死に腕を伸ばして愛しい彼を受け止める。
改太「二人とも………無事か……?」
仮面のなくなったその顔は紛れもなく二人の愛する九条改太だった。全身血に塗れ腕がひん曲がっていようともそれは見紛うことなき愛しい彼だ。
ブルー「九条君っ!」
ピンク「どうして!どうして私達のために!」
二人はどうしていいかわからなかった。ただ取り乱し叫ぶことしか出来なかった。
改太「無事…か…。だったら早く逃げろ………。早くっ!」
しかしその願いは叶わない。二人は改太を置いて逃げることなど出来ない。そしてクポの腕が再び振り上げられた。
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