第24話「ハプニング満載!うれし恥ずかし同棲生活」


 二人の要求が俺の身の安全?意味がわからない…。あっ…。二人は俺がデスフラッシュ大佐だってまだ知らないから俺の身が危険だと思っているのかもしれない。


 自分達が巻き込んでしまったせいで俺の身に危険が及んではいけないと思って俺のことを気にしてくれていたんだろう。二人には大事な『彼』がいるはずなのに俺のことまで気にしてくれているなんて優しい子達だ。


 普通なら『彼』の身の安全を一番に要求するところだろうにまず俺の身の安全からだなんてこの二人に悪い気がしてくる。


 そうか…。俺がデスフラッシュ大佐だと教えれば俺のことは気にしなくて良いと二人もわかるだろう。そうすれば二人は本来の希望通り彼女達の周りの人の安全と『彼』の安全を要求するはずだ。


改太「あの……。」


キラーレディ「わかりました。彼の身の安全ですね?それでは我々で保護しましょう。さぁこちらへ。」


 俺が発言しようとした途端にキラーレディが早口で捲くし立てて俺の腕を引っ張って部屋から出て行こうとする。


改太「え?ちょっ、ちょっと待って!」


キラーレディ「何も心配いりません。さぁこちらへ。」


 結局キラーレディは俺の制止も聞かずに廊下へと俺を連れ出したのだった。さらにコンクエスタムの怪人達に装備されている個人携帯型転移装置で俺のオフィスまで転移する。


 この個人携帯型転移装置はまだそれほど便利なものじゃない。事前に設定してあるいくつかのポイントにしか転移できないし転移先にも装置を置いておかなければならない。どこでも自由自在に転移したいんだけどまだそこまでは発明出来ていなかった。


改太「ちょっとキラーレディ。どうしたの?あの二人に俺がデスフラッシュ大佐だって説明すれば余計な心配をかけずに済んだんじゃないの?」


キラーレディ「………それでは万が一あの二人が敵であった場合に改太様の身の安全が確保出来ません。我々の正体はまだ彼女達に教えない方が良いと判断いたします。」


改太「う~ん………。」


 確かに麗さん、じゃなかった。キラーレディの言うことも筋は通ってる。一応二人は俺達が掌握したつもりではあるけどそれさえもクポの罠で本当はまだクポの管理下にあったとすれば基地の位置と一緒に俺達の個人情報まで教えては危険だ。


 それぞれ皆の家族にまで危険が及ぶ可能性があるし、万が一ここが潰されても俺達が無事ならば闇に隠れて再起を図ることも出来るけど身元がバレていたら関連のある先を全て調べられてしまう。


 隠れるのも難しくなるし関連するところからの支援も受けづらくなる。…だったらこのまま九条改太はコンクエスタムに保護されたことにして俺はデスフラッシュ大佐として動いた方が得策か?


キラーレディ「二人にはこのまま黙っておきましょう。さぁお召し替えを…。」


改太「…まぁ仕方ないか。暫くはそうしよう。」


 俺はキラーレディの言う通りにすることにした。少なくとも二人が確実に信用できると判断できるようになるまでは伏せておこう。


 九条改太の身の安全まで心配してくれる二人には申し訳ないけど俺が迂闊なことをすればコンクエスタムや九条ホールディングス全ての者がクポ達に狙われる可能性もある。


 ここは出来る限り確実に進めていきたい。俺を心配してくれてる二人の気持ちを踏みにじってるみたいで少し辛いけど今は確実にクポを追い詰めることが大事だ。


 そう決めた俺はデスフラッシュ大佐へと変身する。


改太「………あのキラーレディ?俺着替えたいんだけど?」


 キラーレディはじっと俺のオフィスに待機してこちらを見つめている。これじゃ着替えられない。


キラーレディ「私のことはお気にならさず。さぁどうぞ。お召し替えを…。」


改太「いやいやいや!気にするから!こんな綺麗な女の人に着替えをじっと見られてたら恥ずかしくて着替えられないよ。」


キラーレディ「まぁ…。綺麗だなんて………。私の方こそ恥ずかしくなってしまいます。………それで二人の結婚式はいつになさいますか?あなた。」


 キラーレディは顔を赤くして両手を頬にあててクネクネしながらそんなことをのたまう。


改太「………結婚式とかしないから。ほら、出た出た。」


 いつまでも終わりそうにないので俺はキラーレディの背中を押して外へと追い出したのだった。



  =======



 デスフラッシュ大佐へと変身した俺はキラーレディを伴って先ほどの小会議室へと戻ってきた。


ブルー「デスフラッシュ大佐?!」


ピンク「やはり…、あなたも生きていたのですか。」


 入室した俺を見た二人はすぐに反応した。今までは改太をどうしたのかとスクイッドエスタムに噛み付いていたのにデスフラッシュ大佐が現れたことで興味がこちらに移ったようだ。


 他の怪人達も生きていたんだからデスフラッシュ大佐も生きていると思うのが普通だと思うんだが…。


デスフラッシュ「他の怪人達が無事だったんだ。俺も無事だと考えるのが自然だと思うが?」


ブルー「………そうね。」


ピンク「確かに予想はしていましたが目の前に現れられてはやはり動揺することもあります。」


 二人は複雑な表情で俺を見つめている。別に二人と何か恨み辛みが募っていたり因縁の戦いなんてしてきた覚えはないんだけど二人にとっては俺は何か因縁の相手みたいだな。


デスフラッシュ「お前達の要求にあった者の安全は保障する。あとで会いたければ会わせてやるがまずはこれからのことを協議したい。」


ブルー「………私達が彼を巻き込んでしまったのですものね。」


ピンク「これ以上彼に甘えるわけにはいきませんね。」


 二人は九条改太がこれ以上この件に関わらないことで一致したようだ。意見が纏まったようなのでこれからのコンクエスタムとコケティッシュシスターズの協力体制について話し合うのだった。



  =======



 俺達が考えていた大筋に二人の意見を加えてほぼ内容は纏まった。


デスフラッシュ「これでいいか?」


ブルー「そうね…。ここまでならなんとか妥協できるわ。」


ピンク「これも万全とは言えませんが、ならばもっと良い案を出せと言われても思いつきません。今はこれしかないのではないかと…。」


デスフラッシュ「よろしい。クポを倒すまで暫くは不自由な生活になると思うが我慢してもらおう。部屋へはキラーレディに案内してもらえ。」


 俺はそれだけ言うと小会議室を出る。オフィスで九条改太へと戻った俺は暫く書類整理をしてから俺が保護されていることになっている部屋へと向かった。


 暫く部屋で休んでいると訪ねて来る者がいた。


聖香「あの…、九条君大丈夫?」


 俺が部屋の扉を開けるとまず聖香が声をかけてきた。


静流「何もされていませんか?」


 静流も横から顔を出してそう声をかけてくる。二人は俺がコンクエスタムに何かされていないか心配してくれたんだろう。それからいつの間にか二人は元の姿に戻っていた。


 着ぐるみ怪人と違って二人は変身しているだけでもエネルギーを消耗するから戻っておいた方がいいだろう。いざという時にエネルギー切れでしたでは話にならない。


 もちろん俺の改造によってちょっとやそっとでエネルギー切れになるようなことはないし変身したままエネルギーを補充する方法も追加しているから普通にしていて切れるようなことはまずないけどね。


改太「うん。何もされてないよ。ちょっと部屋に寄って行く?」


 俺は部屋へと二人を誘う。二人のことだから俺の安全を確認したら帰りますっていうことはないだろう。何か話もあるだろうと思って二人を招き入れた。


聖香「えっと、お邪魔します。」


静流「九条君のお部屋ではないですけど何か九条君のお部屋に入れてもらうようでドキドキしますね。」


 二人は緊張の面持ちで部屋へと入ってきた。そういえば俺があまり寛いでいたらそれはそれで変か。元々この秘密基地は俺が造ったからまるで自分の家のようにリラックスしてたけど二人が知る九条改太ならコンクエスタムの秘密基地で自分の家のようにリラックスしていたらおかしいと思われるかもしれない。


改太「そうだね。俺の部屋じゃないけど遠慮なくどうぞ。」


 俺は不自然にならない程度に誤魔化しつつ二人の相手をしたのだった。



  =======



聖香「…ということで九条君には暫くここに留まってもらうことになったの。」


静流「こんなことに巻き込んでしまってごめんなさい。」


 二人はさっき小会議室で纏まったことを教えてくれた。全部俺が二人と話して纏めたことだから二人に教えてもらうまでもないんだけどそれを言ったらおかしいので黙って聞くしかなかった。


 それに二人も口に出して人に説明することでより深く理解したりはっきり覚えたりしたことだろう。これは勉強方法でも利用できる。覚えたことや教えてもらったことを今度は自分が人に説明したり教えたりすると自分の理解も深まりよりよく覚えることが出来る。


 声に出す。人に教える。などの行為をすることで記憶への定着や理解が深まりそれがまた自分の勉強にもなる。そういう勉強方法もあるのだ。尤も学院でぼっちの俺はそんな勉強方法をする友達はいないけどね。


改太「わかったよ。俺はここで大人しくしてるから二人は俺のことなんて気にせず行動して。」


 実際俺より二人の方が危険が高いわけだし二人の気が少しでも楽になればと思って気軽にそう答えたのがよくなかったかもしれない。


聖香「気にしないなんて出来るわけないじゃない!」


改太「おっと!」


 テーブルもなくソファが向かい合わせに二つ置いてあっただけで向かいに座っていた聖香は俺の言葉を聞いて立ち上がり飛び込んできた。聖香のそれほど立派じゃない胸に俺の頭が押し付けられている。


聖香「ごめんなさい…。こんなことに巻き込んでしまってごめんなさい。」


 聖香は俺の頭を抱きながら謝り続けている。俺は巨乳好きだと思ってたけど聖香のあまり大きすぎない胸もこれはこれで………。


 って、ちがーーーう!何だよこれ!うれしいけど恥ずかしいよ!うれし恥ずかしだよ!


改太「わかった!わかったからちょっと落ち着こうか?」


静流「ごほんっ!聖香はどさくさに紛れて何をしているのですか?」


 俺が止めても止まらない。ぎゅっと抱き締められて動けない。いや、動けるけどね?だけど動くと色々とやばいことになる。聖香は俺の膝の上に跨って乗って俺の頭を抱きかかえている。その状態で動くと?色々とやばいことになりそうだろう?


 俺の頭は完全に抱きかかえられていて視界は全て聖香のおっぱいで埋まってる。だから静流の表情はわからないけどその声は明らかに怒りを含んでいることがわかる。このままじゃこっちも別の意味でやばそうだ。


聖香「いいから!九条君は何も心配しなくていいから!全部私が何とかするから!」


 聖香はさらに力を込めて俺を抱き締める。………何か段々締まってきてる気がするぞ。何がか?それはもちろん俺の首だ。


改太「段々苦しくなってきてるんだけど………。」


静流「聖香!離れなさい!聖香っ!」


 静流の声が近い。聖香のすぐ後ろにいるようだ。聖香の体が揺すられているような揺れが俺にも伝わってくるからたぶん後ろから聖香を引っ張って俺から引き離そうとしてくれているんだろう。


 でも俺の意識は段々暗い底へと沈んでいきそうになっていたのだった………。



  =======



 何とか無事聖香のチョークスリーパーから生還した俺は一息ついてからソファに座りなおす。


聖香「ごめんなさい………。」


 我を忘れて俺を絞め殺しかけていた聖香はしょんぼりしながら謝ってきた。


改太「うん…。もういいから。新道さんも気にしないで。」


聖香「だけど!」


 聖香は泣きそうな顔になってまた立ち上がりかける。また首を絞められたらたまらない。


改太「あ~!役得もあったから!新道さんのおっぱい堪能させてもらったから!ほんと気にしないで!」


 俺の言葉を聞いて聖香が固まった。やべぇ!俺もテンパって変なこと言っちゃった!余計恥ずかしい!


聖香「あ…、ああ…、あああ~~~!いや~~~!」


 聖香は変な声を上げてこの部屋に置いてある俺のベッドの中に潜り込んだ…。なぜそこに潜り込む?しかも頭隠して尻隠さずだ。上半身だけ布団の中に突っ込んでお尻はフリフリと外に出ている。


 チラチラと短いスカートが………。


静流「九条君?どこを見ているのですか?」


改太「はいっ!何も見てません!」


 顔の形だけは一見笑顔のように見える静流が正面から俺に迫っていた。こえぇ…。麗さんよりさらに怖いかもしれない…。静流は怒らせたらだめだ。この子はきっと鬼神だ………。


 俺は聖香の方を見ないようにして静流を見つめる………。


改太「っていうか近いんですけど!むしろどんどん近づいてきてるんですけど!」


静流「さぁ…。さきほどは聖香に抱き締められたのです。次は私の番でしょう?」


 静流がちょっと怖い笑顔で両手を広げながら俺に迫ってくる………。やっぱりこの娘ヤンデレなのか?!こえぇよ!


静流「はい、捕まえました。ふふふっ。」


改太「ううぅぅ…。」


 今度は静流に頭を抱き締められる。確かに静流の巨乳に頭が埋もれて気持ちいい。だけど何か静流の笑い方が怖くてこの感触を楽しめない。いや、いいんだけどね。むしろこの感触に集中しちゃったら色々と大変なことになるからね………。いいんだけどうれし怖しだ。


 俺の周りにいる女性って皆美人なのにな~んかちょっと残念っぽい娘達ばっかりだなぁ…。いや…、いい娘なんだけどね…。だけど何かちょっと残念な気がする。何だろうな………。


 こうして暫く俺達はコンクエスタムの秘密基地に匿われて生活することになったのだった。



  =======



 俺達が反撃に出た場合にクポが周りの人間を人質にしないようにコンクエスタムが影ながらこっそりとその身の安全を確保している。


 そして監視されているコケティッシュシスターズの二人と話の流れで俺も本物はコンクエスタムの秘密基地に匿われつつ偽者と入れ替わっている。


 クポは偽者の方を監視して本物と思って満足しているだろう。だけど偽者と入れ替わっていたら色々と問題がある。


 まず俺はともかく二人は学院の授業から置いていかれてしまう。だからコンクエスタムの者が家庭教師をしたりすることもあるし偽者と精神をシンクロさせて偽者の体をここから操り授業を聞いたりしている。


 その次の問題が退屈だ。いつもは学院なんて退屈で無駄な時間だと思ってたけどいざその時間が自由になると今度は暇になりすぎる。


 俺は二人に見つからないところでこっそりデスフラッシュ大佐として仕事をしたり開発したり研究したりやろうと思えば出来ることはあるけど長時間改太が所在不明だと二人が騒ぎ出すのであまり身を入れて集中出来ない。


 俺の方にすることがあっても二人が暇だと俺の所に乗り込んでくるからだ。二人に何かやらせている間に俺もこっそりやるしか方法がない。


 そして一番の問題があの二人だ。何故かあの二人はあり得ないようなことをしてくる。具体的にどんなことか?それを今から説明しよう。


 まず一つ。寝巻きでばったり事件。各自個室を与えられていて必要な全ての機能は個室に備わっている。何を言いたいかと言うとただ生活するだけなら部屋から出る必要性はまったくない。それなのに何故か聖香や静流が寝巻き姿で廊下でばったりということが何度かあった。


 それの何が問題なのか?俺が興奮するからだ。………いや、何か変態みたいな言い方になってしまった。訂正する。俺が困惑するからだ。だって同級生の女の子の寝巻き姿だぞ?そんな姿にばったり出くわしたらうれしいけど恥ずかしいしでどうしていいかわからなくなるだろ?


 例えばだけど制服姿は可愛いけど学院中の生徒が制服だからそれが当たり前で余所余所しいよな?そんな時に学院外でばったり出くわして初めて気になるあの娘の私服姿を見たらどう思う?いつもの制服と違う私服姿のあの娘だ。な?ドキドキするし違う魅力を発見するだろう?


 普段見ることのない私服というだけでもそれだ。それが無防備な寝巻き姿だったらどうだ?想像するだけでも変な気分になってくると思わないか?それが生で目の前に居たらそりゃぁもう色々と大変なことになるってわかるよな?別に俺が女の子に免疫がなくて苦手だからじゃないよな?


 その次に廊下の角でばったり事件。朝部屋から出て歩いていると何故か廊下の角で彼女達とぶつかる時がある。聖香はなぜかパンを咥えていて盛大にスカートが捲れるほど転び『もう!どこ見てるのよ!ちゃんと前見て歩きなさいよね!』と罵られた。その上『きゃー!ちょっと!スカートの中覗いてるわね!この変態!』とかも罵られた。あれは一体なんだったのだろうか………。


 静流とも廊下の角でぶつかったことがある。静流の場合は俺を罵倒することはなかったけど『いたたっ…。足を挫いてしまいました。』とか言いながらウルウルと見上げてきた。俺が誰か呼ぼうと言うと『急いでいるのでどなたか親切な方が今すぐ部屋まで担いでくださったら…。』とかウルウルの瞳のまま訴えかけてきていたっけ…。結局俺は静流をおぶって部屋まで連れて行くことになった。で、部屋に行っても特に何もしていなかった…。急いで部屋に帰る理由があったんじゃなかったのか?


 その他にも何故か俺の部屋にある脱衣所にいた『脱衣所できゃー!』事件やら『夜おトイレに行ったら寝る場所を間違えてしまいました。』事件で俺のベッドに潜り込んでくるなど色々な事件があった。


 これで何が問題なのかわかっていただけただろう…。そうだ。何故か知らないがあの二人はこの環境なら普通あり得ないような事件を起こしてくれる。


 それはまるで同じ家に住んでいる年頃の男女が巻き起こすハプニングのようなものばかりだった。そしてそんなハプニングが起こるたびにキラーレディが飛んできて俺が怒られる………。


 理不尽だ…。俺は何も悪いことはしていない。それなのになぜ俺が怒られるんだろう………。とにかくこの同居状態のようなハプニング満載の基地生活で果たして俺は無事に生き残れるのだろうか………。


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