第14話「秘密基地探索」


 昨日は麗さんにおいしい晩御飯をご馳走になった。あ~んされながら食べたのはちょっと恥ずかしかったけど仕事の後で疲れてるだろうに俺のために手料理を作ってくれた麗さんに何かお礼をした方がいいのかもしれないな。


 どんなお礼がいいか考えてる間に学院に着いていた。


聖香「おはよう九条君。」


静流「九条君おはようございます。」


改太「二人ともおはよう。」


聖香「きょ、今日は私のお弁当の日だからね。」


改太「うっ、うん…。覚えてるよ。」


 本当はそんなに毎日お弁当を貰うなんて良くないことだと思うけど聖香と静流の二人に迫られたら断りきれない。俺って優柔不断だなぁ………。


 授業を聞き流してる間にあっという間に昼休みになった。もちろんいつも通り二人に拉致されて例のベンチへと向かう。


聖香「さっ、九条君。ここに座って。」


 いつもは聖香と静流が俺の向かいに座っているのに今日は俺が聖香の隣に座らさせられた。


聖香「はい。あ~ん。」


改太「…あ~ん。」


聖香「おいしい?」


改太「…うん。おいしいよ………。」


聖香「次はどれにする?」


改太「それじゃ………。」


 俺は今日もあ~んされている。最初は抵抗してたけどもう無理だ。この二人に迫られて断ることは出来なかった。


 ああっ!っていうか何で聖香はそのお箸そのままで自分も食べるんだよ!これって間接キスなんじゃないの?俺と聖香が同じお箸で交互に食べるとかやばい!それに気付いてからはもう俺の頭は聖香との間接キスのことでいっぱいになった。


 聖香の唇に視線が釘付けになって離せない。少し薄いけどプルンと柔らかそうな聖香の唇が濡れて光ってる。あの唇に触れたら一体どんな感触がするんだろう…。


静流「九条君…。少し露骨すぎますよ。」


改太「えっ?!なっ、なっ、なっ、何のことかな?」


 聖香の唇を注視していた俺に静流はボソッと俺に突っ込みを入れた。俺はまともに頭が働かず言い訳も思いつかずにただはぐらかすことしか出来なかったのだった。



  =======



 なんとかうれし恥ずかし昼ご飯も乗り切った俺だったがのぼせたようになった頭はまるで授業を受け付けなかった。気付いたらいつの間にかもう放課後になっていたのだった。


聖香「それじゃ行きましょう。」


静流「今日はこのまま向かいます。」


改太「うん。わかった。それじゃ行こう。」


 どこへ何をしにとは三人とも言わない。学院で皆がいる前でパトロールに行くなんて言えない。二人は帰って着替えてくる時もあるけど学院の制服を着たままパトロールに出かける時もある。


 行き先によって制服や私服を使い分けているようで最初は何かデートみたいなつもりかなと思ったこともあったけど二人もちゃんと考えていたようだ。


静流「それでは駅に向かいましょう。」


 どうやら今日は電車に乗って移動するみたいだ。どこへ向かうつもりかは知らないけど俺はいつも二人に任せていていちいち聞かないことにしてる。黒幕は二人を誘導してるみたいだから俺が余計なことを言うより二人を操ってる黒幕の連れて行きたいところへ誘導された方が手っ取り早いと思ってたからだ。


 だけど最近まるで敵と遭遇しない。俺はもしかしてこの方法はあまりよくないのかなと思い始めていた。


聖香「良い景色だね。」


静流「本当に…。心が落ち着きますね。」


改太「………うん。」


 俺達はまだ電車に揺られてる。その窓から見える景色は長閑な田舎町だった。学院のある町はかなりの都会だ。そこから長い時間電車に揺られてやってきたのは俺達の町から遠く離れた山間にある寂れた田舎町だった。


 ようやく電車から降りた俺達の目の前に広がるのは緑一色だ。ほとんど山で少しだけあまり整備されていない道路と畑がある。民家なんて数えるほどしか見えず農作業用の倉庫のようなものがぽつぽつあるくらいだ。


 何でこんなところまで?そもそもこんな何もない場所に何故?俺の疑問は尽きないけど二人は何か確信でもあるかのように当たり前とでも言わんばかりに迷うことなく目的地らしき所へ向かって歩き出す。


 町というより村と呼ぶほうが相応しいのではないかと思えるような規模の田舎を歩いている。二人は自然を堪能しているようで植物や景色について語り合いながらどこかへ向かっている。来たこともないだろう場所で地図も見ずに迷うことなく進む二人はどう考えてもおかしい。


 今回は当たりかもしれない。黒幕が二人をどこかへと誘導している気がする。


聖香「見てあれ!」


静流「怪しいですね。」


改太「………うん。」


 何というか色々とおかしい。まず田舎町から少し山を登った所にコンクリート製でドーム状の建物がある。ここに上ってくるためのまともな道もないのにこんな場所にこんな大規模な建物があるなんて明らかに不自然だ。そしてその建物の周りには全身タイツの覆面達がウロウロしている。それ以外にも何か荷物を運び込んでいる全身タイツ達もいる。


 彼らは所謂下っ端のやられ役達だろう。コンクエスタムにはこういう役割の者達はいない。それはもうここに何かあって悪いことを企んでますよと言わんばかりの風景だった。


 そして聖香と静流。最初からこの場所を知っていなければ説明がつかないほど一直線に何の疑問も持たずにここに向かってきていた。それなのに二人はあたかも偶然見つけたかのような会話を続けている。


 どんなミラクルがあったら学院から一直線にこんな縁もゆかりもない田舎まで電車でわざわざやってきて何となく入った山の上に敵の施設らしきものを見つけるというのだろうか。


 二人は何の疑問も持たずにいつも通りパトロールをしている最中に偶然怪しい施設を発見したと思い込んでいるようだけど第三者の俺からすればおかしいことだらけで笑ってしまいそうなくらいだ。


聖香「とにかく乗り込みましょう。」


静流「そうね!」


改太「ちょちょちょっ!ちょっと待ってよ!落ち着こう。まずは落ち着いて。」


 二人は何の考えもなしにいきなり乗り込もうとしだした。いくら何でもそれはないだろう。何の施設なのかも敵がどれだけいるかもわからない。いくら黒幕が二人を操っているからわざわざ操っている者を特攻させて殺すようなことはしないとは思ってもそれはさすがに無謀すぎる。


 それに折角久しぶりに見つけた敵だ。出来るだけ情報を集めたい。いきなり正面から乗り込んで行って倒すだけならいつもと変わらない。今回はいつもと違って敵の施設のようなものまで出てきた。ここは慎重に調査して情報を集めたほうがいいだろう。


聖香「何よ?もたもたしてたらネオコンクエスタムの犠牲者が増えるかもしれないのよ?」


静流「そうですよ。早く潰してしまわないと新たな犠牲者が出てしまうかもしれません!」


 やっぱり操られている間の二人はおかしい。普段の二人ならこんなことは言わないだろう。もっと慎重に調べて敵の尻尾を掴もうとくらいするはずだ。


改太「二人共ちょっと落ち着いて。まず敵がどれだけいるかもわからないのにいきなり正面から乗り込むのは危険だ。それにここで何をしているのか敵の目的も調べたほうがいい。それがわかれば今後の対策も出来るかもしれない。今焦って正面から乗り込むより、ここは慎重になって情報を集めるほうが後々のためになるよ。」


聖香「なるほど………。それもそうかもしれないわね………。」


静流「やっぱり九条君に一緒に行動してもらって正解でした。私達では思いつかないようなことを言ってくれるのはさすが九条君ですね。」


 いやいやいや………。誰でも思いつくから…。今の二人がおかしいだけだから…。こんなことでよいしょされたら俺の方が恐縮しちゃうよ。


 とにかくまずは情報収集だ。あまり本気でスキャンすると敵にも気付かれるかもしれないから見つからない程度の軽いスキャンを敵の施設にかけてみる。


 このドーム状の建物は本物だな。いつもの立体映像と違って本当にここにある本物の建物だ。素材は全て地球で手に入るもので敵の独自の素材などは見つからない。


 そしてこの施設は地上に出ている部分は重要じゃない。メインは地下にある施設だ。地下三階まであって各階が地下鉄の駅くらいの広さはある。かなり広大な地下施設だ。


 地上部分の外をうろうろしてる敵の下っ端はいつもの立体映像だ。敵の施設まで透過できるほどのスキャンをすると敵にばれる可能性があるから施設内まではわからない。


 まさか敵がここのところ現れなかったのはこの建物を用意するためだったとか?実際のところはわからないけどそう考えるとなるほどと思うところもある。ただ地球の建築技術ではこんな短期間でこれだけの物は作れないだろう。素材は地球のものでも建築技術は敵の魔法科学が利用されてる可能性は高いかもしれない。


 ざっと表面から調べた範囲でわかったのはこの程度のことだけだった。ここからどうする?敵に俺の能力がばれる危険を覚悟でもっと本格的にスキャンするか?それとも別の方法を考えるか?あるいはここの調査は後回しにして二人がやろうとしたようにまずは敵の始末から先に考えるか?


聖香「それじゃこっそり忍び込みましょう。」


静流「そうね。それがいいと思います。」


改太「………え?忍び込むってどうやって?」


 地上には下っ端達がウロウロ巡回してる。地面を掘って地下に侵入しようと思っても掘ってる間に俺達のことがばれるだろうし仮にうまく掘れても施設に侵入するために穴と地下施設を繋いだ時点ですぐにばれるだろう。こっそり忍び込めるような状況じゃない。


聖香「それはね………。こうするのよ!」


 聖香は落ちていた太めの木の枝を拾って遠くへと放り投げた。遠くでガサッと音を立てて落ちた枝の方に向かって下っ端達が一斉に移動し始めた。


聖香「ほら!今のうちよ!」


静流「行きましょう九条君。」


 えええぇぇぇ………。こんな方法でいいのか?大体これで仮にうまく侵入出来たとしてこれって帰りのことは考えてないよな………。


聖香「早く!」


改太「ごめん。今行く。」


 もうなるようになれとしか言いようがない。下っ端達が聖香の投げた枝の方を調べている間に俺達はドーム状の建物へと侵入したのだった。



  =======



 建物に侵入すると荷物を搬入していた下っ端達がまだいた。二人一組になって大きな木箱を運んでいる。先頭で何も持っていない下っ端が壁に掛けてある絵を捲るとその下にレバーがあった。そのレバーを操作するとゴゴゴッという地響きと共に床のコンクリートが横に動き下へと降りる階段が現れた。


 俺達はその様子を少し離れたところに詰んである木箱の陰から覗いていた。


聖香「あんなところにスイッチが………。」


静流「こっそり侵入して正解でしたね。私達だけではあれに気付かなかったでしょう。」


改太「………そうかもね。」


 いやいやいや!ないから!こんなコンクリ打ちっぱなしの何もない建物の中に不自然に絵画が一枚だけ掛けてあるとか明らかにおかしいから!


 そんなことを脳内で考えていると荷物を持った下っ端達が階段を下りていった。俺達は物陰から出て階段に近づく。


聖香「私達も下りるわよ。」


 聖香が絵の裏にあるレバーを操作しようとする。俺は慌てて下をスキャンした。………うん。近くに敵はいないな。今下りても大丈夫だろう。


 本当に今の操られている二人にはヒヤヒヤさせられる。何も考えずにいきなり下への階段を出して下に敵がいたらどうするつもりだったんだろう…。変身もしてない二人が出会いがしらに会敵したらあっさりやられると思う。


 操られている二人は都合の良いように先に進めたり敵の監視を潜り抜けて肝心の敵と戦えたりするように操作されているのかもしれないけど近くにいるとドキドキハラハラして心臓に悪い。


 俺達は聖香がレバーを操作して出てきた下へ続く階段を下りたのだった。



  =======



 暫く地下一階をウロウロしてたけど何も見つからない。この階は小さい個室がずらっと並ぶように区切られている。もしかしたらあの下っ端達の居住スペースという設定なのかもしれない。彼らは立体映像だから居住スペースは必要ないんだけどね………。


 聖香と静流は罠とか警報とかまるで気にせず周囲の部屋をいくつか見てわまっていた。どの部屋もベッドと机があるだけの小さな個室でめぼしいものは何も見当たらない。そんな個室がずらっと並ぶ通路を移動していると階段を下りたところからかなり離れたところに地下二階へと下りる階段があった。


聖香「この階はこれ以上調べても何もなさそうだわ。」


静流「そうですね。この階段を下りてみましょう。」


 二人は一切躊躇せずにどんどん進んでいく。地下二階は地下一階と様子がまるで違っていた。地下一階は地上施設と同じようなコンクリ打ちっぱなしだったのに対して地下二階は金属で覆われているような感じで所謂SFに出てくる宇宙船とかそういう感じの印象を受ける。


 でも俺のセンサーは欺けない。これはただ金属の板を貼り付けたり無意味に明滅を繰り返す電光パネルやLEDライトのようなものを取り付けてあるだけだ。簡単に言えば雰囲気作りだな。どこから電気を引っ張ってきているのかは知らないけどこれも地球にある素材と技術を使って作られているものでこれを調べても何の情報も得られないだろう。


 この階にある部屋はそれなりの広さがある部屋が並んでいてまるで何かの映画に出てきそうな培養カプセルのような物やコードがやたらと繋がった何かよくわからない操作パネルのようなものが置いてあったりする。


 SFっぽい演出がされているけどさっきも言った通りこれらは見かけがまるで映画のセットのようになっているだけで実際には何の機能もなくただ点滅していたり水が流れていたりするだけで無意味なものだ。


 それにそもそもこれだけの規模の施設でさっきも下っ端達が荷物を運び入れていたはずなのにここまで誰もいないなんて不自然すぎる。個室は仕事中なので今は誰も休んでいないと言えば一応の筋は通るけどこの研究室フロアっぽい地下二階の部屋を見て周っても誰もいないというのは流石に不自然極まりない。


 だけどやっぱりあの二人はその不自然さに気付かない。慎重なのか無用心なのかわからない姿勢でこそこそと移動しながら堂々と扉を開けては中を調べて周っている。


聖香「この階にも何もなさそうね。」


静流「ええ。残るはあの階段だけよ。」


 地下二階を調べながら歩き回っていた俺達の目の前には下りの階段がある。外からスキャンした時にこの施設は地下三階までだとわかっているからこの下で終わりのはずだ。もうここまで来たら行くしかないから俺ももうとやかく言うことはない。


改太「さぁ行こう。」


聖香「うん。」


静流「ええ。それでは下りましょう。」


 三人で最後の階段を下りていったのだった。



  =======



 地下三階はまた趣の違う様子だった。まるで剥き出しの洞窟のような雰囲気だ。そうだ。それこそ悪の秘密結社とかが秘密基地に使っていそうなゴツゴツした岩が剥き出しの洞窟そのものだった。


聖香「これはっ!ちょっとこっちに来て!」


 聖香が入って行った部屋から呼びかけてくる。俺と静流はその後に続いてその部屋へと入ってみた。


静流「なんてこと!」


改太「うわぁ………。」


 そこにあったのは地下二階にあったのとは違うまるで生き物のような質感の培養カプセルのようなものだった。その中には人型の怪物達が浮かんでいる。培養カプセルはまるで生きているようにドクドクと脈打ち中にいる怪物達からボコボコと気泡が上がっていた。


聖香「ここがネオコンクエスタムの怪人達を作る施設だったのね。」


静流「ここを破壊できればこれ以上新たなネオコンクエスタムの怪人達を作れなくなるでしょうか。」


改太「………そうかもね。でもそれはまだ後にしよう。先に奥も調べたほうがいいと思うよ。」


 二人の言うネオコンクエスタムの怪人達はただの触れる立体映像だ。ここで生み出されてるわけじゃない。これを破壊してもプログラムを作ればいくらでも立体映像に出来るから意味はない。


聖香「そうね。」


静流「それでは行きましょう。」


 そもそもここも上の階と同じくただ見せかけだけそれっぽく作っているだけでこのカプセルも培養能力はないし入っている怪物達もただの着ぐるみだ。敵が何故こんな施設を作ってまで手の込んだことをしているのかよくわからない。


 この培養部屋を出て俺達はさらに奥へと進んだ。そこには大きな鉄の扉があった。聖香がそっと扉を開いて中の様子を窺う。


聖香「二人とも見て。」


静流「………ここがネオコンクエスタムの本拠地のようですね。」


改太「そうなのかな………。」


 何故二人がここが敵の本拠地と判断したのかは俺にはわからない。ただこの扉の部屋は広間のようになっていて一番奥にはとぐろを巻いた蛇が蛙を飲み込もうとしているレリーフがかかっていた。


 もしかしてあれがネオコンクエスタムを象徴するシンボルマークなのか?何か情けない図柄だ。


???『よく来たな。コケティッシュシスターズ。』


聖香・静流「「―ッ!」」


 一番奥のレリーフの蛇の眼が光ったかと思うと俺達に語りかけてきた。


???『隠れているのはわかっているぞ。そしてここがお前達の墓場だ。まもなくこの基地はお前達もろとも自爆する。はっはっはっは~。』


 それだけ言うと蛇の眼の光は消えて何もしゃべらなくなった。


聖香「くっ!待ちなさい首領!………これは罠だったのね。」


静流「とにかく脱出しましょう。変身よ。」


聖香「コケティッシュパワー!」


静流「フォームチェンジ!」


 二人が変身する。するとそれを待っていたかのようにぞろぞろと下っ端達が通路に現れた。


ブルー「強行突破するわ!」


ピンク「九条君は私が守ります。しっかりついてきてください!」


改太「わかった。」


 二人は下っ端ーズをなぎ倒しながら階段に向かって走り出す。俺も後ろについていく。階段の近くまで来るとさっきの培養カプセルの中に浮かんでいた着ぐるみ達が立っていた。


ブルー「こんなに怪人が………。でも突破するしかない!」


ピンク「あれを使いましょう。」


 前に立ってるのは本当にただの着ぐるみで立たせてあるだけだ。動きもしない。それなのに二人はその着ぐるみに向けて必殺技を放つ。


ブルー「マジカルッ!」


ピンク「コケティッシュッ!」


ブルー・ピンク「「ダイナマイトッ!!!」」


 もちろんただ立たせてあるだけの着ぐるみは二人の必殺技を受けて吹っ飛ぶ。ついでに威力が高すぎて階段も吹っ飛ぶ。何してんだこの二人は………。


ブルー「くっ!階段が!」


ピンク「何て巧妙な罠なの!」


 いやいやいや………。自分達でやったんですやん…。自分達で嵌ったんですやん…。立たせてるだけの着ぐるみなんてスルーして階段駆け上がればよかったのに………。


ピンク「九条君掴まって!飛びます!」


改太「え?うおっ!」


 またしても俺は女の子に抱きかかえられた…。恥ずかしい。俺を抱えたままピンクは崩れた階段を飛び越えて上の階へとジャンプした。後ろからブルーもついてくる。


ブルー「ピンクずるい!」


ピンク「ブルーは前に抱っこしたじゃないですか。これでおあいこです。」


改太「自分で走れるから降ろして欲しいな………。」


ピンク「だめです。私が抱えて走った方が速いのでこのまま脱出します。」


 有無を言わせずピンクは俺を抱えたまま走り続けた。地下二階を何事もなく通り抜けたと思ったら地下一階には通路上にびっしりと下っ端ーズがいた。


ブルー「多すぎるわ…。」


ピンク「ブルー、あれを!」


ブルー「わかったわ。コケティッシュ!」


ピンク「ビッグ!」


ブルー・ピンク「「千枚通し!!!」」


 二人が新しい必殺技を使う。っていうかこえぇよ!何この必殺技!?巨大な千枚通しのような針のようなものが飛び出し通路上にいる下っ端ーズを貫いていく。通路のサイズの半分くらいありそうな針が通った部分は全て貫通されている。


 何を言っているかと言うとつまり体の一部や大半を貫かれた下っ端ーズがずらっといっぱい通路にいるわけだ。良い子の皆には見せられないスプラッターだ………。


 だけど下っ端ーズからは血や内臓が吹き出ない。光の粒子になって霧散していった。


ブルー「急ぎましょう!」


ピンク「もう時間がないわ!」


 通路上にいた下っ端ーズを消した二人は何の障害もなく地上へと続く階段に辿り着いた。間一髪地上へと上がってドーム状の施設から出たところで施設は大爆発を起こした。


 おいおい………。近隣の住民達に迷惑かけるなよ………。普通に考えたらこんなの大事件になって全国ニュースで放送されるぞ…。たぶん魔法科学で誤魔化されて誰にも知られずに処理されるんだろうとは思うけど………。


ブルー「なんとか間に合ったわね。」


ピンク「あっ!」


改太「うわっ!」


 爆発に巻き込まれずに何とか外へと脱出して気が緩んでいたピンクの前にニゲル中将が現れる。ピンクは不意を突かれて俺はニゲル中将に捕まった。


ニゲル中将「くっくっくっ!貴様らコケティッシュシスターズの参謀はいただいた。」


ブルー「あぁ!待ちなさいニゲル中将!」


ピンク「九条君…。九条く~ん!」


 ニゲル中将は俺を抱えたまま飛び上がった。このまま俺はネオコンクエスタムの基地へと連れ去られてしまうのか?!どうなるの俺?!


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