番外編1話「ある夏の日の一幕」
これは本編とは時間も場所も関係ないいつかあったかもしれないある夏の日のお話。
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俺は今日も秘密基地に向かう。専用エレベーターを降りると麗さんがいつものように待っていた。
麗「おかえりなさいませ。改太様。」
改太「ただいま。今日も暑いねぇ。」
基地の中は快適な温度に調整されているけど外を歩いて帰って来た俺はうっすら汗を掻いていた。じりじりと太陽がアスファルトを焼く今は夏真っ盛りだった。
俺達の学院は夏休みが短い。始まりも遅く終わりも早いんだ。特に受験生である俺達三年は夏休みもほとんど学院に行っている。学院自体は空調が整ってるから快適だけど外に出るとやっぱり暑い。
俺は早く着替えたくて少し足早に自分のオフィスへと向かったのだった。
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着替えた俺はまず広間へと向かう。そこにはコンクエスタムの怪人達がいつものように並んでいた。
キラーレディ「デスフラッシュ大佐。明日はお休みですよね?明日は朝からコンクエスタムの皆様で海に出かけられてはいかがでしょうか?」
キラーレディからそんな提案があった。明日は学院は休みだ。いつもと違う場所で慈善活動を行うのもいいだろう。それにちょっとくらいなら皆に息抜きも必要だろう。
デスフラッシュ「ああ。それじゃ明日は皆で海に行こうか?」
スクイッドエスタム「そうですね。海難事故等もあるでしょうし我々が行けば出来ることもあるでしょう。」
ウツボカズラン「スクイッドさんは真面目っすね。海といえばやっぱり水着ギャルっしょ!」
デスフラッシュ「ウツボカズラン君…。あまり羽目を外しすぎないようにね。怪人がギャルをナンパしてたら事案になっちゃうから………。」
ウツボカズラン「わかってるっすよ。慈善活動しながら眺めて楽しむだけっす。」
デスフラッシュ「眺めるのもほどほどにな………。」
こうして俺達は海へと出かけることになったのだった。
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ウツボカズラン「海っすよ~!ひゃっほーーーぅ!」
コンクエスタムの専用車両に乗り込んだ俺達は近くで有名な海水浴場へとやってきていた。コンクエスタム専用車両とは装甲兵員輸送車のような車だ。もちろん許可はとってあるので公道もちゃんと走れる。三台に分乗して十五人でやってきた。
兵員輸送車のくせに三台でたったそれだけしか運べないのかと思うだろうが色々と理由がある。怪人達はでかい奴もいるし幅を取る奴もいる。普通の人間なら十人乗れるとしても怪人が十人乗れると見込んではいけない。さらに色々と状況に合わせて持っていける装備を車内に置いているために乗車人数は少なくなっている。
そして今回はキラーレディがなぜか大量の荷物を持ってきていた。そのためにいつもより余計に乗車人数が減っていたのだ。
基地に残っている観測班も大勢いるし緊急事態があった時に対応できるように基地に残った怪人も大勢いるのでもっと乗れたのに十五人しか来なかったというのもある。
キラーレディ「はしゃいでいないで手伝ってください。」
ウツボカズラン「はいっす。………ってこの荷物何すか?」
キラーレディ「屋台です。」
ウツボカズラン「はい?」
キラーレディ「屋台です。今日は貴方達には屋台をしてもらいます。もちろん許可は取ってありますのでご心配には及びません。」
………キラーレディが積み込んでいた荷物は屋台とそこで出す商品だったらしい。こうして俺達はなぜか海で屋台をすることになったのだった。
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焼きそば、お好み焼き、フランクフルト、カキ氷、各種ジュース。色々なメニューがある。鉄板の熱気に俺達も焼かれながら何で海までやってきてこんなことをしているんだろうか………?
デスフラッシュ「なぁ………。何で俺達がこんなことしてるんだ?」
キラーレディ「資金不足だからです。」
デスフラッシュ「いやいやいや!絶対嘘でしょ!」
こう見えてもコンクエスタムは潤沢な資金がある。慈善事業だけじゃなくてちゃんと仕事もしてる。九条ホールディングスからの支援なんてもらってないがコンクエスタムは下手な会社よりよっぽど売上も利益も高い超優良企業だ。
キラーレディ「半分は嘘ですが半分は本当です。コンクエスタム自体の資金は問題ありません。ですが慈善事業費は不足気味です。海のパトロールをする間に交代でここで資金を稼いでください。」
なるほど………。確かにコンクエスタムの事業はうまくいっているけど慈善事業の方はコンクエスタムの利益からの寄付と各個人の寄付で成り立っている。あくまで予算や事業は別々のものだ。慈善事業は収入なんてほとんどないから赤字なのも頷ける。
ウツボカズラン「店やってるほうがギャル達と触れ合えるから俺はこっちの方がうれしいっすよ。」
デスフラッシュ「あっそ………。じゃあウツボカズラン君はずっと店番してろ。」
ウツボカズラン「ええ!それはひどいっすよ。折角の海なんだから俺も遊びたいっす。」
デスフラッシュ「お前目的忘れてないか?ただの遊びじゃないんだけど?」
ウツボカズラン「ヒエェ…。そんなに怒らないでくださいっすよ。ちゃんとわかってますって。」
デスフラッシュ「まぁいい。それじゃ屋台組はしっかり頼むぞ。パトロール組はパトロールに出かけよう。」
こうして俺達は各々別れて行動を開始したのだった。ちなみにウツボカズラン君のような植物型怪人でも海水に触れても枯れたりはしない。あくまでモチーフなだけで猫の怪人だから濡れるのを嫌うとか植物だから枯れるとかそんなことはない。
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キラーレディの発案で俺達は二人一組になって行動している。俺のペアは………。
キラーレディ「デスフラッシュ大佐。今度は向こうへ行ってみましょう。」
キラーレディとペアだ。キラーレディは花柄のタンキニを着ている。俺はトランクス型の水着だ。顔には二人共仮面を付けている。………かなり怪しいカップルに見えるな。
デスフラッシュ「向こうは立ち入り禁止の方だろう?向こうへ行ってもほとんど人がいないと思うけど………。」
キラーレディはなぜか人気のない方へない方へと行こうとする。
デスフラッシュ「それにそろそろ屋台組と交代の時間だろう?戻ろう。」
キラーレディ「うっ………。はい………。」
キラーレディはしょんぼりしながら俺に付いて戻ったのだった。
デスフラッシュ「なんだこれ!」
屋台まで戻ってきた俺達は驚愕に目を見張る。………屋台に超行列が出来ている!なんでこんなに売れてるんだ?
ヒトデンダー「デスフラッシュ大佐!早く手伝ってください!」
ヒトデンダー君が俺達を見つけてすぐに声をかけてきた。ヒトデンダー君は名前の通りヒトデの怪人だ。
デスフラッシュ「なんでこんな行列になってるんだ?」
ウツボカズラン「俺達の姿が珍しいみたいっすね。それとスクイッドさんがカキ氷で細工を作って渡すんでそれも話題になってるみたいっす。」
そう言われてスクイッドエスタムの方を見てみる。スクイッドエスタムはカキ氷で雪だるまや雪ウサギの形にして売っていた。それが大人気になっているようだった。
デスフラッシュ「はぁ…。仕方ない。俺は焼く方に周るからキラーレディは注文取りを頼む。」
キラーレディ「畏まりました。」
こうして俺達も屋台組に混ざって客を捌き始めたのだった。
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暫く客を捌いていると相変わらず人気で混んではいるがなんとかスムーズに流れるようになってきた。そんな時に限って余計な問題が起きる。
チャラ男A「お姉さん綺麗だねぇ。こんな仕事放り出して俺達と遊ぼうぜぇ。」
チャラ男B「ひひひっ。何なら俺達が気持ちよ~くしてやるぜ?」
チャラ男C「ひゃははっ!」
キラーレディ「やめてください。」
キラーレディがナンパされている………。キラーレディはチラチラと俺の方を見ている気がするな…。そんなチャラ男くらいなんとでも出来るだろ………。観測班なのにキラーレディの能力は米軍の全戦力を三十分以内に………それはいいか。
とにかく能力的にはスクイッドエスタムと遜色ない。さらにキラーレディは大勢を一度に相手にする能力に優れている。一対一ならスクイッドエスタムの方が能力が高いけど多対一ならキラーレディの方が殲滅力では高いんだ。とは言え自力で何とかする様子はない。このままじゃ他のお客さんの迷惑にもなるから手助けするか。
デスフラッシュ「お客さん。他のお客さんの迷惑になりますしその子も嫌がってるんでお引取り願えますか?」
俺が声を掛けるとチャラ男達は青筋を立てて凄んできた。
チャラ男A「あ゛あ゛?誰にもの言ってんだ?」
チャラ男B「俺達お客様だぞ?お客様に向かってそんな口聞いていいと思ってんのか?責任者出せや!てめぇクビにしてやるよ!」
チャラ男C「女の前だからって粋がってんじゃねぇぞこら!変な仮面つけやがってぶっ殺して海に沈めてやろうか?」
チャラ男達が俺の顔面を殴る。衝撃もないし痛くもないけどとりあえず派手に吹っ飛んだ振りをしておく。
女性客「きゃ~!!」
デスフラッシュ「皆さんご覧いただけましたね?迷惑がっているうちの店員にしつこく言い寄りそれを止めに入った店員(おれ)を殴り飛ばして暴れだしたのはこいつらのほうですよね?いいですね?」
後のことを考えて俺は周囲に正当性をアピールしておく。こいつらが暴れだしたからやむを得ず俺が鎮圧する。それを周囲のお客さんにきちんと記憶しておいてもらう。
チャラ男A「あ?何言ってんだこいつ?」
チャラ男B「頭おかしくなったのか?」
チャラ男C「………。」
チャラ男Cが無言でドサリと倒れる。
チャラ男A「え?どうした?」
デスフラッシュ「ああ。殴られた拍子についうっかり反撃しちゃったわ。」
チャラ男B「はぁ?」
デスフラッシュ「それじゃお仕置きといこうか?」
………
……
…
チャラ男達は気を失って縄で縛り上げられている。もちろん大怪我はさせてないけどそれなりに怖い思いはしてもらった。
キラーレディ「怖かったですー。助けていただいてありがとうございましたー(棒。」
何か棒読みっぽいセリフを言いながらキラーレディが俺に抱きつこうとしてくる。さっとかわしておく。
キラーレディ「………どうして避けるのですか?」
デスフラッシュ「なんとなく………。」
二人で向かい合いながらじりじりと間合いを計る。キラーレディは今にも俺に飛び掛ってきそうだ。俺はそれに備えていつでも反応できるように身構える。
デスフラッシュ・キラーレディ「「………。」」
まさに一触即発の緊迫した空気の中で二人で無言で向かい合う。その時屋台の方からまた騒ぎが起こったようだった。俺の意識は一瞬そちらに奪われる。
キラーレディ「隙ありっ!」
デスフラッシュ「しまったっ!」
俺はキラーレディに抱きつかれてしまった。
キラーレディ「助けていただいてありがとうございました。」
そう言いながら俺の胸に顔を埋めるキラーレディ。薄着で体が密着しているからキラーレディの慎ましい膨らみとはいえはっきり感触が伝わってきてしまう。
キラーレディ「………。」
こえぇ!俺がキラーレディのひんにゅ…。慎ましい胸について考えているといつもこの人は怖い顔で睨んでくる。本当に心が読めてるんじゃないかと心配になってくる。………今度開発班にそんな道具を開発したのかどうか問い質す必要があるかもしれないな。
デスフラッシュ「そうだ。そんな場合じゃなかった。向こうでも何かあったみたいだな。」
俺は騒ぎのあった屋台の方へ向かってみた。キラーレディはまだ俺にくっついたままだ。
スキンヘッド「おうこらっ!誰の許可を得てこんなとこで商売しとんのじゃ?」
体に落書きしてるお茶目なおじさん「ここはわしらのシマじゃ。わしらに挨拶もなしに店出すっちゅうんはどういうことか説明してもらおうか?」
スキンヘッドのおっさんや体に落書きしているお茶目なおっさんがスクイッドエスタムに絡んでいた。完全にその筋の方達だ。
スクイッドエスタム「営業許可はもらっています。貴方方にとやかく言われる筋合いはありません。」
スクイッドエスタムはぴしゃりと言い放つ。
スキンヘッド「おうこらっ!大人の常識っつうもんがあるやろ!」
お茶目なおじさん「ショバ代さえ払ろてくれたらこっちかて何も言わへんのやで?はよ出すもん出さんかい!」
スクイッドエスタム「恐喝と営業妨害の現行犯ですね。処分します。」
スクイッドエスタムの烏賊の足が伸びて二人に巻きつき宙吊りにした。
スキンヘッド「おうこらっ!なんじゃこれ!降ろさんかい!」
お茶目なおじさん「その着ぐるみ脱いで顔晒さんかい!そんな姿やからてこのまま逃げたら助かると思うなよ!わしらにこんなことしてどこまでも追いかけて地獄見したるから覚悟せえよ!」
スクイッドエスタム「じゃ、降ろしますね。」
スクイッドエスタムは吸盤を離す。二人は頭から真っ逆さまに砂浜に落ちて突き刺さった。
スキンヘッド「………。」
お茶目なおじさん「………。」
二人は完全に意識を失っていた。首の骨が折れなくてよかったな。俺がこの二人も縛り上げて放り出す。ようやく騒ぎの収まった屋台はまた活気を取り戻したのだった。
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普通あんな騒ぎがあったら客足が遠のきそうなものだけど俺達の店は大繁盛だった。そこにさらに問題が起こる。
静流「あのぅ。私もウサギのカキ氷をください…な……?」
聖香「私は雪だるまね~。それから焼きそばも………あれ?あぁ~!貴方達は!」
聖香と静流だ………。何故この二人がこんなところにいる?やばい………。絶対絡まれる………。
静流「ちょっと聖香!」
聖香「あっ!そっか…。私達今変身してないから知ってたらおかしいんだったね。」
静流が聖香を注意すると聖香も小声になって静流に答える。まぁ俺達のセンサーには丸聞こえだけどな。
デスフラッシュ「ナニカ?」
聖香「ああ~っ!いえ!何でもありません!」
聖香は慌てて答えて商品を受け取ると静流と二人でテーブルに移動して座っていた。
ヒトデンダー「デスフラッシュ大佐、ものっすごい挙動不審でしたよ。」
デスフラッシュ「え?そんなわけないだろ?………きっと気のせいだ。」
ヒトデンダー「………デスフラッシュ大佐がそう言い張るんならもういいですけどね。」
………。気持ちを切り替えた俺はテーブルに座った二人をこっそり見てみる。
聖香はオレンジのビキニを着ている。胸は小ぶりだけど引き締まった体をしていて所謂モデル体型みたいな感じだ。
静流はピンクのワンピースを着ている。………でかい。何がといえばそうあれだ。胸だ。静流は着痩せするタイプなのか普段の制服姿だとそこまで大きいと思ってなかったのにワンピースの水着だとくっきり巨乳が浮き出ている。
って違う!二人を見るってそういう意味じゃない!向こうも俺達のことを観察しているようだ。少しセンサーの感度を上げて二人の声だけ拾って盗み聞きしてみる。
聖香「何か…普通に店やってるみたいだね……。」
静流「そうですね。特に薬物などを混ぜているわけでもない普通の物を売っています。本当にただの屋台ですね。」
聖香「どう…する?」
静流「ここではお客さんも多くて周囲に被害が出てしまいます。もう少し様子を窺いましょう。」
聖香「そうね。それに敵が多すぎるよ。」
静流「確かにそうですね。」
ふむ…。二人は今のところ俺達に何かする気はないようだな。じゃあ俺達も知らん顔でスルーしておこう。何かあったら何かあった時のことだ。そうして暫くは何もないまま時間が過ぎていったのだった。
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そろそろ日も傾きかけて客足も減ってきた頃に騒ぎが起きた。
男A「大変だーっ!子供が沖に流されたぞー!」
その声を聞いて俺達は顔を見合わせる。
デスフラッシュ「ヒトデンダー君と俺が救助に向かう。他の者はこのままここで待機してくれ。」
ヒトデンダー「了解。」
ウツボカズラン「いってらっしゃいっす。」
聖香「行こう静流!」
静流「はいっ!」
俺達は流されたという子供の救助のために海へと向かったのだった。
ライフセーバー「駄目だ。潮の流れが悪い。今飛び込んだら二次遭難になりかねない。ボートが来るまで待ってるんだ!」
デスフラッシュ「ヒトデンダー君頼む。」
ヒトデンダー「はい。」
ヒトデンダー君が海に浮かぶ。俺がその上に乗るとボートのように進みだした。
デスフラッシュ「いたっ!あそこだ。もうちょい右。」
ヒトデンダー「了解。」
子供「うぷっ!たすっ、助けてっ!」
デスフラッシュ「待ってろ!今行く。」
俺は手を伸ばして子供を引き上げる。
子供「げほっ!げほっ!」
デスフラッシュ「大丈夫か?」
子供「うっ、うえぇ~ん!」
子供は泣き出してしまった。安心して気が緩んだのかな。
ブルー「待ちなさい!いたいけな子供をいじめるなんて許しません!」
いつもの声が聞こえて俺は空を見上げる。空の上に例の二人が浮いていた。………あっ!俺も別にヒトデンダー君の上に乗らなくても飛べばよかったな。
ブルー「正義の光がある限り!」
ピンク「悪の栄えたためしなし!」
ブルー「コケティッシュブルー!」
ピンク「コケティッシュピンク!」
二人「「コケティッシュシスターズが成敗します!」」
ブルー「覚悟しなさい!コンクエスタムの怪人達!」
ピンク「貴方達の悪事もこれまでです!」
コケティッシュシスターズの二人が現れる。子供も抱えた状態で海の上はまずいな。
デスフラッシュ「ヒトデンダー君。俺が子供を連れて浜辺に戻るから君は二人の相手をしておいてくれ。」
ヒトデンダー「えぇ………。」
今まで『了解。』とか『はい。』とか素直に答えていたヒトデンダー君もあの二人と戦うのは嫌らしい。色良い返事をくれない。けどそんなことは知ったことじゃない。俺はさっさと離脱することにした。
デスフラッシュ「じゃ!任せたから!しっかり掴まってろよ子供よ。とうっ!」
子供「うわぁ~!」
俺は子供を抱えて浜辺に向かって飛んだのだった。
ブルー「あっ!待ちなさい!その子供をどうする気?」
ピンク「待ってブルー。まずはあの怪人から何とかしないと。」
ブルー「くっ…。それじゃ早くやっつけるわよ!」
ピンク「ええ。やぁ~~!」
ブルー「たぁ~~!」
三人の戦いが始まった。俺はもうとっくに砂浜まで戻ってる。子供はライフセーバーの人と親に連れられてどこかへ行った。念のためにどこかで治療でも受けるのかもしれない。俺は海上に視線を移して三人の戦いを見守る。
ブルー「コケティッシュキック!」
ピンク「コケティッシュパンチ!」
ヒトデンダー「………。」
二人は必死にヒトデンダー君に攻撃している。ヒトデンダー君は避けるわけでも防御するわけでもなく全部の攻撃を受けていた。ヒトデっていうのはそもそもちょっと足を切られても再生するくらい再生能力が高い。あの二人じゃヒトデンダー君に有効打は与えられないだろうな。
ヒトデンダー君の方はゆっくりとした動作でまるで反撃しない。別に本当に動きが鈍いわけじゃない。普通に早く動けるし手裏剣のようにぐるぐる回転しながら飛び掛る攻撃をすれば核シェルターも貫通できる。だけどそんな攻撃をあの二人にしてしまったらスプラッター映画になっちゃうから当然できない。
二人が攻撃してヒトデンダー君がひたすら食らい続ける。毎度お馴染みの光景が繰り広げられていた。
ブルー「くっ!このままじゃ勝てないわ。ピンク!あれをやるわよ!」
ピンク「ええ。良いわブルー。」
決定打に欠ける二人は覚悟を決めて何かをするつもりのようだ。
ブルー「マジカルッ!」
ピンク「コケティッシュッ!」
ブルー・ピンク「「ダイナマイトッ!」」
ドーンッ!
と水柱が上がる………。いつもと同じ必殺技かよっ!他に何かないのか?水柱が収まると二人はまだ空に浮いていた。胸のブローチが点滅している。そろそろエネルギー切れっぽいな。
ヒトデンダー君はあの爆発に紛れて水中に潜っている。海底に下りて迂回しながら俺達の方へ戻ってくるつもりのようだ。
ブルー「次は貴方の番よ!デスフラッシュ大佐!」
ピンク「ブルー。深追いはだめよ。」
そうだよ…。もうエネルギー切れしそうなくせに俺にまで絡むなよ………。仕方がないので俺の方から逃げ出してやることにする。
デスフラッシュ「覚えていろ!コケティッシュシスターズ!この次こそは!」
こうして俺はこの場を後にしたのだった。
=======
俺が屋台に戻って暫くするとあの二人がまた来ていた。もちろん変身は解けている。ジロリと睨まれたけど絡んでくる様子はなかった。ヒトデンダーがここに来るとややこしい話になるので〝いつも君の隣に………つながる君〟で連絡してここへは戻らないように伝えてそのままパトロールに出てもらった。
こうして思わぬ夏の日の一幕は過ぎていったのだった。
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