第8話「先立つ物は………。」
今日も今日とて学院に登校する。最近は毎日校門で一悶着起こる…。ちょっと憂鬱だ…。
聖香「あっ!おはよう九条君。」
静流「おはようございます九条君。」
改太「あぁ…。おはよう。新道さん。祁答院さん。」
なぜか麗さんを放課後に呼び出したあの日からこの二人は校門で俺を待ち構えている。滅茶苦茶見られてるよ!登校中の全生徒の注目の的だよ!あぁ…、俺の平穏な学院生活を返してください………。
聖香「さっ、早く教室に行こう?」
静流「さぁさぁ、九条君。」
二人は俺の左右に並んで歩く。普通ならこんな美少女二人に挟まれて両手に花でうれしいところだけどこれじゃ〝いつからそこに………めだたーぬ〟の効果もほとんどない。これはあくまで影が薄くなるだけで存在を認知されない機能じゃない。打ち消す以上に目立てば普通に注目されてしまう。
この二人はファンクラブのようなものまである。そのメンバー達に俺は命を狙われてると思うほどに鋭い目付きで睨まれている。
聖香「あっ、あの、九条君。えっとぉ…、今日一緒に帰らない?」
静流「あっ!聖香!抜け駆け禁止ですよ!九条君。私とも一緒に帰りましょう?」
改太「あ~…、ごめん。今日は用事があるから…。」
聖香「いつもそう言うよね…。迷惑かな?」
ここ最近いつもこの流れだ。一緒に帰ろうと誘われて俺が用事があると断る。そして今日の聖香はちょっと泣きそうな顔でウルウルしてる………。卑怯だぞ!それはずるい!
改太「ああぁぁぁ!ちっ、違うよ?嫌とか迷惑とかじゃないよ?だけど今日は用事があるから…。」
じゃあ何の用事があるの?って聞かれたら困る。『君達と戦ってる秘密結社コンクエスタムの活動があるからだよ。』なんて答えられるわけがない。
静流「それでは九条君。いつなら大丈夫なのでしょうか?」
そう来たか…。向こうから誘ってきても毎回俺が無理だと断る。ならば俺の都合の良い日はいつかと聞いてくる。ここで『ずっと用事があります。』なんて答えたら『お前らとなんて一緒に帰りたくねぇんだよ!』っていう意味に聞こえるだろう。ここは慎重に答えなくてはならない。
………。
無理だ。二人が左右からじっと俺を見つめている。これで何かうまい言い訳を思いついて二人を傷つけずにやんわり断れる奴が居たら見てみたい。ウルウル目で見つめられたらクラッときてしまう。
改太「うぅ…、わかった。じゃあ来週。来週予定を空けるから…。」
聖香「来週の何曜日かしら?」
静流「そうですね。はっきりいつか明言してください。」
改太「あぁ~…。ふぅ…。わかった。それじゃ金曜日。金曜日の放課後空けておくから。」
聖香「金曜日ね。わかったわ。」
静流「九条君。約束忘れないでね?」
改太「うん………。」
こうして俺は来週の金曜日に二人と一緒に帰る約束をしてしまったのだった…。予定空けられるかな………。
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俺は今日の授業そっちのけで必死に来週の金曜の放課後を空けられるように予定を組みなおしていた。いつも授業なんて受けてないって言われたそうなんだけどね。そんなに予定を空けるのに苦労するほど忙しいのかと言われたら滅茶苦茶忙しい。
こう見えても俺はコンクエスタムの活動以外にも色々と用事がある。主に九条ホールディングス関連で………。勉強や習い事なら二人に事情を説明しやすかった。だけど理由であるコンクエスタムと九条ホールディングスについては誰にも説明出来ない。なんとか予定を前倒しして金曜日を空けられるように組みなおした。
やれば出来るんならもっと前に二人の誘いを受ければよかったじゃないかと思ったら大間違いだ。これでも無理やり空けたのであってもう一日どこか空けろと言われても一ヶ月後くらいまで空きそうにない。前後にもしわ寄せがいくのでスケジュールが大変になる。今回は特別に予定を空けただけでそう何度も出来そうに無い。
ともかく何とか一日確保したので変更したスケジュールを麗さんにメールしてほっと一息ついた。そこへまたあの二人がやってくる。今はお昼休みだ。当然そんな時間に近寄ってくる用件と言えば………。
聖香「九条君。一緒にご飯食べない?」
静流「一緒に食べましょう?」
二人は自分達のお弁当を片手に俺の机にやってくる。教室でこの二人と一緒にご飯なんて食べた日には俺はファンクラブの人達に刺されるかもしれない。
改太「あぁ…。うん。それはいいけど場所は変えよう…。」
どうせ断ってもこの二人は勝手に近くに座って食べる。どうやってもこの二人からは逃げられないのならせめて人目につかない場所に移動するしかない。
聖香「そうね。ここじゃ落ち着かないもんね。」
静流「それではいつもの所へ向かいましょう。」
二人はすぐに同意して移動し始めた。この学校にはあちこちにベンチ等が設置してある。基本的に人気のある場所は校舎や学食に近い場所の外にあるベンチだ。遠くて不便な所まで離れるほど人気がなく人が減っていく。そして俺達がいつも利用している場所は校舎から最も遠く普段は人が立ち入らない学校の隅に設置してあるベンチだ。
お昼休みにこんな場所まで来る者は俺達以外にはいない。いつものベンチに腰掛けた俺達は弁当を食べ始める。
聖香「そういえば来週の土曜日は休みだね。」
静流「そうですね。土曜日はお休みなので金曜日は多少遊んでも大丈夫ですね。」
二人はチラチラと俺の方を見ながら来週の土曜日の話をしている。これは金曜日に一緒に帰ることを忘れるなよっていう意味だな…。ついでに土曜日が休みだから帰りに寄り道して遊んで帰ろうっていう誘いなんだろうな…。
この学院は基本的に土曜日も授業がある。名目上は土曜日は休みで自習のための教室を開放しているということになってはいるが土曜日の自習教室も普通に先生が教壇に立って授業をしているし休む生徒もいない。午前中授業とかそんなこともない。夕方までフルで授業が入っている。
だけど毎週土曜日も授業があるとさすがに生徒も先生も疲れるので月に一度だけ土曜の自習教室が休みの日がある。それが来週の土曜日だった。
もちろん俺もそれを考慮に入れて来週の金曜日なら一緒に帰れると引き受けたわけだ。
改太「わかってるよ…。忘れてないし逃げる気もないから…。」
聖香「あら?何のことかしら?」
静流「さぁ?私達は別に何も圧力なんて加えていませんよね。」
そのセリフがすでに圧力だ…。そんな言葉が出るなんて自覚があるからでしょ…。こうして胃に穴が開きそうな昼食が進んでいったのだった。
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ようやく今日の授業が終わった。
聖香「さようなら九条君。」
静流「御機嫌よう…あっ、さようなら九条君。」
改太「さようなら新道さん、祁答院さん。それじゃまた明日ね。」
俺は二人から逃げるように学院を後にした。コンクエスタムの秘密基地へと到着した。そしてエレベーターを降りた俺の前に麗さんが立ちはだかる。
麗「おかえりなさいませ。改太様。」
改太「ただいま麗さ…ん……。」
明らかに麗さんの雰囲気がいつもと違う。………はて?何か怒らせるようなことでもしただろうか?
麗「改太様。来週の金曜日は一体どこで何をなさるご予定でしょうか?」
麗さんは作り物のような無表情で俺にそう問うてきた。
改太「………えっとぉ。」
俺の額から滝のような冷や汗が流れ出る。スケジュールの変更をメールしたから予定はうまく変えてくれてるはずだ。だけどその理由は何なのか。それを問い詰めにきている。そしてその目は理由をわかっているけど俺の口から直接言わせようとしていると、そう目が語っていた。ここで下手な嘘は却って逆効果だ。正直に答えるとしよう。
改太「新道さんと祁答院さんに何度も一緒に帰ろうって誘われててね。いつも断るのも悪いから一度だけ誘いを受けたんだよ。」
麗「………左様でございますか。」
ヒェッ!麗さんの顔が能面のように無表情に見える。だけど能面というのはその時々の場面や陰影、セリフなどでまるで笑っているように見えたり怒っているように見えたり同じ表情でありながら様々な表情を表しているようにも見える。
そして今の麗さんの表情は………。恐ろしい…。俺には恐ろしい表情に見える。静かな怒りを湛えている般若のように見えた………。
改太「とっ、通ってもいいかな?」
いつもならすぐに道を開けてくれる麗さんがどいてくれないからそう声をかける。
麗「これは申し訳ありません。」
麗さんは今気付いたと言わんばかりの態度でさっと端へと寄った。麗さんの前を通って俺のオフィスに向かう。絶対わかっててやってたよこの人!でも怖くて振りかえれない。今どんな表情で俺の後ろを付いてきているのかドキドキして冷や汗が止まらなかった………。
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なんとかデスフラッシュ大佐に変身した俺は怪人達の待つ広間へと移動した。
スクイッドエスタム「デスフラッシュ大佐。今日の活動なのですが…。」
俺が入室するとすぐにスクイッドエスタムが声をかけてきた。他にも色々と報告もあったようで俺の周りに怪人達が集まる。ざっと用件を済ませていく。
デスフラッシュ「よし。じゃあ今日はチワワエスタムが俺と一緒に囮班だ。他はいつも通りに頼む。」
スクイッドエスタム「はっ!」
チワワエスタム「クゥ~ン。」
チワワエスタムは可愛い鳴き声で返事をしたが中身は結構いい年をしたおっさんだ。
ちょっとだけコンクエスタムの怪人達について秘密を暴露しよう。怪人達は二十四時間この格好をしているわけじゃない。これは変身しているだけで普段は普通の人だ。チワワエスタムは家庭も持っているし子供もいる。
皆普段は真面目に仕事をしているしコンクエスタムからももちろん給料は出ている。俺が学院に行っている間は交代で観測班が何人かいるだけでコンクエスタムはほとんど活動してない。観測班が何か異変をキャッチすれば緊急連絡が届き怪人達が対応することになっているけどそんなケースはほとんどない。
それからコンクエスタムには所謂戦闘員という方々はいない。全員怪人だ。多少の能力差はあるけど全員怪人だからはっきり言ってコケティッシュシスターズじゃ基地に乗り込んで来ても勝ち目はない。
なんで普通の人達が秘密結社に入って怪人になって慈善活動をしているのかについてはまた後で機会があれば話そうと思う。
そんなことを考えているうちに俺とチワワエスタムは町に出てウロウロと囮役を始めたのだった。
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囮を始めてから結構経っているけどコケティッシュシスターズは現れない。いつもならもうとっくに俺達の前に現れているはずなのに………。
じゃあ俺達じゃなくて別の者達の前に現れたのかというとそんなこともない。俺達はお互いに連絡を取り合っているからどこの班も襲われていないことは把握済みだ。
そんなことを考えながら囮をしているとふと視線を感じた。そちらを向くと変身していない二人が物陰からこちらを見ていた。俺はそれに気づいていない振りをしながらこっそり二人を観察する。
なんで俺達を見つけているのに襲ってこないんだ?そもそも変身すらしていない。こんなケースは初めてでこっちもどうすればいいかわからない。俺達はコケティッシュシスターズの正体を知らないことになっているはずなのでこちらからあの二人に接触するわけにはいかない。
向こうが何か反応してくるまでただこのまま歩き続けるしかないのだった。
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暫く歩いても二人が俺達の前に出てくることはなかった。だから俺達の方から誘いをかけようと次第に郊外の方へと歩いていくことにした。
郊外へと出た俺達は九条地所が買収した廃ビルの中へと入っていった。ここはコケティッシュシスターズと戦うことになった場合に周囲に被害を出さずに戦える場所をいくつか見繕って九条地所に買い取らせたうちの一つだ。
今回はここで戦おうと思って二人を誘い出してみた。二人は変身して俺達の前に現れることはないが俺達の後はつけてきている。人気のないところなら何かしてくるかと思ってここへと誘い込んだのだ。しかし未だに何もしてこない。まだ隠れたまま俺達の様子を窺っている。
すぐに襲ってきてくれれば俺達も格好がついたが、何もせずただ廃墟に佇む俺とチワワエスタムは傍から見ればさぞ滑稽だろう。もしかしてあの二人も『あいつらこんなところで何してんの?ボッチなの?』とか笑っているのかもしれない。
とにかくただここでじっとしてたら不自然すぎる。誘ったつもりだったけど襲ってこなければこんな間抜けで不自然な状態になるとは考えてなかった。まさかこんな落とし穴があったとは…。孔明の罠か!
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やばい…。本格的にやばいぞ…。これ以上ここで何もせずただ待ってるだけだと不自然すぎる。かといってこのまま何もせず立ち去るのは余計に怪しい。そこで俺はスクイッドエスタムに連絡してある物を持ってきてもらうことにした。
もう暫く待っているとアタッシュケースを持ったスクイッドエスタムが廃ビルへとやってきた。
デスフラッシュ「ご苦労。」
スクイッドエスタム「はっ!」
俺はスクイッドエスタムからアタッシュケースを受け取り中身を確認する。その中には白い粉が小分けにされて入っていた。
デスフラッシュ「よし。それでは………。」
ブルー「正義の光がある限り!」
ピンク「悪の栄えたためしなし!」
ブルー「コケティッシュブルー!」
ピンク「コケティッシュピンク!」
二人「「コケティッシュシスターズが成敗します!」」
ブルー「覚悟しなさい!コンクエスタムの怪人達!」
ピンク「貴方達の悪事もこれまでです!」
俺がスクイッドエスタムから受け取ったアタッシュケースを持って立ち去ろうとしたところであの二人組がいつもの口上を述べて俺達の前に躍り出てきたのだった。
ブルー「それは一体何?」
ピンク「何だかんだ言っても貴方達は悪逆非道は行わないと思っていましたが私の認識が間違いだったようですね!」
二人は俺の持っているアタッシュケースの中身を見て危険なブツだと思ったのだろう。そしてそれはもちろん俺の狙い通りだ。二人が出てくるように仕向けたのだから。
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二人とチワワエスタムの戦いはすぐに始まった。コケティッシュシスターズはヒートアップした戦いだと思っているのだろうけどチワワエスタムは軽く遊んでいる。適度に遊んだら負けた振りをする気満々だ。
チワワエスタム「クゥ~ン。」
ブルー「くっ!」
ピンク「しっかりしてブルー!コンクエスタムの罠に嵌ってはだめよ。」
ブルー「わかってる。やるわよピンク。マジカルッ!」
ピンク「コケティッシュッ!」
二人「「ダイナマイトッ!!」」
二人の必殺技が炸裂してチワワエスタムはその直撃を受ける。爆煙に紛れてチワワエスタムは逃げ出したのだった。
そして二人は俺の持っているアタッシュケースを狙って動き出していた。
ブルー「それを渡しなさい!」
ピンク「逃がしません!」
二人で挟み撃ちにしてくる。俺は動かずに二人に素直にアタッシュケースを奪われる。
デスフラッシュ「あぁ、俺達の小麦粉がぁ(棒)」
ブルー「………小麦粉?」
デスフラッシュ「そうだ。このスクイッドエスタムがイカ焼きの屋台をやろうと思って世界中から厳選してきた小麦粉のサンプルだ。」
ピンク「嘘じゃないですよね?」
デスフラッシュ「薬物鑑定でも何でもかけてみろ。それは正真正銘ただの小麦粉だ。」
ブルー・ピンク「「………なんでコンクエスタムの怪人がイカ焼きの屋台を?」」
デスフラッシュ「コンクエスタムは資金不足だからそれを補うために………。」
スクイッドエスタム「デスフラッシュ大佐!我が組織の機密を!」
デスフラッシュ「おっと!俺は何も言っていないぞ。聞かなかったことにしてくれたまへ。」
ブルー・ピンク「「………。」」
二人は黙ってアタッシュケースをそこに置くとそのまま何も言わずに立ち去ったのだった。
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スクイッドエスタムとチワワエスタムを伴って小麦粉を持った俺は秘密基地へと帰投した。自宅へ帰ろうと着替えて基地を出ると麗さんが待ち構えていた。
麗「今日は一緒に帰りましょう。」
改太「え?いいよ。麗さんも今日はもう帰ってもいいよ。」
俺のその言葉を聞いた麗さんの表情が般若になった。
麗「一緒に帰りますよねっ?!」
改太「はっ、はいっ!」
こうして麗さんは俺の家…、どころか俺の自室にまでついてきたのだった。当然昔からよく知っている麗さんはうちの家族に迎え入れられて歓迎されていた。麗さんが『改太君のお部屋に上がらせてもらいますね。』と言ったら家族は『私達はしばらく改太の部屋には行かないので安心して。』とか言ってやがった。何を安心するというのだ!
しばらく俺の部屋を家捜しして満足したのか麗さんは帰っていったのだった。
~~~~~コケティッシュシスターズ~~~~~
今日もいつも通りパトロールに出かけるとすぐにデスフラッシュ大佐を発見した。だけど聖香と静流はお互いの顔を見ただけで変身してデスフラッシュ大佐の前に躍り出ることは出来なかった。
聖香「もうっ!なんで今回はあんな怪人なのよ!」
静流「ずるいですよねぇ…。あれでは戦えません………。」
二人の視線の先にはデスフラッシュ大佐が連れている今回の怪人がいた。それはとある犬種によく似ておりつぶらな瞳が可愛かった。
二人は女の子らしく可愛いものには目が無かったのだ。とてもではないが愛らしい小型犬のようなその怪人を殴ることに抵抗があるのだった。
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なかなかあの犬のような怪人と戦う決心がつかずに後をつけるだけであった二人に気付かないのかデスフラッシュ大佐と怪人はどんどん人気のない郊外へと向かっていた。
聖香「何か企んでいるのかしら?」
静流「罠の可能性もありますけど…。こちらに気付いていないとすれば何の企みをしているのか調べるチャンスかもしれませんね。」
二人はお互いに同じことを考えて様子を見ることにした。もしコンクエスタムの二人が自分達に気付いていないのならばこのまま様子を窺えばコンクエスタムがやろうとしている悪巧みを知ることが出来るかもしれない。
二人はそれを期待して身を隠したまま様子を窺うのだった。
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暫く様子を窺っているといつか見た怪人が何かアタッシュケースを持って現れた。その中身を確認したデスフラッシュ大佐は大仰に頷き立ち去ろうとしていた。
聖香「あれはまさかっ!」
静流「こんな場所でこっそり受け渡しする白い粉といえばあれなのでしょうね…。」
二人は同じ物を思い浮かべて急いで変身する。あれを世の中に出回らさせてはいけない。なんとしてもここで阻止する。そのためには犬型怪人が可哀想で戦えないなどと言ってはいられなかった。
変身した二人はいつもの口上を述べてデスフラッシュ大佐の前を塞ぐ。今回は三人が相手になってしまうがそんなことは気にしていられなかった。
なんとか可愛い犬の姿に惑わされずに怪人を倒した二人はデスフラッシュ大佐を捕まえるべく動き出す。そしてデスフラッシュ大佐からアタッシュケースを奪ったというのに衝撃の事実を聞かされた。
これはただの小麦粉な上にコンクエスタムは資金不足で屋台までやろうと思っているらしいのだ。普通に考えたら素直に信じて見逃すなんてあり得ない。だけど何故かこれが小麦粉であろうという確信はあった。ピンクがこっそり魔法で確認したところこれが小麦粉であることは確認できた。それをこっそり知らされたブルーは微妙な気持ちになり二人でこのアタッシュケースを置いて今日は帰ろうという結論に至った。
その場にアタッシュケースを置いた二人はさっとその場を逃げ出した。まさかコンクエスタムがそんな窮状に陥っていたとは…。そんな敵と必死に戦っている自分達まで何か惨めな気分になった二人は一目散に家へと逃げ帰ったのだった。
敵が情けなくても負けるなコケティッシュシスターズ。戦えシスターズ。二人の双肩に地球の平和がかかっている。
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