第5話「迷えるコケティッシュシスターズ」


 バットエスタム君がやられた日からすでに十日が経っている。あの後五回外でコケティッシュシスターズに襲われて他に五人が殉職している。もちろん実際には怪我一つ負っていないが一応コケティッシュシスターズにやられたことになっている者達だ。日を空けても出かける場所を変えても何人で出かけても必ずあの二人は俺と一緒にいる怪人のところに出現して戦うはめになっていた。


 どうやっても必ず俺とペアの怪人の下に現れる。そこでもう一度対策会議を開いているのだ。


スパイダーエスタム「デスフラッシュ大佐があの二人に居所が筒抜けなんじゃないですかね?」


 スパイダーエスタム君は会議ののっけからそう言う。他の皆もウンウンと頷いている。


デスフラッシュ「確かに俺のいる所いる所にコケティッシュシスターズが現れるけど俺には何も発信機とか仕掛けられていないぞ?大体俺が同行しなかった日でもやっぱりあの二人は出てきたじゃないか。」


 確かに俺もおかしいなと思って何か発信機でも仕掛けられているのかと散々身体検査してみたが何も見つからなかった。そもそも俺が出ていれば優先的に俺の所に現れるが俺が出かけず怪人達だけで出かけた場合でもあの二人は現れるのだ。


 このことから考えられるのは俺達から何か放出されているのではないかということだ。強い魔法科学の痕跡などが俺達から放出されているのだとすればその放出量の多い者の所にあの二人が現れるのも一応の筋が通る。俺は怪人達よりも強いので俺からより多くその痕跡が放出されているという可能性は高い。俺が出かけず幹部のスクイッドエスタムが出ればスクイッドエスタムの所に現れたのでますますその可能性は高い。


 だがそれはそれで矛盾もある。まず何らかの方法で俺達の居場所がわかるのならなぜ基地に乗り込んでこないのか?地下深くなので感知できないのだとしても俺達が地上へ出入りしている秘密の出入り口は追跡して知ることが出来るはずだ。


 それなのに向こうはそんな素振りもない。今は戦力的に俺達に敵わないと思っているから迂闊に基地に手を出さないとしても下調べくらいはしそうなものだ。それが一切ない。


 次に俺は俺達から何らかの痕跡が出ているのかと思って調べてみることにしたが魔法科学の残滓のようなものを検出することは出来なかった。だから別のアプローチで考えてみることにした。


 向こうは魔法科学を検出して察知しているのではなく、ただ単に高エネルギー体のいるところを探しているのではないかということだ。それを確かめるためにただの高エネルギーの塊をダミーとして町を徘徊させてみたがあの二人は近づきすらしなかった。


 それから色々考えたり試したりしてみたが結局わからず今の会議と相成ったわけである。


バットエスタム「もうあの二人は放っておけば良いんじゃないですかね?どう頑張っても俺達には勝てないでしょう?」


デスフラッシュ「………。」


 俺はお気楽なバットエスタム君を睨む。


バットエスタム「ヒッ!そんな怒らせるようなこと言いました?」


スクイッドエスタム「………。わからないのか?仮に俺達が誰かにこの魔法科学の技術を授けた場合最先端のテクノロジーを授けるか?最強の武器を渡すか?」


バットエスタム「………あっ!」


 スクイッドエスタムが俺の代わりに説明してくれた。それでここに居た者も全員わかったようだ。まぁ元々わかっていた者がほとんどでお気楽なのはバットエスタム君くらいだったのだろうけど………。


デスフラッシュ「スクイッドエスタムの言った通りだ。あの二人自体は現時点でそれほど脅威じゃない。でもあの二人に魔法科学を授けた者はあの二人よりさらに進んだ技術を持っている。米軍だって最新鋭兵器は同盟国にも売らない。輸出品はモンキーモデルになってるんだ。つまりあの二人の裏にいる者達は俺達と同等、下手すれば俺達を上回るほどの魔法科学の技術を持っていてもおかしくはない。」


 その言葉を受けて全員の顔が引き締まる。とそこへキラーレディが資料を持って入室してきた。


キラーレディ「失礼致します。デスフラッシュ大佐。これを………。」


 俺はその資料に目を通す。


デスフラッシュ「………これはっ!」


 俺はその内容を読んで大きく目を見開いた。そこに書かれている内容は現状を打破できるかもしれない可能性を秘めていたのだ。


 準備室で聖香と静流に話を聞いた後にあの日から十日前を中心に異変がなかったか観測班のデータを精査させていた。その結果あの日から十一日前と十二日前にこの町のある地点で謎の反応を捉えていたのだ。極小さく、極僅かの時間で、さらに俺達ではよくわからない謎の反応なのでこれまでは気付かれず流されていた。


 だが日付を指定してどんな細かい変化も見落とさず調べなおしたお陰で見つけることが出来た。俺達とは別系統の技術を使ったこの時空震は転移あるいは瞬間移動、どんな呼び方でもいいがどこか遠くからこの地点へと空間を繋げて移動してきた痕跡だった。


 出来上がった空間の大きさから考えて転移してきたモノの大きさはせいぜい20~30cm前後と推測される。そして十二日前に現れたのは聖香の家のすぐ近く。そして十一日前に現れた場所はまさに静流の家の中であった。


 この転移してきたモノこそがあの二人に魔法科学を授けて二人を魔法少女に仕立て上げたのだろう。そしてここからは推測だが十一日前に静流に魔法科学を授けた後でどういう理由かは不明だが聖香と静流はお互いが魔法少女になっていることを知った。


 だから翌朝静流は聖香を自分の家の車に乗せて一緒に登校し、そこで二人で何か話したのだろうという推測が成り立つ。


 この転移で現れたモノを追跡できれば背後関係がつまびらかになる可能性は高い。


 だが問題はこいつが単独か組織か。そしてその技術力は果たしてどれくらいかということだ。


 まず敵が組織で俺達より技術力も高ければ追跡しようとした時に向こうにこちらが調べようとしていることが気付かれる可能性がある。またこちらの場所なども知られて襲われた場合に敵の方が強ければこちらは大きな被害を受けることになるだろう。


 俺としてはまずは仲間の安全第一でいきたい。そのためにはここは焦らず慎重に進めるべきだ。それにこの転移は俺達とは別系統の技術で異変自体は察知していたが転移とも気付かず見落としてはいたがだからと言って俺達より進んだ技術というわけじゃない。


 俺だって転移や瞬間移動くらいは出来る。ただこいつとはやり方が違うだけだ。だからこの小さな時空震が転移の痕跡だと観測班が気付かなかった。小さな揺らぎや時空震くらいならそこかしこで起こり得ることだからな。


デスフラッシュ「敵の尻尾が僅かに見えた。この尻尾を掴むことから始めるぞ。ただし焦りは禁物だ。敵の勢力も技術力もわからない。皆くれぐれも無理をせずに慎重にことに当たってくれ。」


怪人達「「「「「はっ!」」」」」


 この後具体的な策を練りながら会議は進んでいった。



  =======



 大まかな方針は決まった。まずコンクエスタムは別々の目的を達成するために三班に分かれ同時にことを進める。


 まず1グループはコンクエスタムの当初からの目的を達成することを目標に慈善活動を行う。これまで俺達がしてきたことと変わらない。


 次のグループは魔法少女二人に対応する。ここは一番人手が少ない。その代わり負けた怪人達は班を変更して同じ怪人が何度もあの二人とぶつかるようなことがないようになっている。そして俺はこの班のリーダーらしい。どれだけ断ろうと思っても俺がいると俺のいる所にあの二人が現れる以上は俺がこの班をやるしかない。ちっくしょーーーー!


 最後があの二人に魔法科学を授けたと思われる転移に関わったモノを追跡するグループだ。ここが一番危険が伴う上に様々な能力が必要になるので一番充実しているグループでもある。


スクイッドエスタム「それではあの二人はデスフラッシュ大佐がお願いします。」


 パチパチパチパチッ


 スクイッドエスタムの言葉にこの会議に参加していた全ての者から拍手が起こる。


デスフラッシュ「ちっ………。仕方ない。………お前ら無理するなよ?」


スクイッドエスタム「任せてください。」


 俺とスクイッドエスタムは視線を交わして頷き合う。


デスフラッシュ「よしっ!それじゃ今日も活動を頑張ろう!」


怪人達「「「「「おーっ!」」」」」


 こうして俺達はグループごとに分かれてそれぞれの活動を開始したのだった。



  =======



 俺はオクトパスエスタム君と一緒に魔法少女達が俺達を狙ってくることで慈善活動を行っているグループに絡まないように囮作戦を行っていた。


 町に出て二人でちょっとウロウロと時間を潰していたのだが今日は中々現れない。その時幼稚園バスが俺達の前にやってきて停まった。この辺りで有名な幼稚園でこうしてバスで送り迎えされている。その姿を眺めているとあの二人が現れたのだった。


ブルー「待ちなさい!」


 なぜかこんなところで現れる。タイミングが最悪なのにもほどがある。


ブルー「正義の光がある限り!」


ピンク「悪の栄えたためしなし!」


ブルー「コケティッシュブルー!」


ピンク「コケティッシュピンク!」


二人「「コケティッシュシスターズが成敗します!」」


ブルー「覚悟しなさい!コンクエスタムの怪人達!」


ピンク「貴方達の悪事もこれまでです!」


 いつものお決まりのセリフとポーズをとってコケティッシュシスターズの二人は俺とオクトパスエスタム君の前に降り立ったのだった。



  =======



 状況は最悪だ。この二人の必殺技を使われたら幼稚園バスや園児達にも絶対に被害が出る。俺とオクトパスエスタム君は同じことを危惧して二人で頷き合うとこの場から離脱しようとした。


 しかし二人が俺達の行く手を阻む。っておいいぃぃっ!なんでそっちを塞ぐんだよ!逆だろうが!今の立ち位置は幼稚園バス、俺達、コケティッシュシスターズの並びだ。なぜ俺達が幼稚園バスから離れようとする行く先をこの二人が塞ぐのか意味がわからない。


 この二人は後ろの幼稚園バスを俺達が逃げられない壁として利用でもする気なのかと思ってしまうような動きだった。


 非常にまずい。この立ち位置ではマジカルコケティッシュダイナマイトを使われたら俺達の後ろにある幼稚園バスが巻き添えになる。それなのにコケティッシュシスターズは俺達をここから離れさせてもくれない。なぜそんな位置に立ち塞がって俺達を子供達から離れさせないのかわからないがここは交渉するしかない。


デスフラッシュ「ちょっと待てコケティッシュシスターズ。ここで争えば余計な巻き添えが出る。せめて場所を変えようじゃないか。」


 果たして俺のこの提案でコケティッシュシスターズはどう出るのか………。


ブルー「なんて卑怯なの!」


ピンク「今までも悪人だとは思っていましたがここまでだなんて!」


デスフラッシュ「???」


 俺とオクトパスエスタム君は顔を見合わせる。俺達はあの二人が何を言っているのか意味がわからなかった。


ブルー「………わかったわ。それじゃ貴方達はあのバスに乗りなさい。」


ピンク「ブルー!」


ブルー「仕方ないでしょう?」


ピンク「………。」


 二人は何かアイコンタクトを交わして頷きあった。っていうか一体何を言ってるんだ?俺は幼稚園バスから離れて子供達を巻き添えにしないようにしようと言っているのになぜ俺達がバスに乗ることになるんだ?それじゃますます子供達が危険になる。この二人は本当に子供達を守る気があるのか?俺達の意識が子供達に向くように仕向けてその間に子供達ごと俺達を必殺技で始末しようとしてるんじゃないかと思ってしまうくらいおかしな方向に話が進んでいる。


ブルー「ただし私達も一緒にバスに乗せてもらうわよ。」


ピンク「それだけは譲れません。もしそれも拒否するというのなら私達にも考えがあります。」


 二人はますます物騒なことを言い出す。これでは子供達を乗せた状態のバスの中で走りながら戦おうと言っているようにすら聞こえる。この二人が何を考えているのかさっぱりわからない。考えがあるって一体何をする気なんだ。


 俺達ならこの二人に何かされても平気だが一般市民や園児達は巻き込まれたら大惨事になってしまう。俺達はこの二人の要求を飲むしかなかった。


 奇妙な緊張の中俺達四人は幼稚園バスに乗ることになった。運転手さんと付き添いの保母さんは困った顔をしている。だけど子供達は何かのヒーローショーとでも思ったのか大喜びで歓声を上げていた。


 この二人が何を考えているのかわからないが俺は段々腹が立ってきていた。どうしてこんな危険に子供達を巻き込むようなことをするのか。二人を睨みつけると二人もまたこちらを睨みつけていた。


デスフラッシュ「なぜ関係ない子供達まで巻き添えにするようなことをする?」


ブルー「貴方が子供達を盾にするようなことをするからでしょう!」


ピンク「なんて卑怯な人なんですか!」


 ブルーとピンクの言っている意味がわからない。俺はせめて戦うならバスから離れて人のいないところへ行こうと言ったのだ。それなのにバスに乗れと言ったのはこの二人のほうだ。


 だがそうは思っても今の俺達は何も出来ない。コケティッシュシスターズの二人が俺達に襲い掛かってきたら無抵抗に殴られるしか術はない。危険な走行中のバスの中での戦いが始まった。


 戦いが始まるとコケティッシュシスターズは遠慮なく攻撃を仕掛けてくる。もちろん俺達にとってはダメージなどないような児戯に等しいが子供達を盾にするようなことまでやって俺達の動きを封じて戦おうとするこの二人に対する怒りがわいてくる。しかしその怒りのままに反撃するわけにもいかず俺達はただ無抵抗に二人に殴られ続ける。


 この二人はこんな卑劣な行いをするような娘達だったのか?………わからない。そしてとうとう事態が動く。


ブルー「コケティッシュメーザー!」


 ブルーの馬鹿が技を使った。この技のせいでバスの一部が吹き飛びむき出しになった座席から子供達が飛ばされそうになった。


デスフラッシュ「ちっ!オクトパスは手を広げてそっちを頼む!」


 俺は転げ落ちそうになっている子供達を支えながらオクトパスエスタム君に指示を出す。


オクトパスエスタム「了解です!」


 オクトパスエスタム君は六本の手を広げて吹き飛び穴の空いた場所を塞ぎつつ振り落とされそうになった子供達を吸盤で捕まえて保護していた。


デスフラッシュ「落ちた者はいないな?………はぁ。」


 一先ず全員の安全を確認してほっと一息ついた。と同時に沸々とブルーへの怒りが沸いてくる。


デスフラッシュ「一体どういうつもりだ!子供達が巻き添えになるところだったじゃないか!お前達は自分達が勝ちさえすれば子供達を巻き添えにしてもいいと思っているのか?!」


 俺は怒りのままに叫んでいた。


 ブルーとピンクは答えない。ただ青褪めた表情でブルブル震えながら周囲を見ていた。子供達は二人を睨み保母さんは二人から子供達を庇うように立っている。


 それを見た二人はバスの扉を破って逃げ出したのだった。



  =======



 その後停車したバスを俺達が魔法科学で元に戻した。保母さんと運転手さんからはお礼を言われた。それはもちろんバスを戻したことについてじゃない。身を挺して子供達を守ってくれたと感謝されたのだ。巻き込んでしまったのは俺達のせいだしお礼を言ってもらえるようなことじゃない。それに見返りを求めてやってきたわけじゃない。それでもお礼を述べてくれる保母さん運転手さんそして子供達に俺達は救われた気がした。


 今日はコケティッシュシスターズは俺達との戦いを放棄して逃げ出した。だけどまだ根本的な解決が出来たわけじゃない。またあの二人は俺達の前に姿を現して戦うことになるだろう。もしこのまま二人の行動がエスカレートすれば今度こそ周囲に被害が出てしまうかもしれない。


 そろそろ本格的にあの二人に対する策が必要になってきそうだった。




  ~~~~~コケティッシュシスターズ~~~~~




 ここ最近はコンクエスタムの怪人達も毎日は出なくなった。パトロールしていても出会わない日が時々ある。それにデスフラッシュ大佐がいない時もある。きっとどこかで私達の知らない間に悪事を企んでいるに違いない。そして今日は大変なところに出くわした。


聖香「静流!あれを見て!」


静流「大変!急いで助けなきゃ!」


 デスフラッシュ大佐と怪人が幼稚園バスを狙っている!その場に出くわした私達は急いで変身して二人の前に降り立った。



  =======



 デスフラッシュ大佐と怪人の前に降り立つ。二人は幼稚園バスを背にしている。


ブルー「くっ…。この立ち位置じゃ………。」


ピンク「私達の必殺技を封じる狙いね。」


 ブルーとピンクはお互い顔を見合わせる。このまま必殺技を使ったら二人の後ろにある幼稚園バスまで巻き添えにしてしまう。なんて卑怯なの!コンクエスタム!デスフラッシュ大佐!子供達を盾にするなんて絶対に許せない!


デスフラッシュ「ちょっと待てコケティッシュシスターズ。ここで争えば余計な巻き添えが出る。せめて場所を変えようじゃないか。」


 ブルーとピンクはまたしても顔を見合わせた。デスフラッシュ大佐は子供達を盾にして今戦えば巻き添えになるから私達に手を出すなと要求してきている。だけどこのまま幼稚園バスごとこの二人を逃がしてしまえば子供達がますます危険になる。


 どうすれば良いのかわからず二人は動けなかった。


ブルー「なんて卑怯なの!」


ピンク「今までも悪人だとは思っていましたがここまでだなんて!」


 今の二人に出来ることはせいぜいこうして口で時間を稼ぎ打開策を考えることだけだった。


 今出来ることはとにかくコンクエスタムの二人の要求を飲んで下手に刺激しないことだった。それからこの二人と園児達を見失わないように自分達もついていかなければならない。そこでまずはデスフラッシュ大佐の要求を飲みうまく自分達もバスに乗り込もうと思ったのだ。


 そうして何とか四人で幼稚園バスに乗り込む。子供達は恐怖で泣き叫んでいた。ブルーとピンクは子供達を安心させるために声を上げる。


ブルー「私達がついているから大丈夫よ。」


ピンク「安心して。皆には手出しはさせないわ。」


 こうして危険なバスは走り始めた。


 走るバスの中で子供達までいる状況でも戦いは待ってくれない。卑怯なデスフラッシュと怪人を倒すために子供達を巻き添えにしないように必死に戦う。そしてとうとう恐れていた事態が現実のものとなった。バスの一部は破損して大穴が空きそこから子供達が落ちそうになる。


ブルー「大変!」


ピンク「なんとかしなきゃ!」


 だけど私達が動くより前にデスフラッシュ大佐と怪人が子供達を捕まえていた。


デスフラッシュ「一体どういうつもりだ!子供達が巻き添えになるところだったじゃないか!お前達は自分達が勝ちさせすれば子供達を巻き添えにしてもいいと思っているのか?!」


 ブルーとピンクは再び顔を見合わせる。子供達を巻き添えにしようとしていたのは貴方達の方でしょうと叫びたかった。でもそれは出来なかった。


ブルー・ピンク「「………。」」


 子供達は私達を睨みつけ保母さんは私達から子供達を庇うように立っている。デスフラッシュ大佐と怪人は子供達が私達が空けた穴から落ちないように受け止めている。


 ………。私達は一体何をしているの?私達は怖くなってバスの扉を強引に開いてそこから飛び出して行った。


 わからない。わからない。どうして?私達は正義の味方じゃなかったの?なのにどうして私達はあんな目で皆に見られていたの?


 ………ううん。そもそも私達は今まで誰にも見られたことはなかった。誰にも賞賛されたことはなかった。だけどそれは誰にも見られないところで私達が活躍してたからじゃなくて私達が褒められるようなことをしていなかったからじゃないの?


 逃げ帰った私達はただ抱き合って泣きながら答えの出ない問いを繰り返し続けていた。




 悩む乙女達。それでも負けるなコケティッシュシスターズ。君達の双肩に世界の平和がかかっている。


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