第27話 武器強奪


「無事買えてよかった」


 雄平は売り切れなどを心配していたが、無事『世界樹のしずく』を購入することに成功した。


 『世界樹のしずく』は一〇〇万円と想定通りの価格だった。雄平の所持金は二千万円から一〇〇万円引かれ、一九〇〇万円となった。


「目的のモノは手に入れた。次は戦力強化だな」


 雄平は薬屋の隣に立つ武器屋を訪れる。近代的なビルのテナントとして入っている武器屋に、雄平は少し違和感を覚えるが、気にせず中の様子を伺う。


 ガラスケースの中に飾られた剣や盾は、冒険者たちが憧れる最上級装備の数々だ。その中でも最高級品を装備し、雄平は魔王に挑んだことを思い出していた。


「懐かしいな。だが今の俺の所持金では手を出せん」


 雄平が魔王と戦うときに装備していた武器は剣だけでも数百億円はする。億万長者ですらない今の雄平では雲の上の装備だった。


「買える範囲内で戦力を強化するか」


 雄平は店の端にあるワゴンを見つめる。ワゴンの中には格安品が詰まっていた。


「スキルか魔法で良い奴があれば……」


 異世界ではスキルと魔法を金で購入することができる。具体的には術者が自身のスキルと魔法を宝石として出力し、それを宝石の購入者が自身の身体に吸収することで習得することが可能になる。


「随分と安いスキルだな」


 雄平は一つのスキルが気になり、手に取ってみる。最安値の一万円の値札が付けられたスキルの宝石には、『装備強奪』というスキルが登録されていた。


『Eランク:装備強奪』

 対象に手の平をかざして発動する。相手から一定確率で装備を奪い取る。奪い取れる装備は手で掴めるモノだけである。スキルランクが高ければ高いほど装備を奪える確率が上がる。


「相変わらず人気のないスキルだな」


 『装備強奪』は冒険者の中でも不人気スキルで一、二を争う外れスキルだ。まず手の平で掴めるモノしか奪えないので、剣や弓などは奪えても、鎧なんかは奪えない。しかも確実ではなく、一定確率でしか成功しないのだ。


 さらにいうなら、武器を持つモンスターの種類はさほど多くないし、もし装備を奪うとなっても、相手を倒した後に奪った方が早い。それに何より集団の敵と戦う場合、奪った武器が邪魔になる欠点があるのだ。


「だが俺にとっては役立つスキルかもな」


 現実世界で現れるモンスターは人型のゾンビだけだ。装備を持つことが可能な種族であることを考えると、使い道はあるだろう。


 それに何より雄平はモノを金に変える力がある。装備を奪って邪魔になるということがないのだ。


「一万円だしな。買ってしまおう」


 雄平は『装備強奪』のスキルを購入する。宝石を魔力へと変換し、自身の身体へと取り込む。


 雄平はステータスが更新されたことを確認する。

 


――――――――――

名前:奥井雄平

評価:B

称号:魔王を殺した勇者

特異能力:

・課金ガチャ

・観察眼

魔法:

・炎魔法

・透視魔法

・五感強化

スキル:

・狙撃(ランクB)

・剣術(ランクC)

・装備強奪(ランクE)

能力値:

 【体力】:130

 【魔力】:130

 【速度】:150

 【攻撃】:130

 【防御】:130

――――――――――


「さて、スキルも買えたしそろそろ現実世界へ戻るか……」


 雄平がそう考えた時だ。


「ご主人様……ご主人様ではありませんかっ!」


 雄平は一人の少女に声を掛けられる。少女は雄平の知り合いだった。かつて冒険者として一緒に過ごした、彼の奴隷であった少女だった。

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