第20話 武器庫

「安藤、武器庫はどこにある?」

「こっちでありますよ」


 警察署内は死体の腐った匂いと血の匂いが充満していた。中には生きている人間が誰もいない。死体ばかりだ。


「ここでありますよ」


 警察署内の案内表にも載っていない場所に雄平は案内される。頑丈な扉で守られた部屋は、武器庫に相応しい門構えだ。


「鍵を持ってくるであります」

「いや、必要ない」


 雄平は武器庫の扉を勢いよく蹴る。扉が吹き飛び、武器庫への道が開かれた。


「この扉、機関銃でも壊れないと評判だったでありますよ……」

「俺の蹴りを防ぎたければ、ミサイルで耐久試験をしておくべきだったな」


 武器庫には拳銃や狙撃銃などが置かれている。雄平は手当たり次第に自分のスマホへと武器を吸い込ませていく。


「ちなみに押収品は隣の部屋であります」

「任せろ」


 雄平は壁を殴りつける。コンクリ壁は吹き飛ばされ、部屋が一つに繋がった。


「ゆうちゃん、随分と豪快なリフォームだね」


 可憐は呆れるような声を漏らすが、その声にはどこか楽しんでいるような響きが混じっていた。


「あっちの部屋を見てください!」


 花原が隣の押収品の一つに反応する。彼女が反応したのは日本刀だった。刀を鞘から抜き、刀身を確認する。


「刀ですよ! 刀! しかもこの刀紋。凄い名刀ですよ! 刀工は誰なんだろう。孫六兼元! 大業物じゃないですかっ!」

「……刀が好きなんだな」

「当然です。日本刀は日本文化の中でも欠かせないモノですよ! 飾れば芸術品となり、振るえば身を守る武器になる。こんな素晴らしい日本刀を嫌いな女子なんていませんよ!」

「そ、そうか。そんなに好きなら花原が持つと良い」

「良いんですか! 大業物ですよ!」

「好きにしろ」

「ではありがたく!」


 花原は日本刀を大事そうに抱きかかえる。誕生日プレゼントを貰った子供のような反応だった。


「俺は回収を続行するか」


 雄平は押収品の中から使えそうなモノをスマホに吸い込んでいく。爆弾や銃器はもちろん、中毒症状を引き起こす白い粉なども回収していく。


「必要なモノはだいたい得られたな」


 安藤は結局、機関銃ではなく拳銃を使うことにしたらしい。使い慣れた拳銃の方が有用だと判断したのだろう。


 花原は銃器を使わず日本刀だけにしたらしい。雄平からすると銃器の方が引き金を引くだけで良いので便利だと思うが、彼女の中では違ったようだ。


 可憐と高木はどちらも武装はしていない。可憐が武装していないのは雄平が彼女に戦わせたくなかったからだ。ちなみに高木が何も持っていないのは、単純に重いのが嫌だったからだという。


「準備も整った。早速花原の家へと――」


 雄平の言葉を遮るように、爆発音と共に窓ガラスが割れた。襲撃かと雄平は窓の外を見る。


 そこには一人の青年がいた。そして彼は告げる。


「先ほど炎魔法を使用していた勇者に告げる。降伏して僕の傘下に入れ。真の勇者であるこの僕のな!」

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