11
キャロルのバイクに鍵を差し込み、OFFからON。
アクセルを少し回しながら始動スイッチを押す。
セルが回り、エンジンが起動。
シートからエンジンの振動が伝わってくる。
クラッチを握り、ニュートラルから1速にギアチェンジ。
クラッチを繋げながら発進する。
1速から2速にギアチェンジ。
基地を出る。
3速にギアチェンジ。
加速していく。
マフラーから排気ガスが噴き出る。
緩やかに波打った草原に舗装された1本道を走る。
道に沿って等間隔に、うねる様な糸杉が立ち並んでいる。
何基もの廃れた風車が立つ丘を通り過ぎる。
曇り空の下、風車の周りを黒い鳥が2羽飛んでいるのが見えた。
直進の道に出ると4速にギアチェンジ。
軽快に稼働するエンジン音だけが聞こえてくる。
目的地も決めずに、気ままに走る。
腕時計を見ると、いつのまにか午前をすぎていた。
道沿いに古びたダイナーが目にとまったので入る。
駐車場には、4台の汚れた大型トラック、1台の寂れた軽自動車、1台の派手なオープンカーが止まっていた。
駐車場にバイクを止めて店内へと入る。
店内には、聞いた事があるようなカントリーミュージックが流れていた。
カウンター席に赤い丸椅子が並び、4人の男が座っていた。
新聞を読みながらコーヒーを飲んだり、煙草を吸ったりしている。
窓際のテーブル席には、老夫婦と若い男女が座って食事をしていた。
僕は、カウンター席の赤い丸椅子に腰を下ろした。
そばかすの目立つ中年の女性店員が厨房から出て来ると「なんにする?」と、不愛想に尋ねて来た。
僕は、カウンターに置いてあったメニュー表を手にとり、チーズとチキンのハンバーガー、マッシュポテト、ホットコーヒーのBセットを頼んだ。
女性店員は、注文を聞くと返事もせずに厨房へと消えて行った。
基地を出て約2時間、ここはどの辺りだろうか。
しばらくすると、女性店員が僕の注文したBセットを持って厨房から出て来た。
「おまちどうさま」と、ワンプレートに盛りつけされたBセットをカウンターに置くと、女性店員は厨房へと消えて行った。
食事を済ませ「ごちそうさま」と、厨房の方へと声をかける。
女性店員が出て来てレジスターに値段を打ち込むと、画面に支払い料金が表示された。
僕は、左手の甲に刻印されたセルフバーコードを女性店員に見せる。
女性店員は、レジスターのスキャナーで僕のセルフバーコードを読み取る。
すると、『ピッ』と機械音が鳴り、電子マネーでの支払いが行われた。
ダイナーを出て、しばらくバイクで走っていると潮の香りがしてきた。
海が見えてきた。
僕は、バイクで海沿いを走る。
岬が見えてきた。
岬には、小さな円錐屋根の建物がポツンと建っていた。
建物の傍には、似つかわしくない派手なオープンカーが止まっているのが見えた。
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