5
レーダーには、つかまっていなかった。
つまりは、レーダー範囲外からの狙撃。
そんな長距離狙撃でクマガイのソリッド・ギアの頭部に見事命中させ破壊した。 それほど精密な狙撃力と破壊力。 一体どんな兵器なのだろうか?
向かいの席に着くマーラが紫煙をくゆらせ、グラスに入った残り少ない赤ワインをゴクリと飲みほした。
「飲めないの?」
「いや、飲めるよ」 僕は、テーブルの上に置かれているウィスキーのはいったグラスを手に取り、ゴクリと飲みほした。 喉が焼けるような感じがした。
あの時、クマガイもこんな思いをしたのだろうか。
何故だろう、あの時クマガイに誘われたからだろうか。 任務終了後、基地に戻ると、どちらからともなく僕とマーラは町へと出向く事にした。
初めて来た町だ。 石造りの家々、細い路地。 野良猫に野良犬だろうか、穏やかな目をしているから飼われているのかもしれない。 表通りに面した建物には様々な鉄製の看板が掲げられている。 靴屋、洋服屋、家具屋、理髪店、飲食店、酒屋。
その並びにあったジャズバーへと入った。
ジャズバーの店内は煙草の煙が充満していて、まるで霧の中にいるみたいだ。
あの時、クマガイもこんな思いをしたのだろうか。
小さな舞台ではピアノ、ベース、トランペット、ドラムによるバンド形式でジャズシンガーが歌っていた。
「で、大佐にはなんて報告したの?」
「正直に報告したよ」
「ふぅ~ん」 マーラは、あまり興味なさげに舞台を見つめながら返事をした。
クマガイのソリッド・ギヤが狙撃された直後、僕は、すぐさま
「クマガイ無事か?」 僕は呼びかけた。
通話マイクからの返答はない、ノイズだけが聞こえてくる。
「クマガイ応答してくれ!」
返事はない。 気を失っているのだろうか。
いまだレーダーにレッドマーカーの反応なし。
僕はサブマシンガンを構えながら周囲を警戒する。
通信マイクからノイズ以外の何かが聞こえた。
「クマガイ無事か?」 僕は呼びかける。
「……た…す………くれ」
クマガイのソリッド・ギアからは炎が上がりはじめている。
「クマガイ脱出しろ、ソイツはもう駄目だ」
「…た…たすけて……くれ!!」
「コックピットポッドごと射出しろ!! 燃料に引火するぞ!!」
「ダ、ダメだ!! 何回やっても作動しないんだ、助けてくれ!! 中にまで火――」
通信が途絶える。
僕は、黒煙を上げながら燃え盛るクマガイのソリッド・ギアに近づき、コックピッド付近の装甲をはがして救出しようと試みた。
先程の被弾で装甲とフレームが融解して変形している、だからコックピットの強制射出ができなかったんだ。
たちまちクマガイのソリッド・ギアが爆発、炎上。 僕は、たまらず一歩、二歩と下がる。
通信マイクから声と壁を叩きつけるような音が聞こえた。
「い、いやだぁ!! だれかぁ、たすけてぇ!! 火、火が、熱い、燃える、燃えちまうよぅ!! 熱い熱い熱い!! ぎゃぁぁぁぁーーーー!!!!」
僕は、クマガイが搭乗しているコックピットに銃口をむける。
そして、僕はトリガーを引いた。
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