基地を出発してから約1時間半、中継基地まで支援物資を積んだ運搬車の護衛任務に就いた。

 物資内容は、大佐が説明していたけれど興味がなかったのであまり覚えていない、危険物ではないのは確かだ。  

 ソリッド・ギアに搭乗しての3マンセル行動。  僕とクマガイ、そしてマーラという名の女性だ。  マーラは、いつも煙草を吸っている。  

 僕は煙草を吸わないし吸った事もない、何が良いのかもよくわからない。

 でも、吸う人はいるのだから何か良い事はあるのだろう。  僕には関係のない事だ。

 クマガイが先頭、次に運搬車、後方に僕とマーラという陣形。

 古いアスファルト道路のヒビ割れからは雑草がチラホラと生えている。

 道路を挟む様に両サイドには赤土の荒野が広がっていて、花を咲かせたサボテンがポツン、ポツンと生えていてた。 いたる所にモニュメントのような岩石が見える。

 初めて見る風景だ。    

 知らない土地へ行くのは好きだ。

 もし僕がソリッド・ギアのパイロットになっていなかったら旅人になっていたかもしれない。

 見た事のない風景、そこに行かないと知れない香り、食べた事がない料理、聞いた事のない音楽、初めて出会う人々、動物。 

 それらを一冊の本にまとめる。  そして、また旅に出る。

 どんなに素晴らしい人生だろうか。  想像しただけでワクワクしてくる。

 戦争が終わって、それなりの平和がやってきたら旅に出よう。

 その為には、まず今を生きぬかなければいけない。

 「おい、聞いてんのか?」 ヘッドマウントディスプレイの通話マイクからクマガイの声がノイズまじりに聞こえてきた。 

 「え?  ごめん、聞いてなかった」

 「だからよぅ、今夜どうだって」

 「今夜?」

 「ああ、これ任務が終わったら町に繰り出そうぜ」

 「町に?  何で?」

 「何でって、そりゃ決まってんだろうがよ。  大人の遊びだよ、お・と・な・の」

 「僕は、あまり興味がないな」

 「そう固い事言うなって、行ったら行ったで絶対楽しいんだからよ、なっ」

 「ちょっと、アンタ達。 今は任務中よ、くだらない私語は慎んでちょうだい」 マーラの苛立ったノイズまじりの声が通話マイクから聞こえてきた。

 「おいおいおい、あんたもそんな固い事いうなよ。  任務ったって、たかが運搬車の御守じゃねぇかよ、今までに危険な事があったか?  それに周りを見渡してみろよ、人っ子一人いない。  レーダーの反応も無し、こんなんで襲われる訳ねぇだろ」

 クマガイが言い終わるか否か。

 何処からともなく発射された弾丸が、クマガイの搭乗するソリッド・ギアの頭部に被弾した。    

 

  

 

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