3
夕方頃を過ぎると少し肌寒い。
共同のシャワー室で汗を流し、食堂で夕食を済ませ自室へと戻った。
軍から支給されたジャケットを着て寮を出る。
月も星々も雲に隠されて見えないけれど、月光は雲を通り抜けてうっすらと漏れていた。
駐車場と事務棟を通り過ぎ、一番離れた場所に建設された第1
中へ入るとテクノミュージックが鳴り響いていた。
奥に人が見えたので「こんばんは」と声をかけた。 でも鳴り響いている音楽のせいで聞こえていない様子だ。 僕は、その人に歩み寄ると肩をポンポンとふれた。
すると、その人は声にならない声を上げながら持っていたタブレット端末を床に落としてしまった。
僕は「ごめん」と、落としてしまったタブレット端末を拾う。
丸坊主に近い短髪の女性が怪訝そうに僕を睨む。
彼女のツナギについていたネームプレートには、キャロルと刻印されていた。
「あの、声はかけたんだけれど聞こえてなかったみたいだったから」と、タブレット端末を返す。
「で、あんた誰なんだい?」
「僕のソリッド・ギアが今日運搬されるって大佐から報告があったんで見に来たんだけれど……」
「ああ、あんたかい、コイツの乗り手は。 1時間ほど前に到着したばかりで、機体データの確認をしてたところだよ」と、タブレットをちょっと掲げる。
僕は、目の前に立つソリッド・ギアに視線を向けた。
「それにしても、あんた本当にこの機体で戦場に出てたのかい?」
「おかしいかな」
「おかしいも何も、この機体、駆動系等の
「うん、実戦には向かないって試作段階で中止になった代物らしいね。 確かに
「思った通りの操縦ねぇ。 整備士からの私に言わせれば、そんな考えは人間のおごりだね、人の能力を超えた物を人が思い通りに操ろうなんざ到底不可能だ、自分で気付いた時にゃ後の祭りさ、取り返しのつかない事になっている。 私はそういう奴等を腐るほど見てきし案の定そういう奴等は、もうこの世にはいない。 あんたも考えを改めないと、いつの日か敵かコイツに殺されるよ。 ははっ、ちょっと説教くさくなっちゃったかね」
「いや、そんな事ないよ、あなたの言う通りだと思う。 戦場に出れば常に死が僕の周りを漂っている、死ぬっていう事はどういう事なのか死んだ事がない僕には、まだはっきりと理解はできていないけれど、死を感じるのはとても恐ろしいよ、でも死を感じるからこそ生も感じられるんだ。 だから僕はソリッド・ギアのパイロットになったんだ」
「ふん、ほんとソリッド・ギアのパイロットには変わり者が多いね」
キャロルは、半ば呆れながらタブレット端末の画面に目をおとした。
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