第1話

作業や入部届けの記入もあって家に帰ったのは6時頃になった。

「ただいまー」

「おかえりー。遅かったわねー」

家の奥の方から何かを炒める音と共にその声は聞こえてきた。

自分の部屋に荷物を置いてリビングへ向かった。

晩御飯の支度をしている黒いセミロングでポニーテールの女性。

彼女こそ私の姉であり時代三姉妹長女の時代恵美である。

恵美姉は現在高校3年生だ。

「居残りでもさせられてたの?」

「うぅ………見た?」

「触れないと見れないよ。今日は野菜炒めだから、真衣が帰ってきたら食べよっか」

「はーい」

母さんは父さんと一緒に世界を回って仕事をしているらしい。

だから料理や洗濯は恵美姉さんがやってくれている。

私と真衣姉は風呂洗いや洗濯物の取り込み、皿洗いやごみ捨てなどをやっている。

「じゃあ風呂洗ってきたゃうね。もう貯めちゃう?」

「うーん………じゃあ貯めちゃって」

ラジャーと私は敬礼し風呂場へ向かった。




風呂がちょうど洗い終わった頃に真衣姉が帰ってきた。

「ただいま」

それに対しおかえりーと返した。

すぐ後に奥からもおかえりーと聞こえてきた。

リビングに戻った時にはテーブルの上に恵美姉が食事を置いている最中だった。

それから少しして来た、ショートヘアより少しだけ長い黒髪に小麦色の肌をした少しツリ目の女性こそが私のもう一人の姉で時代三姉妹次女の時代真衣である。

実は私たち姉妹は全員同じ高校に通っている

そして私と姉達はテーブルに座った

「じゃあご飯を食べましょう!」

恵美姉の声と共にいただきますと言ってご飯を食べ始めた。

「そうだ!二人に話しておくね」

私は今日起こったことを話した。

学校で盗難事件が発生しそれを入江先生が解決したこと。

それにあこがれて探偵部に入部したこと

「へぇー。未希、探偵部に入ったんだ」

チラリと真衣姉は恵美姉の方を見たがすぐに視線を戻した。

「うん」

「何でなんで?好きな人が探偵部にいたの?」

「違うよー。真衣姉じゃあるまいし」

「なっ!?わ、私はべ、別にあいつがいるから陸上部に入った訳じゃないし!」

真衣姉さんの頬が明らかに紅くなった。

そんな様子をみて恵美姉さんは微笑んでいる。

「と、とりあえずテレビ!テレビ!」

無理やり話題を変えるようにして真衣姉さんはテレビをつけた。

ニュース番組をやっているチャンネルだった。

「本日、路上で41歳の男性が倒れているのが発見されました。男性には刃物のようなもので刺されたようなあとがあり病院に搬送されましたがまもなく死亡しました。場所は………」

「結構近いわね。帰りとか気を付けてね」

「はーい」

「了解」

「警察は殺人事件と見て操作を進めています。さて次のニュースです……」



ご飯も食べ終わり私は皿洗いを始めた。

今日は皿洗いは私の当番だ。

真衣姉はテレビを見ていて、恵美姉は風呂に入っている。

時間はまだ8時と早い時間であるが恵美姉はかなり早くに就寝するのでいつもこれくらいの時間に入っている。

「皿洗い終わった!」

皿洗いも終わり私もリビングのカーペットに腰を下ろしテレビを見始める。

「未希、探偵部に入るんだよね?」

「そうだけど、なんで?」

「いや、明日驚くかもしれないから、明日まで楽しみに待っててね」

その言葉に少し疑問を抱いたがまぁいいかとテレビを見始めた。








翌日の朝。

私は部屋の鏡の前で自分の黒く長い髪をいじっていた。

「よしセット完了!」

鏡に映る黒い長髪のサイドテールで制服姿の私。

これが私のいつもの髪型だ。

「未希ー!真衣起こしてー!」

下から姉の声が響く。

真衣姉は朝にとても弱い。

私は部屋へと向かい寝床の目の前に立った。

「起きて!朝だよ!」

私の姉はすやすやと眠っている。

「早くしないと朝ごはん冷めちゃうよ!」

ゆさゆさと揺するも全く起きる気配は見えない。

こうなってしまえばあの人が来ない限りはおきることは無いだろう。

私は下の食卓へと向かう。



食卓にはすでに2人分の食事が並んでいた。

「真衣は起きそうに無い?」

「うん。でもジャべさんが起こしに来てくれると思うよ」

ジャべさんとは真衣姉と同じ学年の陸上部だ。

それと同時に真衣姉の思いを寄せる人でもある。

「真衣姉も幸せだよね!好きな人と一緒に登校できるんだし!」

「一緒に登校かぁ…」

しょんぼりした顔で恵美姉が上を見上げる。

「ん?どうしたの?好きな人でも出来た?」

「え!?違う違う!!違うよ!ちょっとボーっとしてたの!」

そういえば真衣姉の学校での事はそんなに知らない。

私は大体毎日数学の手伝いで居残りなので昨日のような事件が無くても5時ぐらいには帰って来ているが、そのときにはもう恵美姉は家にいる。

なので部活はやってないのだろうなと思っていた。

「それはそうとして!今日から探偵部に入るんでしょ?」

「?、そうだけど」

「驚くかもね」

ふふふと何かを企んでいるかのような表情で私を見てくる。

「?、分かった」




ご飯も食べ終わり身支度も済んだ。

「じゃあ行ってきます!」

「行ってらっしゃい。むやみに見たら駄目だからね」

「はーい!」


いつも出掛けるときにはその言葉をかけられる。

心配されなくとも意図的に見ることはしない。

見たところで変わらないのだから。


時刻は午前7時50分。

まだ真衣姉は起きていないため恵美姉は起きるまで残ることだろう。

私は学校へと歩き出した。

学校までは徒歩で10分ほど。

まだ時間にはかなり余裕があるのでゆっくり歩いても全然間に合う。

「今日も頑張っていこう!」

自分自身に声がけをして学校へと向かっていく。





教室の時計は8時5分ごろを指している。

今日も私は一番に教室へと到着した。

自分の席へと腰を掛け数学の教科書をぱらぱらと読み始める。

とても静かな教室。

室内には机や植物などのインテリアが存在している。

こんなに静かに学校内で勉強できるのは朝しかないだろう。

数分も経つと他の生徒達も少しずつ増えていく。

いつもと大差ない見たことのあるような日常。

だが昨日から探偵部に入部した。

それが日常にどのような変化を与えてくれるのかと私は少しわくわくした。








放課後。

私はある教室を前にとても緊張していた。

その教室とは探偵部の部室。

昨日探偵部に入ったため今日からその一員として活動することとなる。

先生の話によると、主な活動は学校で起きた事件の解決や推理パズルなどを解いたりしているらしい。

事件と言っても落とし物探しなども含まれる。

とても楽しそうなのだが一つ衝撃的なことを聞いた。

なんでも、まるで過去が見えるかのようにいろいろな事件を解決してしまう副部長がいるらしい。

そんな人物に一人心当たりがある。

そういえばその人物に部活を聞いてもなんだかんだで教えてくれなかった。

私は部室の扉を開いた。

中は割と広く周りには本が詰まれ中央には大きな長机が並べてある。

そして6名の人物が座っていた

その中には黒いセミロングでポニーテールの女性がいた。

なんとなく感づいてはいたがそれでも私は驚いた。

「恵美姉!?」

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時代姉妹は探偵です 藤音 紫 @tuon

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