我は我、君は君。されど仲良くありましょう。①

 創作をしてみたい。そう思ったキッカケは、ありふれた日常で働きはじめて、人生観が広がったからだ。


 昔から冴えないオタクだった。嫌われることを承知の上で、派手なパフォーマンスをやっていた。黒歴史ノートにも名をつらねる、行動的オタクと言えば聞こえは良いが、ただ出る杭が背伸びしているだけとも言える。


 パフォーマンスを行う理由はあったけど、結果として人から嫌われる、避けられるというのは、分かっていてもしんどかった。正直そういう時、こんな風に思ったことが多々あった。


 ……あ、もしかして、俺って。

 なんの存在価値もない、カラッポな人間じゃないのかな。


 ずっと陰りのようにたゆたっていた感情が、ある日をさかいに、ぶわりとふくれあがる。黒い気持が爆発して、自分自身に、オタクに嫌気がさす日々だってあった。


 その度に目を背けて生きてきた。否定された敵意を忘れて、二次元の世界に没頭して、いやされた。そしてまた世にオタク文明を浸透させるべく、行動した。


 一生、認められないかもしれないと思った。でもそんな自分の行動が、数年後に仕事先で大人から賞賛されることになる。


 周りの目を気兼ねせず、大きな声で客の注目をひく。店でプッシュする商品を全力で推して売り上げに繋げると、これからもがんばってくれと褒められた。


 あえて口にはしなかったけど、それは、ひどく嬉しい出来事だった。


 俺は、やっと思えたんだ。


 あ、人生って、ちょっと面白い、って。

 

 ヒトは歪で、たくさんの隙間がある。

 自分と他人のピースを埋めるように繋がっていく。


 最初から形の異なるピースはハマる分けがないんだけど、よく考えてみると、実は単なる先入観だったり、形を正確に把握してなかったり、自分にとって都合の良い形を決めていたり、あるいは最初からあきらめているだけだったりする。


 そう思い始めたら、意外と『ハマる』物は多いのだ。そうした価値観が大人から認められた時、きっと俺の中にひそやかな『自信』が芽生えたんだ。


 それで、俺は少し、もしかするとずいぶんと大胆になった。


 三次元の女の子と話し始めたんだ。


 オタクでもなんでもない子に、俺の気持ちや想いをぶつけはじめたんだ。


 人によったら「貴方は最初から自意識過剰だったでしょう。まったく現実は見えていなかったけど」とか、手厳しい反論がとんできそうだけど、おいといて。


 とにかく思ったんだ。パズルを解くだけじゃない。俺もまた、誰かと一緒に繋がりたい。繋がることのできる物を作ってみたい。自分が理想する形や想いを、どこかの誰かに共感して欲しいんだって。


 それで今は、繋がった先にある物を、その形を、探してる。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る