【if】ver♭.{倫理&先輩}




※ ちょっとフラットな倫理君と、本能に忠実な、野獣ヶ丘詩羽先輩の話 ※

             


【WARNING】

  キャラ崩壊注意

【/WARNING】
















第1話 詩羽、成人するの巻


「私、ついに二十歳になったわよ、倫理君」

「おめでとうございます、先輩」

「よーし。お酒を飲むわよー」

「えっ」

「作家たるもの経験が重要だものっ! 今回は酔っ払いの気持ちを体験するわ!」

「わかりました。どうぞ」

「―――んぐっ、ぐびっ、んぐっ、ぐびぐびび。ぷええぇい!」

「どうです、酔っ払いの気持ちがわかりましたか?」

「…………」

「先輩?」

「倫理ィ! パンツ脱げよオラァン!!」

「水どうぞ、先輩」



※2 詩羽、18歳の巻


「18になったし、神シナリオと評判のエロゲーを買ってきたわよ!!」

「先輩、俺はまだ十八歳未満なんですが」

「倫理君には関係ないのよ。私の為に買ってきたんだもの」

「いえ、ですから自分の家で遊んでくださいよ。日曜の昼間からわざわざ俺の家に押しかけて、堂々とエロゲーの箱を取り出すのは女子としてどうなんですか。っていうか直接ショップで買ってきたんですか?」

「えーと、ノートパソコン何処だっけ?」

「俺の話を聞いてください。そしてクローゼットを勝手に開かないでください」

「はっ、これは!?」

「どうかしましたか、先輩」

「な、なんてこと……っ。こんなところで偶然にも倫理君のパンツを見つけてしまうなんて……か、被るしかないじゃないのっ!」

「先輩」



※3 詩羽、パスワードに阻まれておこの巻


「あ~~~もうっ!! 倫理君! 倫理君っ!! 倫理君ってばぁっ!!」

「なんですか、先輩」

「このPC、私の知らないパスワードが設定してあるんだけどなんなの!?」

「俺の私物だからです、先輩。あとパンツを返してください」



※4 詩羽、キスを要求するの巻。


「倫理君、今からキスするわよ」

「わかりました、先輩」

「目、閉じてね」

「閉じました、先輩」

「いい子ね、じゃあキスするわよ。でもその前に私の肩に手をおいて」

「おきました、先輩」

「ドキドキしてきたわ。続けて愛の言葉を囁きなさい、倫理君」

「好きです、先輩」

「もう一声!」

「愛してます、先輩」

「いいわね。俄然盛り上がってきたわ! あと少しよ! もう一押しで私は完全に貴方の物になるわよ倫理君っ!! さぁ次の一手にクリエイターとしてのすべての情熱と魂と人間性を捧げて私に忠誠を誓わせてご覧なさい……っ!」


「……キス、していいですか? 先輩」


「~~~~~ッ! 鼻血が止まらないわ倫理君ッッ!!!」



※5 詩羽、犬になることを要求するの巻。


「犬が欲しい、私だけの忠犬が欲しいわ。さぁこの首輪をつけなさい、倫理君」

「冗談では済まなそうなのでお断りします、先輩」

「仕方ない子ね。じゃあ私がつけるわよ。倫理君をご主人様扱いして踏まれてあげるわ感謝しろオラァンっ!!」

「水どうぞ、先輩」



※6 詩羽、二次創作で弄られるの巻。


「た、たいへんよ、一大事よっ、倫理君……っ!!」

「どうかしましたか、先輩」

「よりにもよって、澤村さんと私の百合小説なんてものを見つけてしまったわ!」

「正直なところ、一部の人間に需要はあると思います。先輩」

「はぁ!? なにそれ本気で言ってるの!? 私と澤村さんがイチャラブしてて、一体どこの誰が喜ぶっていうのよっ!?」

「実は冴えカノ最終巻予想の一つとして、先輩とえりりんが渡米してくっつけば、割と丸く収まるのではないか。という噂が満場一致でありまして」

「どこの世界線の話よそれっ!? 認めてたまるものですかあーーっ!!」



※7 詩羽、メインヒロインになるの巻。


「メインヒロインは私よ! いいわねっ!?」

「2巻までは確かに――いえ、なんでもありません。口が滑りました先輩」



※8 詩羽、倫理君に襲い掛かるの巻。


「倫理君、ホテルに行っていやらしい事をするわよっ!」

「カクヨムでの性的描写は禁止されています、先輩」

「っ、じゃあじゃあ、朝チュンシーンまでならいいのかしら!?」

「それ2巻でやりましたよね、先輩」

「やっぱりあれが私の絶頂期ピークだって言いたいのっ!?」

「俺は何も言ってません、先輩」



※9 詩羽、結婚するの巻。


「ギャルゲーのエンディングって、結婚シーンで終わるのが多いわね」

「そうですね。世界中の男女ともに〝人生で一番美しい〟のが、その場面であることは否定しようのない事実だと思います」

「じゃあ、その後は消化試合なのかしら?」

「結婚は人生の墓場という言葉もあります。かもしれません」

「でも結婚せずとも、人はいつか死んでしまうわよ。だったら結婚した方が得だという考え方もできるのではないかしら」

「結婚せずに、大勢の異性と付き合うというのも選択肢の一つだと思います」

「そうね。それこそ倫理観を問わなければ、真の幸福とは案外そんなところに存在するのかもしれないわ。――でも」

「でも?」

「その先を往くのが〝物語story〟だと思うわ。倫理君」

「あえて、ですか?」

「そう。あえて、私はその道を突き進んでいく。だけど一人きりでは不安だわ。だから、あえて、倫理君にお願いするわ。――私と結婚なさい。限りない可能性を捨てなさい。人生を棒に振りなさい。すべてを費やしなさい」

「重いですね、先輩」

「そう。重いわよ。重くて苦しくて逃れられなくて煮えたぎる地獄の窯に蓋をされて身体中を無数の針で貫かれて――それでも尚、どこにあるのか分からない、本当にあるのか知れない、たったヒトカケラのを見つける旅路に付き合ってもらいたいの」

「それじゃ、俺からも一つだけ聞かせてもらえますか」

「なにかしら?」

「俺が隣にいたら、貴女は幸せになれますか、先輩」



 ――彼の言葉。それに応えようとして。


 ジリリリリリリリリリリリリ!!!


「…………んぅ?」


 目覚ましの音。私は覚醒する。身体がひどく重たい。原稿に一心不乱に向かい、そのまま張りつめた糸が切れ、机に突っ伏した修羅場明けにありがちな症状だ。


「…………んー?」


 なにか奇妙な、ヘンな夢を見ていた気がする。まったく思いだせないけれど、口の端がほんの少しゆるんだ。


「んー……」


 どうにか身体を起こす。きっとひどい顔で、髪もぼさぼさ。いつ見ても整然と並んでいるのは目前にある物語だけだ。


「ふわあぁ~……」


 大きなあくび。まなじりをこすって、それから「よいしょ」なんて掛け声をあげて椅子から立ち上がった時に、書斎の扉の向こうから声がした。


『――詩羽、起きてる?』


 男の声だった。私の口元はさらにほころぶ。


「起きてる」

『入るよ』

「うん」


 書斎の扉が開く。私たちは、まだ続いていく。




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