『メインヒロイン三国志に完全勝利した澤村スペンサーUC はぁ?』


 (前回までのあらすじ!)



 世界から『金髪ツインテール』が失われようとしていた。



某グラフィッカーA:

「今の時代ってさぁ、ツインっつか、サイドだよね。サイドテール。現実的に真似するにしても、そっちの方が楽じゃん? 金髪ってのもどうかってゆーか」



 インターネットの闇より現れし『サイドテール教団』の暗躍によって、その概念はついに現実を食らいはじめたのである。

 かつて、特定の業界に浸透していたはずの『黒髪ロング委員長の対抗馬は金髪ツインテールで決まりっ』というテンプレート神話は崩壊しつつあった。



某シナリオスクリプターB:

「では、もはや金髪ツインテは〝古い〟のでしょうか?」


某ディレクターC:

「というよりは、時代に逆行してるところはあるんだろうね。もっと現実に即した身なりや性格、それから周囲に溶け込める人物像の方が、ユーザーからは票が取れるのだと思う。目立つ異性と付き合いたくない。という考えもあるんだろう」

 

某グラフィッカーA:

「あるいはそのために世界観を丸ごと切り替えるとかなー。異世界転生とかその筆頭だろうし」


某シナリオスクリプターB:

「その範囲を限定的に絞ったのが、某日常系学園ゲームでしたね。設定には違和感ありましたけど、そんなものはどうでも良い。変な子同士が、周囲の奇異な視線に晒されることなく日常を謳歌できる。という点でとても素晴らしい作品でした」


某ディレクターC:

「昔は少女マンガの巻頭カラーって、髪の色が赤とか青とか緑の女の子いたのにね。今フツーに茶髪だよ。まぁそういうわけで、目立つ組み合わせの、金髪+ツインテっていうのは、端的に言えば〝今の流行じゃない〟という感じかなと」


某グラフィッカーA:

「まー、金髪ツインテと街中デートとか想像できんしなぁ。あとツインテは作業量が多くて面倒くさい。徹夜明けで死に瀕した眼に蛍光色の黄色はほんとツライし。っていうか、僕にもっと休みをください」


某シナリオスクリプターB:

「死ぬまで描け」


某ディレクターC:

「腕折れたら労災だしてね」


某グラフィッカーA:

「少女マンガ家に転生して、女子からチヤホヤされる世界線が欲しいなァ……」



 

 時がうつろいゆくのと共に、流行も変化する。古より続く『ツインテール教団』は窮地に立たされた。彼女たちは新たなキャラ造形を模索したり、自ら黒く染めてみたり「わたし、ツインテールになるよ!」と叫んで正義の味方ヒーローに変身してみたりした。


 それらの試みは成功したといえる。ツインテールを愛してやまない紳士博士ヘンタイらの新規実験キャラデザと称した挑戦は世間の概念を一部上書きした。



//LIVE(AKIBA):


「やるじゃん! やっぱツインテールって可愛いじゃん!」

「初○ミクもツインテールだし、やっぱツインテールは最高だなっ!!」

「――金髪ツインテールは?」

「アレは出落ち枠よ」

「愛されネタ枠」

「可愛いっちゃ可愛いよ」

「そういえば最近、ラノベで珍しく見たわ。金髪ツインテ。なんだっけ、ほら」

「アニメやったよね」

「やったやった。そういえば今度二期やるらしいっすよ?」

「えっ、マジで! 俺アレ結構好きだったなぁ。女の子が可愛いんだよ」

「砂糖さんだっけ?」

「そう! 砂糖さんかわいー」

「黒髪の先輩が好きでした」

「先輩エロいよなぁ」

「あと何人かいたよな。ヒロイン」

「あ、いたいた。後輩の子でしょ? 茶髪でツインテじゃなかった?」

「だったっけ。あ、そうだわ。ショートツインテっぽい髪型だった」

「音楽活動やってる娘が良かったよ」

「みっちーも可愛いかった」


「……ね、ねぇ、もう一人、もう一人いたでしょ!? みんな思い出して!?」


「いたっけ?」

「えーと、あっ、いたいた。二巻で出てきたキャラがいたよね」

「第二巻P197でカットシーンのある株式会社不死川書店・不死川ファンタスティック文庫編集部・町田苑子さんな」

「あぁ、苑子さんかー」

「苑子さんカワイイ」


「……こ、このっ!! 消費豚共がああああぁぁっ!!!」



 ――かくして「金髪キャラってのは今でも需要あるんだけど、ツインテールである必要性はないし、ツインテールが金髪である必要性もないんじゃ……」と噂されはじめた現代社会に関して、もう少し深く掘り下げていこう。


 ほんの少し、真面目な話になる。



 三次元ゲンジツの人間を『カワイイ』と判断するには、まずは外見が第一である事に異論を唱える人はいないだろう。そしてこれは、二次元ゲームの世界もまったく同じと言って良い。


 その上で、二次と三次をイコール(=)で

 結びつけられる要素の存在は欠かせない。


 すなわち『現実でカワイイ子』というのは、その外見から与えられる先的イメージを下に立ち振る舞っている場合がほとんどであるが、二次元ゲームにおいてもこのイメージは超重要である。

 

 どういうことかと言うと『髪を金髪にしたのに下を向いてボソボソと喋っている』と台無しであるし、金髪キャラである必然性はまったく存在しないということだ。


 ギャップ萌え、という言葉も浸透して久しいが、これはいわば『人間性の内面』に通じる意味合いであり、第一印象とは必ずしもイコールでない場合がほとんどだ。


 ギャップ萌えが通じるのは、相手の生い立ちを理解した上での『本当はこういう子なんだね』という共感であり、時間をかけて理解を促した状況でのみ通用する概念である。故に『金髪キャラ』というのは、とりあえずは『明るくてポジティブでないと話にならん』のである。


 しかしだからこそ、現代二次元において『金髪キャラ』『ツインテール』は強い。最強と言って良い。何故ならば前述したギャップ萌えというのが機能するのがこの属性だからである。


 前向きで明るくておバカなのに。内面性は意外に脆く、強がりで、必要以上にセンシティブでプリミティブでモブくてチョロい。三種の神器どころか黄龍を含めた五種の聖獣を携えし存在は、現代エンターテイメントの最重要項目である『キャラ立ち』を成り立たせるための必要条件をあらかじめ持っている。


 しかもその上で『幼馴染』という

 最強無敗の属性を持ったヒロインがいるらしい……。



 ――さぁ、始めよう。

 ここからが、本当のセカイの開幕スタートだ……。


 

 『澤村・スペンサー・英梨々は、完全無敵のメインヒロインである!!』



 金髪ツインテールという、現実リアルでは某会場コミケでしか見えることのない『理想像キャラクター』を、これ以上ない『幼馴染』という形で体現した究極完全生命体に敵う者がいるならば彼女の前に名乗り出るが良い。



 ――な、なんて強さなの……っ!

 やっぱり、金髪ツインテールな幼馴染が弱いはず無かった……っ!!



 この際だから、ハッキリ言ってしまおうと思う。澤村・スペンサー・英梨々は、どう考えてもあえて狙って役割キャラ被らせてきただろう出海ちゃんとは、比べるべくもない超高性級神絵師ハイスペックイラストレーターである。


 仮にシミュレーションゲームで例えるならば、出海ちゃんは最初からクラスチェンジしてて強いんだけど、後半だと成長率の問題で荷物持ちになりがちという状況に比べ、序盤から目覚ましい活躍を見せ、中盤では誰よりも早くクラスチェンジして、後半になると各種パラメーターはカンストするのが当たり前。むしろ経験値を彼女に与えないよう、敵に手心を与えんと苦心するレベルだ。



「っ……!」

(便利な表現。多用し過ぎても問題ない。むしろ好き)


「負けるわけがなかった……っ!!」

「英梨々が、澤村さんこそが、メインヒロインだった……っ!!」


「わかりやすい属性を兼ね備えすぎてて、いじられキャラと化さないとキャラ立たない? 他のヒロインのかませに過ぎない? 第6巻で先輩に美味しいとこ全部もっていかれた? ――っか……!! おまえバカ……っ、あれは布石なんだよっ!!」


「強すぎるんだよ! 澤村さんは! ほんと一分の隙もなくて強すぎるだけだから! あえて経験値を与えられず、イベントもおあずけで、放置されてるだけなんだよっ!!」


「わたし、信じてる!! 強さと弱さ。あり余る才能を持っているにも関わらず、努力を積み重ねることのできる彼女がサブヒロインなんかで収まるはずないんだって!! いつかきっと、輝く日がやってくるって!!」


「誰よりも、なによりも、センターポジションが似合う娘。それが澤村さんなのっ、周囲を省みず『考察が好きなんです』と言えばすべて許してもらえると思ってる痛い信者ファンは、とっくにその事に気づいてるんだからね……っ!!」


「――だから、頑張って! 英梨々ちゃん!! わたし、加藤さんのファンだけど、貴女のことも応援してるからーーっ!!!」



(前回までのあらすじ、ここまで)

 

(次回予告!!)


//voice:

「本編が一行もないとか、ちょっとなんなの、ふざけんの!?」


//voice:

「やっぱりメインヒロインにはなれなかったのね……哀れな子」


//voice:

「正直、これを二次創作と言うには無理があると思うなぁ」



 以上の三本です。

 次号最終回。マグロ、ご期待ください。





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