第2話 身分の差


「駄目だ…」


現れたのは、本当に意外な人だった。


ビックリしたように、カインが…


「貴方は… !」


確か…イージア・ヴォルフ・ウィリアム

俺の兄だったっけ


『何しに来た ?』


フッと笑って答える…

「父上がお呼びだから来たら、こんな状況だからビックリしたよ

人に優しいことはいいけど、相手を考えたら… ?」


あぁ、こいつそういう奴か___

はぁ、めんどくさ


『……』


俺が無視をすると、イージアは、


「ルーズレス… !聞いてるのかい ?」


『うるさいな、俺の勝手だろ』

こいつにルーズレスと呼ばれるのは気が障る…。


そう思っていたら、カインが…


「お兄様になんてことを…、ルーズレス様…」


『だから… ?関係ないだろ…、同じ王族なんだろ…』


「ルーズレス !」


さっきまでとは違い、嫌なオーラを纏っている


それに、俺も乗っかる。


『あぁ ?』


「さっきから、目上の人に対して態度が悪いんじゃないのか… ?」


こいつと話すとイライラする。


『目上…ね、俺はあんたを一度も目上の人と思ったことないけど』


カインの焦りは増す。


「ルーズレス様… !」


イラついてるのは、俺だけじゃないようだ。


「何故、お前みたいなやつに、ルーズレスなんて名前つけたんだろうな… !」


嫌味に聞こえた、人生で初めてこいつに、イラつかされた。


最悪な気分だ。


『間違ってねえよ…父さんは、お前が知らない遥か遠い国でこんなところよりももっと栄えてて、戦争がないところでは、ルーズレス-Ruthlessは

希望なんかじゃない……無慈悲だ。

だから、父さんは間違ってない、俺は無慈悲だ…情なんかこれぽっちも持ち合わせてない…』


そう、ただ

-ある幼馴染の約束を守りたいだけだ…。


そうしなければ、俺が、あそこにいたっていう証明にならないから…


だから、俺は約束を守りづける…。


「ルーズレス !いい加減にしろ !何を訳の分からないことを言っている !」


イージアは、俺に殴りかかった、もちろん避けれる…でも、殴られた方が都合がいい。


鈍い音がした、

俺の口から、血は出なかった。


貴族はゆるいパンチしかできないのだと知った


『ふッ…あっはっはっは…はぁ~あ』


笑いをこらえられなかった。


こんな奴のパンチをわざわざ受ける必要なんかなかった

なんてもろいパンチだ…。


「何がおかしい !」


少し面白くなってきた、こいつの怒りはまるで俺に届かない…。

それよりも、面白い


それが、俺の中で勝っていた。


そう思っていると


そのとき、俺の中で何かが壊れた。


『いやぁ、お前のバカさ加減に、あきれた』


イージアは顔を赤くして、こう言い放った。


__お前は情がない__


当たり前のように俺は言った。


<俺はRuthlessだ>

無慈悲だ

イージアが俺を殴ったあと、カインがすぐに警備を呼び、喧嘩は終わった。


すぐに玉座の間に、連れて行かれた。

父が黄金の椅子の前で立っていた。


「お前たち、何をしている ?」

怒りを抑えて、王の威厳を見せる。

俺のお兄ちゃまが弁解する(笑)。


「父上、これには、訳があります !」


俺は本当に肝が据わっている、そう思えた。

今こうしてる時も、心の中でだがふざけることができるのだから。


「ルーズレス…お前は何か言うことはあるか ?」


『イージアの話を聞いてから答える、間違ってないかどうか』


「なっ…私が嘘をつくと ⁉」

いや、お前普通につきそうだろうが、


『さぁ ?いいからはやく言え』


「はやく言え、イージア」

王様が急がすと、


「はい、父上がお呼びしろというので、呼ぼうと思い城の者が、牢屋にいると言うものですから行ってみるとルーズレスが、奴隷の家族を雇うと言っているのでそれを駄目といったら、関係ないと言われいい加減にしろと言いました」


「何故殴ったんだ… ?」

「意味の分からん事を言われ、手を上げました」


「ルーズレス…意味の分からん事をとは、なんだ… ?」


『さぁ、あんたたちの言うその意味の分からん事は俺にとっての常識だ』

「ルーズレスお前の言ったことをもう一度言ってくれ…」


皆が俺に注目し、俺が話さなければならない空気にした。



『お前が知らない遥か遠い国でこんなところよりももっと栄えてて、戦争がないところでは、ルーズレス-Ruthlessは

希望なんかじゃない……無慈悲だ。

俺は無慈悲だ…情なんかこれぽっちも持ち合わせてない…』


父は、不思議そうな顔で、尋ねた。

「なぜそのような事を言ったのだ… ?」


『父さんは、間違っていると言われたから間違ってないと言った』


「そうか、遥か遠い国とは ?」


きっと、王様はこの先その意味を理解しないだろう。


『それは、まだ分からない…』

不思議な空気が流れた。

ここから、イージアへの問いが始まった。


「何故間違ってると言った ?」


「この者が希望など、ばかばかしいからです !」


「弟に対して…」


『民を… !』


皆がびっくりする、俺まで自分でびっくりした。


『大切にして何が悪い… !』

こんなこと言うなんて、

責任なんてない…もちろん情も、

「あの者は民じゃない、奴隷だ」


だけど、俺のとって大切なことだった。


『俺にとっては民だ…』


「そんな戯言を !」


王は、怒り出す。

「止めんか !もうよい…それよりも魔法は使ってないだろうな !」


魔法…

それは俺がここへ来て初めて耳にしたものだった。


魔法のことを知っているようにイージアは…

「当たり前です !父上 !弟にそんなことはしません」


よく言うな、人の顔を殴っておいて___そう思うのは、俺だけだろうか。


「うむ、イージア、ルーズレスお前たちの仲が悪くなるのはよくないことだ…

同じ国を背負うものとしてしっかり自覚しろ、それからイージアお前は、ルーズレスに謝りなさい」


イージアは当然怒る。


「なぜですか ⁉ルーズレスは奴隷を王宮のいれようとしたんですよ… ⁉」


『別に謝らなくて構わない、人のことをどう思うかは自由だ』


王様はため息をつき、


「とにかく、仲良くしなさい」


そういうと、自分の部屋に戻った。


俺もはやく戻ろう確かめる事ができた。


そう思って、出て行こうとするとまた厄介な奴が絡んできた。


「ルーズレス !お前に決闘を申し込む魔法でな !」


待て、俺は魔法の使い方を知らないんだぞ


『決闘をする理由は… ?』


「何でもいいだろ!」


『却下だ…俺父さん勝負をしたいなら、それなりの理由を作ってこい』

ひとまず時間稼ぎだ。


俺は急いで部屋に戻り考えた始めた。


俺の名前……

____名前が思い出せない、なぜだ…頭の中にはあったはずだ。

けれど一向に思い出すことはできず、ここに来る前のことを考えた。

名前は、置いといてここに来る前は、死のうとしていたんだ…

飛び降りたあと、確か三秒ぐらいで異世界にループした。

そして、起きると俺は皇子になっていた。

ここに来たのは、初めてのはずなのに何故か覚えている。

字も、絵も、建物も、雰囲気も、

知らないはずなのに知っている。

心当たりとしたら、夢に出てきたくらいだ。


とにかく不思議なことがいっぱいである以上、

あまり軽はずみには動けない、そして今最優先すべきなのは


<魔法-magic>


俺は、魔法の練習場へ向かう。


カインに案内はしてもらったが、誰かいるのだろうか?

ゆっくりドアを開け、中を見渡すと<魔法使い-magiccaster>が訓練をしていた。


それを見ていると、師範らしきものに挨拶され、とっさに俺も挨拶を返した。


「皇子様、あれからどうですか ?習得できましたか ?」


習得…何をだ… ?

気になって聞いてみると、

『何の習得だ… ?…すまないな、何故か記憶がなくてな自分にも何があったかわからん』


そういうと、魔法の基礎、原理、強くする方法、など様々なことを教えてもらった。



一番に重要なのは、冷静であること、二つ目は魔法は自分の精神に合わせて形成されること、最後は、いろんなことに魔法は繋がっており、<精霊-spirit>の機嫌を損ねてはいけない、


そして精霊は、強い。


俺は好都合なことに自分は凄く精神レベルが高いと知った。


翌日、カインと共に魔法の練習にとりかかった。


「ルーズレス様…もう無理です」

カインは、大量に体力を消費し地べたに這いつくばる。


『もう少しだ…』


念のため強くならなければ、

いざとなった時戦闘ができないでは困る。


「あっルーズレス様 !あの奴隷の家族を城に入れていいと言っていました」


『そうか、なぜ入れていいんだ ?』


「王様が…」


父さんは願いを叶えてくれる…


『カイン…父さんのところに行く』


「え、今から ?」


『いつ行くと言うんだ ?』

俺はなるべく早く父さんのところに向かった。


叶えてくれるかもしれない希望を持ち、


ガタンッ


入ると、俺の部屋よりも数倍大きくて

少しばかりびっくりした。


中にいたのは、父さん、ここに来て初めてあった母さん、

ずっと思っていたが、あっちの父さんにソックリだ…もちろん母さんも、


「ルーズレス…どうした… ?」

キョトンとしていた

『父さんに、叶えてほしいことがある』

母さんも俺に注目する。

「言ってみろ、何を叶えてほしいんだ ?」


もちろん、あるかどうかなど分からない

けど、聞いてみるほかない。


『学校に行きたいんだ』


父さんと母さんの顔がびっくりしている

「なぜ、行きたいのだ ?」


理由がないといけないのか?

確かに義務教育じゃないけど、


『弱いままなのは、いやだ何も知らないのもいやだ…いずれ国を背負うなら学ぶのは当然の事だと思った』


背負う気などないが、そう言えばなんとかなるだろ


すると、母さんが、

「ルーズレス…魔法なんて、危ないわ

この国を背負おうと思うのは良いことよ、でも…」


『母さん…これは父さんへの願いだ…』

言いたげな母さんの口を止めた。


父さんは、イージアのことも呼んだ。


「イージア、お前は学校に行く気があるか ?」


自信満々に、イージアは答える


「いえ、学校に行く気などありません

母上も心配するし、勉強は足りてます」


俺にどうだ、と言わんばかりの表情だ。


けれど、父さんは、


「なら、何者かに襲われたとき、黙って見ておくと ?」


イージアは、グッと唇を噛む


「ですが、ずっとここにいた方が、

母上が、心配することはないし、

それに…」


「もうよい、ルーズレス学校に行くことを許す、勉学に励みなさい」


『あぁ、ありがとう父さん…』

父さんは、俺にニコッと笑い

鋭い目つきをイージアに向けた。


「お前は逃げたいだけなのだろう ?

子供の間は親に迷惑をかけるのが当たり前だ」


「母上のことを思って…」

険悪な雰囲気は、増す

「今、話をしているのは誰だ ⁉︎」


「父上です…」


「ならば、母さんをダシに使うな…

自分の意見を言いなさい」


「行きたくないです…」

父さんは呆れたように、

「もう、分かった戻りなさい」


イージアは、部屋に戻った。


父さんは呟くように

「全くだらしない…」

同意見だ。


『俺も部屋に戻る…』


「待て !ルーズレス…お前に近衛をつけようと思う、後で部屋に行かせる

あと、聞きたいことがある…

お前は、昔のことを覚えてるか ?」


昔のこと…もちろん覚えてるはずがない


『なぜ、そんなことを ?』


「カインに、記憶がないと聞いたものでな…のう、カインよ」


「あ、はい」


俺は何も言わず部屋を出た。


ガタンッ


出るとカインが、


「ルーズレス様…さっきの…」


『気にしてない…』


はにかみながら、言う


「いえ、あの、そうではなくて

さっきの記憶の話で…」


もどかしいな、早く言え、


『なんだ ?』


「私は、誰にも記憶は、言ってないんです…」


…びっくりして言葉も出ない。








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Ruthless 小由樹 @sayuki

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