本当にあった話
これは僕がまだ、鬼尻爺四天王の4人と行動を共にして間もない頃の話です。
「疲れた……」
この時僕は、爺達の集会がこんなにも活発だと思ってなくて、兎に角疲れていました。
「おい、じいさん」
「むしゃむしゃ……かぁ……」
気を抜けば意識が遠のき……。
「おい! じいさん! 食いながら寝るな!!」
家に帰ってからはいつも、孫みたいな存在に怒られ目が覚めるという日々でした。
「おおっ……すまないね。こりゃどうも……」
「いや、まあ詰まらせたらアレっていうのもあるけど、飯を食ってたらまだいいんだ」
この時の僕は、彼が言っている言葉の意味を理解できませんでした。
「飯を食ってたらって……。なに言ってるんだ? ちゃんと飯食って……」
言いながら手元へ視線を向けた時でした。
「わかったと思うけど、じいさんさ、飯そっちのけで花瓶の花むしゃついてたから」
そう、僕の手には箸ではなく、自分で綺麗だからと摘んできた野草が握られており、晩飯の焼き魚やだし巻き卵には全く手を付けていなかったのです。
「いつ頃から、食ってた……? ていうか、ほぼ食っちゃってるよね? なんで止めないの?」
「いや、飯できる少し前くらいに、疲れたから花でも愛でて疲労回復とか言い出してたろ?」
確かに言って花の匂いを嗅いでたと思う。
「んで、飯できてさ、テーブルに運んできたら爺さん花をむっしゃむしゃ食ってるじゃない? ……そういう日なのかなって」
そういう日って、なにこの子……。
「でも、なんかそれにしてはさ、時折、血塗れた棘かなんかを苦痛に歪んだ顔で吐き出してたりするし、こりゃ違うなって、仕舞には寝始めたからこりゃ完全に違うわって、今だ」
というか、そもそも僕が花を食べる習慣なんてないの知ってるのに初めから違うと思わなかったのだろうか……この子は。
「毒が無かったら基本的に食用として花を食ったりするらしんいだけどさ……俺、食べないよね? 花なんて。十数年一緒に居て爺のこと何も見てなかった?」
自分に害が及ばない限り、基本的に人のやることには口出ししない子だというのはわかってるつもりなんだけど、まさかここまでとは思わなかった……。
「だろうね」
この言葉でもう終わりとばかりに普通にご飯食べ始めちゃってるし……。なんか爺寂しい。
「なに見てんの? 目、覚めたなら食いなよ。更に冷めるよ? ……まあ、お腹いっぱいじゃなければだけど」
「いやっ、食うよ! 食うともさっ! 色んな意味で飯もお前も冷めてるけどなっ!」
こうして、晩御飯を終え、なんやかんやをして……。
「じゃあ、百ちゃん。おやす……くぅ~……がぁ~……」
「はやっ。ノビタさんかそれ以上じゃないか。……まあ、どうでもいいけど」
疲れていたこともあり、僕は床に就くと数秒で眠りに落ちました。
「す~……がぁ~~……」
朝まで起きることはないと、眠りに就く寸前思ったのですが……。
「モモ太郎……起きるのじゃ」
それは耳から入ってくる普通の声とは違う、意識へ直接語りかけてくるような、そんな遮ろうにも遮れないなんとも不思議な呼びかけでした。
「んん~……嫌だ」
でも、僕も負けませんでした。不思議な体験だろうと、こちらの都合ってものもあると思うのです。
「嫌だって……。お主、否定するということは聞こえておるのだろうっ」
痛いとこ突くなと思いましたが、僕は起きたくありませんでした。
「おーきーろー!」
ですが、語りかけてくる何者かも負けていません。必死に起こそうと身体まで揺すってきます。
最初の神々しさは何処へやら、完全に休みの日に父親を起こす娘のような感じになっていました。
「あぁい、あぁい。わかった、わかったぁ……んん……」
僕もその感じに飲まれたのでしょう。何者かの小さな身体を無理やり抱き寄せ、布団を掛け寝ます。
「わかってないっ! 何故一緒に寝ないといけないのだ! やめろっ! 放せっ―――くさっ!」
臭いだなんて、野郎のフェロモンってものをわかってない奴だと思いました。が、お構いありません。
「うぅーっ……違う、こんな筈じゃないのじゃぁっ……」
とか何とか、問いかけ主の声も無くなり、室内が静寂に包まれ数時間後……。
「……はっ! この感じトイレっ……」
朝方、僕がトイレへ起きた時、腕に重みを感じたので見てみると……。
「すぅ……すぅ……」
勝手に人の腕を枕にして寝ている白い着物を着た少女が確かにそこに居ました。
「ふっ、可愛い奴じゃないか」
そっと少女の頭を撫で、起こさないように慎重に腕から枕へと頭を移動させるとトイレへと向かい用を足しました。
あれは……。
なんだったのでしょうか……。
今となっては、僕にもわかりません……。
「いや、混姫だろ。ここにきてまだふざけるってのか、爺、おい」
心霊体験的な出来事で、自分のペースに引きずり込んで霊と一緒に寝る奴なんて聞いたことがねえぞ……。
「いやぁ、娘を授かるとあんな感じなのかなぁ……。まあ、混ちゃんなら大歓迎だね」
…………。
「爺さんってさ、すげえ奴なんだな……」
全く影響を受けないどころか、逆に困らせちゃうんだもんな……。
「ったりめえだ。爺は皆すげえ奴」
思いっきり二っと笑い親指を立てやがるが、否定はできなかった……。
俺には一緒に寝るとか怖くて、恐らくできないのだから……。
「まあ、これが始まりとも言えるのかな。三度目のときは……」
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