やっと会えたよ!アリスの家

「遅い!!なにやってるんだアイツは!!」


とうとう待って居られなくなったらしいアリスはそう叫ぶ。


「せやな……」


当然や……。そろそろ一時間いうところやのに全く来る気配がない。何しとんねん、あいつ、ほんま。


「まさか、あやつめ……逃げたか……?」


アリス、両腕カッチカチなってるやん……。浮き出てる血管かっこよすぎや……。


「…………」


わりと一緒に居って、あいつのことはわかってるつもりやけど……そう考えるのが妥当やろと思う。

そういう奴や。途中でめんどくさくなって平気で帰ってしまう、ある意味凄い決断力を持ってる。


「いや、まあ、さ……」


ただ、そんなこと喋って、火に油―――いや、むしろ油に水?―――を注ぐような事をするわけにはいかんよな。やっぱ。


「それは流石にないんちゃう? 単に広すぎるから迷ってるか、物珍しさから見て回ってるだけやと……思うわ」


フォローをしとくしかない。まあ、本当に帰ってたら意味無いけど……とりあえず、百太郎を信用するだけや……。友達と部活仲間として……。


「はぁ……。まあ、可能性は無いとも言えないが……どちらにしろ目の届かない所に居られるのが嫌なんだがな」


「あ、ああ……。まあ、それは、なんとなく……分かるわ」


なんもせえへんとは思うけど、ほんま“可能性は”無いとは言えへんからな……。変な時はほんまとんでもないことしだすから……アイツ。

「…………」


勝手に風呂とか入ってたりして…………いや、ないか。流石にそれはありへ―――。


「勝手にお風呂とか入ってたりしてぇ~」


れ、恋も同じ事をっ……!


「あ、あのさ……恋。それと全く同じこと、俺も考えたわ……」


流石、幼馴染ってだけあるな、やっぱ。……いや、この場合、流石百太郎と思うべきなんか?


「ですよね! でも、これぐらいは序の口で、もっと私達では想像できないようなことしてそうなんですよねっ?」


「そうっつ!そうやねん! やから、何で来うへんのか、ほんまわからへんねん」


なんか意気投合して、テンション上がってまうやん。どんな奴やねん、あいつ。


「はぁ……」


アリスは熱でもあるみたいに、額押さえてるしさ。


「お前達が言うならそうなのかもしれないが……。当たって欲しくはない―――」



『うわぁああああああ! でかいからっ!! ちょーーっ! マジでかいからぁあああああ!! いやぁあああ!! こわぁああああいっ!!』


アリスの言葉を遮るように、突然、百太郎の悲鳴が外から聞こえきたから、慌てて俺達四人は窓際へと近づく。


『にゃおぉ~~~~~ん♪』


『うわああああああ!! 鳴いたぁああああああっ! こぇええええ!!』


「…………」


何故そうなったのかほんまわからへんけど……。恐らく庭やろう思われる広大な芝で、百太郎は白熊みたいなのから逃げ回ってた。


『ははははははは』


よく見ると、近くで腹を抱えて笑っている赤い髪の女の子の姿もある。


「姉さん……」


アリスは赤い髪の女の子を見て、溜め息を吐く―――。


「って、姉さんっ!? アレがアリスの姉ちゃん!?」


「ああ……。あと、奴を追い掛けて嬉しそうにしてるのは家の猫だ」


「猫っ!? 嘘やんっ!? 白熊やろっ!?」


どう見てもあのデカさ猫やないぞっ……。それにどう見ても赤い髪の娘も姉やないしっ……。


「一体どうなってるんや……鬼白家は……」


と、驚愕してしまった俺の隣では……。


「うわぁお! お姉さん可愛いっ! 頭撫でたーーい!!」


「か、可愛くないとか、い、言えませんわね……」


レンと中嶋も俺程では無いにしろ、やはり驚きを隠せず――主に恋がだが――身を乗り出してアリスの姉と猫を見てた。


「来ないと思ったら……。姉さんと遊んでたとはな……」


百太郎達を見ながら、何かの――と言っても、絶対にいいものでは無い――感情を抑えつつ、そう言うアリスの戦闘力は普段の何十倍にも膨れ上がってる。


「な、なんやこの気はっ……。て、てかアリス抑えろ―――ってぇっ、痛ぁっ!! なんや!? なんか肌ピリピリするぞっ!?」


「えっ! やだっ! なんですの!?」


静電気のあのバチバチする痛みが、一時的ではなく断続的に身体中に走り、ジタバタしてしまう俺と中島の隣で……。


「胸がパチパチする程、騒ぐアレですね?」


一人冷静なレンがニヤリ笑いをアリスに向け……。


「無論だ。お前達、少しだけ気を分けてもらうぞ」


アリスはそれに同意したかと思うと、直ぐ様、窓枠に片足をつき――――。


「って!おぉおいっ!! お前っ、ここ何階か分かって―――」


俺が話終わる前にアリスは窓から飛び出していった……。









「うぉっ……!」

小石がっ……。何時もなら気にならねえ小石がぁあああっ!!


「はっ……」


思った時には既に遅く……。


「うぶぁっ!!」


自分の影で真っ黒になった地面が視界いっぱいに広がった。

「もう……無理だ……」


起き上がろうにも足の感覚がない……。


「ここで……死ぬんだな……」


こんな……こんな、方角も見失いそうな程にだだっ広い、クラスメイトの家の庭が俺の最後なのか……。


「ひっ……」


で、デカイ物体が近付いて来るのが、ノシノシと芝を踏む音と荒い息づかいで分かる……。


「んふんふんふんふっ……」


あっ……。今、すっげえ足嗅がれてる……。


「んふんふんふんふんふっ」


っうおぉおおおおっ! 耳っ、みみきたーーっ!! こぉえええええっ!! じいじ助けてーー!!!!


「???。んふんふんふんふっ……」


「ふぐぅっ……」


髭口周りの毛が触れてくすぐったいっ……。


「んんっ……」


で、でも、今動いてしまえばガブリとやられるっ……。


「ふんっ……」


堪えろっ! 堪えるんだ、俺!!


「やぁー無理っ!! 痒いっ! なんか痒い!!」


はっ……しまった……。


「にゃぉ~~~ん♪」


先程嫌というほど追い掛けてきた、白くて巨大な生き物の顔が視界いっぱいに広がる。


「あ…………あああ…………」


ご、5秒でチビる……。い、いや、後、2秒でチビる……。


「ぁ……ぁぁぁぁ……」


も、もうだめだ……。まともに声が出せず固まるしかない。


「……」


冗談抜きで死を覚悟した……。その時だった。


「もういいよ~~~チビタン。お漏らしされたら大変だからね~~」


巨大な生き物の背後から、シアさんがそう呼び掛けてくれて、巨大な生き物は身体の向きを変えると直ぐ様、お次はシアさんの元へと嬉しそうに走り去っていく。


「ど……どこら辺が“チビ“タンなんだ……」


俺は跳ねるように走っていくチビタンの後ろ姿に目をやり、安堵と共にそう呟くしかなかった。


「ふぅ……」


なにわともあれ、漏らさず……死なず……よかった……。


「やれやれ……って! 忘れてた!! アリスっ―――」


起き上がり、ここへ来た一番の目的を口にした。そんな時だ……。


「ほぉ。やはり忘れてたのか」


何処から現れたのか、アリスは向かい合うように立ち、鋭い視線で俺を真っ直ぐに見ていた……。


「ち、違うぞっ!! 俺だって、トイレ借りただけで、こんなにも目的忘れる程に色々あるとは思わなかったんだからな!」


全ての元凶はきっと鈴さんだ! でも、可愛いから許す!!


「色々……か。要は謝りに来て姉さんと遊んでいたから謝るのを忘れた……と」


「ち、ちげえよっ!! 逆に遊ばれてたんだよ!! 鈴さんの代わりに案内するとか言って、会わされたの巨大生物だぞっ!?」


気を取り戻してから案内されたのは離れにあるチビタンの家だった。

アリスだと嘘をつかれていたのと、見た目普通の一軒家だったので完全に騙されたのだ。

インターフォンを押すと、中から飛び出してきたのが白い巨大生物で、口から心臓が出るんじゃないかというくらい驚いた俺は泣きそうになりながら逃走し、この場で力尽きた訳だ。


「くっ……ぷっくくっ……。い、いや、でも見た感じ楽しそうにしていたではないか」


「いや、笑ってんじゃん!わかってんだろっ? 姉が悪戯好きだってさ! 」



やっぱり姉妹いっしょなんだな!Sな笑いが好きなんだ!


「笑ってなどいないし粗探しする気もない。だが、単純に貴様という人間に腹が立つんだ」


「えっ……。いやいやっ……それはもはや、お前、仲直り云々より生理的に受け付けない部類じゃないのか……?」


単純に貴様という人間に腹が立つとか生まれて初めて言われたが、それは物凄いことだということは分かる。今回の件云々の話ではなく、俺という人間が視界に入れば単純に腹が立つ、と、そういう星に生まれたぐらいのどうすることも出来ない次元の話だ。


「うむ。そう言われればそうかもしれんが……少し違う」


「違う……?どう……違うんだ?」


なんか聞くの末恐ろしい、ぞくそっ……。


「避けたいと言うよりはぶん殴りたい」


「はっ……?なに?意味わかんない。なに?」


「言葉通りだ。腹が立つから避けたいのでは無く、ぶん殴りたいのだ」


「えっ……?」


腹が立つから避けたいのでは無く、ぶん殴りたい……? 腹が立つから関わらないようにするのではなく、関わっていってぶん殴りたいと……そういうことか?―――いやいやいやいやっ!主張おかし過ぎるっ!


「それはてめえが強いタイプってだけだろう!! 出会い頭にいちいちぶん殴られてたまるか! 避けろ! 俺を避けろ!!」


バカじゃねえのこの女っ!? 歩くサンドバッグじゃねえんだぞ!!


“この、フ○ッキュービッ○! マザフ○ッカ! ”



(心の中で)アリスへ中指を立てまくってやる。


「嫌だ」


「え?」


「断る」


「は?」


ちょっとまって、この人なに? 一言で片付けちゃう系?


「お前……それじゃ、俺はどうしたらいいんだよ……。他に何も言えないじゃないか……」


項垂れる他ないとはこういうことか……。何しに来たんだ……俺。生理的に受け付けないと言われただけで、許す以前の話になってるじゃないか……。


「はぁ……」


でも……何がなんでも奉仕活動部を潰すわけにはいかないんだよな……。今までの罰としてやらされる羽目になったのに、ポシャりましたなんてなったら、じろさんは学園での生活態度をジジイに報告し、ジジイは冗談抜きで辺境の地からはるばる日本刀を持ってやって来る……。即ち俺の死。物語の最終回を意味する……。


「なぁ……頼むよ……。」


まあ、日本刀を持ってこなかったにしろ、あまりこっちへは来て欲しくない……。っ

てことは……しょうがないが、するべきことは一つ……。


「俺の事は嫌いでいいから部活は抜けないでくれ……。このとおりだ……」


膝をつけると、すぐさま土下座した。


「ほんと……すいませんでした……」


この時の俺は土下座への恥ずかしさなんか微塵も無かった。あるのはただ芝がチクチクして足が痛いのと死への恐怖心だけ。決して奉仕活動にやる気があるわけではないし、自分の事しか考えていなかった。



だが……。


「うむ……」


何か伝わるものがあったのか、アリスが口を開く。


「分かった……。退部はしないでやろう」


「うおお、マジっ―――」


喜んで顔を上げ、目についたアリスのパンツを擬視した時だった。


「ただし、条件がある」


お決まりの台詞が飛び出し、俺はぬか喜びを噛みしめ肩を落としてアリスのパンツを再び擬視す

る。


「条件って何よ?」


黒とか履きやがってっ。セクシーじゃねえか、くそっ。


「駅前にある私がよく通っている『シャルルン・デブ』というケーキ屋で『暗黒の月』というケーキを買ってくる事だ」


「えっ? 条件って……それ? まじ、で?」



ここまで色々あったのに、やっと出た条件が、ガキの使い……?


「そうだ。暗黒の月を買ってくれば許してやらんことも、ない……」


うわぁ、マジっぽいな。……まあ、しょうがない。やるか。


「ほんと、だな? その、“暗黒のデブ”ってヤツ買ってくりゃチャラなんだな?」


「ちょ、ちょっと待てい! なんだその絶対に要らない名前は! 『暗黒の月』だ!! 店の名前が『シャルルン・デブ』だ!!」


「ああー、何度も言わなくたって、わかってるって。『シャルルン・デブ』で“暗黒のウンコ付き”だろ?」


バカじゃねえんだからさ、まったく。


「分かってないだろうが!! 何に付いてるんだっ! ケーキかっ!? それかさっきのデブかっ! て言うかさっきから何見てるんだっ!! 答えろ!!」


「な、何も見てねえよ。『シャルルン・デブ』で“月極の肉厚”……だろ?」


「月極の肉厚ってなんだ!! 肉の塊を駐車するとでも言うのか!! あ!ん!こ!く!の!つ!きっ! 何故言えない!? 何故言えないんだ貴様っ!!」


胸ぐらを掴まれブンブン揺すられるが、俺は逆三角形をもう一度見ようとアリスが履いているスカートの股関辺りを擬視し続けた。すると。


「アリスちゃん、落ち着きなさい。彼はちゃ~んとわかってるよ~」


近くでのほほんとアリスをなだめる、シアさんの声が聞こえてくる。


「姉さんっ!! でも、コイツは本当にバカでアホで変態で変人なんだ!」


「バカでアホで変態で変人でも優しい心を持ってるから大丈夫だよ~」


いや、シアさん……。全部否定してから大丈夫と言ってやってくれよ……。

じゃなきゃ説得力まるでないし、ただの性質悪い変質者じゃないか俺……。


「くっ……。ま、まあ、姉さんが言うなら仕方ないっ」


「おおっ? えっ……?」


直ぐに解放されたのは嬉しいが……。


「おうぷっ……!」


気分悪っ……!! 高速で視界が上下し続けるとやはり吐き気が半端ねぇ…………。


「よしっ。じゃあ百太郎くん。私がちゃんと教えてあげるよ」


シアさんはそう言うと、対面して正座し、俺の両肩を掴むと鼻が触れ合うか触れ合わないかのギリギリの位置まで顔を近付けてくる。


「は、はい……」


いきなりの急接近で俺の鼓動は直ぐ様マックスに達し、顔も……リンゴのように赤いに違いない。


「いい? 私の目から視線を外さず、後に続いて言ってね?」


「あ、は、ははは、はいっ。が、頑張ります」


何を頑張る事があるのか自分でも分からないが、それほど今の俺は動揺し自信も無いのだろう。


「シャルルン…………」


「しゃ、シャルルン…………」


ああ……溜めが妙に色っぽい……。つうか、瞳綺麗すぎる……。吸い込まれそう……。


「デブ……」


「で、デブ……」


なんだか頭がくらくらしてくるな……。


「暗黒の……」


「あん、あ、暗黒の…………」


なんだろうこの良い香りは……。


「おも……ち……」


ああ……囁きが堪らん……。


「おも、ち……」


おお…………頭に完全にインプットされた感じがする……。そう、アリスの好きなケーキは暗黒のおも―――。


「いやっ、ちょっと待て姉さん!! 全然違うだろう!! 暗黒のお餅ってただ焦がした餅だろそれ!!」


傍らからアリスがそう叫び俺はハッとする。


「な、なんか……危なかった……?」


よくは分からないが、催眠術の様なもので全然違う名前が頭に刻み込まれようとしていたのは間違いない。


「お、恐ろしい……」


身を引きシアさんを恐怖の眼差しで見ていると……。


「だって……。妹なのにアリスちゃんの好きなケーキどころか……何も知らないんだもんっ……」


シアさんは下を向くとスカートの裾を握り、今にも泣き出しそうな雰囲気を醸し出す。


「姉さん……」


それを見たアリスはというと、同じように悲しそうな顔をして、シアさん隣へ屈み込むと肩に手を置く―――。


「うっそぉ~~!イェ~~~イ!!」


………いや、まあ、なんとなく分かってたが、急に元気になったシアさんがアリスを押し倒した。

多分、いつもこうやって、純粋なアリスを騙しているんだろう。


「なっ……!!姉さん謀ったな!!」


だが、アリスも少し驚いたようだがそんなに取り乱したりせず、がっちり抱き付いているシアさんをどうにか引き剥がそうとする。


「最近、一緒に寝てくれないからお姉ちゃん寂しいんだぞ」


必死に抱き付きながら、そう甘えるシアさん。なんと可愛げがあることか。


「一緒に寝るわけ無いだろう!部屋に来てはガサ入れの如く漁るんだから!」


アリスはやはり必死に引き剥がそうとする。年頃の娘となると、姉だろうとガサ入れは確かに嫌かもな……。


「そんなのしてないよ~~。したとしても、それは姉として妹の部屋に入れる嬉しさからだよ~~」


「百歩譲ってその事は大目に見たとしてもだ! 部屋でたき火しようとするじゃないか!!」


へ、部屋でたき火っ……!?ワイルド過ぎるだろぉ……シアさん……。


「あれはアリスちゃんが寒いって言うから~~」


「だからってたき火は無いだろう!ゴウゴウと燃え盛る我が家を見て“暖かぁ~~い(はぁと)”とでも言うと思ったのか!!」


…………言ってたら精神病棟まっしぐらだよな…………。


「え~でも~……。枯れ葉集めるの大変だったんだよ~」


「バカもんっ!! 掃除するのその倍大変だったんだぞ!!」


着火寸前だったのかよ……。恐ろしい姉だな、本当に。


「…………」


けど、そういうノリ嫌いじゃ無い、て言うかむしろ……。


「き、貴様っ! なに静かにツボってるんだ! 笑うな!! 私はまだ許した訳では―――ていうか姉さん! いい加減離れろっ!」


「いやだ~。絶対離れないよ~」


本来なら、アリスは腹を抱えて笑っている俺を絶対にぶっ飛ばしにくる筈だが、未だにシアさんにきつく抱き付かれ身動きが取れずにいやがる。……今がチャンスだな。


「よしっ……」


許した訳ではないと言っても、要は暗黒のなんとかってケーキを買ってくりゃ許してくれる訳だしな。

ケーキを買って来いだなんてアリスもなんやかんや言っても女の子だ。


「んじゃ……」


善は急げ。日は傾き空は赤く染まりだしてはいるが、歩いて行っても駅前なら余裕でたどり着けるはずだし、仲直りしているようでしていないという微妙な感じで居るのは非常にめんどくさいので今から行ってきてやるか。


「俺行ってくるから。まぁ……姉妹で楽しんで」


未だ揉み合っているアリスとシアさんの二人にそう言い手を振ると、すぐさま屋敷の門へと向かって走り出す。


「あっ、おい! まだ話はっ―――」


「隙ありぃ!!」


風を感じ視界は遠くにある門だけ捉えている中、背後でアリスとシアさんの声が聞こえたような気もしたが無視して様々な物を―――。


「ちょっ、今度はどこいくねんっ」


「えっ! えっ! 百ちゃん!?」


「ちょっと! なんですの!?」


様々な人々を後方へと流しながら、俺という人間が持っているありったけの体力を使い、必死に手を振り足を前へ前へと動かし駅へと向かったのだった。



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