屋上空模様
鬼我島学園、屋上―――。
「青々しいですね~」
恋が屋上のフェンスにもたれ、空を見上げながら言う。
「確かにそうだな。良い天気だ……」
私も恋の隣でフェンスにもたれ、空を眺めている。
恋が言った通り「青々しい」という言葉がぴったり合いそうなくらい、雲一つ無い青空がどこまでも広がっていて、見ていて清々しく気持ちが良い空だった。
「…………」
「…………」
二羽のカラスが優雅に上空を過ぎていく。
恐らく番い(つがい)だろう。勝手な想像だが、この空を心から喜んでいる様に見える。
「…………」
「…………」
仮に私にも伴侶ができ、共に何処までも続くこの美しい世界を自由に舞うことができたとしたら、どれほど幸せな気持ちになれるのだろうか……。
『なあ、なあ。アリスカア、アリスカア』
少し前を飛ぶ旦那が振り返り声を掛けてきた。
『アリスカアって言うな。普段「カア」なんて付けないくせしよって』
ため息混じりにそう返し旦那の隣に並んで飛行する。
『おい、お~ぅ。つれないぜぇ、カア~、アリスカア~』
『うるさい、目突つくぞ。…………で、なんだ? どうかしたのか』
『どうかって……別に何も無いけどさ』
『お前っ、何もないのに私の優雅な空中散歩を邪魔したのかっ!?』
あれほど言ったのに!
「今日は、この良い天気を楽しみたいから、邪魔しないでね」と!!
女性らしくお願いと言うから慣れない語尾に「ね」を付けてまで頼んだのにっ!
信じられん、このバカがっ!
「っ…………!」
物凄く旦那を睨む。パイロキネシスが使えれば一片のDNAも残さず灰にしてるところだ。
『い、いや、俺はさっ、お前が大好きだからっ……そのっ……』
『なっ、だ、大好きって…………』
そ、そうか、それならしょうがない。
『何も無くても名前を呼んで…………』
『あ、あぁ……』
ま、まあ、そういうことなら許してやらんことも―――。
『しまうとかは無くて。ただ暇が嫌なんだ、俺』
『なん………だと……』
『だからさ、暇なんだよ。俺』
こ………コイツ………。
殺してやるっ!!
『お、おいっ、アリスカアどうしっ――ー熱っ!! なにこれ燃えっ――ーてっ、あっつ!』
『死ねぇっ…………』
『えっ…………。ーーーうわっ! うわぁあああああああーー!!!』
ああああぁぁぁぁーー…………。
「…………さん?」
「くふふふふふ」
「…………マ姉さん?」
「はーっはっはっは!!」
「えっ、ちょっと、アロマ姉さんっ!?」
「はーはっは――――っはっ! 私は何をっ!?」
気が付くと私は屋上で高笑いをしていたようだ。
「アロマ姉さんっ」
そして恋はと言うと……。
「アロマ姉さん! アロマ姉さんっ!! ちょっ、アロマっ! アロマっ! アロマっっ!」
半泣きになりながら全力で私を揺さぶっている…………。
「あああ、あの、れれれ、恋。も、もう、いいい、いいから」
食後だと言うのに視界が上下されて酷く気分が悪い。
「おりゃああああー!!」
「おぉおおおーっ!!」
『おりゃあ』じゃないっ!!そんな激しくされると、ヒロイン史上わりと最悪な出来事がっ…………。
「やめいっ!」
「ひゃんっ……」
口から何か――間違っても綺麗な物じゃない――が出る前に、恋の頭に手刀を打ち込む。
「あ、アロマぁ…………姉ぇ……さん……? アロマ姉さんっ!!」
恋は私の顔を見て驚いた様に目を見開いたかと思うと、直ぐ様、ガバッと抱き付いてくる。
「ああ。いかにも私がアロマ姉さんこと、アリス姉さんだ」
「姉さん! 姐さーん!!」
「よーし、よし」
私は泣いて喜ぶ恋の頭をわしゃわしゃ撫でる。ふふっ、可愛い奴だ。
―――って、私も充分変態じゃないか……。くそっ。
なんで、また、仮の伴侶があいつなんだ、むかつくっ。
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