奉仕活動部立ち上げナリよ

ーーー一方、職員室では 。



「奉仕活動部っ!?」


驚く俺とロピアンと寝子を前にじろさんは「ああ」と大真面目に頷いた。


「それに俺等が入れと?」


状況が読み込めて無いロピアンと寝子に代わり、俺がじろさんに尋ねるが……。


「いや、ちげぇ」


じろさんは首を左右に振る。


「え?じゃあどういう―――――」


「てめえらが立ち上げるんでぇ」


「ええっ!?」


じろさんの言葉に俺達は再び驚いて目を丸くしてしまう。


「立ち上げるって――――」


『どうやって?』と続けようとした時、職員室の戸がガラガラと音を立てて開かれた。


そして……。



「やってる~?」



“ヤツ”が顔を覗かす。


「うるさいっ、早く入れ」


その後ろからは少し苛立ったアリスの声も聞こえてくる。


「うるさいってお前……あぁ、分かったよ。……ぬぁあーっはっはっはっ」


覗くのを止め、魔界の人っぽく高笑いをしながら百太郎とアリスは職員室に入ってきた。


「ちょっと待てっ! 私は高笑いなどしていないっ!」


「なぁーっはっはっはぁー。誰に言ってるんだお前は。ぬははは」


物凄い邪悪に笑うアリス。


「ち、違うっ!! 私じゃない! 百太郎だっ!」


「だから誰に言ってるんだ。ぬは、ぬははははは」


下をベロベロさせて狂ったように笑うアリス………。


「だから! 私ではっ―――」


「お前等ここ職員室やぞ。そろそろ黙れ。はよ来い」


ゴリラがそう言い手招きする。


「オーケイ。直ぐそちらに向かう。待ってろ」


「誰やねん………お前」


駆けつけてやったのにそんなつれない事を言うゴリラだ。クソ野郎が、まったく。


「…………」


「…………」


まあ、そんことより、だ。じろさんの元へ来てみて気付いた事がある 。それは………。


「ロピアンと寝子。てめえらどうしたんだ? ぬぅあはははっ」


反応を期待して笑ってみてやったのに、こいつら何も言わず下を向いていやがる。


「おい、お前ら、ほんとどうしたんだ?」


怒られて沈んでるとは違う、なんと言うか母親にお使いを頼まれて、断ってもどうせ行かされる、断らなくても行かされる、そんな理不尽な縦社会に不満を抱きつつも「しょうがないや……」と、しょうがなくねえのに自分に言い聞かせてる様な………なんか、クソみてぇな表情だ。


全く事情は知らねえが、じろさんの話はそこまでダルい話なのか……?


「はぁぁぁ………」


よく見ると、ゴリラもかなりダルそうな雰囲気だ。バナナが切れてしまった様な、くそみてぇな表情だ。


「とりあえずな、百太郎。ヤバいで」


ロピアンと寝子に代わり答えるゴリラは真剣そのもで、隣に立ち並ぶロピアンと寝子も頷いている。



あぁ……凄まじく聞きたくねえ……。俺もまたくそみてぇな表情になってる筈だ。



それなのに……。


「なにが、やばいんだ……?」


聞いちゃった………。


「あぁ、それは俺っちが話してやるぜぇ。途中だったしなぁ」


俺やゴリラ達五人に囲まれ、自分の椅子に短い足を組みながら座っている俺っちこと、じろさんが話してくれるらしい。


「そうか、頼んだぞ。俺っち」


肩に手を置いてみた。


「言われなくても話してやるぜぇ。てめえが黙って大人しくすればなぁ」


じろさんが鬱陶しそうに俺の手を退けて睨んできたので、流石に黙って大人しくしようと思う。


「もう一回初めから言うとだなぁ、てめえら五人には奉仕活動部を立ち上げてもらうぜぇ」


「ほ、奉仕活ぅっ!?」


「じろさん………マジなんか?」


「ヒィィィィェェェェェェエエエエエエエエァッ!」



『ちっ………………』



黙ります。すいません。 ほんとすいません。



いや、ほんと、皆、そんなに睨まないでお願い、舌打ちとかやめて傷つくから、頼むから。


「ああ、奉仕活動部でぇ。マジだぜぇ」


「でも、何で俺等なん?」


ゴリラが皆が知りたいであろうことをズバリ聞く。


「その一年の兄ちゃんや鬼白はまあ、関係ねぇっちゃねえんだが…………」


そう言い、ゴリラ、ロピアンと視線を向けた後、俺を見据えるじろさん。


「この三人。特に百太郎と絡んじまった事を後悔するしかねえなぁ」


「お、おいおいっ、失礼だな君。触れるな危険じゃあるまいし」


俺と絡んだことを後悔って酷すぎだろっ。


「何を言ってやがる。散々悪戯しやがってよぉ。今日の放送だって一度や二度じゃねえだろぃ、バカげぇ」


じろさんの言葉を聞いて驚くアリスと寝子、苦笑いするロピアンに顔を背け肩を震わすゴリラ。

まあ……そう。実は一度や二度じゃ無い。内容は違えど五回は確実にしたことがある。勿論ロピアンとゴリラを連れて。


「音楽室の絵を全部俺っちに取り替えたり、俺っちの机に世界一くせぇ缶詰とくさや入れて職員室で異臭騒ぎを起こしたり、また、俺っちの机を片付けさした時もっ………」


じろさんはあの時の事を思いだし怒りに震えている。


「あぁ………………あれか」


懐かしいな……………。


あの時………………。





『ああっ、めんどくせえっ!』


あまりにも悪戯する俺に、罰としてじろさんは自分の教職員用の机を俺に片付けさせたんだよな。


『んもぉーっ、めんどくせえっ!』


何故こうなる? ってぐらいに本やプリントが山積みで、本と本の間にはペンや消しゴムや鉛筆やよく分からないプラスチックな物が挟まり、ちょびっともスペースがなく見ただけでやる気が無くなるくらいにきったねえ机の上を渋々ながら一応掃除して、終わった時だった………。


『うむぅ……………』


俺はその時ある疑問に苛まれたんだ。

机の上は片付いたが机を片付けろと言われた。

てことは引き出しの中も?


『まじか? つうか俺真面目か………………?』


小さい事だが二度手間なんて誰しもそうだがしたくない訳で、後で「出来てねえじゃねえか」とか言われるのも腹が立つ。


『ったく、しゃあねえな………………』


一応、引き出しの中も汚いなら片付けようと思い引き出しを開けた。


『うおおっ、おおうっ?』


途端に声を上げてしまったよ。

確かに引き出しの中も汚かったがそれに驚いたのではない。じゃあ何に驚いたのか?


『男女の営みの本がわりとある…………だとっ………』



そう、俗に言うビニ本が5、6冊あり……没収したのか買ったのか………。


まあ、後者だと思うけどね。


『ふふぅ~ん』


で、真面目な俺はじろさんの為にも……。


『本は本立てにね』


机の上の本立てにちゃんと置いてあげた。授業で使う教科書やらを挟む感じで。



………と、まあ、そういうことがあり、後にじろさんは女性の教職員方には白い目で見られ、教頭には怒られ、俺には怒鳴り、まあ首にならなかったのは良かった。こんな俺でも、流石にあの時はやり過ぎたかなぁ~とは思ってはいる。


「何があったんだ?」


こう言う話がもっとも苦手そうなアリスがじろさんに問う。 知らないって罪だ。


「な、なんでもねえっ。特に鬼白には、な、なんでもねえんでぇ」


じろさんもそれを知ってか自分で少し出しておいて引く。珍しくナイス判断だ。次郎さん。


「と、とにかくでぇ。この学園のバカは更正すべきってんでぇ奉仕活動部を立ち上げさせるんでぇ」


お、おいおい、次郎さん。


「いや、あんまり理由になってないだろ。つうか、奉仕活動部ってなんだよ」


「ああ?」


『それも、わかんねえのか?』なんて言いたげに見てくるじろさんだが、クソ野郎だ。ほんとクソ野郎だこいつめ。


「ああ? じゃなくて。奉仕活動、ボランティアだろ? それは分かるけど具体的に何処でどう、何するんだ、と、私は聞きたいのだ」


そこへ直れってんだ、お前はっ。


「おおっ、早くもやる気けぇ? 百太郎」


おのぉれぇ、くそがぁっ………変態うんこめぇっ。


「聞いてやってるんだぞ! 質問返しはやめいっ!」


「こっちは話してやってるんでぇ。バカ野郎ぅっ」


くっ………駄目だ。俺だと話が進まん。こんな時は………。


「うぅぅんうぅん……」


俺は隣に居るゴリラの肩を掴み首を左右に振った。


「おっしゃ………」


意志が通じたのか、ゴリラは頷くと話し出した。


「入る入らんは別として、具体的にどういった内容なん?」


「ああ? 次はゴリラけぇ? しょうがねえなぁったく」


何がしょうがねえんだ、コイツは。


「まあ、アレだなぁ。まず、何故、奉仕活動部立ち上げ話が出たかを説明した方が早いぜぇ」


慣れたとはいえ、未だにこのおっさんがほんとに教員免許持ってるのか疑問に思う。


「今に始まった事じゃねえが、いじめってあるだろぅ?」


「お、おお。特に最近は質悪なってるみたいやな」


いじめに質は関係無いだろうが、ゴリラの言う通り、裏だかなんだかの掲示板やら、ホームページやらインターネットやスマホ? かなんかのチャット形式で話すようなので誹謗中傷書き込みとかあるらしいというのは知っている。


そんなのは本当、裏でこそこそして気持ち悪いもんだ。


「今のガキは根性ねえやなぁ~。俺っちの時代はこそこそせず人前で殴ったもんだぜぇ」


いや、それはそれで問題だ。


「いや、それもどうかと思うけど。てか、それでいじめとなんの関係が?」


「いやぁ、うちでもあるんじゃねえかって会議で教頭がなぁ」


「へぇ、わりと生徒の事考えてんねんな。なんか教頭ってだけでアホってイメージが漫画とかで付いてたわ」


いや、あいつはアホだ。考えてるのは頭の事だけ。


「いんや。教頭は頭の事だけだ」


ほらな。じろさんも同じ意見だ。


「頭の事?」


「ああ。まぁ、教頭じゃなくてよぉ、別の人間に言われたんでぇ……直々になぁ……」


「別の人間? それは誰なん?」


「そりゃぁ、おめぇ、学園長に決まってるだろぅい」


「学園長? てか居たんや」


学校のパンフレットに学園長のものと思われる独特の言葉回しで説明載ってる割に、写真はなく、見たって生徒が一人も居なくて、今や鬼我島学園の七不思議にもなっている。あの学園長か。


「が、学園長っ………………」


「ほんとに居たんだっ………………」


名を聞いて、アリス達がビビッてるのも無理は無い。その七不思議というのは“学園長を見たことが無い生徒が多いのは学園長を見た生徒は次の日死ぬから”と、いうものだ。まあ話し手によっては次の日死ぬの所を人身売買の餌食にされるとか、コンクリートに固められ沈められるとか、ころころ変わる上に理不尽極まりない為、うそ臭すぎて窒息しそうだが、学園という狭い世界では信じてしまう奴も結構居たりする。


「あ、明日、し、し、死ぬんじゃないのか?」


と怯えた、アリスが腕を掴んでくる。


「…………」


何を隠そう、今俺は嬉しい。学園長もっとやれって思う。


「こ、コンクリ固めっ…………」


ずっと黙ってた寝子が初めて口にしたのはそんな恐ろしい事で、震えながらロピアンの腕を掴んでいる―――いや、もしかしたら彼の必殺技なのかもしれない。そして、その必殺“コンクリ固め”を今まさにロピアンに極めてる真っ最中なのかもしれない。


「ふむぅ………興味深いな………」


と、俺がロピアンと寝子を観察している間にもゴリラとじろさんの話は進む。


「とにかくでぇ。いじめがあったにしろ無かったにしろ、俺っち達が生徒に聞いてもなかなか言いやしねえだろぉ?」


「う~ん。まあ確かにな。『はい、虐められてます』なんて先生に報告するやつは少ないかもな。更に虐められるかもしれんし」


言う様な陽気な奴ならまず虐められねえだろ。虐める側も言わないような奴選んでるもんだと思う。


「だからでぇ。先生よりは生徒の方が少しは聞き出しやすい。もしくは目撃する。ちげえか?」


「あぁ、まあ確かに先生が居ない時にやるもんかもしれんし、それはあるかもな。つか、なに? それで生徒の問題を生徒に解決させよう言うわけ?」


「まあ、そんな感じだやなぁ~」


ほぉ、そういうことか。要は生徒間の問題は生徒が解決しよう。君等の自主性に任せますよって……おいおい、そりゃ――。


「生徒会じゃねえかっ!」


いきなり叫んだので、この場に居る全員がビクッと体を震わした。


「いや、ちげえ。生徒会は他にやることが沢山あるんでぇ。それに生徒会に相談する奴も居ねえと思うぜぇ?」


「む。それは確かに………………」


真面目眼鏡軍団の集まりってイメージで相談する気は起きねえかも。

“きてれつ”みたいな奴ならまだしも、真面目眼鏡に熱く親身になられてもちょっと引いちゃうナリよ。


「でも、だからといって、我らに相談するとも思えないナリよぉ。じろてつぅ」


「っつぁあ? 口開いたと思ったらきめぇな、バカ野郎。だから奉仕活動部って名前にも意味があるん

じゃねえけぇ。ふざけんなよてめぇ、コロッケぜってぇ、やらねえからなぁっ」



えっ、コロッケくれねえの?



てか、奉仕活動部…………?


なんの意味が………………。


「あぁ………なんかわかった」


ただの生徒による生徒の為のボランティア部って事にして、あわよくば、いじめ問題も釣れるかもって事か………。


「うわぁ………めんどくさぁ~い」


ぶたごりらがいっぱいかよ………やってらんねえだろ、そんなの。


「俺は嫌ナリよ。ねえ? 嫌ナリよね?」


未だ腕を掴んでいるアリスに言ってみた。


「べ、別に、貴様と一緒なら、い、いいナリよ…………」


頬を赤らめそう呟くアリス。


「いや、ちょっ、なにいってんのお前っ」


なんでっ…………!? 短時間で距離が縮まってるんだけどっ!?


職員室来るまでのあの嘘っぱち連発でかおい!?


そんなに単純なのこの子!? ぶたごりなのか、お前も!?


「おいっ! しっかりしろ! 唯一、反対しそうなお前がそんな仔猫でどうするんだ!」


「唯っ!?」


「仔猫っ!?」


なんで、お前等が反応すんだよ! ゴリラ猫!!


「わ、私は、やってもいいと思っている。それに、う、嘘、い、偽りは、な、無い。誓える……うん」


「いやいや、ちょっと待てってお前っ! なんでそんな愛を感じるっぽい台詞言えるんだよっ」


腕を掴んだまま頬を真っ赤に染めそう言うアリスに項垂れてしまう。


「はぁ……」


この娘の乙女スイッチは何処にあるんだ………。

学園長の七不思議で吊橋効果も発動中ってのか……?


「決まりだなぁ。じゃあ、おめぇら、コレに名前書いてくれや」


じろさんはこうなることをあたかも分かってた様に、素早くプリントを寝子から順に渡していく。


「俺は書かんぞ!」


名前さえ書かなけりゃいい。こうなりゃ俺は最後まで戦うっ!


「いや、百太郎は書かなくていいんでぇ」


えっ……………それはそれで、なんか恐いじゃないか………………。


「ちょっ、どういう――――」


「もう書いてあるからなぁ」


なにぃっ!? そんなの書いた覚え―――。


「ほれ」


じろさんは奉仕活動部と書いた紙を目の前に掲げて見せる。

た、確かに俺の名前が書いてある……………。

俺の筆跡で………。


「な、何故だ…………」


そんな覚え全く無い。てか、最近、名前を書いた覚えなど………。


名前を書いた…………?


…………。


いや、名前書いた!! 確かにじろさんの前で書いた!  でも白紙だったような…………。


「俺っちが、てめえに普通に頼むとおもうけぇ?」


悪そうな笑みを浮かべるじろさん。


「いや、何言ってるんだお前………」


普通に頼めよ。詐欺だ、それ……………。


「ってか、おいおい、まじで昨日の―――――」


「そうでぇ」


くそっ、やっぱりか………。


昨日登校してきた時、まあ今日と同じ様に遅刻して運悪く昇降口でじろさんに出会ってしまい、説教をされる羽目になり聞くこと数十分。説教もそろそろ終わりだろうと言うときに、じろさんは……。


『もう、自分の名前すら書けないくらい馬鹿になったんじゃねえか』


と言ってきたので、俺はイラッとし……。


『じろさんじゃあるまいし、そこまで馬鹿じゃねえよっ』


と、返したら。


『俺っちもそこまで馬鹿じゃねえ! おーし分かった! じゃあ、ここにてめえの名前書いてみろ! 勿論漢字でな!』


と、白紙とペンを渡されその場で名前を書いた。


『あぁ……ちょっと、もうちょっと右。いやぁ、もう少し上……いやぁぁ、ちょっ、もう少し上ぇっ』


『なんだよ、きもいなぁっ。ここか? つうかどこでもいいだろ』


『そそそ、そこそこ』


なんか白紙の癖に指定してくんなとは思ったが……その紙に手を加え、ただの紙くずが部活申請書に変貌を遂げやがったようだ……くそっ、わりと策士だったってのか、このオヤジっ。


「い、いやっ………」


だがっ………。


「そんなの認めないぞっ!」


じろさんに人差し指を突きつけた。


「それならそれで俺っちは構わねえぜぇ? てめえのじいさん呼んでもいいならなぁ」


くっ………じじいは困る。奴に悪戯してる事バレたら殺される。ボコられるとかじゃなしにマジで殺られる。 何故か茶の間に代々受け継いでるとかなんとかの日本刀あるんだもの。

抜き身で追い掛けられた事何回もあるし、アイツ、マジで振るもの。

だってまだ死にたくないじゃない。


人間だしさ。


ももお。


「しょうがねぇなぁ、え~っとぉ………百太郎の家はぁ………」


「分かった! やるから止めろっ!」


じろさんから受話器を奪う。あぁ……くそ、ほんとくそだ。


「よし、決まりだなぁ~おいっ」


『やる』と言った瞬間、馴れ馴れしく肩を軽く叩いてくる。ほんと、もう嫌だコイツ。


「書けたんやけど、どこ? ここ?」


俺とじろさんが話してる間に、皆、名前を書き終わったみたいで、ゴリラが集めた4人分のプリントをじろさんの机の上に置いた。


「何故、お前はすんなりと…………」


「すんなりって何が?」


「いや、なんか、すんなりと名前書きすぎじゃないか?」


ゴリラにはなんか裏がある。そう思えてならない。


「そんなこと無いで。それよりもういいんやろ? はよ帰ろうや」


「ああ、もういいぜぇ」


怪しい……。奉仕活動の名の元で何をする気だ、このゴリラめっ。


「あっ、そうでぇ」


五人でぞろぞろと職員室の出入り口に向かって歩き出した時、背後でじろさんが何かを思い出したように声を上げたので思考を止め振り返った。


「明日、全校集会で奉仕活動部の披露目だからよ。遅刻すんじゃねえぜ、百太郎。いやぁ、ノルマ達成だぜぇ」


安堵した様子でタバコを吸うしろさんに何か言ってやりたかったが、もう既に決まってしまったので、何も言わず職員室を後にした。



全て決められてたかのように事が進んでく……………。



なんかこえぇ…………。背筋がヒヤッとする。



ていうか、マジで遅刻しないよう気を付けよう。


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