立花本陣学園
立花本陣学園の敷地は、海を臨む千歳山の広大な山稜に、丁度羽織を広げたような形で広がっている。
入り江を利用した学園専用港があり、送迎用飛空艇が停泊している。陸地への階段を上ると、東に行き止まりの州道で、西は海岸線に沿って曲がりくねり、州都タチバナへと続いていた。
鉄柵に囲われた敷地への入口、石の門柱を抜けると、星宮跡まで一直線に伸びる緩やかな登りの大通りを挟んで、左手に中高等部、右手に大学研究部と別れて施設が建っている。
中高等部の施設のみに注目すると、門を入ってまず目につくのが、機械工学科が所有する離着陸場で、アーチ型屋根の格納庫には、二隻の飛空艇が収容されて、学科生によって常に整備されていた。
大通りを進むと、前庭を持つ講堂が現れる。芸能科の学舎でもあり、年に数回、外部に向けて、演劇やコンサートが開かれる本格的な劇場だ。
その先には歩道として舗装された並木の横道がある。植えられているのは桜ではなく常緑樹で、目に清々しい緑が風に揺れて木漏れ日を落としていた。
並木通りに面して山の手には、管理棟を中心に、東に中等部、西に高等部と、校舎が一塊に配置されている。こじんまりとまとまった印象の中等部校舎に対して、高等部校舎は三倍の規模を誇り、施設も充実していた。
老朽化に伴い立て替えが済んだばかりの学舎は、ガラスをふんだんに使ったモダンなデザインで、かといって際立って斬新でもなく、周りの景色と調和するセンスの良いものだった。
その対面には傾斜を利用したコンクリートの観覧席と、桜はここに植えられている。満開を迎えた薄紅の下には、各種球技のコート、芝生や土のグラウンド、体育館や切妻屋根の道場などが配置されている。寮は学舎の裏手に、緑に埋もれるようにひしめいていた。
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