第17話 モンスターやっつけちゃいました。
私は落ちてる武器を次々と拾いました。
ヒュンッ!シュパッ!ドン!
全部モンスターに吸い込まれるように突き刺さっていきました。
でもモンスター、全然倒れません。効いてないの?
【カンナ、聞いてほしいんだ。たぶんアレは普通のモンスターじゃないんだよ。】
「ふ〜ん。」
【もっと真剣に聞いてよ! アレは『魔の眷属』なんだよ。】
「だから?」
【ボクたちの本当の敵さ。】
『ボクたち』に私入ってないよね。よね。
【今のカンナじゃかなわないよ。逃げよう。】
「やだ。」
その時でした。大きな音がして、気づいたら宙に浮いてました。
「カンナーッ!!」
ビッチの声が洞窟内に響きます。
洞窟の天井がゆっくりと近づいてきました。ドン。頭がクラっとしました。
そしてゆっくりと地面に落ちていきました。ドン。ゴロゴロゴロ。
【カンナ!しっかりするんだ。】
目の前にハチベエがいました。アレ?体が動かないよ。なんで?
【ステータスを見るんだ。『HP』はどうなってる?】
「『HP』…1。」
【急いで逃げるんだ。このままだったら死んでしまうよ。早く立って。】
「うごかない…。」
モンスターが私めがけて棍棒を大きく振りかぶりました。
「カンナーーーーー!いやーーー!」
棍棒が振り下ろされました。死んじゃうのかな。もう痛いのやだし、まあいっか。
ドーーーン!
あれ? 生きてる。なんで?
【カンナが手をかざしたから、モンスターの武器が弾け飛んだんだ。すごいよカンナ!】
モンスター倒れてました。
でも、もう何も出来ません。疲れたな。甘いもの食べたいな。
私はかざした手をだらんと下ろしました。何かヒヤッとしたものが手に当たります。
ヒュン!カン!キン!コン!………
某国営放送の素人参加型歌番組の鐘の音のような金属音が洞窟に響き渡ります。そんな気がします。
【カンナ、見るんだ。】
数えきれない武器が空を飛んでいました。
ゲート・オブ・何?
何リミテッド・何?
【カンナが触れた武器が弾け飛んで、それが次の武器を弾いて、それが次々起こったんだ。奇跡だよ。】
そして宙を舞った武器は全部倒れたモンスターの体に刺さりました。
ブブブブブブ!
モンスター、雄叫びのように鳴きながら手足をじたばたさせていました。
それでもだんだん力が弱まり、最後には動かなくなってしまいました。
【カンナ、やったよ! 『魔の眷属』を倒したんだよ!】
ビッチがひょこひょこ片足を引きずって近づいてきました。
「カンナ…ごめんね。カンナ…ありがと。ウチ、騙されちゃったみたい。でも、どうしても元の世界に帰りたかったの。カンナは帰りたくなかったの?」
「うん。」
「どうして? この世界にいたら、今みたいに怖い思い、またするかもしれないんだよ。死んじゃうかもしれないんだよ。」
「アヤ…いない。」
ビッチ、たくさん泣いていました。
「いるかもしれないじゃん。わかんないじゃん、そんなこと。」
「いないよ。わかる。」
「何でよ〜。どうして。」
「私のスキルね『ステルス』なんだ。おかげでみんな気づいてくれないの。きっと前の世界で私、だれにも気づかれたくないと思ってたんだと思う。」
「でも、ウチいたかもしれないよ。」
「アヤいたらこんなスキル持ってない。アヤいたら私こんなイヤな女じゃなかった。」
「うえ〜〜ん、カンナ〜〜〜。」
ビッチが抱きついてきました。
ビッチ、ほっぺたに鼻水スリスリするのやめて。
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