第16話 ビッチ見つけちゃいました。

 イカ男と離れ離れになった私は洞窟をさまよいます。

 そして分かれ道にさしかかりました。


「どっちがいい?」

【知らないよ。それより帰ろうよ。】

「だめ。」


 木の棒を見つけました。


「倒れた方に行けばいいんだよね。」

【そんなのアテにできないよ。】


 私は分かれ道の真ん中に木の棒を立てました。

 そして集中します。


「えいっ!」


 右側に倒れました。


【見たよ。今のズルだよね。カンナが右に倒したんだよね。左に行きたくなかっただけだよね。】


 うるさいな。いいじゃん、どうでも。

 女の直感あたるよ。みくびらないでよ。

 私は右へ行こうとしました。でも先は真っ暗です。やっぱ左行こっ。


【ズルしたうえに守らないってどういうことだよ。真剣味が足りないよ。】


 小言の多いお人形はムシに限ります。新しいお人形欲しいな。


【背中がザワザワするんだけど、変なこと考えてない?】

「うん。」


 いいことしか考えてないよ。

 それにしてもモンスター出てきません。なんで? いいけど。


【カンナ、ちょっといい。】

「なに。」

【アヤのところに着かないかもしれないよ。】

「なんで? 『運』いいのに?」

【これはボクの仮説なんだけどね。アヤのところが危険だとそこに行かないほうが、カンナにとって結果的に『運』が良かったってなることになるよね。】

「ならないよ。」

【いきなり否定! なるよ!】

「だってほら。」


 目の前には血だらけで倒れている冒険者の一団がいました。

 その中の1人はビッチでした。

 私はビッチの所にてくてく歩いていきます。


「大丈夫?」

「カ、カンナどうして? だめだよこんなとこに来ちゃ。」

「行こ。」

「帰れないよ。見て。」


 ビッチは自分の足に視線を向けました。ケガして歩けないようでした。


「カンナ、ひとりで帰って。」

「やだ。」

「ウチ、カンナのこと見捨てたんだよ。」

「いいよ。」

「またカンナのこと見捨てちゃうよ。」

「いいよ、別に。」


 ブモーーーーー!

 その時、ブタのような雄叫びが聞こえました。キモッ。


「ユウキさんたちもやられちゃったみたい。なんかね予想よりも強いモンスターだったんだって。だからカンナ、早く逃げてよ。」

「いや。」


 私は落ちてる武器を拾おうとしました。


【待ってよカンナ。カンナは武器の装備できないよ。】

「武器持ったらどうなるの?」

【弾かれるんだ。やってみたらいいよ。】


 おそるおそる武器を手にしました。

 キュンッ。武器はすごい勢いで飛んでいってしまいました。


【だから言っただろ、カンナ。アヤを助けたいのは分かるよ。だけどこのままじゃカンナも死んじゃうよ。】

「見て、ハチベエ。」


 飛んでいった武器はモンスターのおでこに刺さってました。痛そ。


【カンナ、まさかこうなることを知っていたのかい?】

「……うん。」

【知らなかったんだね。で、びっくりしてるんだね。】

「……うん。」

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