第15話 洞窟に着いちゃいました。
「そのひとに用ある。」
取り押さえられたイカ男はいい気味ですけど、離してもらわないと困ります。
「お前、あの時の。俺の名を言ってみろ!」
「ヤスヒロ。」
「……俺の名を言ってみろ。」
「ヤスヒロ。」
「……お、俺の名を…グスン…。」
泣いちゃいました。だけど同情の余地ありません。と言うか何に同情したらいいか不明です。
「『砂漠の砂』どこにいるか知ってる? ヤスヒロ。」
「ああ、当然だ。そのため仲間を募りに来た。で、ヤスヒロはやめろ。」
「それがどうして、ああなるの? ヤスヒロ。」
思わず口をついちゃいました。
「何のことだ? で、ヤスヒロはやめろと言っているだろ。」
地味に心配になっちゃいました。
「『砂漠の砂』のところにつれてって。ヤスヒロ。」
「連れてく。連れてくからヤスヒロだけはやめてくれ。」
交渉成立です。
【カンナ、アヤを助けるつもり?】
「うん。」
【ムリだよ。だってカンナ、モンスターと戦ったこと無いよね。どうやって助けるんだい?】
「臨機応変。」
【いきあたりばったりなんだね。】
「柔軟に対応する。」
【その場しのぎなんだね。やめようよ。】
「いく。」
イカ男と二人町を出ました。
『砂漠の砂』の人たちはこの先の洞窟にいるそうです。
「ヤスヒロ。」
「やめろ、それ。」
「心臓なくて大丈夫?」
「心配してくれるのか。やさしいな、お嬢ちゃん。」
知ってる。
「ああ、慣れたよ。」
慣れるんだ。
「今はそれより、タンスの角にぶつけた左足の小指がつらい。」
背筋がゾクッとしました。
「それに口内炎がな3個もあるんだ。忘れてカレーライス食っちまった。しかも一番辛いヤツ。」
身震いしました。
「あとな、冷奴だと思ってアツアツの湯豆腐口に放り込んでな。」
嫌な予感…。
「いま裏っ側の歯茎がヤケドでベロベロだ。」
ひえ〜。おいたわしや。
そうこうしているうちに洞窟に到着です。
「こっから先、モンスターが出るからな。俺に隠れるようについて来い。」
どうやらイカ男、肉壁になってくれるようです。よろしくね。
「ちっ来やがったか。」
モンスターが現れました。あれはゴブリン?
イカ男、敢然と立ち向かいます。
イカ男、剣を振り下ろします。
イカ男、受け止められました。
イカ男、反撃されました。
イカ男、片膝ついてます。
ゴブリンだよね。一番弱いモンスターなんだよね。しかも1匹。
なのにイカ男負けそうです。どうしよう。
「お嬢ちゃん、俺はいい、先に行け!」
待ってました、その言葉。絶賛お言葉に甘えます。
じゃあねイカ男。元気でね。口内炎早く治るといいね。
私はその場を立ち去りました。
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