第14話 ビッチと別れちゃいました。

「おはよう、カンナ。」

「おはよ。」


 1週間くらい経ちました。

 その間何をしてたかと言いますと、拾ったお金でスイーツ巡りです。

 今日はどこのお店行こうかな。


「カンナ、ちょっといいかな。」

「なに。」

「ウチたちさ、仕事らしい仕事してないでしょ。不安になっちゃうんだよね。」


 確かに仕事してません。心優しい私はビッチが不憫に思えてきました。

 そこまで言うなら夜こっそり抜けだしてもいいよ。火照った体、冷やしてきていいよ。

 あんまり応援したくないけど、お仕事がんばってね…。


「冒険者なら冒険者らしくモンスター退治とかやったほうが良くない?」

「良くない。」

「なんでよ〜。」

「怖い。気持ち悪い。」


 ビッチ困った顔で笑います。


「確かにそうなんだけどね〜。一緒に転移したシンジくん、もうレベル10なんだって。バリバリ戦ってるみたいなんだよね。」

「うん。」

「カンナ、それ聞いてどう思う?」

「野蛮。」

「だ、だよね〜。」




 いつものお店でお昼ごはんを食べます。おいし。

 その時、チャラ男が声かけてきました。どの面下げてるのかな?


「アヤちゃん、み〜っけ! 探したよ〜。」

「あ、ユウキさん。こんにちは。」


 ウエハースのようにサクッと軽くて薄っぺらいノリです。

 おまけのシール取ったら捨てられちゃうよ。そんな気がします。


「大事な話。あるんだよね〜。」


 その口調に大事感ありません。

 負けないことよりも、投げ出さないことよりも、逃げ出さないことよりも大事感ありません。


「いいかいアヤちゃん、前の世界に戻る方法が見つかったんだ。」

「そうなんですか?」

「で、アヤちゃんを誘いに来たワケ。どう?」

「カンナ、どうする?」


 うさんくさっ! それ以外の感想をひねり出せないくらいうさん臭いです。


「いかない。」

「なんで? 帰れるんだよ。」


 帰りたくもないし…。たぶん帰れないし…。


「カンナちゃん、どうするYo!」


 チャラ男、キャラ崩壊してるよ。


「いかない。」


 ビッチ、泣きそうな顔してます。


「そっか、カンナ。ここでお別れしよ。ウチ、ユウキさんと行くね。」

「うん。」

「今までありがとね。バイバイ、カンナ。」

「ばいばい。」


 ビッチ行っちゃいました。


【行っちゃったけど、いいの?】


 ビッチの気持ち、なんか少し分かります…。

 ビッチの気持ちに答えるの、私じゃムリだと気づいてました。

 ビッチ、最近男抱いてなかったからな。羽伸ばしてきてねビッチ。


【カンナ、カンナの考えてること、ちょっと違うと思うよ。】


 清々しく見送る私を見てハチベエは言いました。

 じゃあ何よ!




 ビッチと別れて数日が経ちました。時間の経過がアバウト過ぎる? 気のせいでしょ。

 いつものお店でスイーツを頼みます。


「カンナちゃん、いつの間に来たの。今日もまた甘いもの? そんなに食べたら太っちゃうわよ〜。おほほほほ。」


 お店の一重まぶた、二重あご、三段ばらのオバちゃんが差し出がましい口を挟みました。オバちゃんが言わないでね。

 スイーツ到着です。ん〜あまい。

 そのとき、お店のドアが乱暴に開けられました。


「オレの名を言ってみろ!」


 イカ男です。どうでもいいけどドア優しく開けてね。ビックリしたよ。


「確か…クラン『銀色の銅』のヤスヒロだよな。」


 となりのテーブルからひそひそ話が聞こえてきました。

 ゴールドじゃないんだ…。

 ゴールドあらためヤスヒロことイカ男、当然ソッコー取り押さえられました。

 なんで名前を言わせたがるかもそうですが、全ての行動が意味不明です。左の心臓なくて大丈夫?


「『銀色の銅』を潰したクラン何て言ったっけ。えげつないことするよなあ。」

「なんでもアジト潰されてお金が必要なんだろ?」

「そうみたいだな。またおっぱじめたっていうじゃないか。」

「大物モンスター狩りだろ?」

「ああ。しかもいつものように新人冒険者何人も引き連れてるって話だぜ。」

「またやるのかねえ、あれ。」

「新人を壁にしてモンスターを狩るんだろ? 前回の新人の帰還率ゼロだったそうじゃねえか。」

「前回だけじゃねえよ。」

「うひー! でも戦闘で死んだってことになるから罪には問われないんだよな〜。」

「くわばらくわばら。」


【カ、カンナ、どうしたの急に。どこ行く気だよ。】


 私は店を出ました。あっ、お金払ってなかった。ま、いっか。

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