第12話 魔法うたれちゃいました。
「ハチベエ。」
「何だい、カンナ。」
「私運いいんじゃなかったの?」
「ボク知らないよ。ステータス覗けないし。」
危険を察知したハチベエ、ひとごとスタンス全開です。
この状況を避けられなかったハチベエの『呪い』も大したもんじゃありません。
ハチベエ、もし人形屋さんに戻ったとしたらやさしく言っといて。
「テメー人様に迷惑かけてんじゃねえよ。店畳め」って。
「オマエ1人か?」
「ああ。」
「わっはっはっは! 1人で乗り込んで何ができる。頭おかしんじゃないですか〜?」
『砂漠の砂』の人が小学生が悪口を言うように煽りました。これは流石に堪えます。
小学生はよくこんな恥辱に耐えてるなと感心します。気がします。
でも、いかつい男、イカ男はクックックと不敵に笑ってました。
き、効いてない? 「頭おかしんですか〜?」効いてない?
「コレが目に入らんか!」
「はは〜。」
いけない。イカ男の言葉に反応して思わずひれ伏しちゃいました。
なんで印籠だと思ったんだろ?
「これはな魔法の水晶玉だ。これをこうやって、こうゆうふうにやって、こうしたら、どうなるか分かってるのか!」
「魔法使えるとか?」
ビッチが答えました。
「なぜ分かった。だが分かったからと言ってももう遅いがな、フッフッフッフ。」
「魔法の水晶玉がいくらするのか知っているのか? オマエ、それ本物か?」
『砂漠の砂』の人がビンボー扱いしました。でもイカ男まだ笑ってます。
「知ってるよ、8千万エンだろ。本物だよ。」
イカ男、律儀に答えてました。以外にちゃんとした人かも。
「よく聞け。これは俺の覚悟だ。これを買うために俺は右の腎臓と左の心臓を売ったんだ。」
心臓って2個も3個もあったっけ?
「おい女! 俺の名を言ってみろ。」
「ゴ、ゴールドさんです。」
イカ男はビッチに自分の名を名乗らせました。どうしようもなく意味不明です。
「次! 俺の名を言ってみろ。」
シーンとしてます。周りを見渡すと誰もいませんでした。私たちだけ?
『砂漠の砂』の人たちはそそくさと逃げたようでした。
「カンナ、どうしよう。」
【早く逃げよう、カンナ。】
ビッチとハチベエが抱きついてきました。どうしよう。
とりあえず引き剥がしました。ビッチ、捨て猫のような目で私を見ます。
うざったいだけなのに大げさだな。
その様子を見て、イカ男が言いました。
「おい!おまえ、どっから来やがった。」
ずっといたじゃん。なんで気づかないの。脳みそもついでに売ったの?
「もういい。お前ら2人だけでも殺してやる。」
水晶玉が光って、矢のようなものがたくさん出てきました。
【魔法の矢だよ。気をつけて。】
見れば分かります。それに気をつけてだけじゃ気をつけれないよ。気をつけての内容言ってよ。
「死ね!!」
魔法の矢が飛んできました。ビッチは私の後ろでハチベエとうずくまってます。
ハチベエ、飼い主私。うずくまる相手間違ってるよ。
魔法の矢が飛び交います。天井が崩れ、窓は割れ、壁には穴が空いてます。
だけど私たちは無傷でした。何で?
水晶玉に『人に向けて遊ばないで下さい』って注意書きでもあった? それ守った?
「お、お前。今、何をした。」
「息してました〜」って小学生レベルの煽り文句は殺されかねないので言いません。
ここは当たり障りない対応でお引き取り願おうかと思います。
「別に。」
逆上しました。短気だな、もう。
「バカにするな〜! うりゃ〜〜!」
魔法の矢、また飛んできました。
アジト、ボロボロです。でもやっぱり私たちには当たりませんでした。
「ウチ、なんで生きてるの。」
【分かったようだね。これがボクの『恩恵』の力だよ。】
さっきまでブルブル震えてた人形風情がどの口下げて言っているのかな。
「何でだ。何で当たらないんだ!」
イカ男、ワナワナ震えてます。
その時、水晶玉が割れて粉々になりました。
私の後ろでビッチに抱かれて隠れまくってたハチベエが、それを見てこれみよがしに前へ躍り出ました。
【それはねカンナがボクの『恩恵』を受けてるからだよ。『運』が限界突破したカンナに魔法の矢は当たらないよ。その代わり他のステータスは最低値だけどね。】
そこまで言っていいの? 『恩恵』じゃなく本当は『呪い』だったってバレちゃうよ?
私は別にそれでもいいけど。
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