第11話 『砂漠の砂』におじゃましちゃいました。

 なぜか私は今『砂漠の砂』本部にいます。居心地わるいな。


「カンナ、来てくれてありがとね。」


 『にへっ』と笑うビッチに殺意が湧きました。ビッチが騙したんでしょ。


「イエーイ!よく来てくれたね。カ・ン・ナ・ちゃ〜ん!」


 チャラ男がウィンクします。

 背筋が氷点下500度くらいまで下がりました。今ならバラでバナナが打てそうです。

 到着5分でコレもんです。この先を想像したら歯がガチガチ鳴りました。


「じゃあ今日のレッスン始めるよ。冒険者には『スキル』ってものがあるんだよ。」

「「スキル?」」


 ビッチとハモりました。イヤな予感しかしません。


「それって、どれくらい『好き』ってことですか?」


 どこまで脳みそがピンク色なの、ビッチ。『好きる』じゃないよ『隙る』だよ。

 どれだけ『隙』があるってことだよ。

 こんなに『好きる』も『隙る』も高そうな女とハモった自分が許せません。戒めが必要です。

 今日1日、甘いものはできるだけ3食ぐらいに控えようと思います。

 これが私のイマシメーションです。


「技術って言葉が近いかな。」


 そうそう技術だよビッチ。底の浅い女は男に弄ばれて終わりだよ。


「技能が適切かもしれないね。」


 確かに7:4で技能かな。かな。


「能力って言ったほうがいいかもね。」


 チャラ男、いい加減にしてよ。どうでもいいから早く先に進めてよ。


「自分のスキルを知りたければ、この先の神殿でお金を払えば教えてもらえるからね。」


 頑張ってお金拾わなきゃ。

 ハチベエを見るとコクッとうなずきました。

 意図が読めないので黙殺することにしました。


「スキルってどうやって取得できるんですか〜?」


 ビッチが聞きました。


「それがね、よく分かってないんだ。ただモンスターと戦った経験と強い思いがスキルを生み出すと言われているよ。」

「じゃあ、キレイになりたいな〜って思ったらキレイになるスキルが生まれるってことですか〜?」

「オーノー!そう来たか! そうかもね。ハハハハハ!」


 脳内お花畑は今まさに満開の模様です。

 安心していいよビッチ。淫らに乱れるスキルなら速攻だよ。


「カンナちゃんも分かったカンナ。なんちって〜!」

「………。」


 チャラ男からトンでもないモンが投下されました。

 ビッチ、そうやってクスクス笑ってあげるのは、むしろ残酷な行為だからね。


「でもね、最初からスキルを持っている人が極々まれにいるんだ。」

「そうなんですか〜。お得ですね。」

「そうとも言えないんだよ。この場合転移前に重い業を背負っていた人が多いようなんだよ。」

「ゴーってどういうことですか。」


 そのゴーの言い方、ヒロミとか、ショーグンとか、ダタケシとかそんな言い方だけど、全然違うからね。でも何のことだろ?


「例えばね、転移前にテストの点数が悪くて、いっつも母親に叱られてた人がいたんだ。」

「はい。」

「その彼が転移してね。テストが無条件で100点になるスキル『満点』を手に入れたんだ。」

「それでどうなったんですか?」

「こっちの世界にテストがないからね。意味なかったんだよ。」

「はははは〜、なんですかそれ〜。」


 20点のオチでした。チャラ男『赤点』のスキル持ちかも。

 それなのにチャラ男、仲間同士でサムズアップしてました。

 このクラン定番の『ツカミ』なのでしょう。

 やばいよ、このクラン。このまま放っといたら潰れるよ。


 その時でした。大きな爆発音がしました。

 私は立ち上がって音がした方を向きます。

 そこにはいかつい男の人が立ってました。


「俺の名を覚えているだろ?」


 しーんとしてます。忘れた? 知らない?


「バカにするのもいい加減にしろ! 俺の名はゴールド。お前たちに潰されたクラン『銀色の銅』のゴールドだ。忘れたとは言わさんぞ。」


 いろいろ、ややこしくなってきました。

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