第10話 やっと1日が終わっちゃいました。

 クラン『砂漠の砂』の一件はボヤ騒ぎで済んだそうです。

 通りがかりのオッサン大げさだよ。虚言レベルだよ。訴えたらお金巻き上げれる事例だよ。


「ユウキさんのとこ、気の毒だけど大したことなくてよかったね〜。」

「うん。」


 ま、まさかビッチ、チャラ男のことが…。

 『砂漠の砂』で教えてもらったことってアンなことやコンなこと?

 ビッチ&チャラ男。どちらもいろんな所がユルみまくってそうで、お似合いといえばお似合いです。

 でも長続きしないだろうな。


「カンナ、今度『砂漠の砂』に行こうね。いろいろ手伝ってあげようよ。」


 そんなお手伝い絶対お断りです。


「カンナ、泊まるとこ探さなきゃね〜。どうする?」

「どうしよ。」

「あのさ、提案があるんだけど。この中に…。」


 ビッチ、バックパックをがさごそ弄ってます。


「ジャーン!テント! キャンプよくない?」

「よくない。」


 あんな小さなカバンによくもまあ…何次元ポケットかな?


「何でよ〜。いいじゃん、キャンプ〜。」

「虫きらい。」

「大丈夫だよ〜、虫くらい。」

「やだ。」


 結局、野宿よりマシって理由で押し切られました。

 冷静に考えます。キャンプってほぼ野宿だよね?

 野宿度98パーは固いよね?


 テント広げました。虫がわんさかです。


「ハチベエ」

【何?カンナ。】

「あの虫、食べていいよ。」

【無茶言わないでよ!】


 ハチベエ、偏食よくないと思います。

 今日は特別に許すけど明日からは厳しくするからね。


 夕食は外はコゲコゲ、中はレア的な何かを堪能しました。

 キャンプでは定番です。お外というだけでだれも文句言いません。

 お箸を落としてもキャンプなら許されます。特に3秒以内は絶対安全圏です。

 お店では髪の毛一本で大騒ぎする人でもそこはスルーします。

 キャンプ、恐るべしです。そんな気がしました。


 満腹感オンリーだったのに食事のあとは眠くなっちゃいました。


【まあいいけどカンナ、よだれ垂らさないでよね。】


 ハチベエは枕になることを快く引き受けてくれました。ふかふか。気持ちい。


「カンナ、寝た?」

「ううん。」


 ビッチはビッチだけに体がうずくのか、なかなか寝付けないようです。

 ごめんねビッチ、私そうゆう相手、ムリだから。


「カンナってなんか凄いね。」

「なんで?」

「最初、真っ暗だったでしょ? みんなオロオロして騒いでたのに、カンナだけはじっとしてた。」

「うん。」

「それだけじゃないよ。パーティ組めって言われたでしょ。その時もそう。みんな不安だからすぐにパーティ組んで仲間作って安心しようとしてたじゃない?」

「……。」

「でもカンナは違った。それが本当に正しいことかじっと見極めてた。」

「……。」

「外に出た時もそう。すぐに町に行かないで街の様子を慎重に観察してたよね。」

「……。」

「呪われた時だって普通じゃいられないよ。でもカンナは呪いを受け入れたんだよね。だからハチベエにも優しくしてるし、普段通り何も変わってない。」

「……。」

「ユウキさんに誘われた時もね、ウチ怪しいなって少し思ったんだよね。だけど不安だったから、なんかに縋りたかったの。ちょっとだけ投げやりになっちゃったんだよね。」

「……。」

「でもカンナは投げやりになんかならなかった。」

「……。」

「これ、カンナのピンだよね。『砂漠の砂』の入り口に落ちてたよ。カンナ、ウチのこと心配で様子見に来てくれたんだね。ありがとね。」

「……。」

「ウチ、カンナに同情してパーティ組んだと思ってる?」

「……。」

「それもちょっとあるけど、それだけじゃないんだ。カンナだったら大丈夫なんて思っちゃったの。今日1日一緒にいてね、ウチの直感もまんざら捨てたもんじゃないな〜なんてね。」

「……。」

「だからカンナ、ウチ頼りないけどこれからもヨロシクね。ウチもカンナみたいに強くなるようにがんばるからね。」

「……くぅ〜〜〜。」

「寝てるの? 」

「ゴブリンはムリ、ゴブはムリ、ゴブムリ…むにゃむにゃ…。」

「何それ〜? まあいっか。おやすみね、カンナ。」

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