第8話 チャラ男に誘われちゃいました。

【だからね、老化をしないってことは成長もしないってことなんだ…って聞いてるのかい?】

「おいし。」

「うはあ〜〜、ウチもう食べられないよ〜。」


 私達は今、拾ったお金でランチを存分に味わっています。ですけどハチベエがゴタゴタうるさくて気が散ります。ゆっくり食べさせてよね。


「でも良かったのかな〜。拾ったお金でしょ?」

「拾った人のもの。常識。」

「そうなのかな。」


 この後に及んでビッチがなにやら不満そうにしてます。もう遅いよ。同罪だよ。


【説明続けてもいいかな?】

「だめ。スイーツがまだ。」


 その時声をかけられました。ビッチが…。


「お嬢ちゃん、一人かい?」


 チャラい感じのチャラ男がビッチの肩にポンと手をのせました。


「二人ですけど。」


 さすがはビッチ。『肩ポン』をナチュラルに受け入れ肩越しに笑顔を返しています。恐るべし。

 そしてビッチ自身と私、交互に指さしました。


「ワオッ! 気づかなかったよ。」


 鈍感な男はキライです。リアクションがアメリカナイズされた男はもっとキライです。


「ヘイ!君たち冒険者だろ。それも初心者の。ボクはクラン『砂漠の砂』のユウキ。キミたちは?」

「ウチはアヤで、こっちがカンナ。」

「ボク達『砂漠の砂』はね初心者たちを救済してあげるのが目的で立ち上げたクランなのさ。もし良かったら一緒に来ないかな。」

「へえ〜、ユウキさんいい人ですね〜。」


 ビッチ、どうゆう脳みその構造してるの? MAX怪しいから。デンジャラス怪しいから。最低でもツボ買わせられちゃうから。


「カンナ、どうする?」

「いかない。」

「え〜。行こうよ。これからの助けになるかもよ。」

「やだ。」

「じゃあカンナはここで待っててよ。ウチちょっとだけ顔出してくるね。」


 ビッチは軽快な足取りでチャラ男について行きました。ホンコン行き確定の瞬間です。


【アヤ、大丈夫かな?】


 呪の人形風情が一丁前に心配してます。


「大丈夫じゃない…と思う。」

【どうしようか?】

「スイーツ食べる。」

【ブレないよね、キミは。】


 私とビッチ、二人分のスイーツが運ばれてきました。

 ん〜、あまい。おいし。しあわせ。


【ねえカンナ。アヤの分、食べていいかな?】

「だめ。」


 人形のくせに甘いものを要求しました。甘いよ。


【ボクだって食べたいよ。】

「じゃあ、も一つ頼む。」

【アヤの分はどうするんだい?】

「アヤが食べる。」

【ここでアヤをずっと待つ気かい。もう来ないかもしれないよ。】

「持ってく。」


 ビッチの分を紙に包んでもらい、私はお店を出ました。

 途中ちょくちょくお金を拾いながら私はあるものを探しました。


【カンナ、どこかアテはあるのかい?】

「ない。」

【じゃあどこへ行く気なんだい?】

「ここ。」


 見上げた先にはいかにもって感じの武器屋っぽい看板がありました。


【カンナ、武器を買う気かい?】

「武器必要。」

【ちょっと話を聞いてよ、カンナ。大事な話なんだ。】

「今忙しい。スイーツは後で買ったげる。」


 店に入った私はゴツくて変に露出の多い武器屋のオヤジ然とした武器屋のオヤジに話しかけました。


「ここ武器屋?」

「ああそうだ。お嬢ちゃん、いつの間にここに入ってきた。まあいいや。何が必要なんだ?」

「これで一番強い武器ください。」


 私は全財産をおサイフから出しました。


【ちょっと待って! カンナ早まらないで。いいかい大事な話をするから聞いてよ。】


 ハチベエがわらわらと変な動きしてます。しつこいな、もう。


「スイーツはあとでお金拾うから大丈夫。」

【そうじゃないよ。カンナはね武器が装備できないんだよ。】

「なんで?」

【武器だけじゃないよ。キミはボクの『恩恵』のお陰でステータスに影響を与えるものは装備できなくなっているんだよ。】


 あくまでも『恩恵』を貫き通すつもりのようです。

 でもぶっちゃけ武器が装備できないって100%『呪い』成分だよね。だよね。


「ほえ〜武器が装備できないって変わった冒険者もいるもんだな。がはがは。」


 笑うとこじゃないよ、オヤジ。こっちは生死がかかってるんだよ。


「で、お譲ちゃん、どうするんだ。」

「いらない。」

「そうかそうか。これなら装備できるだろ? これやるよ。大変だろうが頑張るんだぞ!がはがは。」


 私を心配してお守りくれました。

 オヤジ、けっこういい人でした。

 耳を刺激するがはがは笑いと、鼻を刺激する酸味の効いた臭いがなければですけど。


 私は店を出たところでお守りをハチベエの首にぶら下げました。


「これいらない。ハチベエにあげる。」

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