第7話 説明受けちゃいました。

【ひどいなあ。これはね『呪い』じゃなくて『恩恵』なんだよ。】


 私の肩の上でくつろぎまくっている子猫のようなフォルムのぬいぐるみ、呪の人形『ハチベエ』はありえない言い訳をはじめました。

 すぐ死んじゃう恩恵ってどんな恩恵なのかな?なのかな?

 だけどこのモフモフ感。気持ちいい。

 こればかりは恩恵と呼んでいいのではないでしょうか。


 そんな私とビッチはお腹が空いたのでランチ目当ての町ブラの真っ最中でした。

 オシャレでおいしいリーズナブルなお店を探します。


【証拠を見せようか。まず『恩恵』その1。ステータスの閲覧。】

「ご飯の後にして。」

「まあまあ、聞いてあげようよ〜。」


 ビッチがハチベエを擁護しました。ぬいぐるみにまで色目使う気? さすがはビッチ、マックス見境無いです。


【右上の方、何もない所に意識を集中してごらん。見えてきたかい?】


 何事もなかったかのように説明始めました。めげないヤツ。

 言われたとおりにやってみると何もないところから文字が浮かび上がってきました。ふむふむ。


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 《カンナ》

  種族:人間

  職業:冒険者・人形遣い(Lv1)

  HP:10/10

  MP:10/10

  攻撃:1

  魔力:1

  耐久:1

  敏捷:1

  運 :100000000000

  技能:ステルス(Lv72)

 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


【見えたようだね。これがステータス。強さを数値化したものなんだ。自分だけじゃなくて人のも見れるからやってごらん。見たい人に意識を集中するんだ。】


 ビッチに意識を集中しました。ビッチ、ちょっと嫌がってます。


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 《アヤ》

  種族:人間

  職業:冒険者・シーフ(Lv1)

  HP:52/52

  MP:18/18

  攻撃:18

  魔力:7

  耐久:15

  敏捷:22

  運 :6

  技能:感知(Lv17)・誘惑(Lv8)

 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


【見えたなら話を進めるよ。カンナのステータスに1つだけとんでもない数字があるのに気づいたかい?】


 気付くも何も『運』だけがアホみたいな数字になってました。


【これが『恩恵』その2。ステータスの一点無茶振り。すごいだろ、これ。】


 『運』以外の絶望的な数字のほうが気になります。

 でもハチベエ、そこには一切触れません。やっぱり呪いだよね、コレ。


【そして最後、『恩恵』その3。老化しない。カンナはもう年を取ることがないんだ。ずっと若さを保ったまま生きていけるんだよ。ボクの『恩恵』いいことずくめだろ?】


 なぜだかぞっとしました。その気持ちを質問に込めました。


「どうして呪われた人はすぐ死んじゃうの?」

【『呪い』じゃないよ。ボクの『恩恵』を上手く使いこなせなかったからさ。でもカンナは違うよね。どのステータスに数字が振られたか教えてごらん。】

「『運』」

【返事はいいよ。『攻撃』?『魔力』? それとも『HP』かな?】

「『運』だよ…。」


 ハチベエ、沈黙しました。どうしたのハチベエ。

 そのままずっと沈黙しててもいいんだよ。

 でも、そうは問屋さんが卸してくれませんでした。


【いいかいカンナ。『運』はね1から10の数値しか存在しないはずなんだ。そして増えることも減ることも滅多なことでは起こらない。これは今までになかったケースだよ。ボクもどうなるかはわからない。だけどカンナ、キミはひょっとしたら運がいいかもしれないよ。】


 だ、だよね…。運がいいのは運がいいのかもね…。

 でも、運がいいのは運が悪かったってこともあるよね…。

 こんがらがってきちゃいました。

 その時です。視界の隅でなにかがキラっと光りました。何だろ?

 私はその光につられてテクテク歩いて行きました。


「カンナ、カンナどこ行くの?」


 ビッチも呪われた私を心配そうにしています。


「お金…拾っちゃった。」

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