第4話 冒険者登録しちゃいました。

「ハイ!こちらはいつもニコニコ明朗会計、冒険者ギルドでございます! お客様はどういった御用でしょうか〜?」

「あのぉ〜、冒険者の職業って、ここでなんか出来るって聞きまして〜…。」


 ここは冒険者ギルドです。たぶんですけど冒険者の命と生活を一手に担う重要な機関ですよね。

 それなのにそれなのに、なんなんですか。この事務的で早口でライトでブライトな対応は…。

 ギルドって、なんかもっとお硬い役人風の眼鏡をかけたナイスバディの受付嬢が無表情で見下すように相手するもんじゃないですか。

 それとも酒焼けした頬にダミ声の屈強な男の人が無愛想に「冒険者なんか辞めとけ」口調で威圧してくるものじゃないですか。

 いえ…楽だからいいですけど…。

 と思いつつも受け答えは全てビッチに丸投げしてます。今まで重ねた罪を償うつもりで頑張ってね。


「お客様、当ギルドのご利用は初めてでござますか〜?」

「はい、まあ。」

「ではまず登録証を発行させていただきますね〜。キセノ文字はご存知でしょうか〜?」

「分かりません。」

「かしこまりました〜! では口答でいくつか質問いたしますのでお答え願えますか〜?」

「は、はい。」

「お名前を教えて下さい。」

「ウチがアヤでこの娘がカンナ。」

「カンナ?……うわぁ!!」


 受付のお姉さん、キョロキョロしたあと私と目が合った途端モーレツに慌てふためきました。ずっと目の前にいたじゃん。


「申し訳ございません!ええと、アヤとカンナっと。では次の質問です。お客様はいつ転移なさりました〜?」

「1時間位前…かな?」

「1時間で登録証の発行までたどり着けるなんてさぞかし優秀な冒険者様になられますよ〜。」


 お褒めにあずかりました。ですがあくまで軽くビジネスライクな口調は崩しておりません。

 しかも微妙に早口の速度が上がったような。気のせいだよね。


 その後も質問を受けました。『いくつか』のレベルはとうに越えております。

 受け答えに四苦八苦しているビッチを見てると、アクビが出ました。

 ヒマだな。早く終わんないかな。


「それでは最後の質問に参りま〜す。お客様方、職業はお決まりになりました?」

「ウチがシーフで、この娘が人形遣い。」

「人形遣いとは珍しいご職業をお選びになられますね〜。」

「カンナねえ人形が好きなんだって!」


 ビッチがうれしそうに得意の『にへっ』とした笑顔を浮かべます。

 ビッチ、あのね私お人形好きって言った覚えないよ。勝手に補完しないでくれます。お人形、好きだけど。


「ハイ!これで登録完了です。おめでとうございます。これで晴れてあなた方は冒険者になられました。登録料に50エンいただきます。」


 お姉さん、明朗会計を謳った割には最後にお金の話を持ちだしました。

 ニコニコ笑えないよ。

 おじいちゃん先生に貰ったおサイフをひろげます。どれが50エンか分からないよ。


「その銀色の硬貨が100エンでございます。それをお渡しいただきますとお釣り50エンをお渡しいたします〜。」


 お姉さんに銀色の硬貨を1枚渡すと茶色の硬貨5枚戻ってきました。

 子供のおやつ程度にしかフトコロが傷んだ気がしないのは気のせいかな?


「これは当ギルドから今回新人冒険者になられた転移者から先着50名様にプレゼントでございます〜!」


 転移者12人…先着50名は意味ないよ。

 プレゼントはバックパックでした。中に何かびっしり詰まっています。


「職業別冒険者入門セットでございます〜。それではよい旅を〜。」

「ありがとうございました〜。」


 受付横のテーブルでバックパックを弄りました。


「おっ! 装備と薬草? 旅のしおりまで入ってるじゃん。これならどうにかなりそうだね、カンナ。」

「うん。」

「ちょっと着替えてくるね〜。」


 ビッチはトイレでそそくさと着替えてきました。


「以外に軽装だな。ズボンも短いし。どうカンナ。ウチ、らしくなった?」

「露出が足りないよ…。」

「ハイ?」


 ビッチ、それじゃあ男は釣れないよ…。

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