6.>受付のお姉さん があらわれた!
「そ、それではステータスカードの授与を行います」
受付に立った美少女──カタリーナはびくつきながら話し始める。
「おう、頼んだ」
柔らかい口調で返答した。
「あの……先ほどは本当にすいませんでした……」
カタリーナは伏せ目がちに再度謝ってくる。
「いや、いいんだよ。別に気にしてなんかいないさ」
「ゴマシオ様がお優しい方で助かりました……」
心底ホッとしたように、カタリーナは呟き、ほんのり頬を赤く染めた。
「俺は可愛い女の子にはつい甘くなっちゃうんだよ」
「可愛いだなんて……キャッ」
手を頬に軽く当て、恥ずかしそうな素振りを見せる。
この女、落ちたな。
……と思っていると、横からセシィーがツンツンと肩を突いてきた。
「あ、なんだ?」
「ゴマシオ様、紳士のフリをするのはよして下さい」
「し、ししししてねえよ!」
……が、ぽわわーと顔を真っ赤にしたまま、意識が宙に浮いていた。聞かれてはいなさそうだ。
危なかったぜ、俺の本性がバレるところだった。
「それじゃあ、始めてもらっていいかな?」
パチンと指を鳴らして、爽やかな声音で告げる。
やっべー、俺紳士すぎだろ。
「は、はい。こちらがステータスカードとなります……」
そう言って、カウンターの下から恐る恐る差し出されたステイタスカード。
って、これ……
「タブレットじゃねえか!」
異世界に転移してから25回目のツッコミ。
もう飽きてきた(読者的に)ので、(俺的に)自重していきたい。(適当)
タブレット端末といってもスマホより少し大きいぐらいの大きさだ。
これ、もう世界観わかんねぇな。
「タブレット……? よく分かりませんが、多分違いますよ。ステータス表示機器、通称ギルドカードと呼ばれるものです」
いや、どう見てもタブレット──という言葉を飲み込んで、静かに尋ねる。
「この機械はどうやって動いているのかな?」
「それは魔石と呼ばれるモンスターから取れる石を使って動かしています」
「なるほど。そんで、冒険者はそれを売って儲けるってわけか?」
「ご名答です。ダンジョンに住み着くモンスターから採取することができます。ただし、ドロップ率はそこまで高くはなく、10層までのモンスターですと、約30%での確立となります」
「ということは10層以下に住むモンスターではもっとドロップ率が高いかもしれない……?」
「はい、あくまでも予想ですが。それではステータスの方を見ていきましょう」
そう言うと、カタリーナはタブレットをケースから取り出す。
「原則ギルドの職員は冒険者様のステータスを見てはいけないのですが、冒険者様のご承認があれば別です。説明を兼ねて、
俺はあまりこの世界に精通していないから、説明してもらった方がいいだろう。
別に見られて減るもんじゃないしな。
「あぁ、問題ない」
カタリーナは小さく頷くとタブレットの画面に浮かび上がったステータスを確認し始めた。
「……ゴマシオ様って本名じゃないんですか?」
ギクッ。
ステータスって名前も表示されちまうのか?
「ま、まぁな。ぎ、偽名をつ、使って……」
「とまぁ、そんなことはどうでもいいです! これ見てください!」
ステータスに一通り目を通したらしいカタリーナは、焦りながら俺にタブレットを見せてくる。
…………………………………………………
【カイル・ホワイト】
所属:なし
種族:
到達階層:0
装備武器:なし
所持金:0ガリル
【ステータス】
現在のレベル:Lv.5
筋力:753
耐久:248
器用:547
俊敏:957
魔力:104
幸運:21
《魔法》
《スキル》
《加護》
[
…………………………………………………
──ふぁ!?
Lv5だと……?
既に経験値を稼いでいる……?
これってどういうことだ。
グルリアスと同じ異世界だから、共有していたってことなのか?
「これはどのくらい強いんだ……?」
「すごい強いですよ! 救世主として我が国に呼ばれる理由も分かります。この街で最強の冒険者でさえ、レベルはまだ4なので……」
「……」
これはアレだ。
『この中で俺より強いやつっているの?』ってヤツだ。
──が、俺はバカだった。
よく、呑気にステータスカードなんて作りに来れたな、と。
俺は救世主なんかではないのだ。
もしここで弱い数値が出ていたら即座に追放を食らっていただろう。
今は強い数値が出たから良いものの……。
どちらにせよゴマシオと名乗ってしまった以上、ここに来る他はなかったのだが。
他にも気がついたことがある。
加護:[
とかいう加護。
これはもしかしたら、この街に転移してきて一番最初に発動した加護じゃないか?
とすると、俺は不死身……? いや、そんなわけないか……。
「どうしました、ゴマシオ様?」
「あ、いやなんでもない。ところでここの数値はなんだい?」
【ステータス】の下に並ぶ数字の列を指差す。
「これから説明していきますね。
攻撃など6つの能力値の上限は1000。
レベルが上がるごとにこれは初期化されますが、レベルが上がらない限り上昇させ続けることができます」
「そのレベルってのはどうやって上げられるんだ?」
「はい。
レベルは経験値を上げることで上昇します。
が、経験値はステータスに表示できないのであくまでも冒険者様自身の体感で測っていただきます」
不親切設計だ。
「ですが、基本的にはボスなどの強敵を排除した場合にレベルが上がることが多いようです。
また、モンスターの討伐数などもタブレッ──ギルドカードに自動で入力されます」
「……今、タブレットって言ったよね?」
「や、やだな〜、ゴマシオ様が変なこと言うから移っちゃったじゃないですか〜」
恥ずかしそうに体をくねくねさせるカタリーナ。
「死亡フラグじゃないよな?」
「し、しぼうふらぐ? よく分からないですけど、本当に間違えちゃっただけなのでご安心を。
それと、こちらの武器を差し上げます」
そう言って差し出された剣。
「ギルドの支給武器です。ガリルが貯まるまではこちらをご利用になってください。因みに保証は利きません」
「……了解した」
両手で剣を受け取る。
うん……良くも悪くもない。至って普通という印象を受ける。
「以上で説明を終了します。それではどうぞ良い冒険を!」
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