第8話 絵本売り

 国中に夕の刻を知らせる鐘の音が鳴り響く。

 ルシカは足をとめ,ローニャの森の方を見上げたが,そこには薄だいだいの空が広がっているだけだった。肩を落とすルシカに,リャオは明るい声をかけた。

「ルシカ!あれ見てよ」

「ん?」

 リャオに指さされた方を見ると,ずっと向こうに巨大な塀があり,そこから土色の城の先端が見えた。ずっと歩いてきたのに,全然気がつかなかった。

「あれは・・・?」

「シンシア城だよ。塀の中には王都(ランザバード)があって,身分の高い人達や王に仕える重臣や兵が住んでるんだ」

「すごいな・・・」

 こんな遠くから見えるなんて,どれくらい大きいのだろう。王都はどんな街なのだろう。ルシカは全く想像がつかなかった。

「君は,王都や城については何か知ってるの?」

 ルシカが訊くと,リャオは動きを止めた。考えてみるが,特に何も浮かばない。

「全然知らないや。どうやら僕は平民みたいだな」

 リャオがふざけて笑い,ルシカも笑った。彼が自分を励まそうとしてくれているのだとわかって,ルシカは嬉しいような恥ずかしいような気持ちになる。

 夕の刻の鐘とともに,屋台はそれぞれ片付け始めたようだった。灯りが消え,売れ残りを箱にしまい,看板を裏返している。人通りもいつの間にか少なくなっていた。

「今日はだいぶ稼げた」「いつものとこで一杯やろうぜ」

 そんな声も聞こえてくる。日が暮れる頃にはあんなににぎわっていた大市場通りはすっかり静寂に包まれ,屋台の骨組みだけがどこまでも続いていた。

「さびしくなったね」

「うん」

 二人は空腹を覚え,裏路地に座り込んでルシカが持ってきた干し肉を食べる。かたくてあまり美味しくなかった。裏路地の奥から光がもれ,男達の楽しそうな声や乾杯する声が聞こえてくる。どこかの酒場だろう。

「今日はここで寝るしかないな」

 日中は暑かったが,夜になると少し冷える。ルシカは背嚢に入れていた,リャオは腰に巻き付けていた自分の服を取り出して,布団の代わりにした。

「よく考えたら,外で寝るのって物騒じゃないか」

 リャオは言い,ルシカも「確かに」とうなずく。話し合った結果,交代で眠ることにした。片方が眠っている間,もう片方が起きているのだ。

 先に起きているのはルシカだ。リャオは壁にもたれて座ったまますぐに眠りにつく。ルシカは一人,紙綴り(クロッサ)に絵を描いた。屋台の絵や,品物,大市場通りの絵だった。今度は勝手に手が動いて,すらすらと木筆(ロッタ)がすすむ。だが,一日中歩いていた疲れから,眠くなってくると,ルシカはリャオを起こした。

「交代しよう」

「お・・・うん」

 そしてリャオが睡魔に耐えられなくなったら,ルシカを起こし,交代するのだった。


 そんなことだから,案の定二人はちっとも眠れなかった。商売人達が屋台で準備を始めている早朝の通りを二人はふらふらと歩いていた。

「リャオ,起こしすぎだよ・・・。絶対俺の方が寝てない」

「しょうがないだろ。眠かったんだから・・・」

 ルシカが持っていた,握り拳くらいの大きさの黄色い木の実にかじりつきながら,二人は歩いた。屋台の準備をしている人々は時々手を止め,不思議そうにルシカ達を見る。

「絶対お金稼がないとな。せめて,宿に泊まれるくらいは・・・」

「うん。このままだと身体が持たないよ」

 お金の必要性をひしひしと感じながら,二人は歩き続けた。


 目的地に辿り着いたのはその日の昼過ぎだった。屋台が建ち並ぶ中,一軒だけ絵本を売っている店が見えてきたのだ。

「わあ・・・」

 ルシカは小さく声を上あげ,屋台の前に走り寄る。

 そこには様々な絵本が並べられていた。獣の絵本,森の絵本,街を舞台にした絵本・・・。ルシカは父と母の作った絵本しか見たことがない。ルシカの知っている絵本は厚紙を紐で綴じたものだが,ここに並んでいるのはどれも厚紙よりもなめらかな紙がちゃんと冊子になっている。何より驚いたのは,全く同じ本が何冊も積み重なっていることだ。

「同じ本を,こんなにたくさん描いたのか・・・」

 ルシカがつぶやくと,リャオが隣から顔をのぞかせて笑った。

「何言ってるんだ。これは印刷だよ」

「いんさつ?」

「うん。同じ絵とかをこうやって何枚も複製できるんだ。もう少し向こうに行ったら印刷場もある」

「へえ・・・」

 確かに学舎でそんな話を聞いたことがあるような気がする。ルシカはもう一度絵本に目を落とした。ルシカにとって,絵本は世界中でたった一冊しかないものだった。だからこそその一冊は尊く大切なものなのだ。こういう風にたくさん並んでいると,なんだか安っぽい感じがする。

(絵も,あんまり好きじゃないな・・・)

 子どもの目を惹くためなのか,過剰なほど派手な色づかいで目がちかちかした。一体どんなことを考えながらこの絵を描いたのだろう。描き手の気持ちが感じられなくて,ルシカはちょっと顔をしかめる。

(どんな話なんだろう・・・)

 整然と並べられているうちの一冊に手を伸ばしたとき,

「おい,勝手にさわるな!!」

 突然怒鳴られ,ルシカはびくっと手を引っ込めた。リャオもびっくりしている。

 顔をあげると,髪がくるくると縮れた中年の男がこちらを睨んでいる。店主がいたことに全然気がつかなかった。

「商品に気安く触るんじゃねえ。それとも買う気あんのか?」

 目がくぼんでいて鼻が高いせいか,とても人相が悪い。ルシカは無言で首を振った。

「じゃあさっさとどっかに行け」

 男に言われ,今すぐ去ってしまいたかったが,ここに来た目的を忘れてはいけない。ルシカは声をふりしぼった。

「絵本を売りたいんです。ここで売らせてもらえるって聞いたんですけど,どうしたらいいですか?」

 すると男は片眉をあげた。

「絵本を売りたいって?・・・お前ら何もんだ?どこから来た?」

「ローニャの森です」

「あっ・・・馬鹿・・・!」

 ルシカの返答にリャオがしまったという顔をしたのと,男が顔をぐにゃりと歪めたのは同時だった。

「森!?オレは森に住む奴等が大嫌いなんだ!てめえらとは話したくもない!さっさと森へ帰れ!」

 男が怒鳴り,他の屋台の人々もびっくりしたようにこちらを見た。ルシカが呆気にとられていると,リャオが苦虫をかみつぶしたような顔でルシカに耳打ちする。

「なんで正直に言っちゃうんだよ。ロナさんがどうして服を作ってくれたかわかってるの?」

「え?」

「街では森に住む人々を毛嫌いしている人も多いんだ。不衛生とか野蛮とか言ってね。特に三の区では,ちょっと前に森に住む男が街で暴力事件なんか起こしたから,よけい警戒心が強いんだ」

 ルシカは不満げにうなった。森は不衛生でもないし野蛮でもない。ひどい言いがかりだ。

「だから森から出てきて商売する人は森に住んでいることは隠すものなんだよ」

「なにこそこそ話してるんだ!さっさと消えろ!」

 男がさらに怒鳴る。ルシカはその場から動けなかった。父さんはこんな場所で商売をしていたのか?どうやって?

「なんの騒ぎだ,アルド」

 低く落ち着いた声とともに,一人の男が屋台に入ってくる。濃い青の布を額に巻いていた。

「クレンっ・・・」

 男がうわずった声で身をひいた。クレンと呼ばれた男がじろりとルシカ達を見る。

「お前達はなんだ?」

 男の鈍く光る瞳は怖かったが,ルシカはなんとか声を出す。

「絵本を売りたいんです」

 するとクレンはしばし考えたあとうなずいた。

「見せてみろ」

 ルシカは背嚢から絵本を取り出した。大市場通りで売る十冊だ。リャオははらはらした表情でそれを見守り,アルドは苦い顔をしている。クレンは品定めするようにそれらを見つめていたが,はっとしたように顔をあげた。

「トレラ・アーレベルクの絵本・・・お前,ルトの知り合いかなんかか?」

 ルシカはびっくりしてうなずいた。

「父さんを知っているんですか?」

「ああ。定期的にここに本を売りに来るんだ。――そうか,あんたが絵を描いてるっていうルトの息子か・・・」

 ルシカは気づかなかったが,クレンが柔らかい声音でうなずく後ろでアルドはわなわなと震えていた。

「あいつが迷惑かけたな。オレが店主だ。その本は買い取らせてもらう。いつもの値でいいか?」

 ルシカは戸惑いながらもうなずいた。いつもの値がいくらなのか具体的によくわからないが,この人は信用してもよさそうだ。クレンは奥の方から金を入れているのだろう重そうな箱を取り出す。

(売れて良かった・・・)

 ルシカがほっとした時だった。

「くそ,こんなもん・・・!」

 突然アルドが絵本を一冊つかみ,びりびりに破り捨てる。

 あまりのことに,ルシカは一瞬何が起きたのかわからなかった。

「アルド!」

 クレンが鋭い声で彼をいさめ,なおも二冊目に手を伸ばそうとしている彼の腕をつかんだ。

 ルシカは地面に散らばった紙切れを見つめる。一片見ただけでそれが『花畑』だとわかった。ルシカは呆然とその紙切れを拾う。気遣わしげなリャオの声も,ちらちらとこちらを伺う通りすがりの人々の視線も気にならなかった。頭の中に父とこの絵本を作った時間が流れていく。


 大人のための絵本があったっていいと思うんだ。絵本は子どものため,物語本は大人のため,なんて分ける必要はない。


 父の声が,父の物語に心躍らせ絵を描いた自分が,遠のいていくような気がした。

「ガキのくせに・・・森に住んでるくせに絵本なんか街に売りにきてんじゃねえよ!どうせ適当に描いたくだらねえ本なんだろ!」

 クレンに抑えられながらも,アルドは怒鳴る。

「ルトが来る度にいつも思ってたんだ!たいした腕もないくせに調子に乗るなってな!」

 次の瞬間,ルシカは自分よりも背の高いアルドの胸ぐらをつかんでいた。

「父さんに謝れ・・・!」

 自分でも驚くほど恐ろしい声が出た。リャオがびっくりしてルシカの腕をひいた。「ルシカ,落ち着いて!」だがルシカはきかない。

「父さんに謝れ!父さんは自分の全てをかけて絵本を作ってるんだ!ここにあるどの絵本よりもすごいんだ!」

 ルシカのあまりの剣幕に,アルドは呆気にとられていたが,すぐに醜く顔をゆがめルシカを突き飛ばした。ルシカは地面に倒れ込む。乾いた土にぱた,と水滴が落ち,自分が泣いていることに気がついた。

「さっさといなくなれ」

 アルドはそう言ってその場を去っていく。ルシカは顔を上げられなかった。悔しさと悲しさとわけのわからない感情で心がぐちゃぐちゃだった。

「ルシカ・・・」

 リャオは言葉を見つけられず,ルシカの側にしゃがみこんだ。クレンが身をかがめ,ルシカに手を差し出す。それでもルシカはしばらくそこから動けなかった。




「オレがガキの頃は,遊ぶつったら外で走り回るか絵本を読むかくらいしかなかった。オレはこう見えて身体が弱かったから,ずっと絵本を読んで過ごしてた。アルドも明るくて優しい奴だった。アルドとオレは幼なじみでな。オレのために何冊も絵本を描いて見せてくれたんだ。あの頃はまだ絵本はルトとルシカのやつみたいに紙を紐で綴じるもんで安かった。絵本の屋台もいっぱいあったし,絵本作家もたくさんいた」

 いったん営業をやめ,看板を裏返した屋台の奥でルシカとリャオはクレンの話を聞いていた。目の前で絵本を破られ,罵倒されたショックからルシカはまだ立ち直れず,ずっとうつむいている。

「オレはガキの頃の影響もあって,絵本に関わる仕事がしたかった。それで絵本作家から絵本を買い取り,売るっていう今の仕事を始めたんだ。アルドも絵本作りにはまって,絵本作家になった。アルドの絵本はこの区で一,二を争うくらい人気だった」

 クレンは懐かしむように小さく笑み,だがすぐに真顔になった。

「だが,月日とともに変わっていっちまった。外国から印刷技術が入り,綺麗で量産できるようになった代わりに,絵本は高価なものになった。それと並行して安価で楽しい遊び道具が次々と出てきた。あれを見てみろ」

 クレンが指さす先には玩具を売る屋台があった。人形,カードのようなもの,飛び縄など多種多様な玩具が並んでいる。学舎が休みなのであろう,子ども達が五,六人楽しそうにのぞいている。対してこの店には誰も立ち寄ってはいなかった。

「絵本が高価になり,一見面白そうな安い遊び道具が現れ,当然絵本は衰退していった。絵本作家としてだけじゃとても食っていけなくなり,みんな他の職業にうつっちまった。店も減り,今じゃ三の区で絵本を売っている店なんかここくらいだ」

 クレンは自嘲気味に笑う。

「オレは絵本を忘れられなくて,今もこんなことをやっているがな。だが絵本を売りに来るなんてルトとアルドくらいのもんだ。当然これだけじゃ生活でできねえから酒場でも働いてる」

「じゃあ,あそこに置いてある絵本はアルド,さんが描いたものなんですね?」

 リャオの問いに,クレンはうなずいた。

「ああ。あいつは絵本作家をやめなかった。いや,やめることができなかった。絵本への愛着とプライドがあるんだろう。借金まみれになっても他の職に就こうとせず,絵本だけを描き続けた。だが絵本は全く売れず,女房にも逃げられて,あいつはどんどん荒れていった。それであのザマだ」

 クレンは店先に並べられている派手な絵本を見る。人の目をひくことだけを考えて作られた絵本。そんなものが人の心に届くはずもない。

 クレンはずっとうつむいているルシカに視線を向けた。

「ルトとルシカの絵本は,時間はかかるが不思議と全て売れるんだ。自分の本が全く売れず,ルト達の本が売れていく。アルドはその光景をずっと見てきた。それにあいつは森に住む者が大嫌いなんだ。それは偏見じゃないかとオレは思ってるんだがな。――自分の本が売れず,気にくわない奴等のものが売れていくのを何年も見せつけられて,あんなんになっちまったんだ。しかも絵を描いていたのが子どもだと分かって,悔しくてあんなにキレたんだろうな」

 クレンは頭を下げた。

「あいつもあいつで苦しんでるんだ。無論,わかってくれとは言わない。・・・嫌な気持ちにさせてすまなかった」

 クレンの青い布からのぞく白髪交じりの黒髪を見ながら,ルシカは何も言えなかった。

 今,絵本は必要とされてないのか,とルシカはぼんやり思う。ルシカは絵本を読んで育った。それが当たり前だった。コロノ村でも絵本を喜んでくれた。

 絵本がない世界なんて,考えられなかった。

 だが・・・ルシカは屋台と屋台と合間にある,小さな広場を見やる。十人程度の子どもが遊んでいた。飛び縄や全く知らないカードのようなものを地面にたたきつけて楽しげに笑っている。

 あの子達は,絵本なんてものは知らないかもしれないのだ。ここでは絵本なんてあってもなくても同じなのだ。

 それはルシカの胸にどうしようもない空しさをうえつける。

(あの人も,こんな気持ちになったのかな・・・。父さんは,どんな気持ちで絵本を売っていたんだろう)

 クレンはしばらくルシカの返答を待っていたが,何も言えなかった。やがてクレンはためらいながらも立ち上がる。

「ちょっと酒場の方に行かなきゃならん。二人ともここで休んでいてくれ。ルシカ,絵本は買い取るからな。もちろんアルドは破いた分も金を払う」

 彼はそう言って屋台を出て行った。ルシカはそれをぼんやりと見送る。人々が忙しく行き交う中,取り残されたような屋台の中で,ルシカとリャオの間にしばしの沈黙が流れた。

 リャオはその沈黙に耐えきれなくなり,隣に座っているルシカの顔をのぞきこむ。

「大丈夫か,ルシカ?今何考えてる?」

 ルシカはようやく顔をあげリャオを見る。彼の整った顔が不安そうな色を滲ませていた。リャオの顔を見ていると,ルシカの中から正直な気持ちがひきだされる。

「よくわからないんだ。ぐちゃぐちゃしてて」

 するとリャオはちょっと考えたあと,努めて明るく言った。

「じゃあさ,ぐちゃぐちゃでもいいから話してよ。思ってること,話してるうちに頭の中整理されてくもんだし」

 リャオの言葉にルシカはうなずき,複雑に絡まり合う思考と感情に必死に向き合う。こんなに頭の中がこんがらがったのは初めてだ。

「・・・父さんの絵本が破かれて,あんなこと言われて悔しかった」

「うん」

「でも,あの人の話を聞いて,何か俺ってなんにも知らなかったんだなあって・・・」

「うん」

「俺さ,ずっと森で暮らしてて,父さんの話を読んで,絵を描いて,それだけで幸せだった。でも,こうやって森の外に出てみると,あんまりにも知らないことばっかりなんだ。父さんの作った絵本って,俺にとって,すごい,世界の全てみたいな存在だった。だけどそれって違ったんだな」

「うん」

「でも,まだきっと,これもほんとにほんとに一部なんだ・・・。広いんだな,世界って」

 それは,物語に出てくるようなありきたりな台詞だった。しかしそれは真実だ。

「あんま売れないってわかって,絵本もう描きたくなくなった?」

 リャオの問いにルシカは首をふった。

「そうは思わない。俺,多分誰かのために絵を描いているわけじゃないからだと思う。父さんの物語に絵をつけられることそのものが幸せなんだ」

 それは,前にルトとも話したことだった。

「・・・きっとあの人は,誰かのために絵本を描いてたんだろうな・・・」

 彼のその想いは,父さんと同じだ。ルシカは立ち上がる。

「俺,ちょっとあの人を捜してくる。リャオ,ここにいてもらってもいい?」

 リャオはびっくりしながらうなずいた。

「別にいいけど・・・もう大丈夫なの?」

「うん。ありがとうリャオ。人に話すと本当に考えを整理できるものなんだね」

 昔,学舎で深刻そうな顔で友人に悩みを相談している人を見たことがある。その相手が解決してくれるわけでもないのに,なんでそんなことを話すんだろうと思ったのだが,今ならそれが少し分かる気がする。

 ルシカは屋台を出て走り出した。


 リャオはルシカの後ろ姿を見ていた。

(ルシカは不思議なやつだなあ・・・)

おとなしそうに見えて,意外と強情だし,思い立ったらすぐに行動する。アルドに何を言うつもりなのだろう。

 リャオはゆっくりと視線を大通りを歩く人々にうつした。子どもの手をひく母親,友達同士で楽しそうに歩いている人達,元気よく走っていく子ども達。商品を売る声。色々なものが目に映る。

(みんな生きていて,生きてきたんだなあ)

 ふと,リャオは自分が生きているのか死んでいるのかわからなくなった。

(過去の自分がないからかな・・・)

 ルシカと自分は逆だな,とリャオは思う。

 自分は国や世界のことは知っているが,自分のことはわからない。ルシカは国や世界のことは全然知らないけれど,自分をしっかり持っている。

「お前一人か?」

 頭上から声が聞こえ,リャオははっとして顔を上げる。クレンが戻ってきたのだ。

「ルシカはあの人・・・アルドさんを捜しに行きました」

 それを聞いて,クレンは眉をひそめる。

「どうして?」

「さあ。まあ,なんか思い立ったんじゃないですか」

 そう言って笑うリャオを,クレンは少し不思議そうな顔で見る。

「お前は・・・ああ,まだ名前を聞いていなかったな。ルシカの友達か?」

「僕はリャオっていいます。ルシカとはまあ・・・偶然出会ったっていうか・・・」

 リャオはルシカが父を捜して旅をしているということを話した。ルトが行方不明と聞いて,クレンはたいそう驚いていた。彼がルトと親しかったことを感じ取ったリャオは,クレンに質問する。

「ルシカの父さんの“ルト”ってどんな人だったの?」

 リャオの問いに,彼はリャオの向かいの丸い木の椅子に腰掛けて話してくれた。

「無口で静かな人だ。アルドに何かといちゃもんをつけられても,何も言い返さずただうなずいているような人だった。腹立つのが当然な言葉を吐かれても・・・ありゃあ自分の中に相当根強いもんを持ってるんだろうな。絵本作家として食ってくのも相当大変だろうに」

 クレンはそう言って,物思いにふけるようにうつむいて,顔をあげた。

「これからも,ルシカと旅をするのか?」

「うん」

 リャオはうなずいた。少なくとも自分はルシカにくっついていくつもりだ。

「じゃあ,ルシカを気をつけて見ていてやってくれ」

「え?」

「さっきの騒動を見ただろう。ルシカは,ルト・・・自分の父の絵本を馬鹿にされたことを怒っていた。絵本の絵はルシカが描いたものなのに,自分のことについて怒らなかったのは,絵本はルトの作ったもので,自分はおまけくらいにしか思っていないからだ」

 それはリャオも心当たりがあった。ロナ達の家で,絵本の話をしたとき,ルシカは自分のことはまるっきり棚に上げて父親の話ばかりしていた。

「あの子は絵が上手い。それに・・・あの子の絵には他の絵描きにはない光るものがある。今まで何人もの絵本作家・・・絵描きを見てきたが,ルシカはちょっと違うんだ」

 リャオは同意してうなずく。

「でもな,ルシカはルトに依存しすぎているようだ。まあずっとルトと二人暮らしだったんだから,仕方ないけどな。あの子は自分の行動,未来についてルトを中心にして考える節がある。だが,オレにはそれは違う気がしてならないんだ。あの子が絵を描き続けるのなら,ルトから自立しなくてはならない気がするんだ。・・・余計なおせっかいだがな」

「絵のことはよくわからないけど,言おうとしてることはわかるよ」

 リャオが相づちをうち,クレンは言葉を選びながら続ける。

「ルトとルシカには,本人達も気づいていない危うさがあるように思うんだ。オレの思い過ごしかもしれんがな。この先ルシカと一緒にいるなら,気をつけていてくれ」

「危うさって,どんな?」

 リャオが訊くと,クレンはためらいながらもそれを話した。




 ルシカは一人裏路地を歩いていた。

(勢いで飛びだしてきちゃったけど,普通見つかるわけないよな・・・)

 戻ってクレンに訊くのが一番良いと思い,ルシカは屋台に戻ろうと歩を進めた。

(あの人に会おうとしたけど,俺は何を言えばいいんだろう・・・)

 絵本を破いたあげく,父さんを馬鹿にしたことは絶対に許せない。だけど,その怒りをぶつけたいわけでもない。

 もやもやした気分のままルシカは建物と建物の間の薄暗い道を歩いていた。大市場通りの光が見えはじめてきたとき,

「いい加減にしろ!」

 突然怒声が聞こえ,ルシカはびくっと身をすくませた。人売り達のことを思い出して,ルシカは思わず近くの壁に身を隠す。おそるおそる声のする方を見てみると,狭い裏路地に三人の男がいた。一人の男が尻もちをつき,あとの二人がその男を見下ろしている。

「あ・・・」

 ルシカは思わず声をあげた。座り込んでいる男はアルドだったのだ。

「いつになったら金を返してくれるんだ?ええ?」

「そろそろきっちりしてもらわねえと困るんだよ」

 どうやら借金の返済を迫られているようだった。ルシカは息をのんでその様子を見ていた。

「もう少し待ってくれ。次は大作が描けそうなんだ・・・。それが売れれば金が・・・」

「そんな御託,もう聞き飽きたんだよ!何回同じ事言ってんだ!」

 男の一人がすごい剣幕で座り込んでいるアルドの胸ぐらをつかむ。

「絵本なんてもう時代遅れだろ!昔はどんなすごい作家だったか知らねえが,いい加減目を覚ませ!」

 男の一人はあご髭をたくわえ,もう一人はつり目だった。二人とも怒りに顔を歪ませている。胸ぐらをつかまれながらも,アルドははっきりとした声音で言い返した。

「絵本は時代遅れなんかじゃねえ!確かに今はすたれてるかもしれねえが,必ず絵本が人々に求められるときが来る」

 アルドの言葉にルシカは思わず身をのりだした。

「人が人を思って作られた絵と物語は必ず人の心を揺さぶり,時には動かすことだってできる」

 男達に必死に言い返すアルドの姿が,一瞬父と重なった。

「そんなものが時代遅れになるはずがねえ。オレだって,必ずいつかはもう一度・・・」

「うるせえ!」

 つり目の男が業を煮やしたようにアルドを突き飛ばした。倒れ込んだアルドの右腕を男が踏みつける。

「ぐっ・・・」

(あ,右手・・・!)

 アルドが低くうめいたのを見て,ルシカは思わずとびだした。

「やめろ!」

 そう叫んでつり目の男にとびかかる。虚をつかれて,男は二,三歩よろめいた。

「なっ・・・,お前・・・」

 後ろからアルドの声が聞こえてきたが,ルシカは振り向かなかった。呆気にとられている男達に言う。

「こ,こいつを殴るのはいいけど,右手だけはやめて。絵本が描けなくなるから・・・」

「ああ!?」

 男達が何か言う前に,うしろのアルドが声をあげる。ルシカも自分は一体何を言っているんだろうと思う。額から冷や汗が流れたとき,我に返った男に肩を突き飛ばされた。

「なんだお前,こいつの知り合いか!?」

「どけよ」

 こういう人達は本当に怖い。ルシカは震えながらもそこを動かなかった。いらついた男達はルシカに殴りかかる。

「変なガキめ」

 二人がかりでがんがんに殴られ,ルシカはたいした受け身もとれずされるがままになっていた。リャオくらい強ければなあ,と心の片隅で思いながら,ルシカは逃げ出すこともできず必死に耐えた。

 時折,呆然とこちらを見ているアルドが目に映った。

 男達が手を止めたときにはもうルシカは動けなかった。

「気分悪い。行こうぜ」

「アルド,今度会ったときは容赦しねえからな。覚えとけ!」

 殴られた顔が,身体がじんじんと痛む。ルシカは横たわったまま,遠ざかっていく男達の足音を聞いていた。

(なにしてんだろ,俺・・・)

 建物の合間から青い空が見える。白い雲が悠然と流れていった。

「余計なことしやがって」

 頭上から刺々しい声が聞こえる。ルシカが目を向けると,アルドが立ったまま眉間にしわをよせてこちらを見下ろしていた。ルシカは何も言えず,アルドを見上げていた。

 アルドは大きく舌打ちして,ルシカを背負いあげる。ルシカはアルドの汗臭くてごつごつした背に背負われた。

「どうして森の人を嫌うの?」

 揺られながら,ルシカは訊く。アルドは,は,と嘲笑した。

「なんでてめえにそんなこと言わなきゃならねえんだ」

 にべもない返答にルシカはむっとする。だが,本当に嫌な人ならこんな風に運んではくれないだろう。クレンの言うとおり,根はいい人なのだと信じてルシカは話を続ける。

「あんたは何か誤解してるんだよ・・・。父さんの絵本の中に『森の歌い手』って本があるんだ。それを読めば森のことも,父さんがすごいこともわかるから・・・」

 アルドは黙ったままだ。

「父さんの絵本を読んでよ。あと,あんたの描いた絵本を見せて。あの店に置いてあるヘンテコなやつじゃなくて,人気だったころの,本当の絵本を・・・」

 言いながら,ルシカはこれが伝えたかったのだとわかった。

 自分は父さんと母さんの絵本しか知らない。だから知りたい。他にどんな絵本があるのか。どんな絵が,物語があるのか。

 ルシカは意識が遠くなってきて,そのまま眠ってしまった。少し重くなったルシカを背負ったまま,アルドは小さく毒づいた。

「好き勝手言いやがって」




 アルドが屋台に戻ったとき,全身殴られて意識を失っているルシカを見て,クレンもリャオも驚いた。特にリャオはつかみかからんとばかりにアルドを睨みつけた。

「ルシカに何をしたんだ!」

「何もしてねえよ。こいつをどっかに寝かしとけねえか」

 アルドがめんどくさそうに言い,リャオは歯がみする。

「・・・オレの家に運ぼう」

 クレンも何か言いたそうにしたが,とりあえずルシカを抱きかかえ彼の家に運んでいった。屋台に残ったリャオとアルドの間には重苦しい空気が漂う。

「おい,あのガキの絵本はどこだ」

 アルドが無遠慮な調子で訊き,リャオは無言で屋台の一角を指さす。アルドは積み重なった絵本の中から『森の歌い手』を引っ張り出し,木の椅子にどかっと腰をおろして,無造作にページをめくる。リャオはまた破くのではないかとはらはらしたが,どうやら杞憂のようだった。

 アルドはたんたんと本のページをめくっていった。あのガキの言葉が心から消えずうっとうしいので,読んでやるだけだ。

 『森の歌い手』は,街に住む少女が森に迷い込む話だった。少女は森が嫌いだった。不衛生で野蛮な人達が住み,獣がうろつく恐ろしい場所だと思っている。アルドと同じだ。

 だが少女は森の美しい木漏れ日,綺麗な草花を見,歩いていくうちに森に対する警戒心や嫌悪感をといていく。やがて少女は木の枝に座って歌っている少年に出会う。あまりにも美しい歌声に,もっと近くで歌ってほしいと頼むと,少年は首をふった。「街に住む人は怖いから嫌だ」と下りてこようとしない。少女は悲しくなって,街の楽しい話をたくさんする。話していくうちに,自分も少年と同じように何も知らずに森を嫌ってきたのだと気づく。街の話を聞き,心を開いた少年は,少女のもとに下りて,たくさん歌を唄った。歌に合わせて木々や花が揺れ,二人は幸せな時を過ごした。それから二人は森や街で楽しく遊んだ・・・という話だった。

 ただのおとぎ話だ・・・読み終わったあと,そう思おうとしたが,そう思うにはあまりにもその絵本は美しかった。

 流れていくような美しい文章,そして絵。森のことを知ってほしいと,森の素晴らしさを訴えかけてくるようなものだった。

 特に絵は,決して誇張しているわけではないのに,森の美しさや洗練さを感じずにはいられないものだった。

(この絵を・・・あのガキが描いたのか・・・)

 あんたの描いた絵本を見せて。

 先のルシカを思い出し,アルドの胸に何とも言えないやりきれなさがこみ上げてきた。




 ルシカはゆっくりと目を覚ました。

「ん・・・」

 起き上がると全身に鈍い痛みが走る。顔や手足など,殴られて怪我をしたところに丁寧に白布が巻かれていた。

「起きたか」

 はっとして顔をあげると,アルドが寝台の側の椅子に座ってこちらを見ていた。

「ここは・・・?」

「クレンの部屋だ。手当もあいつがやった。感謝しとけ」

「あ,うん・・・」

 ルシカはうなずいてうつむいた。何を言ったらいいのかわからない。それは相手も同じらしく,二人の間に気まずい空気が流れる。

「――お前の言ってた絵本を読んでやった」

 その言葉に,ルシカは少しびっくりする。本当に読んでくれるとは思っていなかった。

「どうだった?」

 ルシカが緊張の面持ちで尋ねるが,アルドはふん,と鼻を鳴らす。

「オレはなあ,森が大嫌いだ。昔,森に住むヤツが売ってた果実を食って母親は倒れたし,森では疫病も流行るらしいじゃねえか。そんな得たいの知れないとこは気味が悪いし,そこに住んでる奴等にも近づきたくねえ。街に出てくんなとも思う」

 ルシカはそれを聞いて唇をかみしめた。何も変わっていないのだ。

「だがな,・・・一絵本作家として,あの絵本を認めないわけにはいかねえ」

 アルドが眉間にしわを寄せながら,とても言いにくそうに,言いたくないというように呟いた。ルシカは顔を上げる。

「え?」

 アルドはせきをきったように,とても悔しそうに話した。

「オレだってなあ,全部わかってんだよ!今のオレの絵本が駄作だってことも,クレンが温情で絵本を買い取ってくれてるってことも,全部わかってんだ!」

 ずっと,トレラ・アーレベルクの本を読まないようにしてきた。読むのが怖かったのだ。自分のよりも必要とされているものを読んで,思い知るのが怖かったのだ。

「絵本作んのに,森も街も関係ねえ。そんなことわかってんだよ!」

 ルシカは息をのんで彼のはき出すような言葉を聞いていた。

「お前らみたいなのにはわかんねえだろうよ!うまく描きたくても描けねえ気持ちが!」

 ルシカもルトも,いいものを作ろうとしたことなんてないだろう。こういう奴等はそんなこと意識しなくたって,人々の心に届くものが作り出せるのだ。

「昔はクレンも,他の奴等も,オレの絵本を読んで喜んでくれた!でも今は違う。わかってんだよ!・・・でも描けねえんだ」

 アルドの声はどんどん聞きづらくなっていく。ルシカは彼の血を吐くような独白を呆然と聞いていた。父の絵本を認めてくれた。それは嬉しい。だが,それ以上にルシカが衝撃を受けたのは,アルドの情熱だった。彼の悪態は,彼の絵本への情熱ゆえのものだったのだ。

 描きたくても描けない・・・そこにある情熱と苦しみに,ルシカはうちのめされる。

 自分は絵を描くことに対してこんなに苦しんだことがあるだろうか。

 突き動かされるままの衝動で絵を描いてきた。それだけで幸せだった。

 だが,それはいいことだったのだろうか。

「・・・オレはまだてめえに見せるような絵本は作ってねえ」

 アルドがかすれた声で言う。

「だがな,次にお前が来たときには,お前が驚くようなすげえ,本物のオレの絵本を見せてやる」

 ルシカはうなずいた。今度ここを訪れるとき・・・アルドの絵本は変わっているだろう。だが,その時,ルシカ自身は何か変わっているのだろうか。

 ルシカの胸には,何とも言えない焦燥感が残った。



 思いの外軽傷であったこと,クレンの治療が良かったこともあり,ルシカはすぐにたち歩けるようになった。リャオも腕の怪我を見てもらい,二人は互いに怪我だらけだと笑った。リャオの傷はだいぶ良くなってきているようだった。


 ルシカは屋台に戻り,クレンからお金を受け取った。硬貨の入った布袋はずっしりと重く,ルシカはびっくりする。

「盗られないようにな」

「はい。ありがとうございます」

 初めてお金を持った。今まで使ったり食べたりしてきたものは殆どこれと交換しているのだ。ルシカはそれを背嚢に入れる。あたりはもう夕闇に包まれはじめていた。

「あの,アルドさんは・・・?」

 クレンの家から出るとき,いつの間にかいなくなっていた。ルシカが尋ねると,クレンは肩をすくめた。

「自分の家にこもっちまった。新しい話を書き始めたらしい。いつもと様子がちょっと違うから,今回は期待できるかもな」

 ルシカはうなずく。きっと彼は,アルドに昔のような絵本を描いてほしいと願い,待っているのだろう。自分もまたここに来て,彼の絵本を見せてもらわなくては。

 ルシカとリャオは屋台の外に出た。クレンもわざわざ出てきて,見送ってくれる。人もまばらになった大通りで,ルシカたちはクレンと向き合った。

「ルトを捜してるって聞いたが,実は何週間か前に一度ここに来たんだ」

「えっ」

 ルシカは驚いて目を見開いた。

「何か話してましたか?」

「印刷場に行く道を教えてほしいと言っていた。多分三の区印刷場に向かったんだと思う。帰るところは見てないがな・・・」

「三の区印刷場・・・」

 父は買い物で街まで行くと言っていた。だがそれは嘘だったということだろうか?父は何を印刷しようとしていたのだろう。

 とにかく,行ってみるしかない。

「ありがとうございます」

「ああ。この道をまっすぐ,丸一日歩けば着くはずだ」

 ルシカとリャオは顔を見合わせうなずきあった。父に繋がる手がかりを見つけることができた。二人は頭を下げる。

「お世話になりました」

「またおいで。今度はルトと一緒に」

「はい」

 二人は歩き出す。最後に,クレンは一瞬リャオに視線を送った。ルシカを頼む,と。それを感じ取ったリャオは目でうなずいた。ルシカの持つ危うさ・・・先に教えてもらったことをもう一度反芻する。

(ルシカは僕が守るんだ)

 歩き出したとき,ちょうど夕の刻の鐘が鳴り響いた。ルシカは振り返り,ローニャの森の方を見る。煙はあがらない。父はまだ帰っていない。


 お前の絵はまだまだ進化していく。これからも。


 ふと,前に聞いた父の言葉を思い出した。

 このままでいいのだろうか?

 ルシカはこの時初めて,ただ心のままに絵を描いている自分に疑問を持ち始めた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る