第2話

大好きな京ちゃんが来る。

占い師を始めて、実は一番初めに出来たリピーターさんが、京ちゃんだ。

さっきの出来事は、とりあえず考えないことにしよう。

京ちゃんの鑑定に邪念が入ってはいけない。


「センセ!」

不意に、京ちゃんの明るい声がブースの中に響いた。

「京ちゃん!いらっしゃい。」

私の心が弾む。


「先生、あのね、彼がまた音信不通。メールしても返事来ないの。」

第一声は大概こうである。

「そうですか。いつからですか?」

尋ねながら私はカードを手に取った。

「10日よ。」

「10日からかあ…。」

カードをきりながら、願う。

彼の現状、何事もありませんようにと。


「どう?先生。あ、それはどんな意味のカード?」

「これはねえ…。ああ、良かった。彼、今はとても忙しいだけです。」

私の鑑定に、京ちゃんはホッとした表情を見せた。

「ほんと?良かったあ。じゃあ、私の事を嫌いになったりしてない?」

「してないしてない。」

「他に好きなひとが出来たとかもない?」

「ないですよ。」

「ああ〜〜。ありがとう、先生。」

「良かったですね。」

「じゃあ、次はいつ会えるか視て。」

「そうですね。来週と出ています。」

「そうなんだ?」

「良かったですね。」

「先生、やっぱり私、先生じゃないとだめだ。」

京ちゃんは私の手を握りながら言った。

「先生にみてもらったあとは、元気が出るよ。」

「そうですか、良かった。私は視えたままをお伝えしているだけだからね。全て、京ちゃんのパワーだからね。」

「うん。でも、私本当に感謝してるよ。私みたいなデブな男がさ、自信を持てるのは先生が私を褒めてくれるから。」

「京ちゃんは素敵ですよ。ふくよかで愛らしいし、心は普通の女の子より女の子らしいもの。」


ふと時計を見ると、あっという間に10分が経っていた。

次の客がブースの外で並んでいるのが解ると、京ちゃんは投げキッスをして帰って行った。


京ちゃん、良かったね。

と私は心の中で呟いた。


ふと、さっきの出来事が蘇る。

ああ…、私の余命…。

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