第5話 魔法使いと猫の心臓

 これは夢だ。

 すぐに分かった。

 あの時ここに居たのは看護士のはずで、五歳の私が父の後ろに居るから。

「本当に何もないんデスカ?」

 サファイア色の瞳を不安に曇らせ、父がたどたどしく問う。大人になってから日本に渡った父のイントネーションは結局直らなかった。

「ええ、ありませんよ」

 医師が淡々と告げた。机にはレントゲンの画像や、各種検査の結果が置いてある。

「違和感が消えないのデスガ……」

 父の言葉に医師が苦笑いする。

 今まで退屈そうに父の後ろ、付添用の椅子に座っていた少女が、今よりずっと鮮やかな紫色の瞳と金色の髪を持った私が叫ぶ。

「どうしてちゃんと調べてくれないの? パパの背中に変なの居るじゃない!」

 五歳の私は父を指さした。父の背中の真ん中あたりから胴の中に、黄色い嫌なモヤモヤが蠢いていた。

「どうして信じてくれないの!」

 幼い怒りに、腹まで届くロザリオが揺れる。

 モヤモヤは脈打ちながら日に日に大きくなっていた。

「心配ならまた一ヵ月後に検査いたしましょう。お大事に」

 万年筆が机に置かれ、無慈悲に診察終了を告げる。



 それから二週間後、父は急性膵炎でこの世を去った。





「……どうして信じてくれないの」

 涙を拭いながら私は呟く。

 答えは簡単だ。

 アレらは、皆には見えず聞こえず感じられないからだ。

 私は枕に顔を埋め、夢の余韻が去るのを待った。

 胸元を探って祖父のロザリオを引っ張り出して握る。祈りをささげ、胸の痛みが引くのを願う。

 そんな最中、不意に携帯にメールが届いた。

 手さぐりで充電器から引き抜くと、知らないアドレスからだった。

『紫蓮君、おはよう。聖水の成分解析を頼めるアテが見付かったから来てくれ』

 突っ込みどころは色々あるが。

 私のアドレス、何処で手に入れたんだよ。




 ラボに着くと教授が机に突っ伏していた。隣には困り切った顔の茶々さんが控えている。茶々さんは珍しくナース服ではなくスーツであった。

 私は干乾びた教授に声をかける。

「どうしたの教授?」

「准教授だけどね……」

 力無く訂正して教授が顔を上げた。

 白衣の下には上質なスーツ。整えられた白髪交じりの髪。百八十を超える長身ながらやや猫背。はっきりした目鼻立ち。しかし知的生産階級らしい上品ななりは影をひそめ、縁なし眼鏡の向こうから光の無い目が宙を見ていた。

 これが桂馬教授、このラボの医学者、自称魔術師だ。 

 私は彼の実験協力者という形で大学に出入りしている。

 今まで私と祖父にしか見えなかったアレらも、彼には見えているようだ。

 教授はティーカップを指さした。お湯の中でティーパックが一つだけ揺らいでいる。

 一つだけ。

「お茶が切れた……」

 絶望に満ちた声で教授が呟き、また腕に顔を埋めた。

「カフェインがないと動けない」

 普通の人間はティーパックを一つずつ使うし、カフェインの摂取には珈琲を飲む。

 突っ込む前に教授は言った。

「という事で僕は無理だから、Student君と星食ほしばみ水質研究所に行ってきて。メールで話は付けてある。解析してもらえるはずだよ。聖水のサンプルはそこ、研究所の地図はあっち、僕の名刺はこれ。帰りにお茶買って来るのを絶対に忘れないでね。絶対に。それじゃあよろしく」

 まくし立てるだけまくし立てて活動停止する教授。

 それでスーツなのか。

 私は茶々さんを見る。普段はネットの中にお団子でまとめている髪を肩に流し、これはこれで可愛らしい。童顔も相まって就活生っぽさ全開だ。

 まぁ、私も制服だから失礼にはならないだろうけど。

 私は茶々さんと支度を始めた。何も理解してない女子二人に押しかけられる研究所の災難に思いを馳せながら。



◇◇◇------



 星食ほしばみ水質研究所はそう遠くなかった。

 バスに揺られて三十分。大学同様森に囲まれた研究所の前に来た。木々に阻まれ、どれくらい広いかは推せない。

 門前にて警備員に名刺を見せると、すんなり通してくれた。

 話を付けてあるというのは本当らしい。

 応接室に案内される。

 ガラスや壁が防音なのか、蝉の声は聞こえず、静寂が応接室を満たしている。壁には色々な言語の賞状や盾がところ狭しと飾られていた。ふっかふかのソファーとガラスの机。

 職員の出してくれた信玄餅を頬張りながら私は呟く。

「この後どうすればいいのかな? このサンプルと名刺渡して『お願いします』で帰れるかな?」

 茶々さんは麦茶を飲みながら答える。

「そうだと思うのですが、どうにも嫌な予感がします……」

 正直な所私も嫌な予感がしていた。言葉にすると本当になりそうで黙ってはいたが……。

 ノックの音が響き、茶々さんが応える。ドアを開いて現れたのは。

「二木のオジサン!」

 見慣れた姿に私はつい喜びの声を上げる。

 入ってきたのは研究所のロゴ入り作業着姿の中年。穏やかな中肉中背の風貌。親友である硝子の父親であった。

「おや、マグノリアちゃんじゃないか。マグノリアちゃんが桂馬先生の使いなのかい?」

「うん、そうなの。押し付けられちゃった」

「そう、か……」

 二木のオジサンはなんだか浮かない顔だ。

「そちらは?」

「あ、はい。自分は御所都ごせと 茶々ちゃちゃと申しますです。桂馬ラボの看護学生です」

 二木のオジサンは黙り、考え込んでしまった。

 私と茶々さんは顔を見合わせる。何がダメだったのだろう。

「……とりあえず、一人ずつお話ししてもいいかな。御所都さんは廊下の椅子でお待ちください」

「は、はい」

 訳も分からぬまま茶々さんが退室させられる。

 私もきょとんとしたままソファーに座っていた。

 二木のオジサンが正面に腰掛ける。

「桂馬先生も厄介な魔法を覚えたものだな」

 呟いたあと、二木のオジサンはしばらく無言だった。

 まるでこちらから何か切り出すのを待っているかのように。

 違和感。居辛さ。

 退屈した私は普通にどうでもいい話題を切り出す。

「ねぇ、オジサンはここで研究してるんでしょ? なんで白衣じゃなくて作業着なの?」

「作業着も白衣も実験から身を守り、実験を汚さないようにする意味では同じさ。オジサン達の研究はこの格好の方がやりやすいんだよ」

「ふーん。二木のおばさんは元気?」

「妻は相変わらず忙しそうだよ」

 二木のおばさん、硝子の母は医師である。代々医師で病院も持っているから二木の家はとってもお金持ちだ。

 また奇妙な沈黙が降りてきた。

 私は二つ目の信玄餅を開ける。

「マグノリアちゃんはどうして桂馬先生に協力しているんだい?」

 私がヒトならざるモノを見聞きできること襲われること、オジサンは知っているし信じてくれている。

 私は黄粉と黒蜜を混ぜながら教授との今までを話した。

 横断歩道でアレに襲われているのを助けてくれたこと。

 実験に協力する契約書にサインしたこと。

 様々な無茶振り。

 そして私の命綱たる聖水を解析すれば、増やせるかもしれないと言ったこと。

 一通り話し終えると、そっと核心を撫でるように、オジサンは尋ねた。

「マグノリアちゃんは、桂馬先生の目標を知っているのかい?」

「知らない。一度聞いたけど分からなかった。科学を魔法にしてどうとか……」

 数秒、オジサンは目を伏せ腕を組み考え込んでいた。

「そうかい。分かった。ありがとう。御所都さんと交代してくれるかな?」

 私は信玄餅を慌てて口に詰め込み、咽る。

「あ、いや、食べ終わってからでいいよ」




 廊下の椅子でぼんやり過ごし、五分も待つと再び応接室へ呼ばれた。

「二人ともありがとう。特に嘘をついたり誤魔化したりはしてないようだね」

 私は思わず自分の座っているソファーを振り向く。ウソ発見器でも搭載されているのだろうか。

「それでだ。解析も無料じゃないから、桂馬先生の代わりたるキミたちに頼みがある」

「自分たちは、ただの学生です。そういう事はちょっと……」

 茶々さんがおどおどと切り出す。

 二木のオジサンは意味深に微笑んだ。

「御所都さん。大人には大人の事情がある。『ただの学生だから』頼むんだよ。終わったら全部桂馬先生に報告してあげてね」

 圧倒的な『大人の事情』に黙らされる茶々さん。 

「近頃、敷地内で猫の死体が多く発見されるんだ。やり口からして特定の誰かが出入りしているらしい。そいつの写真を撮って特定するなり、犯行の現場に警備員を連れて行くなりして止めさせてほしい。敷地の野良猫はけっこう職員みんな可愛がっているものでね」

「……わかりました」

 茶々さんが神妙に了承する。

 オジサンは付け加えた。

「くれぐれも危険な事はしないようにね」

 会話の終わる気配を感じ、私は三つ目の信玄餅を飲み込んだ。

 ずっと気になっていた事があった。

「二木のオジサンはどうして私や桂馬先生の言う事を信じてくれるの?」

 知る限りでは二木のオジサンにアレらは見えないはずだ。

 二木のオジサンが笑う。

「違うよ。信じているのではなく、否定しないだけさ」

 そして優しいオジサンの顔から科学者の表情に。

「科学者たる者、自分の目で耳で確認した事以外は信じちゃいけない。でもそれは知覚外の物を頭ごなしに否定すべきという意味じゃあないんだよ。検証すらされてない物を無いと決めつける、その逆さ盲信こそが最も非科学的だ。『在るか無いか分からない』その中立を貫くべきなんだ」

 すごく難しい事だけどね、と付け加えて続ける。

「ウイルスだって、放射線だって、最初は『呪い』みたいな名前で呼ばれていたモノたちだ。先哲が存在を証明した事で新たな名前がついたにすぎない。桂馬はその後に続こうとしている一人だと思って、尊敬すらしているよ」

「……世の中がみんな、オジサンみたいだと良いのに」

 心からそう思った。

 あの時の医師が、友達が、学校の先生が。そういう考えを持っていたら、どれほど幸せに生きられただろうか。

 二木のオジサンは元のオジサン顔に戻る。

「残念ながらコレは本当に難しい事だよ。そして、実の所タテマエだ。ここだけの話だが、オジサンも他の人には感じない物を否定されながら生きてきたクチだからね」

「おじさんも何か見えるの?! それともψサイ?!」

 食いついた私に、オジサンは微笑んで否定する。

「違うよ。オジサンは共感覚者なんだ。音を聴くと味を感じる」

 共感覚。小耳にはさんだ事はあった。音と味や、味と色、匂いと形など、本来別々の五感が連合している人が稀に居ると。

「子供の頃は悩んだもんだよ。誰に言っても信じてくれないからね。でもオジサンには確かにみんなの声が、オレンジジュースだったりハンバーグだったり鉄棒の味だったりするんだ。時々すごく嫌な味の声の人が居る。その人が嫌いな訳じゃないんだけど、どうしても会いたくなくて、でも説明した所で信じてもらえないからね。苦労したよ」

「すごいすごい! ねぇ、私の声はどんな味がするの?」

「サイダーの味がするよ。冷たいサイダーにラベンダーを一片加えたような、爽やかで素敵な味だ」

「嬉しい」

 大はしゃぎする私を慈父の笑みで見ながら、オジサンは続ける。

「嘘をつくと、味が変わるから分かるんだ。オジサンの特技なんだよ。今はこの研究所で重宝されている」

「それで、このような時の対応をなさっているのですね」

 今まで押し黙っていた茶々さんがぽつりと言った。

 二木のオジサンは肯定も否定もせずに微笑む。

「御所都さんもマグノリアちゃんもいつか見付けられるよ。他人と違う自分を、大切にしてくれる場所。大切にしてくれる人達。出来ればそこに桂馬先生のラボを選ばないで欲しい、と言うのが本音だけれどね」

「なんで?」

「それは桂馬先生もまた否定され……いや、これは彼のプライベートだ。勝手に話していい事じゃない。機会があったら本人に直接聞いてみるといいよ」



◇◇◇------



 外に出ると世界が夕陽で真っ赤に燃えていた。

 改めて赤い景色を見回すと、研究所は思いのほか広かった。私たちが今居た建物の他にも無数の巨大な施設が林立している。

 猫を狙うなら人気の無い場所だろう。私たちは研究所の縁の森にそって歩き始めた。

「茶々さんは二木のオジサンとどんな話をしたの?」

 ぶらぶら歩くのも何なので話を振る。

 茶々さんは相変わらず深刻そうな表情で言葉少なだった。

「桂馬先生との関係を聞き出されました。ψサイのことは隠し通すつもりだったのですが、隠し事をしているとすぐにバレてしまいました」

「それが特技なんだから仕方ないね」

 不意に、茶々さんが立ち止った。

「茶々さん?」

 夕焼け色に照らされた横顔が険しく強張っていた。大きな黒い瞳も激情に見開かれていた。何かを凝視している。

 茶々さんの視線の先を追う。

 若い男が森の中で屈みこんでいる。

 その足元には、猫。

 力無く仰向けている。

 もう生きてはいないのだろう。

 男は銀色に光る何かを取り出した。

 変わった形の鋏だ。

 左手で猫の胸辺りを探り、皮を摘み上げ、バツンと大きな切れ込みを入れた。

 そして切れ込みの上下に手を添えて。

「見ちゃダメです」

 茶々さんの忠告は一瞬遅かった。

 男は猫の毛皮を上下に引き裂いて剥いた。

 皮というものはこんなにも簡単に肉から剥がれる物なのか。

 苺ゼリーのようなぷるぷるとした、猫の中身が、露わになる。

 そこでふっと視界が暗くなった。

 茶々さんが私の目を塞いでいた。

「落ち着いてください。怖かったですね。大丈夫ですか?」

 正直な所、私は既に冷静になっていた。

 私の思考は一瞬で猫から違う物に逸れていた。

 背中に当たる柔らかいもの。

 茶々さんの胸、おっきい……。

 この距離で当たるんだ……。

 うわぁ……胸囲格差社会……。

 自分のAカップを想いながら背中に全神経が集中する。

「目を閉じてください。そのまま後ろを向いて。私が良いと言うまでこっちを向いちゃダメですよ」

 茶々さんの胸と手が離れた。

 私は言い付け通り目を閉じて後ろを向く。

 森の枯葉や下草、枝を踏む音。

 血色に染まる研究所の壁を仰いでいると茶々さんの牽制が聞こえてきた。

「あなた。猫の心臓をどうするつもりです?」

「ヒッ」

 男の悲鳴が聞こえた。

 さっきのは心臓を取る所だったのか。

「その道具、解剖の仕方。医学か生物学の人間に教わりましたね? それとも貴方自身が?」

「お、俺はちがう! 俺はそこの大学の英文学部の陸上部で、これは頼まれただけで」

「まーた陸上部ですか。心臓だけを取ってくるように、とは、かなり奇妙な頼みごとですのね。誰からですか?」

 男は一瞬黙ったが、次の瞬間、バグチャと異様な音が響いた。

 茶々さんがψサイの能力を使ったのだろう。

 彼女は生き物の体を壊せる。あの音で男が無事なはずないから、多分足元の猫が爆散したと思われた。

 只者じゃないと気付いたのだろう。男はすぐ正直になる。

「それは……ヒッ」

 今再びの短い悲鳴。

 その理由は私にも察せた。

 斜陽に負けずとも劣らぬ赤毛、黒蜜色に焼けた肌。裾を腿まで切り詰めた白衣を羽織るその青年は。

「沖縄さん!」

「また会ったねご婦人。ご機嫌よう」

 優雅に礼をする沖縄さん。

「あの、こ、この前はありがとう」

「ご丁寧にどうも。それよりも今はさ」

 沖縄さんは私の脇をすり抜けた。

「やぁゴセット嬢。何をしているんだい」

「……こっちの台詞です」

「そんな怖い顔をするもんじゃないよ。せっかくのトランジスタ・グラマーが台無しだ」

 こんな怖い声の茶々さんは初めてだ。語勢だけで射殺せそうなほど鋭い。

 彼女は明らかに沖縄さんを嫌悪している。

「ゴセット嬢、キミの仕事はそいつを警備員に突き出すまでだったはずだ。危ない事はするもんじゃない。早く帰ってt検定で遊びな」

「貴方は何故ここに居るんですか?」

mt-Keimaミト・ケイマに頼まれたのさ。帰りが遅いから見て来いって」

 mt-Keima。彼が使う教授の愛称。

 肩をすくめる沖縄さんが見えるようだ。

 沖縄さんが踵を返す音がする。

「警備員を呼んでおいた。間もなく着くと思うよ。サンプルも研究所に預けたし、これで二人はお役御免だ。早く帰ってコレ、mt-Keimaに渡してあげなね」

 いつの間にか隣に来ていた沖縄さんが私にスーパーの袋を差し出す。徳用のティーパックが三箱入れられていた。

「ありがとう!」

「おやすみレディ」

 沖縄さんがヒラヒラと手を振りながら建物の陰に消える。

 それと入れ違いで、物々しい服の警備員が反対の角から走ってきた。



◇◇◇------



 ラボに戻ると教授は真っ先にビニール袋に飛び付いた。

 なぜ分かった。

 いつも通りティーカップに三つのティーパックをぐるぐるしながら茶々さんの報告を聞く。報告にはあまり相槌も打たず、興味のある素振りすらない。

 黙々と紅茶をおかわりし続けている。


 カップが四杯、五杯と空になるうち教授の目に光が戻ってきた。まるで久々に水を貰った観葉植物みたいだ。

「お疲れ様。じゃあ僕は会議だから」

 報告が終わり七杯目を飲み干すと教授室に入り、資料の束を持ってラボから出て行った。

 去り際、呟く声が聞こえた。

「拷問されなくなるのが、魔女狩りの終わりじゃないんだよ」

 どの報告に対する言葉なのかは推せなかった。



 私はインスタントココアを飲みながら手首のブレスレットを眺める。

 また返し損ねちゃったな。

 教授が居なくなり、疲れ切った表情の茶々さんを見る。

「茶々さんは沖縄さんが嫌いなの?」

 先程のやりとりを思い出しながら尋ねる。

 茶々さんは吐き捨てた。

「胡散臭いんですよ」

 今日は普段の穏やかで気弱な茶々さんが影を潜めている。

 彼女自身もそれを感じたのだろう。一度大きく深呼吸し、少し無理したように微笑んで提案した。

「疲れましたね。今日はもう帰りましょう」

「あ、待って茶々さん。最後に一つだけ聞かせて」

「どうしました?」

 茶々さんが荷物を片付ける手を止める。

 少しだけ不安げに。

 私はしゃんと座り直し、ごくごく真面目に問うた。

「どうやったら胸大きくなるの」

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