第5話 ぬくもりを感じた瞬間

おたがい、好きとは言わない。それが不倫の鉄則。それが純倫であろうとも…。少なくとも私は、それが結婚している人を好きになったもののルールだと思っている。もちろんそれは、部長も同じはず・・。

3月いっぱいで明野聡子が会社を去ることになった。そのために部長が私と聡子と3人で焼肉に行こうと言い出した。

『いつにしますか?』と候補の日にちを提案すると、早いほうの日にちを指定してきたので、すぐにお店に予約を入れた。聡子は普段認知症の母親と、年老いた父親と暮らしており、あまり焼肉を食べることはないようで、とても喜んでいた。

私も、今度はお酒を控えて、ほろ酔いくらいで可愛い女でいようと心に決めた。

 会の前日、急遽聡子が有給を取ることになり、また部長と2人きりで過ごすことになった。私は部長のこと好きになっていたので内心すごく嬉しかった。部長が『最近結城いい子になったな。』っていってきたので、

『私部長を困らせるのもうやめようと思って。いい子になろうかなって思ったんです。』と言うと。

『ホントいい子になった。その笑顔もすごくいい。俺は明日の食事会よりも、今日2人きりになれることの方が楽しみで、今朝もすごく早く目がさめちゃったんだよ。』って。なんか子供みたいでかわいいと思ってしまった。

当日は楽しく会も進み、食事もお酒も十分楽しんだ。いつもは飲まない部長が上機嫌でお酒を飲んでいた。9時過ぎにお開きとなり、聡子は家のことが心配だからと帰って行った。私と部長は、まだ時間も早かったので、軽く飲みに行くことにした。部長の行きつけの店で、年配の綺麗なママさんのいるお店だった。カラオケを歌ったり、いろいろな話をした。

ママさんに私のことを、

『一時は手がかかる娘で大変だったんだよ。』って紹介した。すると、ママさんが、

『でも、手がかかる娘ほど可愛いって言うしね。』

『そうなんだよ。最近やっと可愛い娘になってきたんだよ。』って部長がいった。

せっかく2人きりになったので、この前のことをちゃんと聞いてみた。部長は私の名前を呼んでくれたのか?すると、

『なんだ覚えてないのか?何度も呼んだよ。碧海。碧海。って』

『そうだったんだ。すごいショック。覚えてないなんて(涙)。』そう言って、私は和さんの手を握った。すると、和さんも優しく握り返してくれて、

『2人きりになれる場所に行こう。』そういうと、私の手を引いて店を出てタクシーに乗り込んだ。こういう行動力は、夫よりも全然男らしいと思う。

ホテルまでの道のり、黙って私は和さんについて行った。ホテルに着くと、

『この前は碧海は酔いつぶれてたからな。ちゃんと元気な時にゆっくり2人きりになりたかった。』そう言って、私を優しく抱きしめkissしてくれた。

kissだけで心臓の音が和さんに聞こえてしまうんじゃないかと思うくらいすごくドキドキしてした。

『碧海があんまりきれいだから、本気で惚れちゃったよ。』と言われ、すごく嬉しかったけど、私はkissをして和さんの口をふさいだ。

『ここまで来てこんなこと言うのずるいかもしれないけど、私達は不倫の関係、お互いの家庭を壊すようなことをいうのはやめよう。私は、和さんの困るとこみたくないから、私の気持ちは自分の胸の奥にしまっておくね。』と言うと、

『わかった、俺の定年までドライな関係で行こう。』そういって、deepkissを私に浴びせてきた。私のドキドキはさらにエスカレート、『碧海。碧海。』そうささやきながら、和さんのkissは徐々に首筋から胸に下がっていった。私は、どんどん和に抱かれ溺れていった。和さんが私の乳首にチュッと吸いついた。

『あんっ、』私の口から吐息のような甘い声が漏れる。

『碧海すごく可愛い。体もすごく綺麗だ。乳首もピンク色で子供がいるなんて思えないよ。』と、和さんの言葉が私の耳を犯すようにつぶやく。

和さんの愛撫はさらに続く、私の体に夢中だった。私もそれに応えるように、和さんのむすこにしゃぶりついた。夫の颯と違い、私を感じてそそり立つ和のむすこを愛おしく感じた。

『碧海、入れるよ。』

『はい。』

和さんと私は一つになった。私は、次男の翠生んでから、8年近く夫婦生活はなかった。和さんとつながっただけで、心も躰もとろけるような気持ちになった。


終わった後もしばらく、和さんの腕の中で夢のような時間を過ごした。

『そろそろ帰らないとね。奥さんに怒られちゃう。』と最後まで言い切る前に、和さんのkissで口をふさがれた。

『今は碧海との時間だよ。』その言葉だけでうれしかった。今の一瞬だけ、妻でも母でもなく女でいられた。

それから30分後、二人とも後ろ髪ひかれる思いでホテルを後にした。お互い心に愛おしさを感じながら…。


次の日、私は、いつもお酒に弱い和が、けっこう飲んでいたので、気にはなったが、奥さんと一緒だったらと思い電話もかけられずにいた。

すると、『プルプル。』と電話がなった。和からだった。嬉しくて、

『もしもし碧海です。』

『もしもし碧海?おはよう。

昨日は楽しかったよ。ありがとう。』

『こちらこそ、ありがとうございました。

すごく楽しかったし、二人の時間も過ごせて嬉しかった。』

『ホントか?こんなおじさんでいいのか?』

『何でそんなこと。和さんこそ私でいいんですか?私は和さんがいいんです。』

『俺だって、碧海のこと食べちゃいたいくらい可愛いよ。』

『すごく嬉しい。』

『またデートしてくれる?』

『もちろんです。』

そのあとも少したわいもない話をして電話を切った。



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