第13話 「本当に無意識なのか?」
「ラ……
「馬鹿もん! 意味のない言語の羅列は無駄じゃと云っておろう」
「ビックリしたじゃん。そんな大声出さなくてもわかってるって」
「わかっているなら基本に戻るのじゃ」
「ノらないんだよね。気分が」
「幼子のように駄々を捏ねるでない」
「ワかりました。やればいいんでしょ」
「ならば魔法の発動までをいかに短くするかの訓練じゃ。今から詠唱百回!」
「カンベンしてよぉ」
「弱音を吐くな」
「ラクな方法ないの? もっとさ」
「そんなものあるわけがない。いくら汝に素質があるからといって、日々の鍛錬を怠っては実戦で使い物にならない」
「ズっとそんな事やってたら、実戦の前にヘトヘトになっちゃうよ」
「よくそこまで不平をたらたらと述べられるな」
「ヤっぱりさ、魔法って精神的なものが影響してくるでしょ。気分が乗らないときは、いくら効果のある鍛錬でも却って逆効果になると思わない? わたしもそれだけ精神的に疲れてるわけでさ……」
「ん? 疲弊している割には言葉になにやら不穏当な雰囲気が漂っておるぞ。それとも気付いていないだけか?」
「さて、何の話でしょう?」
わたしは誤魔化しの意味も含めて苦笑いをする。
うん、言葉遊びは好きなんだけどね。
「本当に無意識なのか?」
ラビは気付いていたのだろう。ただ、直接言葉に出されたわけではないので叱るわけにもいかず、ただ黙認するしかない。わたしのちょっとした抵抗だ。
「あのさ、もう一回試させてくれないかな。今度はきちんと意味のある呪文にするし、これで駄目だったら諦めるから」
仕切り直しということで、改めてラビ懇願する。
「わかった。一回だけ試してみるがいい。じゃが、成功しなければ既存の呪文に戻るぞ」
対するラビもわたしの態度に諦め気味なのか、少しだけ妥協してくれた。
「うん」
返事をすると、わたしは目を閉じて両手を胸の前で交差させる。
次に頭の中に魔法の効果を思い浮かべた。
そして、それを導くように思考する。
「……」
イメージが頭の中に広がり、それを具現化する為の力が身体の内より生まれ出る。
最初は胸の奥が熱くなるような感覚だったが、それがだんだんと身体全体へと伝わっていく。
ついには炎に包まれたかのような熱がわたし自身を襲う。
「熱いっ」
たまらず声に出した瞬間、わたしの身体は急激に平熱へと引き戻された。
「大丈夫か?」
恐る恐る目を開けてみるものの、これといった変化はなかった。
「やっぱり魔法、発動しなかったね。才能ないのかな?」
「いや、一瞬だが、防御の魔法が発動しかけておった。今の段階では役には立たないが、鍛錬すれば使えるようになるかもしれん。守りの呪文は教えてなかったが……ありす、汝はどうやって魔法を導いたのじゃ」
そう聞かれても上手く答えられない。イメージから魔法を導くという理屈を応用しただけだ。
「うん、ちょっとね。昔再放送で見たアニメの主人公になったつもりで呟いたの」
わたしはただ 『Abracadabra』と同じに、元となった呪文を真似ただけ。
「どんな呪文だ?」
「『
「……今、なにやら魔法のカードを扱う少女が見えた気がするのだが……」
「絶対、気のせいだよ!」
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