第11話 「じゃあ、ナルミちゃんの『な』から」

「ねぇねぇ、コレかわいいと思わない?」

 建物の中央部に位置する噴水がある憩いの広場。日によってはここでイベントが開催されるらしい。

 今日は、大きな催し物はないが、噴水を囲むように小さなワゴンスペースのショップが軒を連ねていた。

 その中のアクセサリを扱った店でわたしは思わず足を止める。

 その店は『不思議の国のアリス】』をモチーフにしたアクセサリが売られていた。

「とても素敵ですわね」

 わたしが指さしたものをナルミちゃんが手に取る。それはホワイトラビットを象られたものだった。

 アルミ製のキーホルダーで安っぽい感じだけど、わたしたちが購入するには手頃な価格設定でもある。

「これって、裏に文字を刻んでくれるみたいだよ」

 ミサちゃんが店頭に掲示されている説明書きを見つける。

 それによると、文字は二十二字×三行まで入れられるそうだ。

 『今なら文字入れサービス中』とのPOPも出ていた。

「買っちゃおうかな」

 わたしがそう言うと、ナルミちゃんがミサちゃんに対して頷き、再びこちらに笑顔を向ける。

「せっかくですから、記念に三人で同じものを買いませんか?」

「賛成!」

 ミサちゃんも満面の笑み。

「いいの?」

 他の二人が気に入らなくても自分一人は買うつもりでいた。それだけに、なんだかとても嬉しかった。

「ちょうど三人いますし、一行ずつ考えませんか?」

 ナルミちゃんの提案にわたしも乗る。

「それいい! そうだ、みんな自分の名前の頭文字から始めるってのはどう?」

 『不思議の国のアリス』とくれば言葉遊びだろう。

 さすがに極端に凝ったものは難しそうなので、単純に名前の頭文字ということにした。

「うんうん。面白そう」

 ミサちゃんも楽しそうに呟く。

「一生ものですからね。後で後悔のないものを考えた方がいいですわ」

「じゃあ、ナルミちゃんの『な』から」

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