欲望上等! 周りを巻き込まないならねっ!
天界司書の職を手に入れたあたしは、今天界図書館にいる。
今日も楽しくお仕事中。
暇な時は、カウンターで寝るのも、たまには(何時もだけど)良いよね?
先日の件以来、神様二柱は図書館の外で相互理解の為、親睦(なぐり合い)をしているし、
その上司は相変わらず、やる気ENDってるみたいで何処かにエスケープしてる。
(たまには、働けよ!!)
仏は何時も変わらず図書館で瞑想してるし、まあ静かにするなら許すか・・・。
そんな中であたしは、可愛い寝顔で(自称)お客様にアイドルとして、
サービス活動を行っていたの。(間違ってもサボってるんじゃ無いからねっ)。
そんな最中、アイドル活動を妨害する脳筋がお見えになったの。(注 来やがった。)
「サムライの本あるか?
サムライの勇敢さの真髄を学びたいのだ」
不意に話しかけて来た声で、カウンターで寝ていたあたしは目を覚ました。
目に前には、マッチョで頭まで筋肉の様な男が居た。
このムサい男も神々の一柱、テュール様だ。
「武士道なんかはどうでしょう?
サムライファイターの心意気が良く判りますよ」
勇敢で知られるこの神様、犬フェンリルの口に手を突っ込んで、
食いちぎられると言う、勇敢か馬鹿か判らない事やってるのよねぇ……。
あたしから言わせると、タダのアホウだけど。
危ないのが判ってる中に手を突っ込む、アホウが何処に居るかと?
いや、すぐ目の間にアホウが居るか……。
「それを頼む」
「かしこまりました、少々お待ち下さい」
そう言うと、あたしは書架まで飛んで行った。
探す事数分・・・。
有った!
見つけた本を手に取ると、スグにカウンター前に戻り本を手渡そうとした。
「この本になります、どうぞお受け取り下さい」
「ありがとう」
「ご返却は一四日以内にお願いしますね」
本を渡そうとしたあたしは、ティール様の違和感に気が付いた。
手が未だ有る?
たしか、犬にかじられて無くなった筈?
「どうした?」
「手、まだ無事なの?」
「そりゃ、どう言う意味だ?」
ティール様はあっけにとられている。
そりゃそうだ、いきなり言われて唖然としない方が変だよね。
「まだ、この犬に食いちぎられて居ないって事だろ?
そもそも、あの話自体が人間の欲望の比喩だからな」
突然背後で声がして振り返ると、ロキがフェンリルを撫でながら此方を見ている。
「教えて欲しいか?
教えて欲しいなら、教えてやらない事も無いぞ!」
なんか威張り腐ってあたしを舐め腐った、偉そうな態度をとってやがる。
「あんたからは、聞きたくないね」
「知りたいなら、あたしが教えてあげるよ、沙織お姉さま」
静かにネコを撫でている、フレイヤが口を開いた。
「ありがとう、フレイヤちゃん」
「フェンリルって言うのは、人の欲望の象徴なの」
フレイアは澄んだ眼差しで語り出す。
「欲望?」
「そうよ、人より有名になりたい、独占したいとか、お金持ちになりたいとかの気持ちね。
その気持ちは、生きて上でも大切な感情だけど、時には暴走するの」
「暴走か……」
有名になって賞金が欲しい為に、何でもやるのを見ると
欲望が暴走してるって思う……。
確かにそうよね。
「その欲望を暴走させない為に、最初は「レージング」と例えられる、
その人の良心で押さえようとしたの」
「それで、どうなったの?」
「最初は押さえれたけど、本気になった欲望はそれを容易に引きちぎった」
「次は?」
「次は「ドローミ」と例えられる、罰の無い掟書きで押さえようとしたの。」
「なんとなく判るけど……どうなったの?」
「最初は上手く行って居たけど、欲深い人間の本気になった欲望は、それを引きちぎったわ」
最期はどうなるか大体は判った気がする。
「最後の手段として、「グレイプニル」と例えられる、罰のある厳格な法で欲望を抑える事で、
やっと本気となった人間の欲望を縛る事が出来たの。」
「でも、その代償も余りに大きくて自由を失った、 手を失ったと表現される位ね
それがこの話の真相よ、沙織お姉さま。」
「良く判ったわ、ありがとう、フレイアちゃん」
「欲望暴走させたほうが、頑張れるって事だろ?
その方が人間にとって都合が良くないか?」ロキが不思議そうにしている。
「大きくなり過ぎた欲望は、
最後は周りを巻き込み、自分すらも飲み込んで破滅させる末路になるのよ」
フレイヤは冷たく澄んだまなざしで見ている。
「それを受け入れるも、止めるも自分次第よ」
「そう言う物か?」
まあ、天界司書のあたしには、欲望にまみれた人様がどうなろうと知った事じゃ無いけど。
図書館を巻き込まない限りねっ!
天界図書館 今日は乱闘も無く静かに営業中。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます