バチ当たり上等 仏の顔は何度でも!
天界司書の職を手に入れたあたしは今図書館にいる。
しかも、ただの図書館じゃない。
荘厳華麗、蔵書の数はこの世あの世あわせても、これより凄い所は無い。
木簡、竹簡、果ては楔型文字の粘土板タブレットまである天界図書館、
今日も開館。
神も仏も悪魔でも、来館していただけるなら、お客様は神様です。
(司書のあたしに逆らわない限りね)
図書館の一角、社会学のコーナーで二柱の神様と仏様が頭を悩ましている。
この方々は、巨大組織のトップだけあって悩みは尽きないみたいで、
今日も本も読まずに議論している。
「考え方を後世に残すのは、難しい物ですね」
「ですねぇ、うちらで分裂しなかったのは居ないんじゃね?」
「組織が巨大になると、避けれない宿命ともいえますが……。 でも、最低限身内同士でいがみ合うのは、避けたいですがね」
渋い顔で話す神×2の横で仏はさらりと抜かす。
2柱とも身に覚えあるようで、仏の言葉に思わず顔が引きつる。
「ぎくっ! 過去に身に覚えあり……」
「やかましいわ!!
金と権力絡みになると人間は変わるんだよ!
出来るなら、そいつらを即効で破門してやりたいわ!!
人の顔に泥を塗り腐りやがって!!
そう言う、お前の所はどうなんだ?」
髭にターバンの神は仏に詰め寄る。
「ぅ……。
昔は問題児も居ましたすいません……」
仏も身に覚え有りらしく言葉を詰まらせていた。
暫くすると彼らの議論はヒートアップし、だんだん声が大きくなってくる。
その様子をみて、フレイ様やクシナダさんや、主神様たちは顔をしかめている。
だんだん図書館に不穏な空気が立ち込め始めた。
このままでは図書館でラグナロクでも起きそうな気配である。
――ここは司書のあたしが収めないとねっ。
「あの、ここは図書館ですので、お静かにお願いします」
あたしが優しく話しても、全く聞く様子は無い、それどころか目にも入って無いようだ。
あたしの説得は馬の耳に念仏、いや仏の耳に念仏かもしれない。
でも此処は、司書として頑張らないとねっ!
「談話室かユグドラシルの麓なら、大声で議論されても構いませんので」
沙織は説得した。
ミス! 神Aには効果無かった。
ミス! 神Bにも効果は無かった。
ミス! 仏Aにも効果は無かった。
沙織の怒りスキル経験が90ポイント獲得、
怒りのレベルが2に上昇した。
こいつら・・・聞く気は全くないのかよ。
仏(自称)の私でもいい加減にしないと切れるわよ。
大所帯だからと言って、威張り腐りやがって。
あたしの顔が引きつってくるのが判った。
其処にもう一柱の神様が現れた。
「私が教えたのを自筆の文章を残さないから、揉めちゃうんですよ。
まったく、みんな筆まめじゃ無かったからですね」
ごもっともな話だが、こいつがさらりと抜かすのは腹が立つ。
こいつだって書いて居ないのだから。
そもそも最初に教えたこいつがシッカリしてたら大丈夫だったんじゃね?
脳内でシナプスが焦げる匂いがして来るのが判った。
「あの、他のお客様のご迷惑になられるので・・・」
更に議論はヒートアップして殴り合いになりそうな空気である。
あたしの話なんざ、ガン無視のようだ・・・
プツッ・・・!!
あたしの脳内で何かが切れる音がする。
「やかましぃ! 図書館は静かに本読む所だろうが!
喧嘩するなら外でやれ!」
あたしは、二柱の神様を蹴りまわし、仏を殴り倒した!
二柱の神と仏様はあっけに取られている。
「罰が当たりますよ!」×3
「図書館では、あたしが神ですから!
何か文句ある?
文句があるなら出て行け!」
「うちらは大所帯の所ですよ?」
大所帯だろうが、あたしには関係ない!
「何か?
大所帯だからと言って、
威張り腐って、他人様に迷惑掛けて良い道理が有る訳ねぇだろうが!!
思いが後世に伝わらないって周りに迷惑かけるなら、自筆の書物でも残して置けや!」
「全くですよ・・・」
先ほどの神様も頷いている。
「てめーも同類だ、書いてない事は同じだろうが?」
そう言うと、そいつの頭をこづいた。
「貴方は、神も仏も無いのですね。」
「此処ではあたしが神ですからねっ何か文句でも?
図書館で司書に逆らう事は自殺行為と思いなさい!」
あたしがそう言うと、辺りは静まり返った。
図書館はやっぱり、こうじゃ無くっちゃね。
「こほんっ、多少(大分)失礼いたしました。
図書館では来館者は神様ですが、
此処ではくれぐれも仲良くお願い致します。
此処にお見えになられる目的は、みんな一緒に筈ですからね。
でも、ここで喧嘩する方は、退館して頂きますからね。」
猫を被り直したあたしは神様たちと仏様に可愛く会釈した。
みんな頷いている。
良く見たら、クシナダさんがこっちにガッツポーズと送っている。
こちらも小さくガッツポーズを送り返した。
「沙織さん、やる時はやるんですね」フレイ様が話しかけて来た。
「はい、図書館ではお客様に楽しんで頂くのが司書の務めですの」
美青年のフレイ様が此方を見ているみたい♪
声のトーンが一段階上がって居る感じがする。
「沙織、お前声のトーン何時も違わねぇか?」
ロキが話しかけて来た。
このガキ、妙に頭が切れるから面倒なのよね。
美男子に声のトーンが変わるのは、美少女(自称)のサガよ!
「う、うるさいわね!
これが何時もの声よ」
「あやしいなぁ?」
天界図書館、今日も愉快に営業中。
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