図書館良い所一度はおいで  乱闘しないなら!

 かくして、天界司書の職を手に入れたあたしは今図書館にいる。

 しかも、ただの図書館じゃない。

 荘厳華麗、蔵書の数は、この世あの世あわせても、これより凄い所は無い。

 木簡、竹簡、果ては楔型文字の 粘土板タブレットまである、天界図書館でのお仕事は始まった。



 神も仏も悪魔でも、来館していただけるなら、お客様は神様です。

(司書のあたしに逆らわない限りね)




 あたしがカウンターの指定席に座って居ると、

 目の前で獅子舞のような神様と、老婆姿の神様が図書館の一角で大乱闘を始めた。

 この二人は獅子の方はバロン、老婆姿の方はランダと言う神様らしい。


 「図書館ではお静かにお願いいたします」

  

 あたしは最初は丁寧に対応した。

 普段、あたしは猫をかぶっているの。


しかし、この二柱は全く聞く耳を持って居ないようだ。

止める気配すらない。


「やましい、このババアとっととくたばれや!」

「お生憎様、あんたが生きてる限り、あたしゃ くたばらないよ」



お二人とも東南アジアから、わざわざ来ていただいて居るのにご苦労な事です。

何時乱闘が始まったか判らない位、延々と乱闘してるらしい。

光あるところには必ず闇もあるということで、この二人は永遠に続く争いを続けている。



「いいぞ、ババアもっとやれ!

そこで蹴りを入れろ!!」


年の頃10歳くらいの金髪の美少年が、二人の戦いに油を注いでいる。


「バロンの旦那ももっと頑張れ! 

お前が負けると人間どもが困るぞぉ~」


この少年も神々の一角、ロキと言うらしい。

しかし、あたしにとっては、タダのクソガキだ。


「あの、たびたび申し上げるのですが、他のお客様にご迷惑になられるので……」


しかし、バロンとランダの二柱は全く聞く気配すら無い。

――このケダモノが!


自分の顔が引きつり、アドレナリンが湧き出すのを感じる。


「いい加減にしろ、このクソババアとケダモノ!

図書館は静かに本読む所だろうが? 」


そう言うと、あたしは二柱の神々にとび蹴りを食らわせた。


「きゃい~~ん」

「ぐぅ 老人を虐めるとは、あんたはどんな教育されて来たんだい?」

ランダはしぼみかけの目を丸くする。


「お生憎様、こう言う教育をされていますわよ。

其処まで暴れられる元気なババアに手加減は要りませんわ」

「お前は、鬼か?」

「いえ、天界司書の結城沙織よ。

そんな訳で、二柱ともとっとと出て行きやがれ!!」


そう言うと、あたしは思いっきり二柱を蹴り飛ばす。


 「罰当たりがぁぁ!!」

 「老人虐待反対!!」


二柱が叫ぶのも気にせず、強制退館して頂きました。



「沙織お姉ちゃんやるねぇ」


 あたしの勇姿にロキも感心している。


「てめえも、同罪だろ?

火に油を注ぐ真似をするな!!」


あたしはロキの頭を思いっきりぶちのめした。


「いてぇぇ!!」


ロキは頭を抱えて転げまわっている。


「お前、神様の頭ぶちのめして良いと思ってるのか?」

「良いと思うから叩くんでしょ? 何か文句でも?」

「ある意味、お前凄いな……」


何か言いたそうなロキを横目に、あたしはさらりと答えた。


「図書館に居る限り、ここではあたしが神。

後はあたしに逆らわない限り神様です」



その様子を憧れの視線で、静かに本を読みながらネコを撫でている銀髪の少女がいる。


「沙織お姉さまかっこいい」

「ありがとうフレイアちゃん,あなたは静かに本を読むから感心ね」


あたしはそう言うと、フレイアの側に近寄り頭を撫でてやった。


「オレと対応が全然違わないか?」ロキは不満そうに見ている。

「図書館は静かに本を読む所ですからね、そんなお客様は神様です。

でも、本を読まない人はお客ではありませんからねっ!」



天界図書館は今日も静かに(謎)営業中。

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