天界司書ですが何か?
くろねこ
え? あたし死んじゃったの!? 責任とれ責任を!
病院で手術を受けていて、次に目覚めたあたしは愕然とした。
気が付いたら真っ白い服を着せられ、真っ白い空間に横たわって居たからだ。
あたしの横には奈良の大仏のような人が立って居り、申し訳そうな顔をしてジッと此方を覗き込んでいる。
「沙織さん気が付かれました?」
大仏は仏頂面であたしに話しかけて来た。
「ここは何処?
たしか、あたしは手術して成功した筈じゃ?
そもそも、あんた何者なの?」
「一度に多く質問されても困ります。
まず、私の名前は大日如来です」
「仏様?」
「一応、此方のトップを務めらせて頂いています。」
はぁ?
自分から大日如来とぬかしやがった。
こいつヤバい系の人?
「はい、あなたは手術の失敗でお亡くなりになられ……」
やっぱり、そのオチか……。
あたしは、まだやりたい事山ほど有ったのに、この仏が他人事と思いやがってサラリと抜かしやがった。
「ふざけるな!あたしの手術の成功率、あの病院での実績100%じゃなかったの?
隣でやっていた、一か八かの難病の少女の手術じゃあるまいし、あたしがなんで?」
「非常に申しあげにくいのですが……。
此方に手違いがありまして」
螺髪の男は顔を曇らせた。
なにぃ?
手違いって何よ、手違いって初耳よ?
失敗しないから、神仏じゃないの!?
あたしの人生掛かってるんだから、ふざけんじゃないわよ!
自分の怒りのボルテージがガンガン上がるのが判った。
「手違いって何よ? 間違いって事?」
「申し訳ありません沙織さん、此方の事務的な手違いで……」
「事務的な間違い? 」
「そうです、それで隣の娘の代わりに、あなたを連れて来ちゃったみたいで……」
「つまり、難病で死ぬはずのあの娘の代わりに、あたしが死んだと?」
「申し上げにくいのですが……」
螺髪の男は済まなそうに話している。
この男は、大日如来とか言う偉い仏様らしいがあたしには関係ない。
温厚で仏(自称)の沙織と言われるあたしも、ついに限度がやってきた。
「それで済むか! このボケ!!」
あたしは目の前に居る螺髪の男に殴りかかった。
「痛い! 真に申し訳ありません!!」
謝罪をする仏。
しかし、謝って済む物じゃないでしょうが?!
怒りの収まらないあたしは更に大日如来を蹴り上げる。
「ごめんで済んだら警察要らんのじゃ!
何か?
つまりあたしは、隣で手術をして死ぬはずだった娘の代わりに死んだのか?」
「真に申し上げにくいのですが、そうなります……」
あたしの余りの剣幕に涙目で抜かす仏。
しかし、このまま示談で済む話じゃないよねぇ……。
――どうコイツに責任とらせるか。
「ふざけるな! 責任とれ責任を!!」
そう言うと、あたしはヘッドロックで仏様を締め上げた。
(ニヤっ この男の秘密発見!!)あたしの口角が邪悪に上がった。
「ぐ ぐえぇ……。
判りました!! 判りました!!!」
仏様は苦しそうにしている。
判れば良いのよ、判ればね。
きっちり落とし前はつけて貰うからね!
「どう責任とるのよ?」
「転生は如何でしょう?」
「話だけは聞いてあげるわ」
あたしは結城沙織、悪役(性格だけは) 令嬢 (自称)で美人でスタイル抜群で(以下略……)
そんなあたしは薄幸の美少女に有りがちな心臓病を患っていたの、勿論ありがちな本好きよ。
でも、みんなの愛(カツアゲとも言う)で手術を受けれるようになって、元気に学園生活をエンジョイする予定だったの。
――それが。
――それが。
大日如来のせいで台無しにされてようとしている。
――許すまじ、この仏。
仏は散々考えた末、口を開く。
「今流行の悪役令嬢に転生はどうでしょう?」
「何か?
このあたしをヒロインによって処刑台に送られろと?
良くて自殺か?
悪くしたら凌辱されて殺されろと?
ふざけるな!!」
あたしの顔が引きつって来るのがわかり、さらに螺髪の男の首を締め上げた。
「ぐぇ……。
判りました、判りました!!
じゃあ 異界転生は?」
螺髪の男は苦しそうに別の案をだした。
転生には変わりないから場所が違うだけで、別の案では無いだろう?
「異界にいって化け物と戦えと?
悪くしたら人間でも無い物に転生しろと?」
そう言うと、あたしは締め上げたまま螺髪の男を殴りつけた。
「痛い!バチがあたりますよ!」
「ど~ぞ ご勝手に。
どうせ、あたしは既にあんたらに殺されてる訳だし!
しかも手違いでね!!」
更に螺髪を殴りつけると、その突起の数が増えた気がする。
「痛い痛い!
私にどうしろと?」
「沙織さんの意見を聞いてみてはどうでしょう?」
背後から救急箱を持った優男の仏様が現れた。
「最初から、そうしたら良かったのよ。
あたしの希望はね……」
あたしが彼の耳元で囁くと、螺髪の男の顔が引きつった。
「薬師さん、まだあの図書館の司書、空きはありますよね?」
「まだ有った筈ですが、大日さん……」
「沙織さん、其処に転生で良いですね」
にやっ。
悪役(性格だけは)令嬢のスキルで司書の椅子ゲット!!
そう思うと、自然と笑みがこぼれた。
意外な所でスキルが役に立つものね。
「よし 其処で手を打ってあげる。
チート並みな能力込みで転生お願いね。
もし少しでも違ったら、さっきの知ったあんたの秘密バラすからね」
螺髪の髪の男は青ざめている。
「お前はマーラか?
お前はロクな死に方しないぞ」
「いえ、ただの天界司書の結城沙織よ。
それにもう既に死んで居ますからご心配なく、あんた達に殺されてますからね」
そう言うと、あたしは意地悪く微笑んだ。
「とっとと、ヴァルハラに行ってしまえ!
この罰当たりが!!」
ついに螺髪の男が怒りだした。
元はと言えば、お前らの手違いだろ?
と言いたくなったが別れは綺麗にしたいから、
あたしは二人の仏に会釈した。
「じゃ またね。仏様」
そう言うと、あたしは振り帰らずに扉に向かって歩き出した。
二度と来るな!と言う声は聞こえない振りをして。
こうして、あたしは司書の職を手に入れた(強奪とも言う)。
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