父つぁんの影


 彦根に住む許六の屋敷に、大坂から急を告げる使者が到着したのは、冬の気配が漂い始めた十月のことだった。芭蕉のただならぬ容態を知らせるための使者は、彦根だけでなく伊勢や京など各地の門人たちにも遣わされており、知らせを受けた京の去来は、直ちに大坂へ向かったとのことだった。


「許六様も一刻も早く立たれてくださりませ」


 そう申し述べて座を辞した使者の言葉通り、許六は今すぐにでも身一つで芭蕉の元へ赴きたかった。が、藩士としての勤めに縛られた許六にとって、それはできぬ相談であった。許六ができるのはこの地に毎日届く、容態を知らせる文を読みながら、ただ芭蕉の回復を願うこと、それだけだった。

 許六は回想した。江戸の芭蕉庵で別れたのが昨年の夏、あれから一年半も経たぬ内に、このような事態が訪れるとは……しかし、許六にその予感がないわけではなかった。別れ際の芭蕉は甥の桃印を亡くし、既に衰えを見せ始めていた。加えて、今年の六月には最愛の寿貞尼を失っている。打ち続く悲しみが老いを迎えた芭蕉の気力を奪い、身体を弱らせていったのだろう。

 だが、まだ逝くには早すぎる。各地に撒かれた蕉門の種はようやく芽吹き始めたばかり。ここで宗匠を失っては瓦解の危険さえある。なんとか持ち直し、更なる隆盛のために尽力していただきたい、それが許六のみならず門人一同の願うところであった。


 来客ありの知らせを受けたのは、そんな焦燥感に苛まれる日々の只中だった。取次ぎの者が告げた立花牧童という者に面識はなかった。しかし名は知っている。金沢にて数年前に門人となった立花北枝、確かその兄が牧童だったはず……許六の覚えはその程度であった。

 このような時にいかなる用向きであろうか。客座敷にて対面した許六は、まずは互いに挨拶を交わした後、品定めをするように牧童を眺めた。背筋を伸ばして正座する牧童の瞳からは、ただの刀研師とは思えぬほどの気迫が感じられる。そこにはこれまで許六が手合わせしてきた多くの武士たちに勝るとも劣らぬ威圧感があった。知らぬ間に、許六は自身の身が引き締まるのを感じた。


「まずは、これをお受け取りください」


 牧童が差し出したのは一尺にも満たぬ桐の小箱である。許六はそれを手に取ると蓋を開けた。中には小柄小刀が収められている。


「ほほう」


 思わず感嘆の声が漏れ出た。許六は武人として剣術、槍術は名人の域に達している。武具の類にもそれなりの興味はある。


「刀身と一体の小柄とは、随分と古いもののようですな」

「刀研ぎをしておりますと、様々な方から依頼を受けます。その小柄は、少々懐具合が寂しいお武家様が、研ぎ料の足しにして欲しいと差し出されたもの。ひどく傷んでおりましたが、研ぎ直すと見事な仕上がりになりました」


 許六は箱から小柄を取り出すとしげしげと眺めた。刀身は繰り返された研ぎ減りによって痩せ細ってはいるが、小柄の富士と果実の細工はなかなかに風情がある。


「うむ、良き趣向の小柄ですな」


 許六は小柄の裏を返した。真っ先に目に付いたのは、刀身に彫り込まれた十余りの金文字。一目で発句であることがわかった。


「金箔象嵌ぞうがんの真似事です。親しい友人に白銀師しろがねしがおりまして、手ほどきしていただいたのです」


 許六は顔を上げた。小刀ながらこれだけの手間を掛ければ、費やした金子も安くはあるまい。互いに名を知っているとはいえ、初対面の自分に何故このような物を差し出すのか……無言で自分を眺める許六の心中を察し、牧童は頭を下げた。


「ご推察の通り、許六殿にお願いがあって参上したのです」

「願い……身どもの如き新参者に願いとは、いかなるものであろうか」

「私が言霊の俳諧師になれるよう、お力を貸していただきたいのです」


 力の込もった牧童の一声は客座敷全体を轟かすようだった。それでも許六は動じることなく即座に言葉を返した。


「無理ですな。荷が重過ぎる。ご存知の通り、蕉門の末席に座してまだ一年余り。芭蕉翁とさして懇意なわけでもない。そのような願いは芭蕉翁の信頼篤き、京の去来殿になされるがよかろう」

「頼みました。以前、去来殿にも頼んだのです。しかし、断られました」


 許六は顔をしかめた。去来が引き受けなかった願いを自分が引き受けられるはずがない。この男、このような理屈が何故わからぬのか。


「許六殿はもっとも新しき言霊の俳諧師。貴殿以後、芭蕉翁は誰にもこの業を与えておりませぬ。どうして与えていただけたのですか、どうすれば与えていただけるのですか。何卒、教えてくださりませ」


 畳み掛ける牧童の言葉に、許六は諭すように言った。


「のう、牧童殿。芭蕉翁は常々こう仰られておる。俳諧を深く理解し、それを実践できる才覚を持ち、その上で言霊の俳諧師たることを望めば、いかなる者でも業を授けると。芭蕉翁が授けてくださらぬのなら、牧童殿に何かが欠けておられるのでしょう。今一度、自分を見詰め直してみられてはいかがかな」

「いいえ、私には既にその資格はあるのです。俳席に連座した門人の方々からは必ず賞賛をいただいております。我が弟北枝より優れていると言う者もおります。そして私自身、私の才を自負しております。座に着いた方々より劣った句を詠んだことは、一度もないと断言できるほどです。しかし、芭蕉翁には認めていただけません。詠み上げた歌仙を何度送り届けても、これでは業は授けられぬと送り返されるばかり。もはや直々に願い出るより他に道はないと思い至った次第。許六殿、何卒我が願い、聞き届けてはいただけませぬか」


 頭を畳に擦り付けて懇願する牧童を、許六は冷ややかに見下ろした。その目は軽蔑に満ちていたが、哀れみの色がないわけでもなかった。不快な面持ちで手にした小柄を桐の小箱に収めると、許六は元通りに蓋をした。


「今のお話を伺って合点がいった。残念ながら牧童殿には言霊の俳諧師たる資格がないとお見受けいたす」

「な、なんと仰られた」


 驚いて顔を上げた牧童の前に、許六は小柄を収めた小箱を差し出した。


「私が口添えしたところで、芭蕉翁は貴殿に言霊の業を与えることはあるまい。諦めなされ。この小柄はお返し申す。このまま郷里に戻られるが良かろう」

「できませぬ、諦められませぬ」


 牧童の語気は更に荒くなった。長年探し求めた仇敵に出会いでもしたかの如く、許六に食って掛かる。


「五年ですぞ。芭蕉翁のお言葉を信じ五年間も待ち続けたのです。約束の日から今日に至るまで、どれだけの屈辱に耐えてきたか。入門と同時に言霊の業を授けられた許六殿にはおわかりになりますまい。言霊の俳諧師ではない、ただそれだけで弟の北枝からは格下に見られ、門人の方々は私よりも弟を敬う。兄でありながらこのような扱いを受ける私の不甲斐なさ、想像もできますまい。しかも、口惜しきことには」

 怒りに紅潮した顔をゆがませて、牧童は許六ににじり寄った。

「芭蕉翁は寿貞尼殿を言霊になされたとか。俳諧師でもない者、いや、俳諧すら知らぬ者に死後の言霊を与えておきながら、何故、私には与えてくださらぬのですか。私は寿貞尼殿よりも劣ると言いたいのですか。私の何が気に入らぬと言うのですか。許六殿、答えてくだされ」


 許六の眉間に皺が寄った。表立った抗議はなかったが、寿貞尼の件は多くの門人たちの不興を買っており、許六もまた同じ不満を抱いていたからだ。この点に関してだけは許六にも牧童の悔しさが理解できた。


「うむ、牧童殿のその気持ちはわからぬでもない。だが、寿貞尼殿と貴殿の扱いについては全く別の話であろう。他人を羨むより、まずは自分を磨くのが先決のはず。時間は掛かるかも知れぬが、努力を続けられればいつかは芭蕉翁のお眼鏡に……」

「もはや一刻の猶予もないのです」


 自分の言葉をさえぎられた許六はため息をついた。相手の言葉に耳を傾ける余裕すら失ってしまっては、話し合いは成立しない。これ以上の問答は時間の無駄である。


「聞いておりますぞ、許六殿。芭蕉翁は今や重篤となり、覚悟を決めた門人もおられると。今の世に、言霊の業を授けられる俳諧師は芭蕉翁しかおりませぬ。このまま逝かれてしまっては、私は永遠に……」

「何ということを申される!」


 許六は立ち上がった。その表情は憤怒に満ちている。それ程に牧童のこの一言は許六の逆鱗に触れたのだ。


「牧童殿は今、どのような言葉を口にしたかわかっておるのか。言霊を欲する者なら、自ら発する言葉の重みを知らぬはずがなかろうに」


 許六の剣幕に牧童は我に返った。同時に大きな後悔に襲われた。激情に駆られていたとはいえ、病と闘う芭蕉翁に対して何ということを……もはや弁解の言葉すら出なかった。


「ここまで己を見失っておるとは思いも寄らなんだわ。お帰りくだされ。そして二度と姿を現さんでくだされ」

「お、お待ちください。許六殿に見放されては、私は」

「誰か」


 許六が手を叩くと次の間に控えていた従僕が姿を現し、牧童を背後から抱え込んだ。


「許六殿、今一度お話しをお聞きくだされ、許六殿」


 未練がましい言葉を吐きながら、牧童は屈強な従僕に引き摺られるように部屋から出され、戸外へ追い立てられ、敷地の外へと放逐された。眼前で音を立てて閉じられる屋敷の門、それは牧童にとって全ての希望を閉ざす門だった。足元に打ち捨てられた桐の小箱を拾うと、牧童は打ちひしがれた心を抱いて許六の屋敷を後にした。


 北陸道を北へ歩く牧童の足取りは重かった。北枝に宛てられた文によって芭蕉の容態を知り、時には早駕籠を飛ばして昼夜兼行で街道を急いだ数日前の勢いは、今の牧童にはもうなかった。ひどく寂しかった。この世には自分ひとりしか居ないのではないか、そんな想いさえ湧き上がった。


「さすがに冷えるな」


 吹く風は冷たく汗に濡れた体が震えた。牧童は歩みを止めると、傍らの石に腰を下ろした。既に日は暮れ上弦の月が琵琶湖を照らしている。


「これも、所詮は無駄な骨折りであったか」


 牧童は懐から桐の小箱を取り出すと蓋を開けた。丹精込めて仕上げた小柄小刀。手に持ってかざすと、彫り込んだ金文字が月明かりにきらめいた。行き場を失った献上品、しかしそれは自分も同じだった。このまま金沢へ戻ったとしても、そこに居場所はない。

 牧童にはわかっていた。門人たちの賞賛も世辞も、全ては自分が言霊の俳諧師たる北枝の兄であるが故に、与えられているに過ぎぬことを。座に列するときには常に北枝が居た。牧童一人だけで句会に招かれることはだたの一度もなかった。必要とされているのは自分ではなく弟。そう、これまで身を置いていたのは蕉門の中ではなく外、そしてその門は固く閉ざされていたのだ。あの許六の屋敷の門のように、決して開かぬ扉を自分は五年間も叩き続けていたのだ。ひとりであることにも気づかずに……


 ――お主をひとりにした者が憎かろう、牧童よ。


 声だった。牧童は周囲を見回した。誰も居ない。空耳だろうか、あるいは自分の想いが声となって自分自身に語りかけたのかも知れない。牧童は夢を見るような面持ちで小柄を眺め続けた。


 ――発句を詠め。わしがお主を吟詠境に連れて行ってやろう。


 まただ。牧童は立ち上がった。間違いなく聞こえる。頭の中に直接響いてくる幻聴にも似た声。そして、その声は確かに言った、自分を吟詠境に連れて行ってくれると。手の中には月光を浴びて妖しく光る小柄、その刀身に自ら彫り込んだ発句を牧童は詠んだ。


「月薄きもし魂あらば此のあたり……」



 夕暮れの空に浮かんだ眉月は、薄れていく陽光を慕うように今にも沈もうとしていた。茜色に染まった薄暮の湖面には暗い波頭が無数に現れ、落ち着かぬ心が発する言葉のようにざわめいている。海かと見まごうほどの広大な湖、その水辺に牧童は立っていた。その正面にもう一人、黒い法衣をまとった高齢の出家僧が牧童を見詰めている。


「あ、あなたは、一体」


 ここが吟詠境なのは間違いなかった。そして、それを開いたのが自分の前に立つ男であることも牧童にはわかっていた。知りたいのはその男の正体だ。牧童は今一度、自分の前に立つ老人の顔を見た。やはり見覚えはなかった。


「鈍い男よ。わしがお主の持つ小柄に宿った言霊であることにも気づかぬとは」


 見れば男の手には先程まで牧童が見詰めていた小柄が握られている。


「言霊……しかし、言霊を持たぬ者を吟詠境に誘えるのは言霊の俳諧師だけ。しかも人ではなく小柄に宿った言霊がそのような事を」

「そうだな。そのような事の出来る言霊は滅多におらぬ。よほど力がなければ叶わぬ業だからな。だが、わしはその力を持っておる」


 牧童の顔が蒼ざめた。他人の発句を即座に己の発句と成して共感を持ち、それが刻まれた小柄に宿る行為には、相当な力を必要とするはずだ。それを平気で行い、言霊を持たぬ者を吟詠境に招き入れる……これだけ強大な力と業を持つ言霊は、今の世において芭蕉以外には一人しか居ない。


「ま、まさか、俳諧の祖、山崎宗鑑殿の言霊……」

「いかにも」


 不敵な笑みを浮かべる宗鑑を見て牧童は後ずさりした。蕉門に座する前、牧童は談林派に属していた。その宗匠である西山宗因の言霊を奪ったのがこの宗鑑なのだ。しかも宗因亡き後、次の狙いは蕉門の俳諧師たち、そしてその宗匠たる芭蕉であるとの噂も耳に入っている。自分にとって味方であろうはずがない。牧童は身構えると、厳しい眼差しで宗鑑を睨みつけた。


「そう怖い顔をするな、牧童。言霊の業が欲しいのであろう」


 自分の急所を狙い澄まして放たれたかのような宗鑑の一言に、牧童の心は大きくぐらついた。欲しい、喉から手が出るほど。だがこれほどまでに欲して授けられなかった言霊の業を、宗鑑が易々と授けてくれるとは思えなかった。牧童は疑心暗鬼のまま訊き返した。


「私を……この私を言霊の俳諧師にしていただけるのですか」

「いや、それは出来ぬ。お主は俳諧連歌をわかっておらぬからな」

「では、何故、言霊の業を欲しているのだろうなどと仰るのですか」


 宗鑑が歩き始めた。牧童に向かってゆっくりと近寄っていく。


「お主を言霊の俳諧師には出来ぬ、が」

 牧童の間近に迫った宗鑑は、触れるばかりに顔を寄せて言った。 

「我が言霊の片鱗にならば、してやってもよいぞ、牧童」


 その言葉は牧童にとって驚愕と共に絶望でもあった。言霊の片鱗になれば確かに業は使える。だが、それはあくまで本体の詠唱を補う形に過ぎない。しかも自分単独では吟詠境を開くことすらできぬのだ。片鱗になることは宗鑑の言霊の一部になるのと同等である。


「そ、そのような申し出、引き受けられるはずが」

「出来ぬか。だが、考えてもみよ。お主はこのままでは言霊にはなれぬぞ。命尽きればそれで終わりだ。それでいいのか。片鱗といえども、この宗鑑の言霊の片鱗ぞ。俳諧師の言霊と同等、いや、それ以上の力を発揮出来よう」


 再び牧童の心が揺らぎ始めた。芭蕉から言霊の業を授けてもらうことは、今となっては叶わぬ願いだ。さりとて芭蕉亡き後、業を授けられる力を持つ俳諧師の出現を待つことは、この百年の間に貞徳、宗因、芭蕉の三人しか現れなかった事実に鑑みれば、余りにも望みが薄い。


「牧童よ、蕉門が憎くはないのか。お主をひとりにした門人たちを見返したくはないのか。業を望んでも授けてくれず、俳諧師でもない者を言霊にした芭蕉に恨みはないのか。悪い事は言わぬ。わしの片鱗になれ。共に蕉門の鼻をあかしてやろうではないか」


 小柄を持つ宗鑑の右手が薄っすらと光り始めた。しかし、心乱れたままの牧童はそれに気づかない。


「宗鑑殿のお言葉はごもっとも。さりとてそれは蕉門への裏切りにも等しい行為。怨嗟の情に駆られて道を踏み外すような真似をするのは……」

「やれやれ小者はこれだから困る。ならば」


 宗鑑の小柄の輝きが一際大きくなった。それに気づいた牧童は声を上げた。


「宗鑑殿、何をなさる!」

「開、心意!」


 身を捩ってかわそうとする牧童の胸に、眩い光を放つ宗鑑の右手の小柄が容赦なく撃ちつけられた。息が止まるような衝撃と共に、自分の意識が急速に失われていくのが牧童にはわかった。


「心を決めさせてやろう、牧童よ。お主の中にある蕉門への信頼を剥ぎ取り、代わりに嫌悪と憎悪を結び付けて敵意に昇華させてやる」


 撃ち込まれた宗鑑の小柄から、何かが自分の中に入り込むのを牧童は感じた。その何かが、次第に薄れていく意識を取り巻いた。

 弟、北枝の顔が見えた。穏やかな笑顔を浮かべている。兄を慕う柔和な笑顔、いや違う、それは冷笑。言霊の業を持てぬ兄を蔑み見下す嘲りの笑顔なのだ。

 門人たちの顔が見えた。自分を褒め美辞麗句を並べ立てる彼ら。勿論それも嘘だ。門人はこちらに顔を向け、その目は北枝だけを見ている。誰も自分を見ていない。誰も自分の声を聞いていない。口だけが空々しい称賛を吐き、虚飾の表情を装っているに過ぎないのだ。

 許六の顔が見えた。芭蕉の顔が見えた。門を閉ざして決して中には入れてくれぬ言霊の俳諧師たち。期待を抱かせたまま自分を放置し続けた宗匠。浮かび上がった顔のひとつひとつは、牧童にとっては今や憎むべき対象だった。どのような手段を講じても倒すべき不倶戴天の相手だった。枯野を焼き尽くすように燃え広がった憎悪は、やがて牧童の全ての感情を支配した。もう、何も迷うことはなかった。


「片鱗となりましょう。共に蕉門を討ち滅ぼしましょう」

「ふっ、手を焼かせおって」


 遂に心を決めた牧童の言葉を聞いた宗鑑は、満足げにそう言うと小柄を左手に持ち替えた。そして右手を牧童の胸に当てると力を込めて言い放った。


「お主を我が言霊の片鱗となし、我が分身をこの小柄に封じよう」


 言葉と共に宗鑑の両手から発せられた言霊の力は、小柄と牧童の体を薄く光らせた。瞬時に牧童は理解した。遂に自分は言霊を手に入れたことを。言霊の力は体の隅々にまで満ち溢れ、新たな何かに生まれ変わったかのようだった。


「宗鑑殿のお力、有難く頂戴いたします」

「牧童よ、これでわしが居らぬ時でも、お主と小柄、この二つの言霊で吟詠境を開くことができる。もっとも、わしが居らねば発句も季の詞も詠めぬ。お主には暗殺詠たる現し身の業を授けよう。時に利あらば小柄の封を解き、門人を吟詠境に誘い、現し身の業によって命を奪うのだ。牧童、出来るな」

「宗鑑殿の片鱗となれば、容易たやすきことかと」


 牧童の返事を聞いた宗鑑はほくそ笑んだ。かつてないほどの手強さを見せる芭蕉とその俳諧師たち。だが、こうして外堀を埋めていけば、やがては蕉門も瓦解する。これまで打ち負かしてきた言霊の業を持つ者たちと同じように……

 宗鑑は西の空に目を遣った。眉月は既に沈み、夜の闇が空全体を覆い始めていた。


 * * *


「……はっ!」


 汗びっしょりだった。これほどの寝汗をかいて目覚めたことは父つぁんの記憶になかった。手で顔の汗を拭い、すっかり日が昇った窓の外を眺める。昨日ショウたちが頑張ってくれたおかげで。今日の朝食前の畑作業はなくなった。それにしても寝過ごした。今頃、みんな朝食の席に着いて自分を待っているだろう。

 そんな他愛ない事を考えながら、父つぁんは夢の内容を頭の隅へ追いやろうとした。けれども、それは無駄な試みだった。忘れようとすればするほど、現実の出来事のような鮮明さで、牧童が、宗鑑が、夕闇に沈む湖の光景が、頭の中に浮かび上がってくる。


「くそっ。一体、何だってこんな夢ばかり……」


 父つぁんはベッドを出て机の引き出しを開けた。蔵から持ち出した錆びだらけの小柄は間違いなくそこにある。怖かった。一度でも触れてしまえば、たちまち囚われて二度と手放せなくなる、そんな予感がした。

 それはひとつの闇だった。日が暮れれば、どんなに抗っても全てを包み込んでしまう闇。誰一人として決して逃れることのできない夜の闇。だがいずれ夜は開け、闇は朝日によって消滅する。この小柄の闇にもいつか夜明けはやって来るのだろうか。眩しいほどの朝日がこの小柄を照らす時が来るのだろうか。その答えを知ることは、闇夜に飛ぶ漆黒の烏を見い出すよりも困難なことのように、今の父つぁんには思われた。


「珍しいですな、朝には強い子なのですが。お待たせしてすみませんね」


 申し訳なさそうなおじいさんの顔。朝食の席に着いている僕は、とんでもないと両手を振った。


「いえいえ、昨日は僕が迷惑を掛けてしまいましたから。これでお相子ですね」


 とは言うものの確かに珍しいことだった。父つぁんの性格として人に迷惑を掛けるのを嫌う傾向があるのは、これまでの付き合いでおぼろげにわかっていた。寝坊のせいでみんなの朝食を待たせている今の状況は、父つぁんらしからぬ振る舞いである。ただ、そのせいで昨日の僕の失敗の印象が薄れたかな、と思うと少し気が楽になった。

 横に座っている先輩は目を閉じてじっとしている。食べる速さは風の如く、食べる静かさは林の如く、食べ尽くすこと火の如く、食べるのを待つ間は山の如く動かない。食の風林火山を自認する先輩らしい落ち着きである。


 そんな先輩を眺めながら、もう一度今日の予定を頭の中で確認することにした。蕪村さんに教えてもらった住所に行くのは午前中。先方が午後より午前を希望したため、そうなったのである。

 行くのは僕と先輩とソノさんの三人。その他の者は別行動。ここまでは出発前に先輩とソノさんの話し合いで決まっていた。飛び入りとなったコトは元々来るつもりではなかったし、用があるのはあくまで去来なので僕らとは別行動になった。コトの母親は気を遣って今日は一人でのんびり過ごすとのことだ。僕らを除く五人は、午前中は美術館を見学するつもりだと言っていた。なんでもテーマパークのような面白い美術館があるらしい。

 昼食はどうなるかわからないから未定。こちらの用が済み次第、連絡を取り合って一緒に食べるか別々に食べるか決める。午後は合流して八人で観光地を見物、特に芭蕉の足跡などを訪ねて回りたい、と思っていたのだが、昨晩、寝る時になって先輩から予定の変更を告げられた。


「父つぁんの希望でな、午後は総合体育館で開催される地元の高校の剣道大会を見学しに行くことになったんだ」


 それは花火見学を打ち切って、母屋で甘エビの頭の唐揚げを食べていた時に突然言われたらしい。中間試験が終われば自分たちも高校総体予選が始まるから、参考までに見ておきたい、父つぁんはそう提案したそうだ。

 父つぁんの剣道部入部は自発的ではなく先輩の少々強引な勧誘によるもの。なのに剣道の試合を見ておきたいとは、なかなか勉強熱心ですねという僕の感想に返ってきた先輩の言葉は驚きだった。予選の団体戦には父つぁんを補欠で参加させる予定なのだそうだ。

 中学は水泳部、高校に入っても筋トレばかりで、体育の時間以外は竹刀を握ったことのない一年生を、補欠とはいえ参加選手にするとは無茶振りにも程がある。が、それは同時に剣道部の人材の少なさの証明ともなる。なんでも参加予定の三年生が急遽出場を見送ったため、やむを得ず父つぁんを補欠に加えた、とのことだった。


「補欠だから実際に試合に出ることは恐らくないと思うんだが、大会の雰囲気くらいは事前に知っておきたいだろうからな。一緒に行くことにしたよ。午後からは俺の分までこの土地の芭蕉の足跡を見ておいてくれよ」


 そう言う先輩の顔には「なんなら、お前も一緒に剣道の試合を見に来てもいいんだぜ」という文字がクッキリと浮かび上がっていた。さすがにそれは遠慮したのいで、「わかりました。しっかり見てきます」とだけ言っておいた。

 それにしても父つぁんはそんなに剣道の見込みがあるのだろうか。先輩にその点を尋ねると、父つぁんの体はボディビルダー並に筋肉が発達しているらしい。と同時に胸毛も相当生い茂っているそうだ。


「他の一年生と比較すると際立っていい体をしているからな。剣道にはさほど筋力は必要ないが、瞬発力や持久力を考えるとあって困るもんでもない。ただ剣道をやらせておくには勿体無い鍛え方なんだ。あのまま水泳部にいても結構活躍できたんじゃないかと思う。で、俺なりに色々考えてみたんだが、やっぱり原因はあの胸毛なんだろうな。多感な十代にはちょっと恥ずかしいほどの剛毛だ。まあ、剃ればいい話なんだろうけど、そんな事に時間と気を遣うのが嫌なんだろう。それに腕毛やスネ毛も濃いからそっちのケアもある。なるべく肌の露出が少なくて済むスポーツを探して、結局剣道部に落ち着いたってところなんだろう」


 確かに他のスポーツと違って剣道は重装備だ。あれだけ体を覆われてしまえば性別さえも判別不能になってしまう。夏でも濃い体毛を気にせず動き回るには好都合のスポーツと言える。先輩の推理は多分正しいのだろう。

 もっとも、濃い髭と体育の時間に見える腕毛から、胸毛の存在は僕にもある程度予測できていた。先輩の言葉から察するに、どうやら予想を遥かに超える剛毛のようだ。これで夏のプールの授業と、夏休みのスイカ収穫のお手伝いに伴う海水浴が俄然楽しみになってきた。ソノさんがキャアキャア言いながら触りまくるような気がするなあ。

 昨晩の出来事をそこまで思い返したところで足音が聞こえてきた。


「おはよう、遅れてすみません」


 父つぁんが決まりの悪い顔をして入ってきた。座卓を挟んで先輩の正面に座る。ご飯と味噌汁が配られると、さっそく朝食が始まった。出された味噌汁には昨日の甘エビの頭も入っている。思ったよりも出汁が出てよい風味だ。殻だからと言って無闇に捨てちゃいけないな。食べ残しのエビフライの尻尾も、砕いておにぎりの具にすればいけるかも知れない。新作おにぎりへの創作意欲をいやが上にも掻き立てられる本日の味噌汁に感謝である。


「あ、お代わりお願いします」


 こちらがまだ半分も食べていないのに、先輩は二杯目のご飯をご所望である。昨日と違ってすぐにお代わりを申し出たところを見ると、どうやら本日は、新屋で女子部隊が食べているであろう洋風朝食には未練はないようだ。


「ところで、父つぁん……」


 言い掛けた先輩の言葉が止まった。横を見ると、右手に箸を持った状態で父つぁんを見ている。


「あ、はい。何ですか、ライ先輩」


 父つぁんが返事をしても先輩は何も言わない。じっと父つぁんを見詰めている。山盛りに盛られた二杯目の茶碗を受け取っても、それを持ったまま、見えない何かを見ようとしているかのように父つぁんの顔に視線を集中させている。どうも様子が変だ。


「先輩、どうかしましたか」

「ん、うん……なあ、ショウ」


 今度は僕を見る。見たまま何も言わない。こんなにはっきりしない先輩も珍しい。


「何ですか?」

「……い、いや何でもない。すまんな、気のせいだ」


 先輩は茶碗を置くと、父つぁんと連絡の仕方について話し始めた。今日は公共の場所や交通機関を利用することが多くなる。そんな場所では基本的に携帯が鳴っても出られないので、返事が遅くなっても気にしないでくれ、そんな内容の話だった。

 彦根で駐車場探しに苦労したこともあって、今日はソノさんの車ではなくバスと電車で先方に向かうことにしていた。訪問先でも吟詠境をどれくらい開いているかわからない。携帯に着信があってもすぐには対応できないだろう。


「わかりました。でも、それはこちらも同じですからね。お互い、気長に待ちましょう」


 父つぁんが快諾したので、先輩はすぐに二杯目のご飯を食べ始めた。ただ、その勢いが一杯目ほどにはない。喉に魚の骨でも引っ掛かっているんじゃないかと思われるほど緩慢な食べ方だ。

 常人並みのスピードで食事をする先輩、それは珍しい光景ではあるが、僕はどこかで同じ姿を見たような気がした。つい最近、確か……そうだ、コトと一緒に初めて牛丼を食べた時。あの時の先輩も今と同じように勢いのない食べ方だった。何か気になることでもあるのだろうか。


「あの、先輩。今朝はなんだか元気ないですよね。どうかしましたか」

「ん、そんな事ないぞ。それよりも無駄口叩いてないで早く食えよ。俺たちは早目に出発するんだから」


 言葉とは裏腹に、やはり先輩には何か気懸かりがある、僕はそう感じた。だが、先輩がそれを否定するのなら、これ以上の追及はしない方がいい。僕はもう何も言わずに今日の朝食を片付けることにした。


 蕪村さんに教えてもらった住所は市街地の駅から更にバスで数十分の郊外にある。僕らの時間に合わせて全員一緒に出掛けると、別働隊は美術館の開館時間よりもだいぶ早く着いてしまうので、別々に出発することになった。朝食と身支度を済ませて屋敷の外で待っていると、新屋からソノさんが姿を現した。


「おはよう、今日も晴れそうでよかったわね」


 ソノさんの明るい声と陽気な笑顔。が、歩き方が少しぎこちない。ピンときた僕は、いつもからかわれている仕返しをするのはここぞとばかりに、ソノさんに言ってやる。


「ふっふ、ソノさん、昨日の畑仕事で筋肉痛になったんでしょう。もう若くないんですから無理しちゃ駄目ですよ」


 ソノさんは一瞬ギクリとした表情を見せたが、僕の冷やかしなぞどこ吹く風という顔をして言葉を返した。


「あら、ばれちゃった。でもねショウちゃん、逆よ。翌日に筋肉痛になるんだから、あたしはまだまだ若いってことなのよ」

「まあ、年を取ると痛みが出るのに数日掛かるって言うからな。ソノさんの筋肉、意外と若いってことか」


 また、先輩はどうしてソノさんのフォローに回るんですか。ここはツッコンで欲しかったなあ。もう少しでソノさんの白旗万歳姿が拝めたのに。


「それよりお前の筋肉痛はもういいのか」

「やだショウちゃん。筋肉痛を起こしてるの。若くないのはあたしじゃなくショウちゃんの方だったりして」


 薮蛇である。切りつけたはずの刃がこちらに返ってきてしまった。この二人は変な所で息が合うから困る。


「さあ、じゃあ出発しましょうか」


 こうなってはさっさとこの話題から遠ざかるのが一番だ。僕はスタスタと歩き出した。後ろからソノさんのクスクス笑いが聞こえる。今日もソノさんのオモチャにされるのは間違いなさそうだ。


 屋敷を出た僕らは父つぁんに教えてもらった通り、バスに乗り、電車に乗り、またバスに乗って郊外の町にやってきた。ここからは地図を頼りに目的地を探す。区画整理のされていない入り組んだ町並み。しかも初めて足を踏み入れる土地ということもあって、少々不安ではあったが簡単に見つかった。


「やっぱり医者か」


 地図を頼りにたどり着いた僕らの目の前には、古びてはいるもののしっかりした造りの木造家屋と、消えかけた文字で黒く「医院」と書かれている風化しかかった木の看板。前もってネットで住所を検索して地図を作成していたソノさんから、どうやら目的地は病院のようだと事前に知らされていた。一般住宅とは違うので初めての土地でも容易に見つけられるだろうとの予想が見事に的中した形だ。そこは屋敷の一部を診療所にしている個人経営の病院だった。


「そうね。でも、もう診察はやってないみたいね」


 祝日だからという理由だけでなく、建物自体に活気がない。文字が消えかけた看板以外は診察内容や時間を記したものがない。ソノさんの言葉通り、もう何年も病院としての機能は果たしていないようだった。

 呼び鈴を押すと、インターホンから老女の声が聞こえた、用件を告げた後、玄関に姿を現したのは声に相応しい齢を重ねたおばあさんだった。愛想よく挨拶をされ中に入る。通された部屋には中央にベッド。そしてそこには上半身を起こし、一目見て病人であることがわかるほど、痩せて蒼白い顔をしたおじいさんが座っていた。


「遠い所をよくおいでくださった。どうぞ、お掛けください」


 ベッドの前にはテーブルと椅子が三脚置かれている。僕らは簡単な挨拶をして腰を掛け、テーブルを挟んでおじいさんと向かい合った。先程のおばあさんが麦茶と茶菓子を持って入ってきた。すぐに出せるようあらかじめ用意してあったのだろう、良く冷えた麦茶は渇いた喉に嬉しかった。出された茶菓子をつまみ一息入れたところで、先ずは先輩が口火を切った。


「こんにちは。今日はお招きいただいてありがとうございます。住所と医者であることから、大よその見当はついていたのですが、やはりあなたでしたか」

「ご無理を言ってすみませんな。本来ならこちらから出向くべきなのでしょうが、ご覧のように半分寝たきりでしてな。お手数をお掛けしました。しかし、まさか其角殿までご一緒くださるとは」

「初対面ですが、其角としてはお久し振りですね、凡兆ぼんちょうさん」


 先輩もソノさんも相手の言霊に向かって話をしている。そして僕にも見えていた。影は薄いが目の前のおじいさんは間違いなく言霊の宿り手、その宿り主は野沢凡兆。北枝ではなくこの凡兆を十哲に数える者も居るくらい、蕉門の中で特に非凡な才に恵まれた俳諧師である。


「そして、芭蕉翁。お懐かしゅうございますな」


 僕に向かって言ったおじいさんの言葉にはさすがに照れてしまった。自分では芭蕉の自覚が全くないので、ちょっとこそばゆく感じる。


「あ、はい。でもまだ完全な宿り手にはなっていなくて、吟詠境でもこの姿のままなんです」

「はは、そうでしょうな。他のお二人に比べると際立って力が弱い。芭蕉翁の酔狂も相変わらずですな。ははは」


 上げて落とすとはこの事か。先程こそばゆく感じた自分が情けなくなる。蕪村さんも同じようなことを言っていたし、酔狂なのはこのおじいさんも似たり寄ったりな気がする。


「ですが、去来殿と其角殿を得られれば心強いでしょう。他の門人も早く見つかるといいですな」

「あ、実は許六と寿貞尼は既に見つけているんです。今日は事情があって来られませんでしたが。えっと、それから杜国も見つけた、かな」

「ほう、あの杜国殿を……」


 おじいさんの声が低くなった。どうやら凡兆も他の門人同様、杜国を好ましくは思っていないようだ。言わない方がよかったのだろうか。


「それで、杜国殿の吟詠境には行かれたのですか」


 戸惑い気味の僕は「あ、はい」とだけ答えた。おじいさんの表情が少し険しくなる。


「芭蕉翁の姿すら得ていない今のあなたでは、随分と骨が折れたでしょう。よくぞ無事に戻って来られたものですな」

「え、ええ。許六の短冊とこの二人の力で、宿り手に封じ込めました」

「なるほど、そうですか、それはよかった……ゴホゴホ」


 おじいさんは急に咳き込むとベッドの脇にある吸入器を口に当てた。しばらく深呼吸を繰り返した後、吸入器を外して蒼白くなった顔をこちらに向けた。


「失礼。人と話しをするのは久し振りで、体が驚いてしまったようです。無駄話はこれくらいにしてそろそろ吟詠境に参りましょうか。凡兆も皆さんと話がしたくてうずうずしておりますでな」


 おじいさんの背筋が伸びた。その瞳には今までとは違う力強い輝きが宿っている。濃さを増した凡兆の影を感じながら、僕の中の言霊は詠まれたばかりの凡兆の発句に声を合わせていた。


「竹の子の力を誰にたとうべき……」

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