第9話 満喫。後の動揺

 サンダーソニアの前に現れた白い獣型のヨロイ。その姿を確認したときミロクとソニアに緊張が走る。

 普通のヨロイなどサンダーソニアの敵にもならないがこんな夜遅くに現れる奴だ、何か危ない物を隠し持っているかもしれない。そう思ったからだ。


 だがその声を聞いてミロクから力が抜ける。


『人ですか。どうします? マスター』

「あーどうするかな。たぶん知り合いなんだが」

 警戒を深めるソニアにミロクはなんと説明しようかと少し言いづらそうにする。


『知り合い……マスターにそんな社交性が?』

「それくらいあるわ」

 

「とりあえずお前は特別製のヨロイだってことで適当に話すから声出すなよ」

『……了解いたしました』

 不服そうなソニア。ミニソニアも両手を上げ首を振っている。

 

 四足のヨロイにゆっくりと歩み寄るサンダーソニア。だが、一歩よるごとに相手は下がる。


 埒が明かないとミロクは頭をかき、ソニアに合図し触手を外してもらって前面装甲を開ける。

 揺れるサンダーソニアの中でミロクはタラップに足を引っ掛け触手を片手で掴みバランスを取る。


「……あーなんていうか、こんばんは? ユテンさん」

「誰だ──ミロク!? ミロクなのか!?お前、このヨロイは……なんなんだ?」


 四足ヨロイの背中のハッチが開き慌てた様子でユテンさんが顔を出す。

 長い髪をまとめ、薄い長袖のジャケットを羽織った姿。


「いやーあのちょっとそこらに隠しておいたというかそんな感じっす」

「隠してた? 昨日、いや一昨日か? 初めて会ったときお前は北から現れただろ。それがなんで東門から出てそんな物を回収しこんな遠くまで来れる訳があるんだ!」


(まあ疑われるよな。実際怪しさしかないし)

『……ユテンさん。やっぱりこの人怪しい人ですよ、関わるのやめましょうよ』

 ユッカちゃんらしき声もミロクを疑っているような事を言っている。


 何を言って何を隠そうか。悩むミロクにソニアが勝手に声を出す。

『マスター。発言をお許し下さい』

 通常ソニアはミロクにだけ聞こえるようにサンダーソニア外部には声が漏れないようにしている。

 だが今はわざとユテンさん達にも聞こえるようにしてミロクに確認をとった。


「ん? 他に誰かいるのか?」

「あっおい」


『私の名はサンダーソニア。俗に精霊と呼ばれるものです』


「……精霊?」

 ユテンさんが自分の胸ポケットに入っている擬似精霊のカゴを見る。

『いえ、それとは全く別の存在です。私は私の目的のためにマスターと行動を共にしており、そのことについて部外者から干渉されるいわれはございません』


「……どういうことだ」

『何も貴女に説明する気はないということです』

 頑なな態度を取り続けるソニア。向こうには見えていないミニソニアまで挑発するようなポーズをとっている。


「どういうことだ

 苛立ったような、すがるような声で尋ねるユテンさん。


「……話してもいいんじゃねーの? ソニア」

『………………』

 無視だ。


「ああじゃあ、あのー説明するんでとりあえず俺の昔話でも聞いてくださいよ」

 夜はまだまだ終わりそうにない。

 

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