第5.5話その頃街では2

再び時間は戻り昼を少し過ぎた頃


ガッチャガッチャガタガタガッチャガチャ

 すでにアヤメも帰っておりユッカは一人ガレージにて作業を続けていた。

 さすがに寝巻きからは着替えたが食事などは軽く済ませてずっとヨロイの準備にかかりきり。


 ユッカの前にある四足よつあしのヨロイ。


 このヨロイは大型の猫を模したモデルで彼女が幼い頃、まだ本当の家族と暮らしていた時から付き合いがあるものだ。幼いユッカはよくこれに乗り冒険家を生業としていた父と一緒に旅をしたのだった。

 白い装甲ピンと伸びた尻尾。足先にはむき出しの長い爪とクッションのように柔らかい肉球。大容量の収納スペース。彼女はその全てを懐かしく思った。


 そんなヨロイも今は、ユッカの父親が既にいないことと、ユッカ自身のあまり外に出歩きたくないという引きこもり気質が合わさってここ最近は埃を被っていた。

 乗れば父親を思い出すということも無自覚に影響していたのかもしれない。


 それを今ユッカはユテンの為にとメンテナンス作業を急いでいた。

 ミロクが始めてここに来た時にこのヨロイの背中に載っていた大きな荷物は取り外されヨロイの白い体がはっきりと見える。


 足の一本、首、背中、しっぽ。

 全ての状態を正確に調べユッカ本人が作業アームへと指示を出す。

 放置していた期間がそれなりにあったため精霊による自動作業では時間がかかるのだ。


 今はお尻の上のハッチが開けられ蜜の入った燃料タンクを挿入する最後の仕上げ作業のところだ。

 ユテンのヨロイの物よりも若干小さなタンクだが、このヨロイは大きさと反比例した長時間の運用が可能な低燃費性能がうりの一つでもある。


 乗り込むところは他のヨロイと同じ胴体部で、脇腹にはしごのような部位が有りそこを登って背中の上から入る。

 中は他のヨロイと大きく異なり椅子が縦に二つ並んだ作りで、後部席の後ろには更に広めの荷物置き場まである。


 操縦者は前席に座りゴーグルのような物をかけ視界を同調させ、二本突き出たレバーとフットペダルを利用することによって操縦する。

 今は亡きユッカの父親は大都市で開かれるレース大会などにも出場し賞を取るほど腕の立つ操縦者だった。


 そして──

「ユッカ!!! やっぱり多分あいつだって──」

 息を切らしてユテンが階段の中を飛び降りガレージに帰ってきてユッカの姿をみて声をなくす。

「じゃあ行きますか」

「ユッカ!」

 ユテンが笑顔を浮かべ走りより、ユッカがゴーグルを装着しそう言った。

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