一章二節 ぷりマドンナ
「初対面で全開って、どーゆー事よ!」
国道に近い緑生い茂る丘の上に建ち、打ちっぱなしのコンクリート外壁がクールさをかもし出す、初等部、中等部、高等部等で構成された巨大な要塞校舎。
時折、学徒の笑い声や怒鳴り声が漏れ響くその校内廊下を、プリプリと口を尖らせながら歩く統合陸軍特別少佐メガミ・カミフォーは、士官としての威厳を保っていた緊張から解放され、思わず素をさらけ出していた。
「へっ! ぶ~すぶ~すブス軍人! このブ~スっ!」
腹立たしい声にムカッと後ろを振り返るメガミ。
初等部の学徒であろうチビっこいのが数人で
「ちょっとアンタ達、こっち来なさい! 腕立て二十回!」
声を張り上げるメガミを小馬鹿にした様にキャーキャーと笑いながら走り去る子供達。――ナメられている。
「ガキを相手にするほど、私ガキじゃないし!」
軽く相手してしまった事はスルーして、軍服の襟を正しまた歩き出す。
黒いストッキングの歩幅も大きく、彼女のプリ度合いはプリプリプリと、当然増していた。
前からは高等部の女子学徒が二人、あーだこーだと談笑しながら歩いてくる。
一人は衛生班であろう、十字紋の腕章と短いスカートが際立つ濃紺の制服、もう一人はアースカラーに染められた白兵戦仕様のアサルトブレザーを緩く着崩している。
「――でもマジな話さー、雪原センパイの命令だったら全裸で下校できるよ~」
「M過ぎるわアンタ……でもトウジョウ先輩の命令だったら、理事長あたりなら殴れると思う。全裸で。てかナニこの会話」
(ユキハラ……)目を
少女達は女性士官の腕章に気付くと立ち止まり、教則通りの挙手の敬礼を無表情で示した。その前の軽い舌打ちはメガミにも聞こえていた。
すれ違いざまその敬礼に軽く
(嫌われたものだわ……)
表情には出さずメガミは歩を進める。遠ざかってゆく女子学徒達の眼に野性むき出しの危険な光が浮かび上がった事には、当然気付かない。
「……やってやるよ……」つぶやかれる、二人の少女の決意。
ハンドガンなどの小火器は、高等部の学徒ならほぼ誰でも常時装備している。
硝煙の匂いなど日常と化した混沌の戦時下。――そして、悲劇は繰り返された。
「や~いぶ~すぶ~すブス軍人! この……全裸っ!!」
えええぇぇぇっ?! と衝撃を受け振り返るメガミの視界に、さっきの女子学徒二人が何か全身でタコの様にクネクネとしながら煽ってくる腹立たしい光景が展開された。とても高校生の挙動とは思えない。
――あ、ちなみに銃器等は手にしていない。
「ア、アンタら歳いくつなのよ! てか誰が全裸よこのブスガキっ! 全裸って言う方が全裸なんだよバッカみたい! こっち来なさい! 腕立て二十回!」
キレるメガミを
「ガキにムキになるほど、私ガキじゃないし!」
完全にガキにムキになっていた事は当然スルーして、フルにプリプリと歩き出す。
プリ度はメーターMAX。そう、フルプリで。
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